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第二話 一才の誕生日&この世界について

一才です

 

 一才の誕生日になった。

 この世界の貴族は8、16歳の誕生日を盛大にパーティーを開催して祝うのが一般的のようだ。

 ちなみに、成人は16歳。


 というわけで、この世界だと今日の俺を祝う文化はない。

 しかし、俺が生まれた家は優しいのか、ただ裕福だからなのか、一歳の誕生日でも家族全員が集まって祝ってくれるようだ。



 家族が全員集合ということで、今日初めて知る家族の情報が多くあった。

 そしてなにより重要な、俺の「レオ」という愛称じゃない正式な名前を知ることができた。


 俺は「レオンス・フォースター」というらしい。

 なかなか、かっこい名前じゃない? 響きがかっこいいから、結構気に入っている。


 そして、家族は姉の他になんと兄が2人もいた!


 一番上の兄が「イヴァン・フォースター」8才。

 父さんに似ていて、体格が良く顔も良し。


 二番目の兄が「アレックス・フォースター」7才。

 こちらは母さん似なのか体は細いが、知的なイケメンだ。


 そして、一応姉と両親の名前。

 姉が「ヘレナ・フォースター」4才。

 父が「ディオルク・フォースター」28歳。

 母は「カーラ・フォースター」25歳。


 あ、それと、見た目の補足だが、一番上の兄と姉が赤毛で二番目の兄が黒髪だ。

 ちなみに、最近やっと鏡を見せてもらって、俺は黒髪であることを知った。


 まだ赤ん坊だから絶対とは言えないけど……、姉や兄たちを見ていると俺もイケメンになれる気がしてきた。


 そして現在、父さんが来ないので普段俺と会えない二人の兄が俺に話しかけている。


「はじめましてレオ。おれはイヴァンだ」

 まず、一番上の兄が非常に大きな声であいさつをしてきた。

 普通の赤ん坊なら、この声量にびっくりして泣きだしてしまうだろう。

 まあ、俺は泣くなんて恥ずかしいことはとっくに卒業しているんだが。


 そんな脳筋の長男に対して、二番目の兄は……。

「僕はアレックスだよ」

 非常に優しいあいさつだった。

 やはり、知性を感じる見た目をしているだけある。

 まだ小学校に入りたての歳だというのに、気配りができて偉いじゃないか。


「レオは黒髪か……良かったなアレックス。仲間が出来たぞ」


「うん、そうだね。僕だけが兄弟の中で一人だけ黒髪だったから……やっと仲間が出来た」

 そう言って、アレックス兄さんが俺の頭を撫でてくれた。

 なるほど、髪の色を気にしていたんだな。

 この世界では、確かに黒髪はめったに見ない。今のところ、父さんとアレックス兄さんだけだ。

 もしかすると、父さんはどこか遠くに故郷があったりするのかもしれないな。


「遅れてごめん」

 父さんの故郷について考えていると、タイミングよく父さんが部屋に入って来た。


「大丈夫よ。今イヴァンたちが、レオにあいさつしていたところだから」

 慌てた様子の父さんに対して、微笑ましく俺たち兄妹を眺めていた母さんが優しく父さんの手を取って椅子に案内した。


「それは良かった。おお、子供たちがみんな大きくなってしまったな」

 安心したように椅子に座って俺たちに顔を向けると、またすぐに立ち上がってしまった。


「イヴァン、剣の鍛錬は怠ってないか?」

「アレックスは学校楽しいか?」

「ヘレナはそろそろ学校が始まるな」

 一人一人、子供たちの頭を撫でていく。


 そして、俺の前に来ると思いっきり俺の体を持ち上げた。

「レオ! 会いたかったぞ!」

 だから、普通の赤ん坊だったら泣き喚いているからな?

