第七話 公爵会議①
長い間更新が止まってしまってすみませんでしたm(_ _)m
明日からはちゃんと更新していきます。
フランクとジョゼの婚約が決まってから約半年が経ち、俺は十三になった。
この半年間は特に大きな問題は無く、強いて言えばフランクとジョゼの婚約がちゃんと両方の親に認めて貰えたってことくらいかな。
あとは、休学期間に遅れた授業をどうにか取り戻そうと授業の時間が普段より伸びた。
領地の方も着々と発展が進んでいる。
それでも、元フィリベール領の再開発をするには資金が心許ないんだけど。
戦争まであと三年。フィリベール領にまで手が回るかな?
さて、話題を今日に変えさせて貰うと実は今日から学校は休みだ。
魔法学校入学に向けた準備期間ということになっている。
それぞれ、入試対策と魔法練習を頑張ってくれ期間だ。
まあ、俺たちSクラスは入試免除の推薦入学だから単純な長期休みなんだけどな。
さらに言えば俺、魔法学校に行くつもりないし。
『え!? 魔法学校に行かない?』
「そう」
現在、俺は受験休みの初日だから昼間から俺の部屋に集まっている皆に魔法学校に行かないことを伝えていた。
皆、当然驚いた顔をしていた。
「ど、どうしてか聞いても……?」
「俺が学べることは少ないだろうし、これから戦争に向けて忙しくなっていく中で授業に時間を取られるのはキツい」
正直、これから三年間で元フィリベール領を戦争の拠点にしていくことを考えると、これまでとは比にはならないくらい忙しくなっていくはず。
とてもじゃないが、学びの少ない授業に時間を割くことは出来ない。
「なるほど……確かにレオが魔法学校で学べることは少ないと思うけど……」
最初に理解してくれたのはフランクだった。
フランクなら、理解してくれると思ってたよ。
「だろ? だから、俺の最終学歴は貴族初等学校卒だな」
さて、問題のシェリーとリーナの反応は……。
「それじゃあ、私も魔法学校に行かない」
「え?」
シェリーの思わぬ発言に、一同目が点になった。
「だって、私もどうせ学べることは無いでしょ? ダミアンさん以上に魔法の扱いが上手い教師がいると思えないし」
そりゃあ、おじさんより魔法が上手い人はいないだろうけど……。
てか、おじさんと比べるのは魔法学校の教師が可愛そうだろ。
「そうだけど……。皇帝に許して貰えるの?」
「それはどうにかなるわ」
うん。どうにかなりそう。
「じゃあ、私も! おばあちゃん以上に聖魔法を使え熟せる教師がいると思いません」
「マジか……学校には行った方が良いと思うぞ?」
二人ともまだ若いんだし、まだまだ青春を楽しんだ方がいいと思うな。
「それをレオが言う? 良いのよ。どうせ、私たちはレオのお嫁さんになるだけだし、魔法学校卒の肩書きは別に必要ないもの」
「そうだけど……」
そうなんだけどさ……わざわざ俺に合わせなくても。
「師匠……僕も」
「お前が行かないのは予想済み」
だって、剣一本のお前が魔法学校に行く意味ないもん。
「は、はい」
「フランクとジョゼはもちろん行くだろ?」
「もちろん。親がうるさいからな」
「はい。私はそんなに急いで何かしたいことはありませんので」
普通はそうだよな。
「そうなると、フランクたちとは当分会えなくなってしまいそうだな」
「大丈夫だよ。手紙ぐらい送るさ」
「手紙書くのが得意だもんな」
「うるせえ」
俺が茶化すとムッとしたフランクが俺にデコピンを食らわせた。
毎日会って話しているのにまだ文通を続けているんだから、本当ラブラブだよな。
「あ、そうだ。卒業式まで二人ともこっちにくる? どうせ暇でしょ? 俺がいないとこうして部屋で話すことも出来ないだろうし」
「いいのか? 忙しいんだろう?」
「いいよ。ちょっと手伝って貰うことはあるかもだけど。孤児院の子供たちの相手をして貰うとか」
ちびっ子たちも、たまには新しい遊び相手が欲しいだろうからな。
「あ、仕事で思い出しました。来月、騎士たちの最強決定戦を開催するそうで、その回復係を頼まれていたのですが、良かったらジョゼさんも手伝って貰えませんか?」
そういえば、そんな催しがあるって言っていたな。
もちろん俺も招待されている。皆、どこまで成長しているのか楽しみだな。
「もちろん。泊めて貰うなら、それくらい働きますよ」
「よし。それじゃあ、明日からあっちに行くから準備しておいて」
「は~い」
ということで、今日は解散!
