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第十六話 威圧

 

「わあ~。見て、地面が小さいわよ」


「う、うん……」


「あ、もしかしてヘルマン、高いところが苦手?」


「そ、そういうわけじゃないよ」


 現在、俺たちはドラゴンの背中に乗って旅をしていた。

 旅先は王国。

 そう。王女と勇者の結婚式に参加するためだ。

 スピード重視だから振り落とされそうになって、とても乗り心地が良いとは言えないけど、無属性魔法が使える俺たちには問題無い。


「まさか。本当にドラゴンに乗って王国に向かうことになるとはね」


「そうだね。意外なのは、前竜王の方が協力的だったことかな」

 今、俺たちが乗っているのがギーレの親であるギルの背中。

 ギーレより一回り大きい。


「弱い者は強い者に従え。弱肉強食のドラゴンらしい考えではありましたけどね」

 ギーレと話せるくらい仲良くなった頃、ギーレに前竜王と話がしたいって言われたから、会いに行ったんだ。

 そしたら、急に俺と戦えとか言い出して、戦うはめになった。

 まあ、結果は俺の勝利。ギーレよりは経験があって戦いづらかったかな。

 そしたら、ギルが俺の配下になると言い出した。


「おかげで、ギーレとの交渉も上手くいったしね」


「いやいや、ギーレに関しては元々懐柔出来てただろ。まあ、親父さんの一言でより協力的にはなったけど」

 弱い者は強い者に従え。がドラゴンの決まりなのかな? それを言われたら急にギーレが大人しくなってしまった。


「ギーレ、お父さんが絶対って感じでしたからね」

 そうなんだよな。それなのにお父さんと離れ離れにしてしまって申し訳なかった。


「あ、もしかしてあれが王都ですか?」

 うん……地図的にも見た目的にも王都かな。


「そうだね。とりあえず、中心の王城に着地して」

 よし。これから派手にいくぞ。


 SIDE:カイト


「はあ……」

 俺はエレーヌの部屋で外を眺めながら大きくため息をついてしまった。


「そのため息は結婚式に対して? それとも、帝国の使者と上手くいくか?」

 結婚式に対してのはずがないじゃないか。


「帝国の使者の方だよ。レオンス・ミュルディーン……どんな人かな?」

 次の戦争で鍵を握る人物、これからその前哨戦が始まるんだ。

 緊張しないわけがない。


「知らないわよ。いい? 何があってもあなたが弱気になるなんてことはしたらダメだからね? この意味わかる?」


「わかってるよ。俺は王国の力の象徴。俺が負ければ国が負けたことになる」


「そこまで気負わなくてもいいけど……」


「た、大変です!」

 エレーヌが何か言おうとすると、エレーヌ直像の騎士が慌てて部屋に入ってきた。


「一体どうしたの? 帝国の使者が到着した?」

 いや、それだけなら、ここまで慌てないでしょ。


「帝国の使者がドラゴンに乗って空から急に現れたんです!」

 ドラゴンに乗って空から?


