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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十二章 教国旅行編

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第九話 あの日の真実②

 

「もう十年前になりますね……教皇が私の元にやって来ましてな。こう私に言ったのです。次期教皇の未来とアベラール家と滅びる未来、どちらか選べ。と……」

 へえ。なるほどね。

 リーナたちの暗殺に手を貸すなら次期教皇にしてやるけど、貸してくれないならお前も死ねってことだな。


「当時、フォンテーヌ家は教皇の手には劣りますが……強力な暗殺部隊を持っていたのです。獣人族で構成された暗殺部隊だったのですが」


「え?」

 獣人族だと?


「当時、獣人族がよく教国に流れ込んできていまして……。その獣人族を暗殺者として雇っていたんです」


「その人たちは……?」


「聖女様たちとの戦いに敗れ、殺されていきました。生き残りも、教皇の手に引き抜かれてしまいましたよ」


「なるほど……」

 元々、教皇の目的はフォンテーヌ家の弱体化だったのかもしれないな。

 それにしても、あの獣人族の少年も最初はフォンテーヌ家に仕えていたのか。

 だから、俺たちの提案に乗ってくれたって可能性もあるな。


「アベラール家は、よく教皇とフォンテーヌ家を相手にして聖女とリーナを守れましたね」


「オルヴァー様もブライアン様もとても強かったですからね……」

 オルヴァーはリーナのおじいちゃん、ブライアンはお父さんだ。

 確か、おじいちゃんはエルフだったはずだ。


「教国でも一二を争う暗殺者を百人も相手したというのに、セリーナ様とリアーナ、それに……私の妹まで逃がしてしまったのですから」

 うん? 妹まで?


「……え? お、お母さんが助かった……?」

 俺と同じことを考えたのか、すぐリーナがガエルさんに聞き返した。


「今まで黙っていて悪かったな。実は、マーレットは生きているのだよ。私は、教皇の命を背いて妹を助けてしまった」


「どうやって……? あの時、お母さんは私たちを逃がすために……」


「セリーナ様とリアーナ様を逃がした後、オルヴァー様とブライアン様はフォンテーヌ家の暗殺部隊に取引を持ち込みました」

 取引か……内容は大体想像できるな。


「マーレットを助けてくれるなら、これ以上抵抗されず殺されると」

 やっぱりな。可能な取引としたら、それくらいしかない。


「そ、それで、本当にお父様たちを殺したというのですか?!」


「ああ。そうするしかなかった。私にも守らないといけないものがたくさんあったんだ……許せとは言わないが、少しだけでも理解してくれると助かる」

 まあ、自分にも妻や娘がいるわけだからな。

 こればかりは、ガエルさんを責めても仕方ない気がする。


「リーナ、少し落ち着こう。まだ聞かないとはあるでしょ?」


「そうですね……。それで、助けたお母さんはどうしたのですか?」


「今も生きてる。身分を隠して田舎でな」

 良かった。教皇に気がつかれて、殺されていたというわけではなかったんだな。


「どこですか……?」


「リアーナとセリーナ様が隠れていたあの辺境だよ」


「え?」


「セリーナ様とリアーナが教国から追い出された後、あの家にマーレットたちを住まわせることにしたんだ」


「そ、それじゃあ、これから……私はお母様に会えるというのですか?」

 これからリーナの故郷に向かうつもりだったが、まさかそこにリーナのお母さんが隠れていたとはね。


「ああ。そうだな。リアーナ、マーレットたちを連れて行ってやってくれ。あいつもあんな辺境で暮らすより、娘と華やかな暮らしをしたいだろうから」


「わ、わかりました……」



 ガエルさんとの会話も終わり、今日からしばらくお世話になる部屋に入ると、すぐにリーナが泣きついてきた。

 どうやら、ずっと泣くのを我慢していたようだ。

「う、うう……ぐす、うわ~~~ん」


「よしよし。辛かったね」

 しばらく、泣き止むまでリーナの頭を撫でてあげた。



「それじゃあ、教皇との謁見が終わったらすぐにリーナの故郷に向かうか」

 リーナが大分落ちついたので、今後の旅の予定を建て直すことにした。

 せっかくの新婚旅行だけど、リーナのお母さんの方が大切だからな。


「なんなら、教皇の謁見をすっぽかしてでもすぐに向かいたいわね」


「流石にそういうわけにはいかないな。それに、このまま向かったらリーナのお母さんにも危害が加わってしまうかもしれないだろ? 先に、教皇とは決着つけておくに越したことはない」