 赤ちゃんはもっと丁寧に扱え! まったく……この親にしてこの子ありだな。


 俺を抱っこして、満足するとやっと父さんが席に着き、俺たちも席に着かされる。

 全員が席についたのを確認すると、父さんが皆の顔を見渡す。

「じゃあ、始めるか。せーの」


「「「「「レオ誕生日おめでとう!」」」」」

 父さんの掛け声に合わせて、全員が誕生日を祝福してくれた。

 いや~。なんか、こうして皆に誕生日を祝われると、改めて自分がこの世界に転生したことを実感するな。


「よし。それじゃあ、皆でご馳走を食べよう! レオは、雰囲気だけ楽しんでくれ」

 まあ、まだ一歳だからね。

 言われたとおり、雰囲気と匂いだけでも楽しんでおくとしよう。どうせ、あと二、三年もすれば自由に飲み食いできるんだから羨ましいと思ったりなんかしない。

 うん。決してしない。鳥の丸焼きが……など思ったりなんかしていない。


「ここのところ領地周りで忙しかったからみんなに会えなかったけど、やっと終わったからこれから毎日会えるぞ」

 分厚いステーキを飲み込んでから、父さんが嬉しそうに言った。

 子供ずきな父さんの姿は、とても好感が持てる。俺もこんな父親になりたいな……。

 まあ、あと二十年以上は後の話なんだけど。


「それは良かったね。でも、僕とイヴァン兄さんは学校があるから明日には帝都に戻っちゃうよ」


「なに!? もう帰ってしまうのか……まあ、仕方ない。今日会えただけでもうれしいよ。明日、気をつけて帝都に帰るんだぞ?」


「「うん」」

 父さんの温かい言葉に、二人の兄は元気よく返事した。

 本当にこの家は幸せすぎる。貴族ってなんかこう……もっとギスギスしているイメージがあった。

 兄弟どうしで跡継ぎ争いとかしないの? 俺、兄たちからしたら新たな政敵なんだけど……こんな温かく誕生日を祝って貰ってもいいんですか?

 うん……まだ、七歳と八歳だからか? 成長していけば……。

 いや、この父を見ているとそうはならなそうだな。



「ねえねえ。レオはどんな子なの? 普段は何をしているの?」

 俺が兄たちの成長について考えていると、話題が俺についてになっていた。


 アレックス兄さんの質問に母さんが答えようとして、姉ちゃんが先に答えた。

「えっとね。レオはね、とってもかわいくてかわっているの!」


「変わっている? どう変わっているんだい? 見た目は普通に大人しそうで賢そうだけど……?」

 アレックス兄さんが俺の顔をまじまじと見ながら首を傾げる。

 え、賢そうに見える? もう、アレックス兄さんには負けるよ~。


 アレックス兄さんの嬉しい言葉に心の中で照れていると、母さんが姉ちゃんの言葉に細くを入れた。

「ああ、それはねハイハイできるようになったと思ったら家の中を毎日動き回って、書斎で魔法についての本を見つけたら気に入っちゃったらしくて、それからはずっと部屋にこもってメイド達に読ませてたの」

 そう言って、「ね? 変わってるでしょ?」みたいな顔をしてみせた。

 まあ、これに関しては俺も異議なしだ。俺は生まれた時から異常な存在だ。俺みたいな赤ん坊が普通なんて言われたら、この世界に恐怖を感じるよ。


「へ~。一歳で魔法に興味があるんだ。それは嬉しいな。大きくなったら、僕が魔法を教えてあげようかな~」


「レオ、確かに魔法は面白いけど剣の方がもっと面白いぞ。後で、兄さんの剣を見せてやる!」

 どうやら、アレックス兄さんも魔法が好きなみたいだ。もしかすると、将来は見た目を裏切らない凄腕の魔法使いになりそうだ。そうなったら、是非魔法を教えて貰いたい。

 それに比べて、イヴァン兄さんは絵に描いた脳筋だな。こちらも、将来は見た目を裏切らない剣の使い手になっていそうだ。痛いのは嫌だけど……強くなることに越したことはないし、剣を振れる体になったら剣も教わろうかな。


「ハハハ。そしたら、レオは魔法も剣も全てができる完璧な人間になってしまうかもしれないな~」


「ふふふ。そうね~。これで、適性魔法が良かったら言うことなしだわ」

 母さんの何気ない言葉にドキッとしてしまった。

 言われてみれば、これまでこつこつ努力してきたけど……適性魔法が悪かったらこの努力は無意味になるんじゃないか?

 ま、まあ、まさかこの俺が適性魔法に恵まれないなんてことはないでしょ。

 そうそう。そんな無駄なことは考えないで、また今日から地道に努力していくぞ!


<4年後>


 遂に、俺は5才になった。

 あれから毎日ほとんど家から出ず、一歳の間は魔力鍛錬か書斎の本を読んでいた。


 そして、話すことが出来るようになってからは家族やメイド、執事にこの世界や自分が住んでいる国、フォースター家について質問して回った。

 もう、変な子供扱いされてもお構いなしだ。そんな心配を上回るほど好奇心が俺の中で膨れ上がっていた。

 だって、二年以上も情報を得る手段が狭められていたんだよ? 手段が増えたなら、すぐに使わない手はない!


 初めのうちは簡単な質問をした。まだ、口が回らなくて、簡単な言葉しか話せないからね。とりあえず、できる質問からした。

 当然、メイドたちはそんな俺の可愛らしい質問に笑顔で教えてくれてた。

 しかし、段々と可愛くない……細かくて難しい質問になると、大人たちは答えるのが難しくなり、少しずつメイドたちから距離を取られるようになってしまった。

 自業自得なのは承知しているんだけどさ。本を読んでいてぱっと顔を上げた時に誰もいない部屋を見渡すのは、心にくる。

 これでも、まだ幼児なんだからね? 一般的な子供なら、心に深い傷ができるぞ!

