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第七話 自由

最後まで書き終わりましたので、今日から更新を再開します。

年内には完結すると思います!

 

 SIDE:ロゼーヌ

「三人だと……なかなか進まないわね」

 この調子だと、一隻完成するのに半年はかかってしまいそうね。

 中途半端に投げ出された木材たちを見ながら、私たちは深くため息をついてしまった。

 このままだと、とても目標の船を完成させるのは難しいわ。


「ごめん。俺にもっと力があれば……」


「別にあなたを責めているわけじゃないわ。単純に、人手不足なのよ」

 ノーラの言うとおりだと思う。この状況で、一人力が大きかったところで効率はあまり変わらないと思う。

 やっぱり、効率を求めるなら頭数を増やさないと。


「でもよ……俺、二人よりも力がないんだぜ? これでも……村の子供たちの中では力試しで負けたことないんだけどな……」

 どうやら、効率云々よりオーロは自分が女の子に力で負けたことを気にしているようね。

 まあ、このくらいの男の子なら気にするか。


「これは魔法の力よ。無属性魔法って言うんだけど、魔力を使って体を強化することができるの」


「そ、そんな魔法まであるのか。俺も魔法使いてえ……」


「こればかりは、オーロが属性を持っていない限り無理よ」

 可哀想だけど、こればかりは持って生まれたものだから仕方ないわ。


「属性? なんだそれは?」


「あれ? このカード、オーロは持っていないの?」

 そう言って、ノーラはステータスカードをオーロに見せた。


「か、体から紙が出てきた……。それも魔法なのか?」


「ステータスカードを知らないの?」


「そりゃあそうでしょ。このカード、手に入れられるのは教会にたくさんお金を払える貴族か商人の子供だけなんだから」

 そもそも、属性を手に入れられる可能性が低い庶民はステータスとか気にしない。


「え!? これ、手に入れるのにたくさんお金が必要なの?」

 これだから箱入り娘は……そんなことも知らないで商人になるつもりだったと思うと、ぞっとするわ。


「去年、お母さんが無償で庶民たちにそのカードを配っていて教国と揉めていたの、覚えてない?」

 あれだけ国際問題になったんだから、流石に知っているでしょ?


「ああ……その頃、魔法具の修行していたからあまり家のこと知らないんだよね。でも、あの波風立たないリーナお母さんが教国相手に喧嘩売ったりするんだ」


「お母さんは昔、教国に家族を殺されているからね。恨まない理由がないわ」

 いくら温厚なお母さんと言っても、家族を殺されて我慢できるほど聖人ではない。

 息子も殺されたことだし……私も思うところはある。

 いつか、教国にはそれ相応の報いを受けて貰わないと。


「そういうことだったんだ……」


「ローゼ……家族が殺されたのか?」

 私たちの会話をよく理解できていないオーロが悲しそうな心配してきた。

 まったく、そんな心配されることでもないのに。


「私が生まれる前よ」


「そ、そうなのか……」


「何を暗くなっているのよ。はあ、ノーラならオーロの属性を調べてあげられるんじゃないの?」

 勝手に悲しむオーロに見かねて、話題を元に戻すことにした。


「え!? ノーラ、そんなことができるのか?」

 効果てきめん、オーロはすぐに笑顔になった。


「ふふふ。もちろんよ! 任せておきなさい! でも、ここには魔石がないから、とりあえず家に戻るわよ。ついでに、オーロは家で夕飯を食べていきなよ」

 自然な流れで夕食に誘ったノーラに、作るのは私なんだけど……まあ手伝ったお礼も兼ねて良いか。などと心の中で文句を言いつつ、一人で勝手に納得してしまった。


「いいのか? やったー。あ、でも一応父ちゃんと母ちゃんに飯は要らないって行ってこないと」


「わかった。それじゃあ、私たちは先に帰るわ」


「おう。俺もすぐに行くから!」


「ふふふ。元気な男の子って感じだね。孤児院の男子たちを思い出すわ」


「そうね」

 まるで妹の彼氏を見ているみたいだわ……。



 ピンポン!

