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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十一章王国戦争編

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第十八話 大切な人の為に③

 

 SIDE:ベル

 この世界で私にしか使えない魔法……獣魔法。

 獣人族の王族にしか使うことのできないこの魔法は、同じ身体強化系の魔法である無属性魔法や電気魔法なんかより段違いで体を強化することができる。

 獣の姿に近くなればなるほど防御力、攻撃力、速さの全てが強化され、強大な力を得られる。

 私が獣魔法を本気で使えば、大きな狼になることができますが……私はあまりあの姿にはなりたくありません。

 自分がこのまま人に戻れなくなってしまうのではないか……と凄く不安になります。

 私は、レオ様と同じ人でいたい。レオ様には、私を人として見ていて貰いたい。

 そんな気持ちから、私はレオ様の前で一切獣の姿になることはありませんでした。


 そんな私が今、レオ様が見ている前で人狼の姿になっていた。

 こんな醜い姿は凄く嫌……でも、全てはレオ様を守る為だから。


 カイトさんが切り札を使えば、必ずレオ様が負けると言って良いでしょう。

 ステータスが同じになれば、後は魔法と技術の勝負です。

 そうなると、いくらレオ様でもカイトさんの電気魔法には追いつけません。

 それに……敵はカイトさんだけではない気がします。

 レオ様は口にこそ出していませんが、ここ最近ずっとカイトさん以外の何かを警戒していました。

 たぶん。他の転生者なのでしょう……。

 転生者という人々は凄く恐ろしいです。

 あの、大したことのないようなゲルトでさえ、レオ様を瀕死にまで追いやってしまいました。

 それが……魔王並の力を持った転生者と戦うことになったとしたら……。

 だからこそ、明らかに囮であるカイトさんは私が倒さないといけないのです。



「ベルって……レオのメイドの……」

 お師匠様が倒れ、私とカイトさんは少し間合いを取って睨み合うような状態になっていた。

 カイトさんは、私の見た目に警戒しているみたいですね。

 まあ、端から見たら私は魔物ですから仕方ありません。


「はい。レオ様の専属メイドのベルです。主人に代わって、あなたを倒しに参りました」

 攻撃的な言葉と裏腹に、私はメイド式の丁寧なお辞儀をしてみせた。


「そんな……レオが許したのか?」


「ええ。もちろん。こう見えて、私はミュルディーンで三番目に強いんですよ?」

 いいえ、レオ様は最後まで許してくれませんでした。

 でも、どうしても私が戦わないといけないと思った私は、レオ様がお師匠様とカイトさんの戦いに目を取られている隙に、城から抜け出してきました。

 でも、これだけ時間を置いても現れないということは、レオ様も私が戦うことを認めてくれたということでしょう。

 もしかすると、心配でこの近くで見守っているかもしれませんが。


「三番目……だとすると、最初から本気でかからないとやられてしまいそうだな」


「はい……そうしてください。さもないと……」

 カキン!