 俺も教皇とはなるべく関わりたくないけど、逃げては通れない道だ。

 さっさと片付けてしまった方が得策だろう。


「確かに! 私に任せて! 私が教皇をぶっ壊すから!」

 おいおい。教国のど真ん中でなんてことを言ってくれるんだ。

 誰かに聞かれていたらどうしてくれるんだ。


「それが必要になった時には遠慮なくやってしまいなさい! 私も全力で魔法をぶっ放すから」

 だから、誰かに聞かれていたら……。

 まあ、そんなことはもうあまり関係ないか。

 どうせ、これから俺たちは戦うことになるんだし。


「あまり無茶しないでくれよ?」


「大丈夫よ。今回は頼もしい護衛がいるのだから」


「今回は頼もしい護衛?」

 誰だ? ルーのことか?


「あ、やっぱり気がついていなかったのね。後ろ向いて」

 言われて振り向くと、ニヤリと笑ったおじさんが立っていた。


「うええええ?」

 驚きのあまり、かっこ悪い声が出てしまった。

 これがバルスなら『なんだお前か』ってなったんだけど、まさかおじさんがいるとは思わなかった。


「久しぶり」


「……おじさん、どうしてここに?」

 皇帝の護衛は良いの?


「忍び屋の拠点を探す任務で聖都に一ヶ月前から来ていたんだ」


「忍び屋の拠点?」

 アレンたち、教国にいるのか。


「そう。王国にもなかったから、教国で間違いないと思うよ」

 へえ。おじさん、教皇の護衛をしていたと思ったら、ずっと忍び屋の拠点を探して回っていたんだな。

 まあ、おじさんにとってアレンは因縁の相手だし、自分で解決したいんだろうな。


「なるほど……何か手がかりは見つかった?」


「少しずつだけどね。とりあえず、今アレンは教皇のところにいるよ」


「え?」

 アレンが教皇のところに?


「教皇が高い金を払って雇ったみたいなんだ」


「吸血鬼が率いる教皇の手に……アレンの警戒もしないといけないのか……」

 それは随分とヤバいな……。

 今回は、こっちもベルやルー、アルマもいるからなんとかなると思っていたけど……大丈夫か?


「アレンの警戒は僕がやるよ」

 あのパーティーの時と一緒か。

 隠密には隠密で対処するのが一番だもんな。


「うん。頼んだよ」


「それにしても、レオくんは行く先々でトラブルに巻き込まれるね」


「そうね。まるで、神様に遊ばれているみたいだわ」


「ははは。笑えない冗談だ」

 本当に神様に遊ばれているんだからな。


「本当にそうだよね。王国もほぼレオくんの物みたいなものだし、これで教皇を倒してしまったら、レオくんは一人で人間界を統一してしまったことになるんだから。神に選ばれた人間と言われても疑わないよ」

 い、いや……それ、なんか俺が世界征服をしようと企んでるみたいに聞こえるじゃん。

 しかも、王国がほぼ俺の物ってなんだよ。


「いや、王国は俺じゃなくてエレーヌの物だし……。教国は、教皇がいなくなったとしたらガエルさんが教皇になるんじゃない?」


「どっちもレオくんに頭が上がらないじゃないか。ほぼ、レオくんが支配していると言っても過言じゃないでしょ」

 な、何だと?


「そ、そんなことないし……」

 頭をフル回転させて考えたが、何も反論できなかった。

 あれ? もしかして俺って人助けをしているようで、裏で世界征服に向けて走り続けていたのか?


「あはは。いつの間にかレオが物語の魔王みたいになってる!」

 ま、魔王って、まるで俺が悪役みたいじゃないか。

 俺がこの人生でやった悪いことなんて、覗きくらいだぞ?


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