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第十一話 一段落


 SIDE:カイト

 現在、ゴーレムとの戦闘が終わり、俺たちは状況確認を行っていた。

「被害は?」


「約三百人が軽傷、五十人弱が重症、十八人が死亡しました。被害は小さいと思います」

 将軍の質問に、一人の騎士がすらすらと答えた。

 どうやら、被害は小さいらしい。この世界、軽傷くらいなら魔法で簡単に治せるからな。


「俺もそう思う。これもカイトのおかげだ」


「ありがとうございます。ただ、切り札を使ってしまったので、最後の戦いがより厳しい戦いになったと思ってください」

 将軍の言葉に感謝しつつ、隠していたスキルを使ってしまったことを報告した。

 俺のスキルがバレたことがどれほどの影響が出てくるのかはわからないが、もしかしたら将軍の予定を狂わせてしまったかもしれない。


「そうか。まあ、最後の戦いについてだが、一つ良い知らせがある」


「良い知らせ?」


「魔砲が一つ壊されずに済んだ」


「え!?」


「私も正直驚いている。守れるとは思っていなかったからな。実際、あと少しで全滅だったそうだ。まあ、運が良かったな」

 確かに運が良かった。正直、俺が守らなかったら簡単に壊されると思ったんだけどな。

 騎士たち、死ぬ気で頑張ったんだろうな。


「そうですね。それじゃあ、これから僕はその一つを守ることに専念しますね」


「ああ、頼んだ。あれがあるとないとでは最後の局面が大きく変わってくる」


「わかりました。それで、これから盗賊とはいつ分かれるのですか?」


「国境を越えて少し経ってからだな。北と南、南東の三つに分かれて街を襲って貰う」


「レオ、ちゃんと陽動に乗ってくれますかね?」

 レオなら、さっきの盗賊たちの狼狽える姿を見て、あいつらが騎士じゃないことに気づいたと思うんだよな。

 だとすると、俺たちの作戦にも気がついていそうだ。


「これは間違いなく乗ってくるはずだ」


「大丈夫ですか? さっきだって、予想外のことがあったじゃないですか」

 国境付近で戦闘にはならないって言った傍から、こんな大規模な戦闘があったんだ。これから何が起こるかわからないだろ。


「それを言われると痛いが、これに関しては大丈夫だ。流石に、もうすぐ自分が管理しないといけない土地が荒らされるのは、レオンスも見過ごすことは出来ないはずだ」

 うん……。まあ、確かにレオなら、陽動だとわかっていても市民を守ろうとするかもな。

 レオ、意外と正義感強いし。


「まあ、僕は与えられた仕事を頑張って熟しますよ」

 どうせ、馬鹿な俺が作戦に口に出したところで意味はない。

 なら、やれることに全力を注ぐことだけを考えておくべきだろう。


「ああ、そうしてくれ」


「おい! エドモンド出て来い!」

 将軍との話し合いが終わって俺が立ち上がろうとすると、外から大きな怒鳴り声が飛んできた。


「ん? この声は?」


「盗賊たちですね……」

 間違い無い。あの前線にいた奴らの声だ。


「はあ、仕方ない。相手してやるか」

 将軍は、ため息を吐きながら立ち上がると、盗賊達の方に向かって行った。

 俺も後についていく。


「なんだ? 休憩は良いのか?」


「休憩なんてどうでも良い! 説明しろ! 話が違うじゃねえか!」


「話が違うとは?」


「俺たちは、楽に金が手に入るって聞いたからお前達に協力してやってるんだ。さっそく、死人が出てるじゃねえか! 話が違うだろ!」

 どうやら、盗賊たちはさっきの戦いでやっと戦争の恐ろしさに気がついたらしい。

 いつも弱いものいじめをしているような奴だ。まともに実力が上の相手と戦ったことはないのだろう。


「いや、これは戦争だぞ? 多少の犠牲が出るのは仕方ないだろ。それに、楽はしているだろ。お前たち、勇者がいなかったらあと何人死んでいたと思う?」


「そ、それは……」


「十倍は確実に超えていただろうな」


「だ、だが! この後、俺たちは勇者と別行動になるんだろ?!」

 はあ? こいつら、何を言っているんだ?


