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閑話12 告白

本当はダンジョンでの話を書こうと思っていたのですが、こっちの話にしました。

 SIDE:ヘルマン


 最近、騎士団の練習は僕とアルマの模擬戦で終わる。

 皆に囲まれ、その中で俺とアルマが戦う。

「それじゃあ始めろ!」

 ベルノルトさんの合図で、すぐにアルマが仕掛けてきた。

 ここは建物の中だから斬撃は使えない。

 だから、こういう時はすぐに接近戦になる。


 僕は魔眼を使って、必要最低限の動きでアルマの攻撃をかわしていく。

 こうしていれば、必ずアルマは奇抜な攻めをしてくる。

 それが成功した時がアルマの勝ち、失敗したら僕の勝ち。


 そして今日はすぐにその時がやってきた。

 アルマが少し離れたと思ったら、僕の正面から向かってきた。

 さて、アルマはどう動くかな?


「セイ!」

 結果は、僕の勝ち。


「今日はヘルマンの勝ちだな」

 ベルノルトさんの勝利宣言で、僕よりも周りの騎士たちがワイワイ騒ぎ始めた。

 最近、騎士の間で僕とアルマのどっちが勝つのかを賭けて遊んでいるらしい。

 まったく、僕たちは闘技士じゃないんだから。


「あ~。やっぱり、今日は攻めすぎだった~」

 周りが騒いでいる中、僕に敗れたアルマが悔しそうに地面に寝転がった。


「そんなことないと思うよ。アルマはあれくらい攻めても大丈夫だと思うよ。今日のは、攻めるかどうかちょっと迷ったのが駄目だったんだよ」

 最後、アルマが正面のフェイントからどう動くかで迷ったのがいけなかった。

 調子が良いときは、魔眼を見ている隙すら与えてくれない。


「ああ……それね。言われてみればそうだったわ」


「でしょ? あれのおかげで、僕は攻撃を予測しやすくなった」


「そうよね……明日から気をつけないと。攻撃の判断で迷わない。行くと決めたら行く!」

 そう言ってアルマはバシバシと自分の頬を叩き、起き上がった。


「うん。それで良いと思うよ」

 僕はアルマに同調しながら、立ち上がるのに手を貸してあげた。


 それから賭け騒ぎが一段落して、ベルノルトさんが皆に号令をかけ始めた。

「よし。今日の練習はこれまで! 今日は久しぶりに午後の訓練は休みだ! 非番の奴は思う存分街で遊んでこい! いいか? お前らがたくさんの給料をレオンス様に貰っているのは、その金を街にばら撒くのがお前らの役目だからだ! 思う存分豪遊して、役目を果たしてこい!」