「あなたは瞬殺です」

 話している途中に攻撃をするなんて、とても勇者のすることとは思えませんね。

 まあ、ずっと警戒していたのでそこまで問題ではないのですが。

 一方カイトさんは、私がいとも容易く渾身の一撃を受け止められてしまったことに、驚いているようです。


「ど、どうして……この速さについて来られるんだ?」


「そんなの簡単です。私が速いか、あなたが遅いかの二択ですよ」

 やはり、ここまで獣化をした私ならカイトさんが限界突破をしたとしても、十分対応できますね。


「……それに、どうして電気魔法が効かないんだ?」


「私の爪と毛皮は、とても頑丈ですから」

 ちょっとピリッとしますが、これくらいなら問題なく動けます。

 獣化した私の防御力、舐めないでください。


「どうして、レオの周りにはこんなに強い人がいるんだ」


「それは……レオ様の努力の結果です。あなたが強くなろうと頑張っている間、レオ様は自分の周りの人たちを強くしようと頑張っていました」

 レオ様は領地を貰ってから早々、自分一人では自分の土地を守れないことに気がついていましたからね。

 屈強な騎士を集め、魔法使いを育て、私やシェリー様たちを強くする為にダンジョンを用意してくれました。

 カイトさんが一人で強くなろうとしていたことは間違いではないと思います。でも……レオ様の考えはその先に行っているのです。


「なるほど。だけど、俺の……俺の個としての力ならレオにも敵うかもしれない」


「そうはさせません。あなたは私が絶対に倒します」

 何が何でも、あなたとレオ様を接触させません。


「ふん!」


「せい!」

 まずは一発。


「グハッ」

 カイトさんの斬撃を避けて、思いっきり腹を引っ掻いた。


「普通なら……内臓まで抉れていたはずなんですけどね。丈夫な鎧に助けられましたね」

 私の爪を通さないなんて、凄いですね。レオ様のレッドゴーレムでも、簡単に抉れるのに。


「そうだな……ゲルトさんには感謝しないと」


「その名前は聞きたくありません」

 大嫌いな人の名前を聞いた私は、全速力でカイトさんに近づき、もう一度カイトさんを引っ掻いた。


「ぐう……」


「もう一発!」


「あが!」

 連続で二回。流石にこれだけ攻撃すれば、鎧に穴が空き、そこからカイトさんの血が流れ出していました。

 この前まで友好的な関係だったことを考えると、凄く心が痛みますが……今はそんなことを考えている暇はありません。


「全く歯が立たない……。こんなところで……倒れてはいけないんだ。俺が倒れたら……エレーヌが」


「そんなことは聞きたくありません。私だって、レオ様の命がかかっているんです」

 何を自分だけ辛い立場にいるみたいな言い方を。

 そもそも、この戦争はあなたたち王国が仕掛けてきた戦争ではないですか。

 国王が勝手に挑んだ戦争だという甘い言い訳も要りません。

 あなた程の力があれば……王国を乗っ取ることなんて容易かったはず。

 それなのにあなたは何もせず……そのツケが今に回って来ているんじゃないですか。


「そうだな……。どうやら、俺は覚悟が足らなかったみたいだ。俺もさっきの二人みたいに、命を賭けた戦い方をしないと」

 カイトさんがそう言うと、バチバチと電気魔法の音が先ほどよりもより大きくなった。

 そして、カイトさんから髪の毛が焼けたような匂いがしてきた。

 本気で……自分の命を賭けてきた。


 いけない私も……

「ぐう」

 気がついた時には倒され、首に剣を当てられていた。


「君はレオの大切な人だ。俺はあなたを殺したくない。これで、諦めてくれないか?」


「諦めるわけがないじゃないですか……」

 そんな振りかぶりもしていない剣で、私を斬れると思わないでください。

 私は剣を掴み、更に獣化を進めた。

 ビリビリとメイド服が破れる音と共に私の体がどんどん大きくなっていき……私は完全な大狼に変身した。


「ワオオオン!」


「体を大きくしたところで、何が……」

 もう、話すことができない私に、お喋りの時間は不要ですよ。


「う、腕が……」

 私はカイトさんの腕を噛み千切った。

 残念。首を狙ったつもりだったのですが、ギリギリで避けられてしまいました。

 でも……もう、カイトさんもあれだけ出血していては、限界でしょう。


「くそ……強すぎる……ここまでしても……傷一つ……つけられないなんて……」

 無くなった左腕を押さえながら……カイトさんはふらふらとこっちに向かって来ていた。

 そんなカイトさんは、軽く鼻先で小突いただけで転がりながら倒れた。


「エレーヌ……俺はもうダメなのかもしれない……」


 SIDE:エレメナーヌ

「カイト……大丈夫かしら」

 何もやることがない私は、自室から外を眺めながらずっとそんなことを呟いていた。

 カイトがいないと……心が落ち着かない。お母様の時みたいに、また一人になってしまうのではないかという不安が込み上げてくる。

 これまで、カイトが城にいないことは何度かあったが、それは帰ってくるとわかっていたからそこまで不安にはならなかった。

 でも、今回ばかりは……。

 ああ~もう。これ以上考えたらダメ。


「それにしても……予想はしていたけど、こうなってしまうとはね」

 現在、私たちは部屋に監禁されていた。

 誰の命令なのかは知らないけど、たぶんあの豚かハゲ、愚弟、愚妹の誰かでしょう。


「申し訳ございません。私が不甲斐ないばかりに……」


「こればかりは仕方ないわ。どうすることもできないもの」

 気がついたら、私の部屋の周りに結界が張られていたんだもの。

 あんなの防ぎようがないわ。


「それでも……」


「そんなこと言っていても、この状況が変わることはないわよ」


「……はい」

 アーロンが取り乱すなんて珍しい。余程、今回のことを後悔しているのね……。

 悔いたところで仕方ないのに。


「それより、この拘束は何が目的だと思う?」


「単純に、姫様を人質に取るつもりなのではないでしょうか?」

 そうね。カイトを言うことを聞かせるなら、この方法が一番かもね。


「でもそれなら、別にここまでしっかりと拘束する必要はないんじゃないの?」

 だって、私が本当に拘束されているのか遠く離れたカイトが知ることはできないんだから。

 拘束するにしたって、兵で出入り口を塞ぐくらいで十分でしょ。


「そうですね……。もしかすると、レオンス様による助けを阻止する為ではないでしょうか?」


「ああ、それなら納得」

 確かに、レオなら簡単に私を救出できてしまう。

 それを阻止する為の結界か……。本当、あの三国会議での行動と言い……誰がこんなことを考えているのかしら?


「はあ……カイトのことが余計に心配だわ。きっと、私たちが想像できないくらい無茶なことをやらされているはずだわ」

 ここまで徹底した拘束から考えるに、カイトの方も絶対大変な目に遭わされているに違いないわ。


「大丈夫ですよ。カイト殿は強い。きっと、姫様の為に生きて帰ってきますから。とにかく今は祈るしかありません」


「そうね……」

 アーロンの言う通り、今の私にできることはカイトを信じて待つことしか出来ないものね。

 私はネックレスを握りしめ、カイトの無事を祈った。



今回の内容についてちょっと補足……

ベルの心の声が攻撃的なのは、獣化による影響です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ベルつおい まるで魔王軍四天王のようだ むしろその上の魔将 現役の魔将とどっちがつおいですかね?
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