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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十四章 最終決戦編

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第十五話 船造り本格始動


 SIDE:ディグ

 村に残してきた必要な機材や本やノートを運び出したり、村の戸締まりをしていたらあっという間に一ヶ月が過ぎてしまった。

 そして、機材を運ぶ手配をして貰ってから、僕は爺ちゃん、婆ちゃんたちとお別れを済ませてノーラたちの村へ向かうことになった。

 生まれてから、一度も婆ちゃんたちと合わない日なんてなかったのに、もう一週間は会っていないと思うと本当に外に来てしまったのだと実感が沸いてきた。

 あと、車から見える、霧のない綺麗な景色も自分があの村にはいないのだと思わせてくれた。

 知らなかったよ。太陽って、直視できないくらい眩しいんだね……。


「ほら、見えてきた。あれが私たちの拠点がある村だよ」

 そう言ってノーラが指さす向こうには、小さな掘っ立て小屋が建ち並び、更に奥には目を疑うくらい先にまで広がる青くて綺麗な湖だった。


「あ、あれが海?」


「そうよ。私たちは、あの向こうに行くことを目標にしているの」


「そ、その船を僕に作って欲しいんだね?」

 僕が頼まれたのは、魔力エンジンを使った船を造ることだ。

 あの後、何十年も前に死んでしまった船造りが趣味だったドワーフのノートやメモ、設計図を読みあさってみたが、なかなか船造りというのは奥深いということを知れた。

 きっと、たくさん失敗するだろうけど、難しい物ほど作っていて楽しいはずだ。


「うん。帰ったらさっそく設計図の見直しをしましょう?」


「わ、わかった」



「おーい! ローゼにノーラ! おかえりー!!」

 村に近づくと、一人の男が走って近づいてきた。

 あの人……肌が茶色だ……。

昔、日に長く当たっていると人の肌は黒くなるって本で読んだことがあった。

読んだ当時は何かの間違いだろうと思ったけど、それが事実だったとは……。


「オーロ! あら、見ない間に筋肉がついたんじゃない?」


「毎日、父ちゃんと漁に出て思い網を上げ下げしていたからな!」


「お、嬢ちゃんたちが帰ってきたぞ!」

 車が止まると、村人らしき人たちがぞろぞろと集まってきた。

 そして、車から降りると僕にその人たちの視線が全て僕に集中した。


「ん? 男を連れてきたぞ」


「あら、色白ね」


「ノーラちゃんの恋人かしら?」


「もしかしたらローゼの嬢ちゃんかもしれねえぞ? ククク」


「そ、そんなはず……」

 ローゼの名前を出され、先ほどオーロと呼ばれていた男は信じられないという顔をしていた。

 もしかすると、あの人はローゼのことが好きなのかな?


