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第十七話 義兄の助言

 

 カインの誕生パーティーも無事終わらせ、俺は帝都に来たついでに皇帝であるクリフさんのところに顔を出していた。

 子供たちの適性魔法を調べる時とか、帝都に来る度にクリフさんと会っているからそこまで久しぶりというわけでもないかな。

「やあ、誕生パーティーお疲れ様。僕も行きたかったんだけどね」


「それは流石に仕方ないですよ」

 カイトたちが参加できたのも、皇帝と会談するついでだったから許されたけど、普通は一国の王がたかが貴族の誕生パーティーに参加したらダメだって。

 主役が誰になるのかわからなくなるし、いくら皇族だからと言っても一つの家だけ贔屓しても良くない。


「甥のパーティーだから行けるかな? とも思ったんだけど、余計な反感も買いたくないから諦めちゃった」


「そうしてください」

 悪感情を向けられるのは俺なんですから。


「カインくんはあの素直な男のまま育ってくれている?」


「はい。シェリーに似て、ちょっと豪快に物事を解決しようとするところはありますけど、弟や妹には優しく接していますし、正義感のあるいい男に成長してくれていると思います」


「うん……素直な子ほどどうなるかわからないからね。これからも、ちゃんとカインくんの相手はしてあげるんだよ?」


「もちろん。大丈夫ですよ」


「本当? ローゼちゃんとネリアちゃんだけ注意していたらダメだからね?」


「どうして……それを?」

 クリフさんには、そのことをまだ言ってなかったよな?

 というか、俺が転生者なのも知らなかったはず……。


「僕の鑑識魔法を侮ってはいけないよ? 彼女たちからは、君と似たような雰囲気を感じる」


「そうだったんですか……」

 鑑識魔法……そこまでわかるのか。正直、侮っていた。

 鑑定に負けないくらいの性能がありそうだな。


「でも、君と同じということは、二人に関してそこまで親が関わる必要はないってことだ。君だってそうだろう? 君は、親からの庇護よりも自由を求めた。きっと、彼女たちもそうだと思うんだ」


「なるほど……」

 それは確かにそうだな。あの二人は、大人が関わろうとするのを嫌がることが多い。


「今の君を見ると、気負いすぎな気がするんだよね。彼女たちは、自分の力だけでも生きるだけの知恵がある。そうだろ?」


「……はい」

 クリフさんは、どこまで俺を見透かしているんだ?

 俺が二人のことで悩んでいることまでわかってしまうとは。


「僕は、あの二人よりもカインくんの方が道を踏み外しそうで怖い。魅了や催眠魔法は怖いよ? 歴代の皇族で何人も人を自由に操れる甘味の虜となり、道を踏み外していった人たちがいるんだから」


「……そうなんですね」

 ローゼとネリアよりもカインの方が……か。

 信じ難いけど、ここまで俺のことを見透かしているクリフさんが言っているのだから、たぶんそうなる可能性が高いのだろう。


「シェリーは小さいときから君という何よりも大事な人がいたから、そんなものに興味なかった。けど、カインくんは無限の可能性に満ちあふれている。人生、いつ挫折を味わうのかはわからない。その時、彼は今の正義感を貫き通せるかな?」


「それは……」

 貫き通せると信じたいけど、人生は何が起こるのかわからないものだ。

 これから、何か大きな壁に当たった時に、果たしてカインは催眠という誘惑に勝てるのだろうか?


「別にカインくんだけじゃない。今日僕が君に言いたかったのは、もっと他の子にも目を向けるべきだと思うってことだ。君の師匠みたいな失敗はしたくないだろ?」


「はい……そうですね」

 そういえば、ゲルトだって最初は真面目な魔法具の研究者だったらしいじゃないか。

 人生何があるかわからない。本当にそうだな。


「今の君に必要なのは、子供との時間だと思うよ。もう、君の成長期は終わったんだ。そろそろ次の世代に目を向けても良いんじゃないか?」


「……次の世代」


「そう。君にはたくさんの才能に満ちあふれた子供たちがいるじゃないか。あの子たちの才能を開花させてあげることが、今の君が一番やるべき仕事だと思うんだけどな?」


「はい……そうですね」


「とまあ、偉そうなことを言ってみたけど、僕は知っての通り一人も子供がいない。だから、最後の判断は君の意思に任せるよ」


「いえ、とても参考になりました。そうですね。師匠にあれだけ警告されていたのに……はあ、俺は馬鹿だな」

 結局、子供たちのことをちゃんと見てあげられていなかった。

 師匠がいたら、頭をぶっ叩かれていただろうな。


「今ならまだ間に合う。僕も影ながら応援しているから、頑張って」


「ありがとうございます」


「僕としては、未来の皇帝ができるかぎり多くレオくんの経験や知恵を受け継いでいることを願うよ」


「そうですね。クリフさんが選ぶのを困ってしまうくらい、全員を立派な大人に育ててみせますよ」

 そうだな。クリフさんの鑑識魔法を持ってしても選べないくらいの子たちに育ててみせようじゃないか。


「それは楽しみだね。でも、もう誰にするかは決めているから、その心配はないよ」

 もう決めてるの?


「え? 誰ですか?」


「それを言ったらつまらないでしょ。そうだな……これは宿題だね。誰が一番皇帝に向いているのか、たくさん子供たちと関わって見極めてみな」

 うん……今の段階ではまったくわからないな。

 カインはどっちかというと騎士タイプだし、リルは頭が良いけど弱気なところがある。

 下の子たちは、まだ小さくて判断できないな……。


「わかりました。絶対、当ててみせますから」


「当たるかな? まあ、頑張ってみるといい」


「はい。今日はたくさんの助言をありがとうございました」

 クリフさんのおかげで、これから自分が何をすれば良いのかやっとわかってきた。


「こんな助言で良ければいつでも歓迎だよ。それにしても……あの君でも子育てというのは難しいものなんだね。僕なんかに子供がいたら大失敗をしていたかもしれないな~」


「そんなことないですって。クリフさんなら、きっと良いお父さんになっていましたよ」

 こうして、僕の悩みを解決してくれるんだから、間違いなく子供たちに慕われる良いお父さんになっていたはずだ。


「そんなことないと思うよ。鑑識魔法は便利だけど、完璧ではないからね。きっと、魔法に頼り切っている僕は、自分の目で子供を見ようとしなかったはずだよ」


「そこまでわかっているなら、大丈夫じゃないですか?」


「いや、頭でわかっていたとしても自然と癖が出てしまうものさ」


「そうですか……。ちゃんと自分の目で、か。俺にも言えることですね」

 俺もよく鑑定に頼ってしまうことがあるし、これからは気をつけるようにしないと。


「まあ、僕が少しでも参考になって良かったよ」


「はい。今日はありがとうございました」

 今日はクリフさんのところに来て良かったな。

 これから、子供たちとの時間をできる限り増やしていかないといけないな。


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