 まあ、もぢ俺が一般的な子供だったら、こんなにメイドたちに避けられるようなことにはならないんだけどね。


 そんな普通じゃない俺にも、救世主とも呼べる存在が一人だけいた。それは、我が家の執事長をしているセバスチャンだ。

 セバスチャンは、どんな質問にも真摯に答えてくれた。


「疑問に思ったらすぐに解決するのです。知識は持てば持つほど、人生を豊かにしていく力にしてくれます。だから遠慮せず私を使って疑問を解決してください」

 これは、セバスチャンの決まり文句だった。この言葉のおかげで、俺は遠慮無く何度も質問に行けた。

 彼がいなかったら、俺は今の半分も知識を得ることはできなかったはずだ。

 本当に感謝している。血は繋がっていないけど、俺の爺ちゃんにしてしまいたいくらいだ。



 そんな心優しい執事から得た知恵は語りきれないほど多いわけだが、その中でも一番伝えたい情報がある。

 それは、予想はしていたけど……それが本当にいたら非常に困る、そんな存在の情報だ。

 そう、魔物や魔王といった人類の敵となる存在だ。


 この世界には、人間が住む人間界と魔王のいる魔界の間に大きな山脈とそれを挟むように大きな森がある。

 そこには凶暴な魔物やドラゴンがたくさんいるので魔の森、死の山脈と呼ばれているらしい。

 そんな恐ろしい森や山があるおかげで魔王は攻めてこないらしいが……、この森から出てくる魔物によって毎年多くの人が亡くなっているようだ。

 


 あと、魔王がいるのだからエルフも獣人もいる。

 それぞれ、国や里があるのだが、ほとんどは人間に混ざって暮らしているそうだ。

 まだ、生まれてからエルフにも獣人にも会えていないが、いつか会ってみたい。


 そして、魔物や魔王、エルフの次に大事なのが人間についてだ。

 人の一番の敵は人だ。これは、この世界でも変わらないみたい。

 俺たちが暮らす人間界には、アルバー王国、ベクター帝国、ガルム教国と呼ばれている三大国家ある。


 アルバー王国とベクター帝国は戦争は起こさないが仲がとても悪く、ガルム教国はどちらも敵にしないため中立を宣言している。

 いつ戦争してもおかしくないが、戦争をしかけると漁夫の利を教国に取られるかもしれない。

 そんな、いつ崩れるかわからない均衡状態の中で人間界は成り立っているそうだ。


 俺が住んでいるのはベクター帝国。

 特色は魔法国家であり、魔法の実力があれば成り上がることができ、帝国にある魔法学校は世界中から学びに来るほどレベルが高い。

 ただ、魔界との境界線である巨大な森と接してるため、ドラゴンやモンスターによる災害がたびたび起こってしまう。

 つまり、魔法が最先端で下剋上ができる、俺好みの国だ。


 そんなベクター帝国の最も東に領地を持つのが、我がフォースター家だ。

 フォースター家のルーツは……なんと、勇者だ。

 しかも、俺の父さんはまだ二代目当主。つまり、俺のじいちゃんが初代フォースター家当主にして勇者ということになる。


 勇者が貴族になるまでの話は、この世界では知らない人がいない物語になるほど有名で、俺も読んだ。


「50年ほど昔、魔王が突如三大国の王達の前に現れ宣戦布告をしました。それから魔物の数が増えていき、どんどん魔物が強力になっていきました。

 それに焦った三国は、協力して魔王を倒すことを決めました。

 まず、王国の王女が異世界から勇者を召喚し、教国の聖女と帝国の魔導師と一緒に旅をさせました。

 勇者は仲間の助けを借りながら、次々と強力な魔物を倒していきました。そして、経験と力をつけた勇者は、魔の森にいた魔王を倒しました。

 しかし、魔王を倒した勇者は王国の権力争いに巻き込まれ、恋をしていた魔導師のいる帝国に亡命しました。

 それから、勇者は魔導師と結婚し、皇帝から侯爵を叙爵されます。そして、自らが望んだ魔の森と接している領地を授かりました。それからは、隠居するまで二人の子供を育て、災害級の魔物やドラゴンから帝国を守りながらも平和に暮らしましたとさ」

 これが物語を要約した内容。めっちゃ物語みたいでかっこいい!

 まあ、もちろん物語だから誇張されているんだろうけど……勇者が俺のじいちゃんか……。


 あ、まだ勇者(じいちゃん)は生きてます!

 俺が生まれた頃に、国を守り続けた褒美に公爵に叙爵されて帝都で隠居生活しているとか。


 ちなみに、これから会いに行くらしい。

 適性魔法を調べるついでに……。


帝国の貴族は上の階級から公爵→侯爵→伯爵→子爵→男爵→準男爵でこの話は進みます(大公はない予定)

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― 新着の感想 ―
[一言] ベクター帝国に住んでいる事は記載がありますが魔の森に隣接しているとだけしか記載が無いです。 公爵家ならかなりの大都市になっているはずですが。 今後登場するかもしれませんが地図も欲しい所です…
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