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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十章 勇者結婚編

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第二十二話 結婚前夜④

 

「ふう。やっと第一フェーズが終わった感じかな」

 細々とした魔物の大群を片付け、照明が壊されて薄暗いパーティー会場を見渡しながら俺は一息ついた。

 勇者の方は、ヘルマンたちとリーナが頑張ってくれたみたいだ。

 正直、キツいと思っていたんだけど、やっぱり愛の力は偉大だったな。


「これからどんどん強くなっていくのよね……?」


「そうだね……ルーを連れて来た方がいいかな?」

 地下市街の時は、次のフェーズまで数時間くらい間があったから、次は明日の朝くらいかな?

 それまでになら、ルーも連れて来られるだろう。


「いや、流石に魔族が帝国にいることがバレたら、教国まで次の戦争に参加してくるかもしれないわよ?」

 あ、そうだった。ここは王国、敵しかいないんだっけ。

 そうなってくると面倒だな……。


「たぶん最後の相手はルーがいないと……」

 城が多少破壊されるけど、ルーなら簡単に倒せるからな……。


「魔界でも五本の指に入る魔物が召喚されるんだっけ?」


「そうだよ。地下市街の時は、昔魔王をやっていた魔物」

 今の魔王とどのくらい実力差があるかはわからないけど、あの魔物を素材にした魔法アイテムの有能性から考えても、あれは相当強かったんだろうな。


「そんなものがこんなところに召喚されたら……」

 うん。間違い無く城は壊れると思う。

 なんなら、この後ベヒモスが出てきたらあの巨体だけで城が壊せるよな。


「と言っても、今すぐじゃないから……え?」

 少しゆっくり休もうと言おうと瞬間、空間の割れ目から人型の魔物がぞろぞろと出てきた。

 おかしい。前はこんな間隔が短くなかったはず。


「あれは……マッドデーモン。しかも、十体……」

 しかも次の魔物は、忘れもしない……あの悪魔だった。


「そんな怖い顔して……もしかして、強いの?」


「……うん。じいちゃんを殺した魔物だよ」

 試練のダンジョンの五十階のボス。

 忘れられない相手だ。


「そんな……大丈夫なの?」


「大丈夫。でも気をつけて、あいつら消えるから」


(今のお前なら、そこまで怖い相手でもないだろ?)


(そうかもしれないけど、誰しもトラウマには弱いものだよ)

 エレナの質問にそう答えながら、俺はアンナを取り出して装着した。


「よし。この魔物は俺が全部倒す。皆は、後ろで固まってて」

 俺が動き始めると、悪魔たちはニヤリと笑って姿を消した。

 懐かしいな。あの馬鹿にした笑顔。


「けど、あの時みたいにその顔を怖く感じることはないよ」

 ちゃんと見えている。

 七体が俺を囲う様に、残りの三体はシェリーたちの方に向かった。


「そっちには行かせないよ」

 俺は転移を使って、まずは三体を瞬殺した。

 うん。見えれば怖くない。


 俺は悪魔たちの強さを再確認しながら、残った七体に目を向けた。

 全員、さっきまでの笑顔は消え、逆に恐怖しているのが表情にでていた。


「少しは、復讐になったかな」

 そう言いながら、俺は悪魔たちの頭を飛ばした。


 SIDE:エレメナーヌ


「嘘でしょ……何あの動き……暴走したカイトより速いじゃない……」

 十体の悪魔が出てきて……消えたと思ったら、次の瞬間に三体が倒れていて、少し遅れて他の七体が倒れていた。

 何かの冗談よね? 私は、あんな化け物とカイトを戦わせようと考えていたの?


「あれでも、レオくんは城を壊さないように随分と力を抑えていますよ。レオくんなら、一歩も動かずにあいつらを殺すことが可能ですから」


「嘘でしょ……」

 あれで手加減をしている? 信じられない……いえ、信じたくないわ。


「本当ですよ。と言っても、私もレオくんが本気で戦っているのを見たのは二、三回しかないんですけどね」


「あの人が本気になる相手って!?」

 手加減してあの強さなのに……本気出して戦える相手ってそれこそドラゴンでも無理でしょ。


「一回は、今みたいな状況になった時ですね。あれは本当に怖かったです。あと一回は……秘密です。今は可愛らしくなってしまいましたが、当時は凄く恐怖したのを覚えています」


「色々と突っ込みたいところだけど……まず、今みたいな状況があったってどういうこと?」

 忘れてたわ。レオンス侯爵、この状況について何か知ってたんだ。

 まずはそれを聞かないとダメだわ。


「簡単です。今日と同じく、ミュルディーン領でも魔の召喚石が発動してしまったことがあるんですよ」


「え、いつ?」

 そんな報告されてない。

 というより、こんな魔物の大群が街に現れていたら、世界中で大事件として取り上げられているわ。

 それなのに、どうして何事もなかったようにミュルディーン領は発展を遂げているの?


