第八話 私の理解
遅いようで早く時は流れ、二歳になってしまった。
この二年で私は二足歩行をマスターし、一言二言の単語でなら会話ができるようになってきた。
前世も人間だったおかげで、歩くことに関してはそこまで苦労しなかった。
ただ、話すことに関しては日本語の知識があるせいで、とても苦労しちゃっている。
早く日本語離れをしないと……。
このままだと、いつまで経っても赤ちゃん言葉じゃないと会話できなくなってしまう……。
そんな私の低い言語能力は置いといて、私の家族、この家(?)について聞いて欲しい。
私の家族、私が知っているだけでも十三人もいるんですけど。
私のお母さんも含めてお父さんと五人の女が結婚していて、それぞれ一人か二人の子供がいるみたい。
その中で一番の妻……正妻は私の母みたい。
言葉がわかるわけじゃないから絶対の確証があるわけではないけど、お母さんたちのやり取りや表情をずっと見てきた私が言うんだからたぶん間違いないわ。
ちなみに、他のお母さんたち四人もなかなかの美人。
二人目の奥さんは、私のお母さんに負けないくらい美人な金髪美女。
三人目は、お父さんの趣味でつけ耳をしているのか、本当の耳なのかわからない犬耳の美女。
四人目は、私のお母さんたちより少しだけ年上なのかな? あ、老けているわけじゃないわ。大人なピンク髪の美人ってことよ。
五人目は、四人目とは逆に凄く若々しいちょっと幼い気さえする角が生えた美女だった。角もお父さんの趣味なのかな……?
この五人の関係は、子供のいないところで罵り合いとかしてなければ良好だと思う。
私が見ている限りでは笑い合って話しているし、いつも仲よさそうに何かしている。
産まれたばかりの頃に心配していたようなドロドロした関係はなさそう。本当に良かったわ。
そんなわけで、例の姉が私のことを辱めようとしていたのは私の誤解みたい。
あれからも毎日、私のところに来ては随分と長い時間一方的に話しかけて、私が体内の球体を動かすのを確認してから帰って行く。
どうして姉があそこまで私の球体を大きくしたいのかは本当にわからないけど、おかげさまで順調に成長している。
今でも大きくなりすぎたら爆発するんじゃないか? などと不安に思ってしまうけど……大丈夫なのよね? お姉ちゃん。
そして、私が住んでいる家(?)について。
どうして(?)なのか、それは簡単。家じゃないからだ。
ハイハイを習得した頃、初めて見たどこまでも続く廊下には、私は夢の中でハイハイしているのかと疑ってしまった。
この家、広すぎる。そう思っていたら最近、お父さんとお母さんが私を外に連れ出してくれた。
家から出てしばらくしてから振り返った時に見たあの……大きな……とても大きなお城に、私は身震いしてしまった。
母親が五人もいて、メイドに執事、鎧を着た兵士が家の中を歩いている時点で気がついていたけど……私、とんでもないところに生まれてしまったみたい。
私はお姫様なのかもしれない。
この事実を知った普通の女の子は、どんな反応をするのだろうか?
たぶん普通なら喜ぶよね。
だって、誰もが憧れるあのお姫様なんだもん。
でも、前世の記憶を持っていて大人的な考えを持っている私はちっとも喜べなかった。
お金には困らずに生きていけるだろうけど……それ以上に面倒なことが人生に待ち受けている間違いない。
お姫様となればうるさくマナーから生き方までうるさく口出しされるだろうし、もちろん結婚相手なんて選べるはずがない。
私は誰にも邪魔されず、静かに生きていたいのに……。
神様……私、こんなに金持ちの家じゃなくていいし、貧乏な家でもいいから、もっと目立たず自由に生きられる家に転生し直させてください。
こんな、息苦しいこと間違いなしの人生は絶対に嫌だわ。
今回は短くてすみませんm(_ _)m