第一話 同窓会
プレゼント企画が行われます!!
詳しくはあとがきで……
結婚から二週間後、俺はフランクとヘルマンのいつものメンバーで酒を飲むことになった。
お酒は、フランクがミュルディーンで買ったボードレール産の高級ワインだ。
酒は初挑戦だが、今のところ酔わずに美味しく飲めている。
なんか、こうして三人で顔を合わせるのはここ二年くらいなかったから同窓会みたいだな。
「二人とも元気にしてたか? 特にヘルマン、結婚パーティーで会えなくて残念だったぞ。アルマとは上手くいっているか?」
「お久しぶりです。すみません。あの日は忙しかったもので。それと、アルマとの戦績ですが……なんと昨日と今日で2連勝することができました。もしかしたら明日、夢が叶うかもしれません」
「まあ、今頃アルマが必死になって強くなっているだろうから、また振り出しに戻る気がするけどな」
それに、ヘルマンはそんな大事な一戦を前にして酒を飲んでしまってるからな。
明日はアルマが圧勝するだろう。まあ、応援くらいには行ってやるか。
「ははは。ヘルマンはよっぽど大変な条件を提示してしまったな」
「そうですね……。でも、諦めません!」
「そうか。頑張れ」
「フランクの方はどうなんだよ? アリーさんとの関係は良さそうだったけど」
フランクも人のこと言えないくらい大変だと思うんだが?
「ああ。今のところ順調だ。ジョゼとアリーも喧嘩するくらい仲が良いぞ」
ん? 喧嘩するのは仲が良いのか? てか、あの優しいジョゼが喧嘩だと?
想像できないな……。
「そ、そうか。それは良かった。魔法学校を卒業したら、結婚して領地を継ぐんだろ?」
「うん。とは言っても、当分は父さんの手伝いだけどね」
そりゃあそうだろう。俺が異常なだけで、普通は親に領地経営を教わるものだ。
それを考えると、俺って凄いな。
いや、実際に経営しているのはフレアさんとエルシーだから、俺は凄くないな。
「そういえば、次期当主を争っていた兄さんはどうしたの? このまま何もしてこない感じ?」
もう、流石に諦めたか? ここまでフランクが盤石になってしまえば、あっちも手は出せないだろう。
「それが聞いてくれよ!」
「お、おう。なんだ?」
急に大声を出したヘルマンに驚きつつ、問い返した。
何かやられたのか?
「あいつ、教国の王国派と組んで、何かしでかそうとしているんだ」
「ええ? 教国が?」
ん? フランクが当主になれなかったからと言って、何かガエルさんに影響はあるか?
確かに、帝国との繋がりが減るのは辛いだろうけど、レリアがいる限り問題ないだろ?
教国は馬鹿なのか? それとも、何か隠された意図があるのか?
「ほぼ次期トップがフォンテーヌ家で決まったからね。王国派のやつらは、必死になってフォンテーヌ家を落とす方法を考えているんだよ」
「なるほど……。それなら、あまり効果なさそうなフランクの邪魔をしようとしているのも頷けるな。要するに、王国派は手詰まりなんだろう?」
もう最後の足掻きと言ってもいいな。
「そうだよ。王国はこの前の戦争で惨敗しただけでなく、帝国と親しいエレメナーヌ様が王になってしまったからね。権力争いに負けたと言っても過言ではない」
「なるほど……。でも、そこまで勝敗がついてしまっているとしたら、逆に怖いな」
足掻き程度で収まれば良かったが、もう負けが確定しているなら形振り構わないことをしてくるかもしれない。
恐ろしいな……。
「そうだよ。あの国、普段から貴族暗殺が絶えない無法地帯なのに、これからもっと凄いことになりそうだ」
「そうだよな……。やっぱり、教国旅行は見送った方が良いかな?」
そこまで教国が荒れているとなると、安全を考えて今は様子を見た方が良いよな……。
「俺的にはそうして欲しいが、旅行ついでに聖女を送ると約束してしまったのだろう?」
「そうなんだよね。あの時は、教国がそんなことになるとは思ってもいなかったから……」
「行くなら、忍び屋に狙われているくらい注意しろよ? お前達は、王国派にとってこれ以上ない餌だからな?」
だろうね。ああ~~~。旅行のついでとか思って引き受けなければ良かった~。
「わかっているよ。そうだな……。これ以上リーナに待たせちゃうのも悪いし、ガエルさんとの約束もあるし……暗殺対策を存分にして教国に向かうか」
もう、リーナと約束して何年経つかわからない。
これから忙しくなってくることを考えると、もう今しかチャンスはない。
「頼むから、無事に帰ってきてくれよ……」
「大丈夫だって、フランクの結婚式にはちゃんと参加するから」
「それじゃあいつ出発するのか知らないが、ちゃんと来年のこのくらいまでに帰ってこいよ?」
来年か。魔法学校を卒業してすぐに結婚って感じかな?