『おお!』

 ベルノルトさんのかけ声に、皆で大きな声を張り上げた。



「アルマはこの後どうする?」

 皆が遊ぶために外に向かっていく中、僕はアルマにこれからどうするのか聞いていた。

 特にやることもないし、アルマに合わせようかな。なんて考えていた。


「うん……特に何も決めてない。でも、街で何か買い物はしようかな」


「そうだよね。僕も貰った給料を使わないと」

 特に欲しい物はないけど、ベルノルトさんに言われたとおり僕たちには街で買い物をする義務があるからな……。


「それじゃあ、外で食べない? ちょっと良いレストランで」

 食べ物か。いいね。


「うん。良いと思うよ。あ、師匠たちが奥さんたちとよく行っているレストランにしない?」

 確か、街の中心にあるって師匠が言っていた。


「レオンス様がよく行くレストラン? 良いわね。そこにしましょう」



 それから、僕たちは汗でびしょびしょになった服から着替えて、二人で出かけた。

 街の端にある訓練場からレストランまでそこそこ距離はあるけど、もちろん僕たちには関係無く、すぐについてしまった。

「へえ。ここがそうなんだ。街の中心にあるんだもん。美味しいに決まっているわ」


「そうだね。空いてるかな……? すみません!」


「あいよ。お二人さん?」

 店員さんを呼ぶと、一人の女性が出てきた。

 あ、この人、師匠が言っていた人かも。


「はい」


「なら、すぐに案内出来るよ」

 ちょうど、二人席だけ空いていたみたいだ。

 運が良いね。


「何を頼む?」

 アルマがメニューを僕に見せながら、困ったように聞いてきた。

 僕と同じで、アルマも普段はレストランなんて来ないだろうからね……。

 メニューを見ても何を頼んだらいいのかわからないんだと思う。


「師匠はお任せがおすすめって言ってたよ」


「へえ。じゃあ、おすすめにしようか」


「うん。すみません」

 アルマの了承を得て、僕はメニューをたたみながら店員さんを呼んだ。


「はいはい。注文は決まったかい?」


「はい。おすすめでお願いします」


「おすすめ? ふふ、良いわよ。ちょっと待ってなさい」

 僕の注文に少し驚きながらも、店員さんはすぐに笑顔で対応してくれた。


 そして、それからちょっと待って。

「はい。うち自慢のパスタだよ」

 店員さんが美味しそうなパスタが乗ったお皿を二枚運んできた。


「わあ。おいしそう」


「それは良かった。ふふ。おすすめって注文したの、久しぶりだわ」


「そうなんですか?」


「そう。前は、可愛い子たちを三人も連れていた男の子だったわ」


「へえ~」

 師匠だと思いつつも、僕たちは知らなかった体で少し驚いた声を出した。

 あの時、師匠はお忍びだったはずだからね。


「あれは、今思うと領主のレオンス様だったんだろうね。で、一緒にいたのはシェリア様とリアーナ様、あとはレオンス様お気に入りのメイドさんってところね。あなたたち、騎士様でしょ? 領主がお忍びでうちのレストランに来たとか聞いてないの?」

 あ、やっぱりバレてるんだ……。そりゃあ、師匠は色々と目立つ人だからな。


「いえ。特に……」


「そう? また来ないかな~」


「レオンス様は今、凄く忙しいから……」


「らしいわね。街のどんどん発展させちゃって……ここ数年で随分とこの街も変わってしまったわ。それだけじゃなくて、王国との戦争もレオンス様が中心になってやっているんでしょ?」


「詳しいですね……」

 戦争のことなんて、どこで知ったんだ?

 まだ、確定してないから一般人は知らないはずなんだけどな……。


「もちろんよ。世界の中心の街の中心で店をやっているのよ? そこら辺の情報屋よりもこの世界のことを知っているつもりさ」


「なるほど……凄いですね」

 言われてみれば、ここには世界中の商人が集まるんだもんね。

 そりゃあ、詳しくなりそうだ。


「そんなことないさ。あ、ごめんなさい。せっかくのパスタが冷めちゃうわね。ゆっくりしてって」

 謙遜しながら、店員さんは店の奥に行ってしまった。


「面白い人ね」


「うん。師匠もお店の人が面白いって話してたよ」

 たぶん、師匠はあの人のことを言っていたんだろうな。


「それにしても、シェリー様にリーナ様はわかるけど、そこにベルも一緒に連れて行って貰えたのか~」


「ここだけの話……師匠、昔からシェリー様と何回も修羅場になるくらいベルさんのことを溺愛してるから」

 シェリー様が嫉妬深いのは有名だけど、それ以上に師匠も悪いと思う。

 次から次へと奥さんを増やしてたら、そりゃあシェリー様も怒るよ。

 最近は師匠の女癖も良くなって、シェリー様との関係も良好だけど……。


「へえ。ベルの何が良かったのかな?」


「フォースター家は勇者様の代から獣人に目がないんだって。初代フォースター家のメイド長は獣人だったらしいよ」

 勇者様も相当の獣人好きって父さんが言っていた。なんでも、メイド長を可愛がりすぎて魔導師様に勇者様が殺されかけたエピソードがあるとか。

 そう考えると、シェリー様は優しい方だな。


「へえ。獣人好きは遺伝なんだ」


「たぶんね。あとは、ベルさん自体の頑張りもあるんじゃないかな?」

 今まで、たくさんのメイドさんを見る機会があったけど、ベルさんほど主人思いのメイドさんは見たことがない。

 気配りも完璧で……いつも師匠を傍で支えている。

 あの役目は、ベルさんだから出来るんだろう。


「そうね。孤児院にいたときは少し抜けていて、あんな大人しくなかったんだけどな~」


「へえ。ベルさんって、孤児院にいたときはどんな性格だったの?」


「活発で優しいお姉ちゃんだったわ。よく私の相手をして貰っていたわ」


「へえ。やっぱり、ベルさんは強かったの?」

 僕たちは今のベルさんに全く歯が立たないけど、当時はどうだったんだろう?


