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第十六話 誕生日の裏で

カロ……元教皇の暗殺部隊の副隊長。ダークエルフで、数百年も生きている。シェリーにスカウトされてミュルディーン家で働いている。

 

 カインの誕生パーティー当日。

 帝国や王国、教国の名の知れた貴族たちを迎えながら、俺は母さんの相手をしていた。

「レオ、元気にしてた? また、無理してシェリアちゃんたちを困らせたりしてない?」


「……大丈夫だよ」

 一昨日くらいに困らせるような相談をしてしまいました。とも言えず、久しぶりに会う母さんに笑顔で誤魔化しておいた。


「カイン。大きくなったわね~。おばあちゃんのこと、覚えている?」


「う、うん」

 思えてないだろ。前に会ったのは、お前が産まれたばかりのころだぞ。


「えっと、あなたがリル?」


「う、うん」


「はじめまして。あなたのおばあちゃんよ」


「は、はじめまして……」


「そして、あなたがノーラね? お母さんにそっくりで可愛らしいわ」


「えへへ」


「あなたはローゼでしょ? あなたもお母さんにそっくり。将来は間違いなく美人ね」


「……うん」


「最後に残ったのはネリアね? お姉ちゃんが大好きなの?」


「……」

 ネリアは母さんが苦手なのか、ローゼの背中に隠れてしまった。


「あら、二人とも元気ないわね? 大丈夫かしら?」


「母さんの勢いに圧倒されているだけだろ」

 いくら人見知りのネリアでも、普通に挨拶くらいするぞ。


「あら、私としたことが少し興奮しすぎてしまったわね」


「もう、お義母さまったら。先に行かないでくださいよ」

 そんな声が聞こえると、お母さんの隣にアレックス兄さんと結婚した義理の姉であるフィオナさんがやってきた。


「フィオナさん。お久しぶりです」

 フィオナさんと会うのはいつぶりだ? 俺たちの結婚式以来か?


「お久しぶり。初めて会ったときはカインくんと変わらなかったのにね……」


「ははは。そう言われると、なんだか感慨深いですね」

 当時の俺は、まさかこんなに子供ができるとは思いもしていないだろうな。


「そうだろ? そして、自分の子供が大きくなってくると、また同じような気持ちになると思うぞ」

 遅れてアレックス兄さんたちがやって来た。

 その後ろには、父さんと前皇帝の姿が見える。三人で話していたのかな?