 帰って夕飯の準備をしていると、すぐに呼び鈴がなった。

「はい。どうぞ、入って」


「この家……り、立派だな。俺みたいな汚い俺なんかが足を踏み入れて良いのか?」


「何を言っているのよ。さっさと入らないと閉めるわよ?」


「わ、わかった。お邪魔します!」

 馬鹿なことを言ってなかなか家に入ろうとしないからドアを閉める素振りをすると、オーロは慌てて中に入った。


「あ、来た。ガロさんからは許可貰った?」


「うん。これ、父さんが持って行けって」

 そう言って、オーロに手渡されたのは、私が両手で持たないと持てないくらい大きな魚だった。


「わあ。立派な魚じゃない! これ、今日獲れたの?」


「そうだ。新鮮な内に食っちまえ!」


「わかった。それじゃあ、今日はこの魚を料理しないと。あ、でも……私、魚の捌き方なんて知らないわ。ローゼなら知ってる?」

 あなたはそもそも料理ができないでしょ……。


「前はできたけど……今は自信ない」

 エルフの里で女王として祭り上げられるまでは、庶民と同じように植物を採取したり魚を料理して生活していた。

 けど、それも八百年は前の話。覚えているはずがないわ。


「えー。それじゃあ、オーロはできる?」


「ん? お前ら、魚を捌くこともできないのか? 俺なんて、五歳から魚捌きを手伝わされていたぞ?」

 そりゃあ、漁村で育てば魚を捌くことくらい簡単にできるでしょうね。


「私たち貴族は、そもそも料理もしないの。それじゃあ、魚と料理は二人に任せたわ。その間、私は魔石と材料を用意しておくわ」


「まあ、いいけど……。俺、魚は捌けても料理はできないぞ? 料理は母ちゃんの仕事だからな」


「大丈夫。料理は私がする。あなたは、魚を捌くだけで良い」

 流石に、切り身なった魚なら料理することはできる。


「わかった。魚を捌くのは俺に任せてくれ!」


「それじゃあ、頼んだわよ~」


「はあ。あれは料理が完成するまで戻ってこないわね」

 調子よく部屋から出て行ったノーラを見ながら、ボソリと呟いてしまった。


「ん? なんでだ? そんなに、魔石を用意するのって大変なのか?」


「そんなことないわ。鞄から持ってくればすぐよ」

 遅くても五分あれば、持って来ることができるわ。


「それじゃあ、なんでだ?」


「料理ができないのを隠したいのよ」


「はあ、どうしてだ? 料理ができなくて恥ずかしいからか?」


「まあ、そんなところね。あの子、ああ見えてプライドが高いから」

 よく言えば負けず嫌い。自分の弱点を晒すのを人に知られるのを嫌う。ノーラにはそんな一面があるのよ。


「へえ。でも、それならどうしてローゼは料理ができるんだ? 貴族は料理しないんだろ?」


「そ、それは……ここ最近、家出をしてたから」

 自分で言っていて、恥ずかしくなってきてしまった。

 赤くなってしまった耳を見られないよう、肩を上げて誤魔化した。


「え? ローゼが家出?」


「そ、そうよ」


「へえ……。確かに、ローゼなら家出しそうだな」


「……え? 私、そんなに子供に見える?」

 あまりにも意外なことを言われ、手を止めて聞き返してしまった。

 大人だねとはよく言われるけど……子供扱いされたのは前世も含めて初めてだ。

 この子は……私のどこを見て、判断したわけ?


「あ、別に見た目の話じゃないぞ」

 プチン!


「私のどこが低身長だって?」


「し、身長のことなんて一言も言ってないだろ! ごめん! 謝るから! 謝るから胸ぐら掴まないで……」


「まったく……次はないから。それで、どこで私をそう判断したわけ?」

 失礼な。これでも、絶賛成長期なんだからね。


「今日一日のローゼを見て、そう感じただけだ」


「もっと詳しく」

 私のどこを見て、そう感じたのよ。


「うん……勘みたいものだから説明するのは難しいな。なんというか、ローゼって自由が好きそうだったからかな?」


「自由が好き?」

 自由ね……。


「そう。ローゼって我慢が嫌いだろ?」


「私が我が儘って言いたいの?」

 もう一度、オーロの胸ぐらを掴んだ。

 こいつ、私のこと馬鹿にしているわね?


「そ、そこまでは言ってないだろ!」

 いや、我慢が嫌い=我が儘で合っていると思うけど?


「どこから私を我が儘だと思ったわけ?」


「だから我が儘なんて言ってないって……」


「良いから教えなさい」


「く、口は少ないけど、それって自分が喋りたいときに喋っているだけ……だと思ったんだ。朝だって、単なる大人しい女だったら、あんな風におっさんたちに喧嘩売ったりしないって」

 別に喧嘩は売ってないわよ。でも、まあ……結果的には怒らせてしまったわけだから、そうなるのかしらね。


「……そう。そんな私を見て、我が儘と判断したわけね」


「別に、それが悪いって言っているわけじゃない。俺だって、自由な生き方に憧れているからな!」


「あなたは今だって十分自由じゃない?」

 何か、束縛を受けているようには見えないけど?


「俺は……この村から一度も出ないで死ぬなんて絶対に嫌だ」


「それなら、出れば良いじゃない」

 エルフの里から出るのに比べたら、とても簡単なことじゃない。


「俺にはそんなことできないよ。俺は、二人みたいに魔法が使えるわけじゃないんだ」


「それで諦めるの? それって……人生の半分以上を損しているわ」

 こんな狭い世界だけで生きるなんて、退屈で仕方ないじゃない。


「そう言えるローゼは、やっぱり自由が好きなんだよ」


「……」

 言われてみれば私、ほんの少し前まで村どころか、自分の部屋からもほとんど出ないような引き籠もりだったじゃない。

 冒険者になって……考え方が自然と変わっていたんだわ。


「俺、一回だけ小さいときに父ちゃんの船に乗せられて海に出たことがあるんだ。知っているか? 海って凄く広いんだぞ」

 あなたよりは海の広さを理解しているつもりよ。


「あの時……大きくなってあの広い海に出れば、俺も自由になれる。そんな気がしたんだ」

 それは自由ね……。


「頼む! 俺を海に連れて行ってくれ!」


「……そこは、俺がお前を海に連れて行く! ってかっこよくキメるところじゃない?」


「ノーラ……」

 乱入してきた妹の言葉に、客観的に見て自分がオーロと良い雰囲気になっていたことを理解してしまった。


「二人とも、まったく手が進んでないじゃない。もう、私は空腹に耐えられないわ」


「わ、悪い!」


「……」

 良いわよ。あなたを海に連れて行ってあげる。ノーラが乱入してなければ、あの時私はそう言っていた。

 そんな自分を想像したら、また顔が熱くなってきたしまった。



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