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第二十三話 魔王城防衛戦

 

「長老ってどんな人なんだ?」

 転がり込んできた魔族が長老とやらを呼びに行っている間に、俺は長老について聞いてみた。


「ただ長く生きているだけの無能な魔族たちのことだ。力がないくせに、俺のやることに一々文句を言ってくる連中のことだ」

 へえ。弱肉強食の魔界でも、そんな人たちがいるんだな。


「へえ。ちなみに何歳くらい?」


「細かい歳は知らないが、千歳は余裕で超えているらしいぞ」


「魔王よりも年上か……」

 それなら、確かに偉そうにしてしまうかもしれないな。


「本当にただの老いぼれだぞ? ただ、あいつの信者みたいなやつが厄介でな……」


『ドッカ~ン!』


「何の音?」


「爆発音だな」

 たぶん、どこか爆発してそこから侵入してくるつもりなんだろう。

 相手は魔界最強の魔王を倒すつもりらしい。


「チッ。あいつら、城に入ってきやがった」

 空間魔法で城の中の状況を把握できるのか、グルは少し目を瞑ると苛立ち始めた。


「ちょっと。子供たちが危ないわ!」

 そうだ。今すぐ子供たちの安全を確保しないと!


「大丈夫だ。すぐに呼び戻す」

 そう言って、グルが上に向けて手を伸ばすと、天井から子供たちが降ってきた。


「うわ! え? あれ? ここは?」


「あ、お母さんたち……」


「ちょっと緊急事態が起きたの。皆、私と一緒に部屋の端に寄ってよ?」

 混乱している子供たちを余所に、お母さんたちは冷静に子供たちを入り口から一番遠い場所に誘導し始めた。


「え? 緊急事態? 何があったの?」


「ちょっと怖い人たちが城に入ってきちゃったみたい。ほら、皆こっちよ」



「もうすぐ、あいつらがここに到着する。正面と下……右、それから上だ」

 子供たちが移動している中、俺たちは防衛の作戦を立てていた。

 四方向から攻められるということは、数を四等分しても十分なほどの人数がいるということ……。

 しかも、相手は人族よりも戦闘力が格段に高い魔族だ。

 これは……いくら、このメンバーだからって油断してはいけないな。

 最悪、俺も魔法を使うことを覚悟しておかないと。


「了解。正面は全て俺に任せてくれ」


「それじゃあ、俺は床を金属魔法で硬くしておくよ」


「じゃあ、俺は天井を別空間に繋げておく。あいつらが上から突入したら、そのまま亜空間に閉じ込められる」


「俺は魔銃でそれぞれの援護だな。右はヘルマン、お前に任せた」


「はい。任せてください」



「建物中じゃなかったら、私の魔法で一掃しているんだけどね……」

 銃を構えながら長老が到着するのを待っていると、子供たちのところに行っていたシェリーが杖を持ちながらやってきた。


「まあ、このメンバーならそこまで心配する必要はないだろ。それより、子供たちの傍にいた方が良いんじゃないか?」


「大丈夫よ。あっちはベルとルーがいるもの。大人数が相手なら、私の魔法が必要でしょ?」

 まあ、あの二人にリーナもいるし、そこまで心配する必要ないか。

 あっちに魔族の攻撃が飛んでいってしまった時のことを考えるのも大事だけど、こっち側で人数差に押し負けないことも重要だよな。


「シェリーが来れば、百人力だ」


「え? 百人程度なの?」


「それじゃあ、千人力だな」


「うん。私はそれくらいよ」


「もうすぐ来るぞ! 5……4……3……2……1!」


「この似非魔王が! 天罰を下しに来た!」

 グルのカウントダウンの通り、魔族たちが正面と右から壁を突き破りながら侵入してきた。

 下からもゴツンゴツンと鈍い音がするけど、フランクの魔法をどうにかできる奴はいないみたいだ。


「ふん。老いぼれにすがる雑魚どもが今更なにを言っているんだ! やってしまえ!」


「おう!」

 グルの号令に、全員が一斉に攻撃を開始した。


『ぐあああ!』

 一瞬にして、最前列にいた魔族たちが倒れていった。

 それを見て二番目、三番目が部屋に入るのを躊躇し始めた。


「くそ! どうして人族ごときがこんなに強いんだ?!」


「長老! 聞いてませんよ!」


「うるさい! ここに来たのなら覚悟を決めろ! 負ければ、どうせ待っているのは死だ!」

 どうやら、長老が後ろの方に控えているようだ。

 それと、長老が連れてきた魔族たちは、そこまで長老に忠誠を誓っているわけではなさそうだ。

 これなら、半分も倒せば戦意を喪失して逃げていくかもな。

 そんなことを思いながら、足の止まった兵たちの頭を撃ち抜いていく。


「ちくしょう! どうせ死ぬなら戦うぞ! 人族ども! 魔族の力を思い知れ!」


「人族を舐めるなよ! オラアアア!」

 止まっていても死ぬことを理解した魔族たちが覚悟を決めて突っ込んでくるも、それに呼応するように雄叫びのような声をあげながら剣を振るカイトに倒されていった。



 SIDE:ロゼーヌ

