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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十二章 教国旅行編

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第二話 開発計画

長い間お待たせしましたm(_ _)m

 

 結婚式から約一ヶ月が経ち、フランクが魔法学校に帰った頃、ちょうどカイトたちの終戦交渉の方も終わった。

 詳しい内容は知らないけど、送り届けた時のカイトの様子や話からして、王国にとっては悪くない内容で決着したみたいだ。

 今の王国の状況を見て、皇帝が譲歩したってことかな? まあ、詳しい話を聞かないと実際はどうなのかわからないんだけど。

 というわけで、今日はその詳しい話を聞かせて貰うことになった。


「体はもう大丈夫か?」


「はい。おかげさまで、もう心配ありません」


「それは良かった。新婚生活の方はどうだ?」


「そちらもご心配なく。円満な夫婦生活を送れていると思います」

 一ヶ月、本当に楽しい時間を過ごさせてもらえた。

 これまで仕事に熱中していた時間を考えればまだまだ足りないだろうけど、これまで出来ていなかったデートとかたくさんしたなあ。

 この一ヶ月間を合計したとしても、一人でいた時間は一時間にも満たないんじゃないかな?

 トイレの時以外、五人全員または五人の内誰かが俺の隣にいた。


「そうか。私も早く孫の顔が見たいから、頼んだぞ」


「そうですね……」

 心配しなくてもそのうちいくらでも顔を見せてあげるから、そんな急かすなって。


「父さん。急かしちゃダメだって。レオもやっと休めるんだから」

 と言うクリフさんも、期待の眼差しを俺に向けていた。

 なんなら、皇帝よりも期待の圧が凄い。


「そ、そうか……」

 うんうん。あと五年以内にはできると思うから、二人ともそれまで我慢してください。


「それじゃあ、本題に入ろうか。まず、王国との終戦協定と不可侵条約について」


「どうなりましたか? カイトから少し聞いてはいますが、随分と帝国が譲歩したみたいですね」


「まあな。今の王国から金を取ってもあまり美味しくない。それなら、少し待ってからちょっとはマシになった王国相手に商売をした方が儲かるだろ?」


「あと、ここで譲歩しておけば、王国は帝国に頭が上がらなくなるからね。これから、王国の政治に僕たちが口を出せるってわけだ」


「なるほど……」

 やっぱり、単純に優しさだけで緩い条約を結んだわけではないんだな。

 まあ、これもエレーヌが国王になってくれたからこそ、取れる選択肢なんだろうけど。

 あの前王では、信用なんてできるはずもないし、絶対に今すぐ金を払わせていたと思う。


「ですが、王国に口を出すとしたら具体的に何をやらせるのですか?」


「さっそく、王国には帝国と似たような貴族学校を創設するように命じた。王国が不安定な一番の要因は、貴族に教育が行き届いていないことのはずだ。帝国も勇者様が貴族学校を創設するまでは貴族たちの汚職が酷かったらしいからな」


「なるほど。それは良いと思います。交換留学とかもやったら面白そうですね」


「ああ。もちろんやるつもりだ。この王国と帝国のいがみ合いは、子供たちから改善していくことが大切だからな」

 確かに。それは大事だな。


「王国は十年後を目途に学校を建てるつもりでいるから。ちょうどレオやシェリーの子供が最初の交換留学生になるかもしれないな」

 確かに十年後ともなれば、一番上の子供は学校に通っているかもしれない。

 いじめられたりしないと良いけどな。


「それは楽しみですね」


「ああ。というわけで、早く孫に会わせてくれ」


「はいはい。それで、王国の話題はこの辺にして、旧フィリベール領とその周辺地域に話題を変えよう」

 話題を変えるということは、これ以上俺に話せることはないってことかな?

 まあ、今回一番の目的は『仲良くしましょう』だから、そこまで細かいことは決めてないのか、決まらなかったのだろう。


「本格的な再開発は、レオたちが旅行から帰って来てから行うのだろう?」


「はい。そうですね。半年後から本格的に再開発を進めていくつもりです」

 今は皆、戦争とその準備で疲れ切っているからね。

 俺たちが旅に出ている間くらいは最低限の仕事にしてあげないと。


「そうか。まあ、今はゆっくり休んでくれ」


「はい。そうさせて貰います」


「今の段階で考えていることで良いんだけどさ。あの広大な土地を豊かにする秘策はあったりする?」

 もちろん考えている。

 だって、三国会議までは戦争しないつもりでいたからね。

 三国会議が終わったら、すぐに開発に取り掛かるつもりで計画だけは立てていたんだ。


「そうですね。今のところ、それぞれ三つの主要都市をそれぞれ農業、工業、商業で役割を分担させようと思っています」


「それぞれ詳しく聞かせてくれ」


「農業の都市では、農作物の生産性を上げるための実験場にしたいと考えています。品種改良やより肥料の開発、魔法具や魔法を使った新しい農業方法の発明など、最先端の農業を取り扱う場所にしたいと考えています」