「出発はもう少し先かな。シェリーたちが俺の体が問題ないことを二ヶ月くらい確認するまで旅行はしないと言うんだ」
シェリーたちのおかげで魔力はこの二週間で回復したけど、他に何かないか確認しないと遠出するのは嫌みたい。
まあ、心配させながらの旅なんてしたくないし、素直に従っている。
「そりゃあそうだろう。死ななかっただけ良かったとしても、人から魔力を貰わないと生きていけないって相当ヤバいと思うぞ?」
「僕もそう思います」
「そうだよね……。でも、この二ヶ月領地から出られないのは暇すぎるよ」
「結婚したばかりで何を言っているんだ。ずっと仕事に熱中していてまともにデートもしてなかったんだから、奥さんたちに時間を費やせ」
「は、はい。失言でした。これから奥さんたちに全ての時間を捧げます」
フランクに怒られ、俺はすぐに謝った。
い、一応、この二週間嫁さんたちとデートしたりして時間をすごしていたんだからね?
でも、今の発言は良くなかったな。気をつけないと。
「よろしい。まあ、もしかしたら仲良すぎて別の理由で旅行に参加できなくなってしまうかもしれないけどな」
「別の理由ですか?」
フランクの発言に、俺とヘルマンが首を傾げた。
「流石に妊婦を連れてあの無法地帯に入るのはダメだろ?」
「あ、ああ……気をつけます」
言われてみればそうだった。
そういうこと何も考えてなかった。……危うく、旅行が中止になっていたかも。
「師匠に子供か……。きっと可愛いんだろうな」
「ははは。きっと、レオに子供ができたら、ヘルマンたちにめちゃくちゃ甘やかされるんだろうな」
「そうなるかも……。俺も厳しくできる気がしない」
だって、俺自身自分勝手に生きてきたからな……。
自分の行動を鑑みると、とても怒れる気がしない。
「おいおい。ミュルディーンの権力は半端ないんだからな? 暴君とか生み出すなよ?」
暴君か……確かに、それはダメだな。
「だ、大丈夫だって。男だったらヘルマンが厳しく躾けるはずだから」
「え、ええ!? 僕ですか?」
「ああ。剣術は、俺よりもヘルマンが教えた方が良いと思うからな。頼んだぞ?」
俺、もうずっと剣を握ってないからな。最近の俺は完全に冒険者から領主にジョブチェンジしてしまった。
だから、ちゃんと教えてあげるなら俺よりもヘルマンの方が良いだろう。
「は、はい……。お任せください」
「おい。女だったらどうするんだ? お前なら、平気で女でも当主にするだろう?」
まあね。王国だって、エレーヌが王になったんだから、別に男にこだわるつもりはないよ。
「それなら嫁さんたちがちゃんと怒ってくれるから大丈夫。皆、怒ったら俺よりも怖いぞ?」
「確かに……」
「とは言っても、俺も人に任せすぎないようにしないとな。パパ嫌いとか言われたらショックだし」
「ははは。お前ならあり得そうだな。仕事に熱中しすぎて、家庭を疎かにするタイプだし」
「うう……。これから気をつけないと」
フランクの指摘通り、俺は一つのことに夢中になると周りが見えなくなるところがあるんだよな……。
師匠にも釘を刺されてるし、家庭第一だってことを忘れないようにしないと。
プレゼント企画が行われます!!
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