「そういえば、兄さんたちの子供たちは二人とも魔法学校に進学しちゃったんだっけ?」


「そうそう。上の子はもうすぐ成人しちゃうし、本当に子供の成長は早いね」

 アレックス兄さんの子供がもう成人? 兄さんの成人パーティーからそんなに経っていない気がしていたけど、もうそんなに前のことだったんだな。



「よお。レオ、元気にしていたか?」

 アレックス兄さんの出迎えが終わり、しばらくするとイヴァン兄さんが到着した。


「あ、イヴァン兄さんにユニスさん。久しぶり……というわけでもないか?」


「そうね。いつもミュルディーン家の騎士たちにはお世話になっているわ」

 最近、皇帝直属の特殊部隊はよくミュルディーン騎士団と合同訓練を頻繁に行っている。

 おじさんが特殊部隊から抜けた穴を埋めるため、全体的な戦力の底上げをしたいそうだ。


「こちらこそ、特殊部隊と訓練する機会が貰えてありがたいです」


「そう? それなら良いんだけど……あれ? アルマはいないの?」


「アルマは子供が小さいのでしばらく休みです」


「それは残念ね。久しぶりに手合わせして貰おうと思っていたんだけど」

 いや、ここで戦われたら大変なことになるんで、いたとしてもやめてください。


「まあ、これからもミュルディーン騎士団と共同訓練があるから、その時に相手して貰えばいいだろ」


「それもそうね。今日はパーティーを楽しませて貰うわ」


「楽しんでいってください」



 SIDE:ネーリア

 予想通り、私たちは親戚たちの接客要因として呼ばれたみたい。

 ずっと立っていて疲れてきたし、これからも知らない人に挨拶しないといけないと思うと嫌になってくるわ。

 はあ、ここはあの手を使うしかないわね。

「お姉ちゃん……私、気持ち悪い」


「奇遇ね私も。お母さん、先に部屋に戻っても良い?」

 お姉ちゃんはすぐに私の意図を察して、お母さんに悪びれもなく仮病も使った。

 もう少し具合悪そうにしてよ。演技までした私が馬鹿みたいじゃない。


「随分とわかりやすい仮病ね。まあ、お父さんの家族とは顔を合わせたし、部屋に戻っても大丈夫よ」


「わかった。ネリア、行こう」


「うん」

 こんな簡単に了承を得られるとは思えなかったけど、お母さんの気が変わる前に私たちは急いで自分たちの部屋に向かった。



 部屋に戻ればゆっくりできると思ったのに……。

「「……」」

 今、私たちの目の前には、いつもお母さんの傍にいるメイドのカロさんがいた。

 この人、何を考えているのかわからないし、見た目も怖いから苦手なのよね……。


「私の前では演技する必要はないぞ? 転生者ども」


「「え?」」

 どうして私が転生者だとわかったの?!


「こう見えて私は数百年生きている。その間、転生者とは何人も会っているからな」

 私以外に転生者がいるというの?


「……あなたは、ダークエルフの生き残り? たしか、ダークエルフは随分と昔に滅ぼされたって聞いたんだけど?」

 あれ? お姉ちゃんの様子がいつもと違う。

 お姉ちゃんって、そんな難しい話をする人だったけ?


「そうよ。たぶん、私が最後の生き残り」


「そう……」


「残してきた仲間たちが心配か?」


「そりゃあね……」

 二人は何の話をしているのかしら? 仲間って何?

 お姉ちゃんは私と同じ引き籠もりで、友達すらいない。それなのに、仲間ってどういうことよ。


「以外だな。仲間を捨てて逃げてきたのかと思った」


「そんなわけないでしょ! 誰が千年も住んでいた場所を簡単に捨てるもんですか!」

 千年も住んでいた……?


「まあ、そうよね……。とすると、これはあなたにとって大きな賭けだったわけね。結果は……大当たりってところね」

 そう言って、カロさんが私に目を向けてきた。

 私が大当たり? お姉ちゃんにとって?


「……ねえ、二人ともなんの話をしているの? どういうこと? お姉ちゃんも転生者だったの?」

 二人が何の話をしているのかわからないけど、とりあえずお姉ちゃんも転生者であることだけはわかった。


「……そうよ」


「そうなんだ。それで、さっきの話はなに? 私が大当たりってどういうこと?」


「……」


「私に言えないことなの? もしかして、毎日私の魔力を鍛えていたのもそれが関係しているの?」


「……そうよ」


「私の魔力を鍛えて……私に何をさせるつもり?」

 お姉ちゃんがこれまで見せてきた一番の不可解な行動は、赤ん坊の頃から私の魔力を鍛えていたことだ。

 今の話を聞くと、お姉ちゃんは私に何かさせるために私の魔力を鍛えていたようだ。


「……」

 嘘でも良いから何か答えてよ。


「はあ、わかったわ。別に今は話さなくて良い。でも、いつかはちゃんと全部教えてね? じゃないと、お姉ちゃんの言うことは何一つ聞かないから」


「うん……その時が来たら話す」


「約束よ? ちゃんと話してね」


「まあ、今の間は姉の言うとおりしておいた方がお前にとっても得だと思うわよ」


「あなたは……誰なの? いつもお母さんの傍にいるけど……」

 場合によってはお母さんに言いつけるわよ?


「今は単なる侍女よ。ただ、人の何倍も長生きしているだけのね。昔、違う仕事をしている時にあなたの母からスカウトされたのよ」

 違う仕事ってなによ……。絶対、まともな仕事じゃないでしょ。


「はあ、それにしてもお姉ちゃんが私と同じ転生者だったとはね……」

 言われてみれば、それで納得できる不思議な言動を見せていたのにね。

 まさか、私以外に転生者がいるとは思いもしなかったからわからなかったのかもね。

 ばつの悪そうな顔をしているお姉ちゃんを見ながらそんなことを思った。


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