 土を耕す魔法具とか、自動で水をやる魔法具があったら、飛躍的に農作業が楽になると思うんだよね。


「ほお。それは凄そうだな。それが成功したら、帝国で飢餓の心配をする必要は無くなるわけだ」


「いつかは、そんな日が来るかもしれませんね」


「次に工業。これは魔法具工場をたくさん建てるつもりです。これまで以上に魔法具を大量生産し、より低価格で魔法具を提供できるようにしていくつもりです」

 ミュルディーンの地下工場で作られる魔法具も従来に比べれば随分と安いが、まだ庶民の贅沢品程度にとどまっている。

 これではダメだ。


「遂に、貴族や一部の金持ちしか手が出せなかった魔法具が一般市民でも手に入れることができるわけか」

 そう。俺は魔法具が日常的に使われるようにしたいだよな。

 やっぱり、産業の発展には機械化が必要不可欠だからね。


「はい。それと、大きな魔法具研究所も建てる予定です。師匠が亡き今、新しい魔法具の発明には、よりお金をかけないといけないので」

 師匠みたいな天才は、今後そう簡単に生まれてくることはないだろうからな。

 比較的天才たちを集めて、時間をかけて研究して貰う他ない。


「そうだな。それで、最後に残った商業はどうするんだ? どう頑張っても、商業ではミュルディーンに勝てないだろう?」


「そうですね。だから、強大な資金源を創造することにしました」


「資金源? 何を創造するんだ?」


「ダンジョンですよ。冒険者が稼ぎやすいダンジョンを僕が創造します」

 他のダンジョンみたいに効率よく魔力を手に入れることを考える必要はないし、ダンジョンが死なない程度に椀飯振舞するつもりだ。

 高価な素材がたくさん手に入れられるダンジョンにしたいね。


「なるほど。それなら、十分街が潤いそうだな」


「素材の街とするわけだね」


「はい。素材を安く手に入れられる街を目指します」


「そうなると、また冒険者の需要が高まりそうだな」


「そうですね。ですから、冒険者学校をダンジョンの近くに建てようと思います」


「冒険者の学校? そんなもの、生徒が集まるのか? 冒険者というのは、目先の利益しか考えない奴らだぞ? そう何年も我慢できるか?」


「そうですね。ですから、一年間しっかりと学ぶコースと三ヶ月基礎だけ学ぶコースの二つに分けます。三ヶ月コースでは、冒険者として必要な知識と簡単な体の使い方が学べます。一年コースでは、それに加えて剣術や魔法を教わることができます。一年コースを卒業すれば、冒険者としては一人前のCクラス程度の知識や実力は得られるはずです」

 まあ、これはすぐに人気が出ることはないと思う。

 だけど、卒業生たちが活躍しているのを見れば、どんどん入りたいと思う冒険者たちが増えると思うんだよね。

 てか、一般人が魔法を学べる機会って魔法学校かミュルディーンの学校くらいしかないし、もしかしたら魔法を習いたくて入学する人が結構いるかも。


「なるほど。確かに、そこまで考えているなら心配なさそうだな」


「うん。どの都市も、レオにしかできないやり方だけど、問題なく発展できそうだな」


「ただ、残った小さな町や村はどうする?」


「まず、大都市よりもかなり低い住人税を設定し直します。それと、新たな農業方法が発明できたら、すぐに貧しい農村に広めていくつもりです。あとは、道の整備ですね。最低でも馬車が通せる程度の道を領地内に張り巡らせたいですね。そうすれば、多少都市から離れていても安い住人税に惹かれた人たちが移住してくれるはずです」

 まあ、とりあえずは地盤を固めるためにも三つの主要都市をしっかり発展させて、地方は少しずつやっていくしかないかな。

 たぶん。すぐには解決できるとは思えないし。


「そうか。なら、心配する必要はなさそうだな」


「そうだね。まあ、僕らも存分に支援するから、何かあったらすぐに頼ってきてね?」


「いや、頼られなくても援助する」


「ありがとうございます」

 今回、金はいくらあっても足りない状況だから、遠慮せずたくさん金を貰うつもりだ。

 大きいことをたくさんするつもりだし、帝国の援助がなかったら絶対に開発は終わらないだろう。


「礼なんていらない。あそこはもう、皇族の土地だからな」


「はい。皇族領に恥じない発展を遂げてみせます」


「ああ、頼んだ。ただ、急ぐ必要はない。気長にやれ」


「了解しました」


「それじゃあ、旅行楽しんで来い」


「はい。楽しんできます。お土産、楽しみにしておいてくださいね」

 教国の名物って何だろう? 二人が喜びそうな名産品を調べておかないと。



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