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第十八話 言われたらすぐ行動

 

 クリフさんの助言を受け、俺は帰ってきてすぐ行動に移した。

「フレアさんが信頼できる上位四人の文官を用意して」


「わかりました。なにかまた新しいことを?」


「いや、もう俺が四つの街を見て回る必要もないと思ってね。どこの都市もこれ以上手を加える必要もないくらい順調だし、後の管理は人に任せてしまおうと思ってね」

 この八年間子供たちとの時間をあまり取れなかったのは、四つの都市を行ったり来たりして、全部一人で見て回っていたからだ。

 まあ、最初の方は不安定でトラブルだらけの土地だったから仕方ないとして……。

 安定した今でも、これを続けているのはとても非効率である。

 よって、俺はもう四つの都市に関しては報告を聞くだけにすることにした。


「それは良い判断だと思います。それなら、信頼できる部下にそれぞれ管理を任せますね」


「うん。よろしく頼むよ」


「……帝都で何かあったのですか?」


「皆に頑張りすぎだって言われたんだ。それで、俺の領主としての仕事は最低限達成できたし、後はそこまで頑張らなくて良いかなと思ったわけ」

 公爵家になった時に任された西部の開発はもう十分成し遂げただろう。

 あとは、どこの都市も勝手に大きくなっていくはずだ。


「最低限なんて……レオンス様は最高の仕事を成し遂げたと思います」


「まあ、そこら辺にいる貴族の数倍は働いた自信はあるな」

 最高かどうかはわからないけど、代々親の土地を引き継いでいるだけの貴族たちの一生分以上の仕事はしたと思う。


「はい。レオンス様は十分働いています。もっと貴族らしく怠けても良いくらいです」


「怠けるつもりはないけど……そうだね。少し、休みは増やそうかな」

 子供たちとの時間を増やすためにね。



 そして、その日の午後は自主的に休みにして、子供たちの剣術を見に来た。

「あれ? お父さん、こんな時間にどうしたの?」

 俺が稽古場に来ると、子供たちは珍しいものを見るような目をしていた。

 はあ、この反応を見ただけで、どれだけ俺が普段子供たちと交流していないかわかるな。


「ちょうど仕事が一段落してな。少し遊びに来た」


「そうなんだ。ねえ、お父さん! 俺と勝負しよ!」


「お? やるか? こう見えて、俺はヘルマンの師匠だぞ?」

 そう言いながら、俺は壁に立てかけられていた剣を取った。

 師匠とか言っておきながらなんだが、もうずっと剣を触れてなさ過ぎてカインに勝てるのかすら不安だ。

 流石に大丈夫だよな? これで父親の威厳がなくなったりしないよな?


「それ本当~? 父さんが戦っているところ見たことないんだけど~」


「そりゃあ、ヘルマンみたいな強い護衛に囲まれていたら、俺が戦う必要なんてないだろ」


「そうだけど……」


「父さんがカインくらいの時は、それはもう父さんのじいちゃんの下でとても厳しい訓練を積んだだぞ?」


「父さんのじいちゃんって勇者様だったんでしょ?」


「そうだ。あの本に出てくる魔王を倒した勇者だ」

 世界中の子供たちが憧れている方の勇者だぞ。凄いだろ?


「勇者様に剣を教えて貰えるなんて羨ましいな~」


「おいおい。ヘルマンに教えて貰うことだってとても凄いことなんだからな?」


「勇者様よりも凄いの?」


「ああ。俺は凄いと思うぞ。俺のじいちゃんは努力の天才だったが、今の勇者はどちらかというとただの天才だからな。特殊な魔法があること前提の戦い方だから、参考になりづらい」

 電気魔法なんて、勇者しか使えない魔法を前提にした剣術なんて、勇者以外に使い熟せるはずがないだろ。


「そうなんだ……」


「それに比べて、ヘルマンの持っている魔法は無属性魔法だけ。誰でも努力すれば使いこなせる剣術を使う。そして、世界最強のミュルディーン家の騎士たちの中で最強の称号を持つ男だ。どうだ? 凄いだろ?」


