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第十二話 ドワーフを勧誘①


 SIDE:ロゼーヌ

 それから、随分と時間がかかってしまったけど、なんとか人だと言うことを老ドワーフたちに理解して貰うことができた。

「……本当に人なんだな」


「だ、だからい、言ったでしょ!」


「信じて貰うまでかれこれ一時間かかったわね」


「魔法が使える人形とまで言われたら、どう証明したらいいのかわからないわよ」


「す、すまなかった。ただ、この数百年間、外から来た人はいなかったもんでな」

 あの罠、数百年も前から設置されているのね……。

 確か、三百年前から、ドワーフたちの話を聞かなくなったし、それくらいには罠を張り始めたのかもしれないわね。


「ディグと変わらないくらい若いのに、よくあの罠を抜けてこられたわね」


「若いんだから自分の命は大切にした方が良いぞ?」


「そうだ。それに、こんな寂れた場所に命をかけてまで来る意味なんてないぞ」


「そんなことないですよ。この建物を見て、もう私はここに来て良かったって思えているんですから」

 ノーラの言うとおりだ。ここは間違いなく、世界で一番進んだ文明で間違いない。


「この程度で? いやいや嬢ちゃん、お世辞はやめてくれ。この老いぼれを煽てても何も出てこないぞ」


「そうそう。こんなの、年寄りの趣味以外何でもないわ」

 これをお遊びと言えてしまう技術力……余計に欲しくなってしまうわね。


「あなたたちにとってはお遊びの範疇なのかもしれないけど……外の世界にとって、百年はくだらないくらい未来の建物なのよ?」


「未来の建物? これがか?」

 ドワーフたちは、信じられないという顔をしていた。


「ええ。比較的技術が進んでいるお父さんの街でも、高くても五階が限界だわ」


「嘘だろ? 外の世界はそんなにも原始的なのか?」


「げ、原始的……まあ、あなたたちからしたらそうかもしれないわね」

 きっとドワーフたちは、私が初めてオーロの村を見た時と似たような気持ちなのでしょうね。


「そうだったのか……。外に出て行こうとした馬鹿どもに聞かせてやりたかったな……」


「外に出て行こうとしたドワーフたちがいるんですか?」

 そりゃあいるでしょ。人族でも、あれだけ入ったら帰ってこれないと言われていて、森の中に入っていく人たちがいるのだもの。


「ああ、たくさんいたぞ。若者にとって、ここは退屈な場所だ」


「……どこもそうなのね」

 外に出たいと直談判してきた若いエルフたちを思い出す。

 大抵、人というのはダメと言われたことをやりたくなってしまうものだ。


「ディグは外に出たいと思わないの?」

 外に出たいという話を聞いて、さっそくノーラはドワーフたちの勧誘を始めた。


「お、俺は……そ、そんな馬鹿じゃねえ」

 そう言いながらも、ドワーフの少年は外に出たいという気持ちが隠しきれていなかった。


「それは無理だとわかっているから、そんな馬鹿なことはしないってこと? それなら、安全に外に出られるなら外に出たい?」

 少年の真意に気がついたノーラは、ここが攻めどきとばかりに攻勢に出る。


「そ、それでも……お、俺は出て行かない」


「なんで?」


「そ、それは……」

 答えに困る少年が見た先には、老ドワーフたちがいた。

 つまり、この人たちを置いて出てはいけないってことなんでしょうね。


「ちょいちょい。嬢ちゃんたち、遠路はるばる来て貰ったのに立ち話も悪いし、お茶でもしながら話さないかい?」

 答えに困る少年に手を差し伸べるようと、老婆がそんな提案をしてきた。


「おお、良いな。俺の工房に来い!」


「え? いいんですか?」


「ああ、仲間内で見せ合っていてもつまらないからな」


「そうそう。こいつなんて、儂がいくらすげえ発明をしても、嫉妬して粗探ししかしねえんだから」


「そ、それはお前もだろ! この前だって、儂が発明した電話にケチしかつけなかっただろ?」


「いやいや、あれは完璧なアドバイスだったと思うぞ? 年寄りには音が小さすぎる。音量を調節するダイヤルはつけるべきだろ?」


「はいはい。今日は客人がいるから、喧嘩は後にしましょうね」


「で、電話?」


「電話というのは……待って、もしかして電気が使えるの?」

 電気を使って、遠くの人と話すことができる機会。そう説明しようとして、信じられない事実に気がついてしまった。


「ん? ああ、魔力って使い回しが難しいからな。一度、電気に変換してやると、どんなこともできるようになるんだ」


「ドワーフの技術力……思っていた以上に凄いわね」

 まさか、電気まで発明していたとは。


「おお! やっぱり嬢ちゃんたちはわかってくれるか! よし、儂の工房に招待してやろう!」


「くそ。儂だって技王が残した魔力を動力にしたラジオを復活させたって言うのに」

 ラジオ……それ、本当に言っているの? ラジオが使えると言うことは、無線の技術があるということよね?

 ドワーフの技術……本当に持ち帰って良いのかしら? あまりにも先に進み過ぎていて、ちょっと不安になってきたわ。


「ふん。所詮、お前がしたのは元ある物を復活させただけだ。悔しかったら儂みたいに一から発明してみろ」


「ぐぬぬ。見ていろ、儂が世界で初めて純粋な魔力だけで発電を成功した男になってみせるからな!」


「口だけなら簡単なんだけどな~。お前、かれこれ二十年は成功していないじゃないか」


「デ、ディグの助けで、あと少しなんだからな!」


「お爺ちゃんたちの喧嘩がハイレベル……」

 そうね。私でも、考えるのを止めたくなってしまうくらいだわ。


「そ、そうか? い、いつもじいさんたちはこ、こんな感じだぞ?」


「へえ。ディグも何か発明したりしているの?」


「お、俺はまだみ、見習いだから、じ、じいさんたちの手伝いだけだ」


「見習いって言っても、俺たちがディグに教えられることは何もないんだけどな」


「そうだ。むしろ、最近はディグのヒラメキに助けられているところがある」


「そうそう、ディグは技王の生まれ変わりなんだよ」


「さっきからよく出てくる技王って誰なの?」

 そういえば、私も初めて聞く名前ね。


「技王の話は長くなるから、儂の工房でゆっくりと話してやる。というわけで、俺の車に乗れ!」


「わかった」


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