「闇市街が無くなった時ですよ。闇市街のことはご存じですよね? 闇のオークションで魔法石を落札されていましたもの」


「え? どうして……いや、そうね」

 そりゃあ、自分の領地で購入された物だものね。

 誰が買ったかなんて簡単にわかるわよ。

 はあ……私が忘れたくて仕方ない愚かな頃の私。

 あの魔法石、過去最高額で手に入れた宝石、今でもあれだけはもったいないから大事に部屋に飾っているのよね。


「そんなことより、魔の召喚石というのは何なの?」

 危ない。話が逸れていたわ。

 今大事なのは、この状況について少しでも知ることじゃない。


「魔界から強力な魔物を呼び出す魔法アイテムですよ。何段階にも分けて魔物が召喚されて、どんどん召喚される魔物が強くなっていきます。それこそ、最後は……」

 魔界……魔王が住んでいた世界よね。

 魔物と魔族がたくさんいる世界……そんな場所から魔物を呼び出すなんて、恐ろしいにも程があるわ。


「……最後はどうなるの?」

 怖くて聞きたくなかったけど、勇気を振り絞ってリアーナさんに質問した。

 今後、レオンス侯爵が本気にならないといけない魔物が出てくると考えると……足の震えが止まらなかった。


「いえ、最後の魔物がどこまで強いのかは私もわかりません。ただ、この城が壊されるのは覚悟しておいた方が良いかもしれません」


「そんな……」

 この城が壊されるなんて……。


「城が壊されても、皆が生きていれば良いんじゃないか? あ、でも、王国に建て直すお金はないかもしれないな」

 カイト……。

 私がこれから起こることに絶望していると、さっきまで魔物を倒していたカイトが慰めてくれた。


「ねえ。カイトはレオンス侯爵の強さを見てどう思った?」


「うん……正直言うと、少し恐怖を感じたね。あと数年したら、戦わないといけない相手だから」

 やっぱりそうよね。実際に戦うんだもん、私以上に怖いはずだわ。


「あの……その戦わないといけないとか……私の前で言わない方が……」


「いいじゃない。あなたたちもそのつもりでここに来ているんでしょ? それに、あれだけ強い人たちがいれば別に私たちなんて怖くないでしょ?」


「……」


「で、あれを見た後、カイトは帝国と戦争したいと思う?」

 リアーナさんを軽く黙らせた後、私はカイトに対して質問を続けた。

 カイトの返答次第では……いや、たぶんカイトも戦争はしたくなくなったはず。

 こうなったら……これが終わったらどうにか私が王になって、戦争を止めないと。

 多少、私の命が狙われようと関係無いわ。


「俺はあれを見る前から戦争はなるべくしたくないと思っているよ。だって、戦争では絶対に人が死ぬわけだから」

 そういえばそうだった。最初から、カイトは強制的に戦争に参加させることになっていたんだっけ。

 勝手に呼び出して、無理矢理戦争に参加させようとしていたんだ……。

 こんな負けることが確定してからそんなことに気がつくなんて、やっぱり私って愚かだわ。

 宝石姫から成長なんてしてないじゃない。


「そんな顔しないでよ。確かに戦争は嫌だよ。でも、俺が戦争に参加しようと思ったのはそれがエレーヌの為になるってわかったからだよ」

 私の為……。


「俺はエレーヌの為なら、他のことなんてどうでも良いと思っているからね。エレーヌの命令なら、喜んであいつを倒してくるさ」

 もう、そうやっていつもいつも私を甘やかして……。


「カイト……わかったわ。私も覚悟を決める」

 私が成長するためにも、ここでカイトに甘える訳にはいかない。

 これが終わったら、今度は私が頑張る番。


二百話達成!!

約二年二ヶ月。長かったような短かったような。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございましたm(_ _)m

そして、これからまだまだ続きますのでどうぞよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] おつかれさまです。今後の更新も楽しみにしています! [一言] 国のためでなく君のために戦うよ的な言葉に、はげてしまえ!と思った僕はもう末期(笑)
[良い点] カイトくん。 いーわー。いいやつだわー 頑張れ。
[一言] ……えーと、なんで「魔の召喚石を攻略」してるのでしたっけ? 王国内で王国側の人間が自国の貴族や勇者諸共にテロってきたのだから 第一波の襲撃を退けたら、昏睡する貴族も、狂化して暴れる勇者も 第…
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