「は? 何を言っているの?」


「信じられないと思われますが……」


「ちょっと俺、見てくる」

 もしそれが本当なら大変なことだ。

 これは自分の目で確認しないと気が済まない。


「待って! 私も行く!」

 呼び止められた俺は、エレーヌをお姫様抱っこして、窓から飛び出した。



「う、嘘でしょ……本当にドラゴンだ」

 城の屋根から確認する、確かに大きなドラゴンが……二体もいた。

 その足下にいるのが帝国の使者たちか。


「あれがドラゴン……。今の俺でも、あれを二体も倒せる自信はないな」

 ダンジョンのボスでもあそこまで大きくなかった。

 高難易度のダンジョンのラスボスを倒せるくらいじゃないと、あれとは戦えないかな。

 二体なんて、とても戦いになる自信がない。


「そんなの当たり前よ。ドラゴン一体で、普通は国が半壊するんだからね? それを飼い慣らしているなんて……」

 レオンスがドラゴンを倒せるという噂は本当だったんだね。

 となると、王国の勝ち目は本当に薄いな。


「エレーヌが得た情報だと、帝国は戦争したくないんでしょ?」


「うん。公爵家の反乱で国が荒れちゃったから、なるべく戦争は避けたいはずよ」


「今更だけど……戦争、今から取りやめることは出来ないんだよね?」

 やらない方がお互い得だと思うんだけど。


「そうね。あの豚はドラゴンのことを聞かされても自分が負けるなんてこれっぽっちも思わないと思うわ。それに、帝国との戦争を止めたとしても、今度は悲惨な内乱よ」

 そうだよね……。ただでさえ、うちの貴族はやりたい放題。

 それに、エレーヌは貴族たちから嫌われている。

 内乱になったら、真っ先に狙われるのはエレーヌだろう。


「はあ。弱気にならない方が難しいよ」


「そうね。でも、これで私のするべきことは決まったわ」

 手伝いたいけど、政治の駆け引きはエレーヌに任せるしかない。

 俺が出来ることは、エレーヌを守ってあげることだけだね。


 SIDE:レオンス


「え、遠路はるばるようこそ。私はアルバー王国の宰相、ラムロス・ベックマンです」

 派手に到着を決めると、髪の毛の薄い男の人が慌てながら城から出てきた。

 宰相、こいつが無能国王を操っている男か。


「いえ。ドラゴンのおかげでそんな遠くは感じませんでしたよ。ラムロスさんですね。今回はエレメナーヌ殿下と勇者カイト様のご結婚おめでとうございます」


「ド、ドラゴンですか……」

 やっぱり、ドラゴンにビビっているみたいだ。


「ギル、ギーレ。人になっていいよ」

 これ以上怖がらせていても話にならないし、俺は二人を人のサイズにさせた。


「長旅ご苦労さん」


「ありがたきお言葉」

「ふん」

 俺が労うと、ギルは会釈し、ギーレはぷいっと顔を横に向けてしまった。

 まあ、ギーレなりの愛情表現だと思えば可愛いものだ。


「さて、初めまして。私はレオンス・ミュルディーン、こちらはリアーナ・アベラール。帝国使者の補佐として派遣されました」

 ドラゴン二体を人にしてから、俺は宰相にリーナを紹介しながら自己紹介した。


「は、始めまして。レオンス殿の噂は王国まで届いております」


「そうですか。それは嬉しい限りです。ちなみに、今日の予定を聞かせて貰っても?」


「は、はい。本日はこの後シェリア殿下、レオンス殿に国王陛下と謁見して貰う予定です。ついでに明日以降の説明をさせて貰いますと、明日は夕刻より前夜祭を行い、明後日は早朝より式が始まります」

 いきなり国王と謁見するのが気がかりだけど、それ以外は普通だな。


「了解しました」


「それと、式後お二人とエレメナーヌ殿下がお話をしたいそうなので、式後しばらく王国に残って頂けると幸いです」

 しばらくね……。


「それはありがたいです。私もエレメナーヌ殿下とは直接お話をしたいと考えていましたから」

 ちょっときな臭いけど、笑顔で快諾しておいた。

 王女とは一度話したいと思っていたから、まあいいかな。


「そうでしたか。それでは、式後の予定は改めて連絡させて貰います」


「はい」



「宰相、ドラゴン見てタジタジだったわね」

 国王との謁見までひとまず部屋に案内された俺たちは、宰相の反応について話していた。


「とりあえずの王国への威圧という目標は成功だったね」

 あれだけ怖がっていれば、少しは戦争を仕掛けるのに後ろ向きになる貴族も出てくるだろう。


「問題は、ドラゴンを見て王国、特に国王がどう動くかだね。戦争するのを諦めてくれれば良いけど、王国の情勢的にそれは反乱を招いちゃうから出来ないかな」

 色々と調べてわかったけど、王国は王への不満が半端ないらしい。

 それが庶民だけならまだしも、貴族からも嫌われている。

 だから、その怒りを国王はどうにか帝国に向けさせたいって考えているみたい。

 まあ、人の奥さんを奪っていればいくら逆らえない貴族でも不満は爆発するよな。


「レオの予想としては、これから国王は何をしてくると思う?」


「暗殺か監禁」

 絶対国王はこの手でくると断言してもいい。


「え?」


「元々、そのつもりだったんだと思うよ。戦争するきっかけになるし、俺やシェリーは捕虜としても優秀だから。まあ、その対策はバッチリだけどね」


「あとは……宝石姫とのお話か」


「そうだね。本当はこっそり話しに行くつもりだったけど、手間が省けて助かった」

 暗殺を防ぐのは面倒だけど、次期国王と話せるのは大きい。

 政治面での作戦も、色々と考えれいるし。


「上手くいくかな?」


「大丈夫でしょ。王女は親と違って頭が良いってバルスが言ってたし」

 愚王と話し合うよりは楽だろ。



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