「まあ、そうだが……だからなんだ?」

 将軍も呆れちゃってるよ。


「今回、勇者がいたから助かったのに、勇者がいなかったら危ないじゃないか!」

 危ない? もう、こいつら馬鹿すぎるだろ。


「ぶっ。何を言っているんだ? お前ら、散々人を殺してきたんだろ? 出発前に、街を落とせるって豪語していたのはどこのどいつだ?」


「ぐっ」


「あと、勘違いしているが……これから帝国は、勇者のところに強い奴をたくさん送り込んでくるぞ? 今日みたいに、お前達はその戦いに巻き込まれたいのか?」

 ん?


「い、いや……」


「なら良いじゃないか。俺たちが強い相手を引きつけて、お前達が帝国を弱体化させる。ちゃんとした協力関係が成り立っているだろ?」


「そ、そうだな……」


「てことで、出発まで仲間を休ませておけ。国境を越えたら、休んでいる暇なんてないからな」


「りょ、了解した」

 す、凄いな。あの馬鹿たちを口だけで完全に納得させてしまうなんて。


「ふう、これで心配ごとが一つなくなった」


「凄かったです。僕には、あんなに上手く喋ることができませんよ」


「そうか? 相手に都合の良い嘘を並べてれば良いだけだぞ」


「僕は嘘をつくのが苦手ですから」

 俺はよくエレーヌに嘘をつくのが下手ってよく言われる。

 たぶん、顔に出ちゃってるんだろうな。将軍みたいに、平気な顔して嘘をつくのは無理だな。


「それは、次期国王として良くないな。戦争が終わったら、コツを教えてやるよ」

 嘘が上手い国王もどうなんだ? まあ、一応技術は知っていて損はないか。


「はは。ありがとうございます」



 SIDE:レオンス

 国境から帰ってきてすぐ、俺はイヴァン兄さんやベルノルトに王国の戦力について報告を行っていた。

「残念ながら、盗賊の数を減らすことはできなかった。ただ、魔砲を二つ壊すことに成功したぞ」


「おお、それは良かったです。盗賊の方も心配しないでください。私たちなら、盗賊なんて恐るるに足りませんから」


「そうだな。多少手こずることはあっても、負けることは絶対にありえないと思う」


「そうね。レオくんの騎士たち皆レベル高いし、負けることはないかな。ドラゴンもいるし」


「了解。でも、それぞれ人数差があることを忘れないようにすること。まあ、三人ならそこら辺上手く指揮してくれると思っているけど」

 今回、三つの都市の防衛の指揮をベルノルト、兄さん、ユニスさんに任せることにした。

 この三人を選んだ理由は、単純に経験と実力。

 そして、ベルノルトのところにヘルマン、イヴァン兄さんのところに前竜王のギル、ユニスさんのところにアルマとギーレ、あとは戦力を均等に割って配置した。

 どこも十分強いから大丈夫だろう。


「それより、問題はカイト……。足止め、やっぱり諦めるべきだよな」


「そうですね……。悔しいですが、これは相手の思惑に乗った方が得策でしょう。ただでさえ、こちらは人数が少ないのですから」

 無理をしても良いことはないもんな。


「それなら、私たち北グループが一番早く始まると思うから。終わり次第、私たちが奇襲に回るのは?」

 発言したのは、ユニスさんだ。


「いや、流石に盗賊と戦って疲れているところに、新しい仕事を任せるのは悪いですよ」

 確かに、ユニスさんたちが一番早く終わると思うけど……体力的にキツいだろ。


「大丈夫よ。あなたの騎士達は、それくらい大丈夫。なんなら、私のスキルもあるし」


「わかったよ……。とりあえず、ユニスさんたちが盗賊と戦い終わってから考えよう。どうせ、カイトたちもあの大人数での移動は少なくとも二週間はかかるだろうし」

 まあ、その時々で臨機応変にやっていくとしよう。

 とりあえず、第一の目標は盗賊たちを迅速に片付けること。これに集中しよう。


「よし、それじゃあそれぞれ転移するから準備を進めてくれ」

 それから、俺が三人をそれぞれ主要都市に送り、盗賊撃退に向けて準備を進めさせた。

 ミュルディーン騎士団初めての仕事だ。皆には、頑張って貰わないとな。



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