 急な魔族の襲撃に驚きながらも、私たちはそれ以上に自分の父親たちの強さに驚いていた。

 最強種族の魔族が手も足も出てないじゃない……。この人たち、知っていたけど化け物だわ。

「凄い……お父さん、あんなに強かったんだ」


「師匠も凄い。勇者様に負けてないんじゃない?」

 そうね。勇者とは違って、何も特別な魔法を持っているわけでもないのに、一方向の敵を全て一人で抑えているなんて、とても普通じゃない。

 お父さんが師匠をあそこまで評価していのも納得だわ。


「お姉ちゃん……これ、大丈夫なの?」


「大丈夫だと思うわ。お母さんたち……特にルー母さんがいればもしものことはないと思う」

 ルー母さんが本気を出せば、一人だけで全ての敵を一掃できるんだから。

 コピーとはいえ、破壊士はそれくらい強いのよ。


「そうなんだ」


「まあ、私の結界魔法もあるし、もしものことはないと思うわ」


「血の匂い……気持ち悪いね」


「そうね」

 この匂いは、慣れないとつらいわ。


『グオオオ!』


「あれ……凄く強そうだけど、大丈夫かな?」

 他の魔族と比べても一際大きな魔族が雄叫びを上げて入ってきたのを見て、ネリアがぎゅうと私を掴む力を強めた。


「あれくらいなら問題ないわ」

 そう言っている間に、シェリー母さんの魔法が強そうな魔族の頭を吹っ飛ばしてしまった。


「お母さんの魔法……知っていたけど、やっぱり凄いね」


「そうね。あそこまで綺麗に魔法を操れる人は、エルフにもいないわ」

 曲線を描くように操って、建物が壊れないようにするなんて芸当……間違いなくシェリー母さんしかできないわ。


「ふ~ん。エルフにもね……」

 別に、もうそこまで隠してないから、一々気にしなくても良いのに。

 などと思っていると、背後から魔力の反応がした。


「あ、これはまずいわね。皆! 壁から離れて!」

 私は、慌てて皆を囲むように結界を張った。


『ドッカン!』

 なんとか爆発する前に結界が間に合い、結界は割れてしまうも皆は無事で済んだ。


「床は無理だったが、やはり壁は開けられるみたいだぞ!」

 やっぱり、魔族が背後に回っていたようだ。

 次々壁を壊しながら魔族たちが入ってきた。


「くそ! 子供たちが!」


「こっちは私たちに任せてください! 後ろは私が行きます!」


「それじゃあ、私が左ね!」

 お父さんたちが心配するも、ベル母さんとルー母さんが戦闘を始めると、あっという間に魔族たちが倒れていった。

 ルー母さんは当たり前として……ベル母さんが凄すぎるわ。

 手だけしか変身していなのに、どうしてそんなに速く動けるのよ。

 魔族たちですら、目で追えていないじゃない。


「チッ。獣人と魔族がいるのか……。おいお前ら! 早く人質を確保しろ!」


「いや、どれが魔王の子供かわからないんだ!」


「馬鹿! そんな選んでる暇があるか! 一番近くの子供を引っ張ってこい!」

 それは困ったわね……。元々、私たちは安全の為に一番壁際に座っていた。

 ということは……今、一番魔族に近いのは私たちなのだ。


「了解。嬢ちゃん、痛くするけどごめんよ」

 そう言って、一人の魔族が見えない手……魔力の手でネリアを掴もうとしてきた。


「や、やめて……」

 普段から魔力の鍛錬を欠かしていないネリアにも見えてしまったようで、ネリアは自分に向かってくる手に体を震わせていた。


「大丈夫。結界があるから」

 私の結界は、どんな物も拒絶するのよ。

 と思っていたら、一人の子が私たちの前に出てしまった。


「やめろ!」

 魔王の子……ネリアに一目惚れしてしまった悪ガキだった。


「邪魔するなよ。だが、人質なら誰でも良いって言われたからな。許してやる」


「ちょっと! 何をしているのよ!」

 自分の代わりに捕まってしまったのを見て、ネリアはさっきまで震えていることも忘れて魔族の少年に怒った。


「うぐ……ネリア……逃げろ……」

 へえ。悪ガキだと思っていたけど、格好いいところあるじゃん。


「あの馬鹿……」

 ネリアも、あんなことを言われてしまえば怒る気が失せてしまったようだ。



「おら! お前たち! こいつの命が惜しかったら今すぐ武器を捨てろ!」


「ちっ」


「ほら、どうした? 急がないとこいつが死んでしまうぞ~」

 人質を取った瞬間、元気になった男は、そう言って魔力の手の力を強めた。


「ぐあああ」


「キール!」


「ほらほら~このままだと死んでしまうぞ~」

 馬鹿ね……。ルー母さんなら、魔族の……キール以外をまとめて消すことができるのよ。

 そんなことを思っていると、私を掴んでいた手が急に震えだしたことに気がついた。


「ゆるさない……」


「ちょっとネリア? 大丈夫?」


「あの馬鹿もあの魔族もユルサナイ…………ミンナモエテシマエ」

 その時、私は焼却士がどうしてあれほど恐れられていたのかを知ることになった。



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