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第二十話 魔界の食事

 

 SIDE:ネーリア

 はあ……。魔界になんて行きたくない。お家で引き籠もっていたい……。

 魔王が物語の魔王とは違うとか、魔王とお父さんが親友とか知らないわよ。

 人族が何年も踏み入れることができなかったのよ? そんな場所が安全なわけがないじゃない!

 そんな文句を言っても、まったく聞いて貰えず、今はがっちりお母さんに捕まってしまっている。

「もうすぐ来るって。話し込んじゃったみたい」

 どうやってお父さんと連絡を取ったのかは知らないけど、もうすぐお父さんがこっちに戻ってくるらしい。

 はあ……今すぐにでも逃げ出したい。


「こっち来てから話せば良いのに」


「フランクさんのお子さんとは初対面なんだから、可愛がってしまうのもわかるわ」


「フランク殿は、男一人と女二人だったか?」


「はい。そう聞いてます」


 そんな話をしていると、お父さんが戻ってきた。

「遅れてごめーん!!」


「別に大丈夫よ」


「やっぱり可愛がっていたみたいだな」

 そう言う勇者の目線の先には、ぬいぐるみを持った女の子たちがいた。

 あれは、最近お父さんが泣いた子を泣き止ませる時に使うぬいぐるみだわ。

 上の子は、もう泣くような歳でも性格でもないから、下の子が泣いちゃったのかな?


「ごめんなさい。下の子が愚図っちゃって」

 やっぱりね。私の推理に狂いはないわ。


「そうだったのですか。良くあることですから、気にしなくて大丈夫ですよ」


「それじゃあ、魔界に向かうか。皆、俺に……いや、流石に一回では無理か」

 お父さんが転移を使おうとすると、全員が自分に触れないことに気がついたみたい。

 ちょうど良かった。人数がオーバーしているなら、私を置いていって!


「それじゃあ、何回に分けないとね」

 まあ、そうなるよね……。


「いや、俺が来たから問題ないぞ」

 え?


「お。グルなら、全員を一気に運べる?」

 あの人……グルっていうんだ。角が生えているし……ルー母さんと同じ魔族よね?

 お父さんみたいに、転移のスキルを持っているのかな?


「ああ。問題ない」

 しかも、お父さんの転移よりも高性能みたい。


「じゃあ、お願いするよ」


「ああ、任せておけ。この部屋にいる人で全員か?」


「ええ。全員ここにいます」


「わかった。少し気持ち悪くなるかもしれないが、我慢してくれ」

 グルさんがそう言うと、急に視界が移り変わりはじめた。

 うう……これ、気持ち悪い。



「ここが魔王城?」


「そうだ。俺の城だ」

 グルさんの転移は、お父さんより高性能なんて嘘だわ。

 あれは下位互換。お父さんは、どんなに遠いところに行っても、絶対に気持ち悪くならないもん。


「お待ちしておりました。レオンス様、お久しぶりです」

 魔王城に来ると、二人の女性といかにも悪ガキそうな男子二人がいた。

 そして、今お父さんに挨拶した人は角が生えておらず、私たちと同じ人族みたい。

 なんだ。ちゃんと人でも住める場所なのね。少し安心した。


「エステラ、元気にしてた?」


「はい。おかげさまで」


「それは良かった」


「紹介する。こっちの大きいのがキール。小さい方がエルだ」


「へえ。エルくんはエステラにそっくりね」


「はい。よくそう言って貰えます」


「それじゃあ、次はうちの子たちを紹介させてもうおう。長女のマミ、長男リキト、次男のユウトだ」


「ボードレール家は、長女のエリーネと次女のフィーネ。長男のジークだ。エリーネとフィーネがアリーの子供、ジークがジョゼの子供だよ」


「うちは多いから産まれた順番に紹介していくぞ。長男のカインスから……ロゼーヌ、ノーラ、リル、ネーリア、ミアーナ、ルーク、ルルだ。カインスとネーリアがシェリー、ロゼーヌとミアーナがリーナ、リルとルルがベル、ノーラはエルシー、ルークはルーの子だ」


「レオだけ子供の数が違うな」

 そうよね。こんなに連れてくるべきじゃなかったんだわ。

 代表でカイン兄さん、ノーラ姉さん、リル兄さんの三人だけで十分だったのよ。


「この下に、まだ四人もいるんだろ?」


「この前三人産まれたから、七人だね」


「全部で十五人。凄いわね」

 何が凄いのか。ただ、お父さんの女癖が悪いだけだと思う。


「それぞれの紹介も終わったことだし、昼食にしないか? 最高の料理を用意させて貰ったぞ」


「魔界の料理は初めてだなー。どんな料理なんだ?」


「どんな料理……説明が難しいな。見た目は多少悪いが、味は保証するぞ!」


「へえ……」



「多少悪い……ね」

 昼食の席に着き、出された料理に私は思わずそんな言葉が出てしまった。

 毒々しい紫色のスープに、大きなカエルの丸焼き……よくわからない虫が混ぜられたサラダ。

 どれも美味しそうな見た目をしていなかった。


「ネリア、食べないの? めっちゃ美味しいぞ?」

 私がスプーンを持って動けずにいると、隣に座っていたルークはもうほとんど食べてしまっていた。


「え? あなた、もうそんなに食べちゃったの?!」


「確かに、家のご飯の方が美味しい気もするけど、そんなに変わらないよ? どうした? 何か嫌いな物があったのか?」


「ううん……そういうわけじゃない」

 嫌いかどうかなら、全て嫌いな食べ物よ。

 こんなのって言ったら申し訳ないけど……とても食べ物に見えないんだもん。


「そうか。食べられないのがあったら言ってくれ。俺が隠れて食べてあげるから」


「それじゃあルーク、私のこれ食べて」

 反対隣に座っていたお姉ちゃんが悪びれもなく、虫のサラダをルークに差し出した。


「え? 良いの? いっただきまーす」

 ルークは、それを嬉しそうにムシャムシャと食べ始めた。

 嘘でしょ……。何の躊躇もなく虫を口の中に放り込んでいるわ。


「お姉ちゃん……出された物は自分で食べないと……」


「別に無理して食べる必要はないでしょ。ネリアも嫌ならルークに食べて貰いなよ」


「何でも言ってくれ」


「うう……それじゃあ、これお願い」

 私は、とりあえずカエルの丸焼きをルークに差し出した。


「いいの? これ、一番美味かったんだよね~」


「こら、出されたものはちゃんと自分で食べないとダメだぞ」

 ルークがあと少しでカエルに手をつけようとした瞬間、お父さんに気づかれてしまった。

 あと少しだったのに……。


「あー、見つかっちゃった」

 残念そうにしながらルークがカエルを私に返してきた。

 うう……これ、私が食べないといけないの?


「見た目は怖いけど美味しいから、食べてみよ? ほら、あーん」

 お母さんが隣にやってきて、カエルを小さく切り分け、私の口に運んできた。

 最初は抵抗するも、食べるまで口の前にいそうだったから、素直に口に入れた。


「……」

 それからは、黙って目を瞑って急いで噛んで飲み込んだ。


「どう美味しいでしょ?」


「うん。美味しい……と思う」

 カエルの見た目じゃなければ、普通に食べられるくらいには美味しかった。

 見た目がカエルじゃなければね……。



 それから、カエルの顔だけルークに、虫はお父さんに食べてもらい、カットされたカエルの肉と紫色のスープは自力で完食した。

「やっぱり……おいしさと見た目は別問題だと思う」


「私もそう思うわ」


「お腹に入っちゃえば見た目なんて関係ないでしょ」

 お腹に入れるまでが大変なのよ。


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