「恋人なんかじゃないわよ。この子はドワーフで、造船の技術担当としてスカウトしてきたの」


「ドワーフ? 初めて聞くな」


「物作りが得意な種族よ」


「へえー。まあ、嬢ちゃんが連れてきたってことは悪い奴じゃないだろ。坊主、よろしくな?」


「は、はい……よ、よ、よろしくお願いします」

 大きな体をした男の人に手を差しのばされ、僕はビクビクしながら手を握った。

 ぼ、僕の手……握りつぶされちゃいそう。


「おじさん、ディグが怖がっているじゃない。もっと優しくしてあげて!」


「いや、今普通に挨拶しただけだぞ?」


「ふふふ。相変わらず、あなたたち姉妹は面白いわね。これからが楽しみだわ」


「うん。楽しみにしておいて。これから、もっと凄いことたくさんするんだから!」


「そういえば嬢ちゃん! また魚が高く売れたって行商たちが喜んでいたぞ」


「それは良かった。後で、どのくらいで売れたのか、詳しいことは行商たちに聞いてみるわ」


「ああ、そうしてくれ。嬢ちゃん、ありがとうな。おかげで、今年からは腹が減るのを心配しなくてすみそうだ」


「それはお互い様よ。私もおじさんたちのおかげで稼がせて貰っているんだから」


 村人との挨拶が終わり、村から少し離れた丘の上にあるノーラたちの家にやってきた。

 この家は……ちゃんとしている。ノーラが言うには、ノーラの魔法で建てたものらしい。

 家を建てられる魔法なんて、初めて知った。

 外の世界は、僕の知らないことが溢れていて楽しいな。

 そして、家に入るとすぐにローゼがリビングの机に船の設計図らしき物を広げた。


「こ、これが船の設計図?」


「そう。私の頭だと、これが限界」


「う、ううん。こ、これを一人で考えただけでも、じゅ、十分凄いと思うよ」


「お世辞は良い。私でも、これは不完全だってわかる」

 ノーラと話すのにはやっと慣れてきた気がするけど、まだローゼと話すのは苦手。

 ローゼ……表情から感情を読みづらいし、なんか怖いんだよね。


「ロ、ローゼは……な、何を目的にこの船を造りたいの? の、乗せる人数や荷物の重さ、速さによって設計は変わってくると思う」

 死んだドワーフから得た知識をさっそく活かし、ローゼに疑問を投げかけてみた。


「最低でも十人は寝泊まりできるようにして欲しい」


「う、うん」

 十人が寝泊まりできる宿泊施設が必要……。


「あと、一応最初の目的が達成できたら貿易船として使う予定だから、たくさんの荷物も載せられるようにして欲しいわ」

 貨物を載せられるスペース。貿易をするほどとなると……これでは足りないな。


「……わかった。確かに、その要望だと……この設計図は問題だらけだね」


「そうなの?」


「う、うん。ちょっとだけ時間をくれる? い、今、思いつく限りの修正をしてみるから」


 それから黙々とペンを走らせた。

 実を言うと、事前に色々と調べてからこの一週間でどんな船を造ろうかは大体考えていた。

 だから、そこまで悩まずスラスラと描け、気がついたら設計図が完成した。

 と言っても、集中しすぎて時間を忘れていただけで、完成したのは描き始めてから半日も経ってしまっていた。


「お疲れ様。これが完成図?」


「ど、どうかな? も、問題ない?」


「……凄い。綺麗な設計図ね」


「あ、ありがとう」

 原型をほとんど残さないくらい変えてしまったから、怒ってしまうかな……。などと不安になっていたけど、むしろ賞賛されてしまった。


「でも……これ、随分と大きいわね」

 や、やっぱり不満だよね……。


「ふ、船の心臓になるエンジンになるべく広めに場所を取っておきたいんだ。それに、船に電気を通すならそれを管理する部屋が必要だ。あと、貿易するくらいの荷物を載せるには船の規模が小さい気がするんだ」