元々、午後は仕事があったしね。
「じゃあ皆を送ったらヘルマン、仕事に行くぞ」
「はい!」
「ん? ヘルマンも? 何の仕事?」
「会議だよ。今日は年に一度の公爵家会議だ」
ヘルマンは、付き添いの騎士だ。
何でも、そういう格式の高い集まりでは護衛と文官を侍らせるのが慣例らしく、ヘルマンとフレアさんを連れて行くことにした。
領地の細かいことは、フレアさんに任せちゃってるからいないと困ってしまうからありがたい。
「まだ公爵になっていないのに、呼ばれたのか?」
「まあ、今回は三年後の戦争について話し合いたいらしいからな。当事者の俺がいないと決められないんだって」
三国会議はミュルディーン領が会場だし、戦争では重要な拠点になるだろうからね。
「確かに。大変だな……」
「もう慣れっこだよ」
それから、シェリーたちを女子寮に送り、ヘルマンと一旦ミュルディーン領にやって来た。
「あ、やっと来ました~~~」
ああ、そういえばバルスも連れて行かないといけないんだっけ……。
あっちの情報を一番知っているとは言え、この口調で説明させないといけないのか。
「待たせてごめん」
「心配なく~~~。私が早すぎただけで~~~す」
うん。やっぱり心配になってきた。
今から代役を考えようかな……。
「ヘルマン、騎士の格好に着替えて来い。俺も正装に着替えてくるから」
「わかりました!」
「バルスはフレアさんを呼んできて」
「了解しました~~~」
それから着替えが終わり、フレアさんとも合流して帝都の自宅に転移した。
「わざわざ馬車を経由しなくても~~~。レオ様なら一瞬で城に入れるじゃないですか~~~」
「こういうのはちゃんと馬車で向かうものなの」
「そうですか~~~。それは失礼~~~」
んん……そんなことより、俺はお前のその口調が皇帝や他の公爵家の面々の気分を損ねないのか凄く心配だ。
「到着。俺たちが一番乗り」
「みたいですね~~~。予定通りじゃないですか~~~」
こういうのは、一番若い俺が一番先に来てないといけないかな?
ということで、早めに来てみた。
けど、少し早く来すぎたな……。
それから、俺たちは三十分くらい待つことになった。
最初に現れたのはフランクとジョゼの父さん。ルフェーブル家とボードレール家の当主だ。
それぞれ後ろに騎士と文官を連れているので、急に部屋の人口密度が上がった。
「やあ、久しぶりだね。うちの息子がお世話になっているよ」
「こちらこそ。いつも助けられています」
「そうか? 婚約の件まで助けて貰ってしまったからな。今度、何かお礼をさせて貰うよ」
そういえば俺が手助けしたことを説明したって言っていたな。
まあ、悪いことをしたわけでもないからいいか。
「お礼を言うのは私の方だ。フランクくんとの結婚は、私も流石に諦めていた」
「まあ、うちの決まりがありますからね。それに、最近は側室を取るのがあまり良く評価されない時代ですから」
やっぱり、貴族ではそんな風潮があるのか。
全てはじいちゃんのせいだな。
「まあ、その風習もレオくんがぶっ壊してくれたがな」
「確かに、英雄に四人も側室がいるとなると誰も咎めることは出来ませんね」
え、英雄って……それに、なんか褒められているのに嬉しくない。
「ということで、ちゃんと礼はさせて貰う。まあ、詳しい話は会議でしよう」
会議で? なんか、戦争関連で支援でもしてくれるのか?
「わかりました」
「お、もう皆来てるのか」
ボードレールとルフェーブルの当主と話が纏まると、それを待っていたかのように父さんがやって来た。
父さんも二人騎士と文官を連れている。
「俺たちは今来たところだ」
「そうか。なら良かった。お、君がヘルマン君か。これからもレオをよろしくな」
「は、はい」
父さんに手を出され、ヘルマンは遠慮がちに握手していた。
「ヘレナから聞いたぞ。凄く強いんだってな? もし良かったらうちに来ないか? レオより高い給料を出すぞ~」
「ちょっと」
「冗談だ。うちはラルスがいるからな。問題無い」
そう言って、自分の後ろにいる騎士の肩をポンポンと叩いた。
ちなみに、ヘルマンの父さんだったりする。
「フォースター家の右腕と名高いカルーン家か。ちゃんと次代にもその強さが受け継がれているようだな」
「まあ、強くしたのはレオだけどな」
「自ら育成するとは、やっぱりやることが違うな」
「まあ、人手が足りなくて学校を造る男だからな」
「そうだ。忘れていた。今日はそのことで話したいことがあったんだ。その学校に、我が領民を毎年三人ほど入学させて貰えないだろうか? なに、タダでとは言わん学校運営費の一割を負担させて貰う」
一割!? たったの三人で一割だと?
「いいですけど……逆に、三人だけで一割も出して貰ってしまってもよろしいんですか?」
「なに。無属性魔法の技術が教われるなら、安いもんだ。それに、文官はうちも不足気味なんでね」
ああ、無属性魔法が狙いか。
まあいいか。秘匿しているつもりもないし。
それよりも今は、戦争の準備資金の方が大事かな。
「なるほど。なら、いいですよ。詳しい話はまた後で」
「了解」
「待ってくれ。私もその話に乗っからせて貰いたい。条件は同じで構わない」
「了解しました」
ボードレール家とルフェーブル家で合わせて二割、額にしたら相当な金になりそうだ。
これは、お互い悪くない商談になったかな。