「もちろん。孤児院で彼女に勝てる人はいなかったわ。獣魔法がズルすぎなのよ」


「獣魔法って、そんなに凄いの?」

 獣人にしか使えない特別な魔法なのは知っているけど、実際に使っているところってそんなに見たこと無いんだよね。


「うん。例えるなら、一人だけ無属性魔法が使えるような感じ」


「確かに、それは誰も勝てないね」


「それでも、私はベルが卒業するまでにあとちょっとのところまでいったのよ! ああ、残念」


「へえ。やっぱりアルマは凄いね」

 小さい時から戦いのセンスがずば抜けていたんだろうな。


「まあね。今のベルに勝つのは無理そうだけど~」


「仕方ないよ。師匠のお嫁さんたち、エルシー様以外皆強いから」

 なんせ、騎士たちが総掛かり挑んでいるダンジョンに、四人だけでダンジョンを攻略しているんだから。

 しかも、騎士より奥に進んでいる。


「いや、エルシー様も世界一の資金力を考えたら、十分強いんじゃない?」


「言われてみればそうだね。結局、五人とも強いんだ」

 いや、何かで飛び抜けてないと師匠の奥さんにはなれないのかな。


「最強の魔法使いに聖女、体術最強、世界一の金持ち、全てを破壊出来る人……名前を並べたら、どれも物語の主人公みたいね」


「そりゃあ、主人公だよ。この世界の主人公は、師匠とその奥さんたちだから」

 これは間違い無い。


「はい。そうですね。はあ、強い人たち、凄く憧れるわ」


「強さは努力しないと手に入らないよ。師匠も奥さんたちも凄く努力しているからあそこまで強いんだ」


「わかっているわよ。シェリー様の自由自在に操る魔法を見ていれば、努力してないなんて口が裂けても言えないわ」


「あれ、凄いよね。僕も学校で初めて見せて貰った時は驚いた」


「そういえば忘れていたけど、ヘルマンって貴族様だったのよね」


「貴族って言っても、一番下だけどね」

 ほぼ平民みたいなものだよ。


「それでも平民の私たちからしたら、雲の上の存在よ」


「そうかな……」

 父さんのやっていることも、普通の騎士と変わらないし。一般的な家だと思うんだけどな。


「ねえ。貴族学校ってどんな感じなの? 教えてよ」


「どんな感じって言われても……そうだな。実力主義が一番しっくりくるかな」


「実力主義?」


「うん。学力とか魔法、剣の能力で順位がつけられて、それでクラス分けをされるんだ」


「へえ。ちなみに、ヘルマンはどこのクラスなの?」


「一番上のSクラスだよ。師匠に勉強を教わって、なんとかなれたんだ」

 僕が凄いんじゃなくて、師匠が凄いんだ。

 あんなに馬鹿だった僕をSクラスに入れてしまったんだから……本当、師匠には頭が上がらないよ。


「へえ。凄いわね。やっぱり、レオンス様やシェリー様たちは頭がいいの?」


「もちろん。師匠はいつも満点だし、リーナ様はいつも二位。シェリー様も成績上位者でいつも名前が挙がっていたよ」


「流石ね……。レオンス様に関しては、本当に完璧ね。強いし頭が良いし、優しいし、私もレオンス様と結婚出来たらな~」


「そ、そうだね……」

 あれ? なんかおかしい。

 女性が師匠に憧れるのは普通のことなのに……なんか、モヤモヤする。

 僕は、アルマが師匠と結婚するのが嫌なのか?

 それからしばらく、僕は適当にアルマと会話を続けながらそのことを考えていた。


 僕はアルマのことが好きなのか?

 毎日、こうして一緒にいるのが当たり前になるくらい仲良くなって……。

 うん……これだけ一緒にいるってことは、好きってことでいいのかな?

 師匠で考えてみると……そうだね。師匠といつも一緒にいる女性は、皆師匠の奥さんだ。

 じゃあ、僕もアルマのことが好きなんだ。


 そして、レストランを出た後の帰り道。

 僕は決心して、アルマに話を切り出した。

「ねえ……さっき言っていたことなんだけど……」


「さっき?」


「師匠と結婚したいって話」


「え? あれ? あんなの冗談に決まってるじゃない! 私がレオンス様と結婚? 無理に決まってるじゃないのよ」

 緊張して聞いた僕が馬鹿みたいなほど、軽い口調で答えられてしまった。

 でも、僕は緊張を保ちながらまたアルマに話しかけた。


「ねえ、アルマ」


「なによさっきから……あなたらしくないわね」

 僕が立ち止まって話しかけると、アルマが不思議そうに振り返った。


 アルマが振り返ったのを確認した僕は、更に話を進めた。

「僕は、どんなに頑張っても……師匠を超えることは出来ないと思う」


「う、うん……」


「けど、僕は頑張ってもっともっと強くなる。だから……」

 ふう。と息を整え、僕は頭を下げながら一気にその先を言い切った。


「僕がアルマに三連勝出来るくらい強くなったら、僕を結婚相手として認めてください!」


「え、ええ……? ちょっと、ここで?」

 あ、ここ、道の真ん中だった。

 何も考えずにプロポーズしちゃったけど、今になって凄く恥ずかしいな。

 でも、男なら、これくらい我慢しなくては。

 僕は、周りの声など気にせず、頭を下げ続けた。


 すると、アルマが僕の肩をトントンと叩いた。

「はあ、わかったわ。……出来るものならやってみなさい」

 僕が顔を上げると、恥ずかしそうに顔を赤くしたアルマが、ニッコリと笑いながら答えてくれた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界の中心の街の中心の道の真ん中で愛を叫ぶww [一言] ダンジョンのお話もぜひ。
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