「なるほど……」

 必死に理由を言ってみたけど、ローゼは相変わらず何を考えているのかわからなかった。


「も、もちろん。なるべく小さなエンジンが作れるよう頑張るけど、船を支えられるくらいの出力が必要だから……どうしても大きくなってしまうのは許して欲しい」


「別に良いわ。必要な素材、多めで良いから紙に書いてくれる?」


「わ、わかった」

 僕は、必要になりそうな素材を大体で計算して紙に書いていった。


「うわ……。こんなに必要なんだ。流石に、ローゼだけで集めるのは無理そうね」

 ノーラの言うとおり、この船を造るにはたくさんの鉄が必要になる。

 これだけの量を揃えるために狩らないといけないアイアンゴーレムをの数は……とても想像できない。


「心配しないで。目標が決まっていればそこまで辛くないから」


「そういう範疇の量ではないでしょ。心配しないで、魚を売って稼いだお金があるから、お金でどうにかできそうな素材はお金で解決しましょう?」


「わかったわ」


 SIDE:ノーラ

 ディグに設計図を作って貰った次の日、さっそくローゼが出て行くことになった。

 何を言っても、早くしないと集まる物も集まらない、の一辺倒で、結局一晩だけしか止めることはできなかった。


「それじゃあ、行ってくるわ」


「いってらっしゃい! ちゃんと、村を出て行く前にオーロのところに行ってあげるのよ~」


「……わかっているわ」

 ちょっと嫌そうな顔をしながら、ローゼは家を出て行った。

 まったく、オーロの気持ちにもなってあげなさいよ。やっと、帰ってきたと思ったらまた当分帰って来ないのだから。



「それじゃあ、さっそくあなたの工房を造っていくわよ!」

 ローゼの見送りが終わり、私たちはディグの工房を創造するために、外に出てきた。

 ちょっと村の方に向けると、ローゼらしき人影が村人たちと話しているのが見えた。

 あ、今、膝から崩れ落ちたのはオーロで間違いないわね。


「ぼ、僕たちだけで? き、機械もゴーレムもいないんだよ? こ、子供二人で工房を建てるなんて無理だよ」


「ふふふ。それができるんだな~。ねえ、工房の大きさはどのくらいがいい? だいたいでいいから地面に線書いてよ」


「ほ、本気なのか!?」


「良いから良いから。騙されたと思って従いなさい。ディグもすぐにエンジン開発したいでしょ?」


「そ、そりゃあしたいけど……」


「だったら、ほら早く線を引きなさい」


「わ、わかったよ……。僕の工房がこのくらいだった……でも、魔力エンジンを開発するには機械の設備も必要……となると倍は必要? あの機械をここに置いて……あれをここ……僕の作業スペースはこのくらいあれば十分……」

 なんだかんだ言いながら、線を引き始めると真剣になり、ブツブツと独り言を呟きながら工房の間取りを描き始めた。


 それから十分くらいして、満足のいく工房図が描けたようだ。


「こ、このくらいだと思う」


「了解。それじゃあ、線の外に出て」


「う、うん」


「それと、材料を取り出して……」

 ローゼが置いていった袋から、遠慮なく木材や石材を取り出していく。


「そ、その袋……」


「ふふふ。不思議でしょ? 魔法の袋なんだ~」


「そ、そんな魔法具見たことないよ! どんな魔方陣が描かれているの?」


「これは魔法具じゃないわ。まあ、説明するより見せた方が早いわね。そりゃあ!」

 説明するのも面倒だったので、実演することにした。

 適当に材料を出し終え、最後にポケットから私が持っている中で一番の魔石を置いて、創造魔法を発動した。

 すると、あっという間に立派な工房が完成した。

 うん。我ながら悪くないデザインなんじゃないかしら?


「え? ええ? ええええ~!?」


「アハハ。ディグのそういう反応、本当に面白いわ。頑張った甲斐があったわね」


「これ……どうやったの? 魔法なの? どういう魔法? 基本属性じゃないよね? 魔力はどのくらい必要なの? 魔石を使っていたよね? 何か意味あるの?」


「ちょ、ちょっと落ち着こうか」

 凄い勢いで迫ってくるディグをなんとか引き剥がす。

 物作りになると、人が変わるのね。


「ふふふ。素の状態で放してくれるのは嬉しいけど、私もそんな一気に説明できたりしないわ」


「ご、ごめん……」


「良いわよ。それじゃあ、順番に説明していくね。まず、これは創造魔法っていうの」


「創造魔法? 初めて聞く魔法だ」


「そうでしょうね。私も、お父さんとお母さんしか使っている人を見たことがないわ」

 噂では、もう一人使える人がいるらしいけど、私はまだ会ったことがない。


「ノーラのお父さんたちとお母さんも使えるんだ」


「そうよ。お父さんは特に凄いわ。お父さんの街を出るときに立派な城壁を見たでしょ?」


「う、うん。とても人が建てたものには見えなかった」


「そうでしょうね。だってあれ、魔法でお父さんが創造したものなんだから」

 しかも、今の私よりも若い頃にだって。父さんの魔力は化け物だと思う。


「そ、そうだったんだ……」


「創造魔法は、たくさんの魔力を使ってイメージした物を創造する魔法なの」


「たくさんの魔力……。どれくらい魔力を使うの?」


「本当にたくさん。これ建てるだけで、ディグ二人分の魔力を使ってしまったわ」


「そ、そんなに? か、体……大丈夫なの?」


「心配しないで、この程度で魔力が枯渇することなんてありえないから」

 ローゼやネリアには敵わないけど、こう見えて兄弟の中で三番目に魔力が多いんだからね?


「そ、そうなんだ……。建材に魔石を混ぜたのには何か理由があるの?」


「うん。魔石を混ぜると、創造した物に特別な能力を与えることができるの」


「その袋はその能力?」

 さっすが~。理解が早くて助かるわ。


「そうそう。これは創造魔法で造った袋だからね」


「それじゃあ、この工房にも何か能力がついているの?」


「ええ。あなたがこの中で怪我しないようおまじないをかけておいたわ」


「あ、ありがとう……」


「き、気にしなくて良いわ。そ、それじゃあ、な、中を造っていくわよ!」

 真っ赤になって感謝されて言った自分まで恥ずかしくなってしまったので、さっさと工房の中に入ることにした。

 もう、なんか私までまともに話せなくなっちゃったじゃない。



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