「う、うん……。師匠って凄い人だったんだね」

 おいおい。ヘルマンは凄いんだぞ? もっと敬ってあげろよ。


「そんな大したことないですよ。上には上がいます」


「師匠より強い人っているの? お父さん?」


「いや、今の俺はヘルマンに勝てないな」

 魔力が使えない状態では無属性魔法も使えないし、俺には転移で逃げる以外の選択肢はないだろう。


「それじゃあ、誰?」


「そうだな……。身近な人だとシェリー、リーナ、ベル、ルーはヘルマンよりも強いぞ」


「え? お母さんたちが?」


「シェリー母さんはそんな気がするけど……お母さんたちが師匠よりも強いの?」

 まあ、魔法を教えているシェリー以外は、あまり子供たちに自分の強さを示す機会がないから、こう思ってしまうのも仕方ないのかもしれないな。


「ベルは特に強いぞ。昔、勇者をボコボコにしたことがあるくらいだ」


「え? ベル母さんがあの勇者様を?」

 あの性格からは想像できないよな。


「そうだ。お母さんたち、本気で怒らせたら怖いから気をつけた方が良いぞ~」


「あら、随分な物言いね」

 振り返ると、シェリーとリーナが稽古場の入り口でニッコリと笑っていた。


「え、えっと……カイン! 剣を握れ! 俺が相手してやる!」

 分が悪いと思った俺は、とりあえず弁解しないことにした。


「う、うん」


「あ、父さん逃げた~」


「逃げた~」


「うるさい。お前ら、黙って父さんの戦いを見ていろ!」



 それからカイト、ノーラ、リル、ローゼの順に相手してやると、気がついたら夕飯の時間になっていた。

「父さんってこんなに強かったんだね」

 体がちゃんと剣術を忘れないでいてくれて助かった。

 これで、俺の威厳は守れたと思う。


「だから言っただろ? これでも、若い頃はドラゴンの群れと戦ったことがあるんだ」


「それ、本当だったんだね」


「そんな嘘はつかないって」


「父さんすっげ~」

 そうだ。カイン、もっと俺を褒めてくれ。

 父さんは凄いんだぞ!


「そういえば、ドラゴンの骨がまだ残っていたはず……。見たいか?」

 しかもただのドラゴンじゃない。ドラゴンの巣に放り込まれた時に倒したボスの骨だ。

 あれはとんでもなくでかいから、誰が見ても驚くはずだ。


「見たい!」


「よし。それじゃあ、その汗を流してこい! 風呂から出たら見せてやる!」


「わかった!」



「急にどうしたの?」

 子供たちが風呂に向かったのを見届けていると、シェリーとリーナ近くによってきた。

 二人からしたら、急に子供たちと剣を振っていてどうした? という感じだよな。


「うん? ああ、もっと子供たちと関わらないといけないと思ってね」


「そう。それは良い心がけね」


「なあ……俺の子供たちはか弱くなんてないな」

 守らないといけないと思っていた存在だったけど……今日、皆と剣を交わせてわかった。

 カインだけでなく、全員がしっかりと剣を振れていた。

 ノーラが俺の初撃を綺麗に受け流したんだぞ? 驚きすぎて、動くのを忘れて危うく負けそうになってしまったよ。


「何を言っているの? 当たり前じゃない。だって、あなたと私たちの子供なのよ? 強くならないわけがないじゃない」

 言われてみればそうだな。もしかしたら、俺たちよりも強くなるかもしれないんだ。

 俺は必要以上に心配していたのかもしれないな。


「はあ、子育てって難しいな」


「今更?」


「まあ、そうだね」

 シェリーたちからしたら、そりゃあ今更だろ。

 はあ、これから頑張って子育てというものを学ばないと行けないな。



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