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第五話 少女の気持ち


 SIDE:ジョゼッティア


「ジョゼより……と、これで明日渡せるわ。お手紙を渡すの久しぶりだな……フランクさん、元気にしてたかな?」

 フィリベール家のことは一生恨み続けます。

 絶対、許しません。たくさんの子供を無差別に殺したこともそうですし、何より私の数少ない機会を奪ったのですから。


「はあ、もう六年生になっちゃった。この手紙のやり取りも今年で終わりだわ……」

 貴族学校を卒業するまでにこれ以上進展がなかったら、お父様に怒られてしまいます。

 それに、きっと誰かもわからない男と婚約させられるでしょう……。

 もしかしたら、小汚いおじいさんかもしれません。

 あの人はそれが当たり前だと思っています。お兄様の時だって、本気で代わりの結婚相手を用意していました。


「でも、フランクさんにも家の事情があるし……」

 教国の女性と結婚しなくてはいけないフランクさんと結婚するなんて、無理なんです。

 そんなことは前からわかっているんです。

 それでも私は諦めきれず、手紙を書き続けてしまうんです。

 そんなことを考えていると、自然と涙が溢れてしまいます。


「お嬢様。お客様が……って、いかがなされました!?」


「大丈夫。何でもないわ。それで、お客様って誰が来たの?」


「リーナ様です」

 リーナさん? ああ、優しいリーナさんなら、寮に戻ってすぐに仲の良い友達に挨拶して回っていそうですね。


「リーナさんですか。それなら、私が出ます」



「もう、だから私だけで十分です。シェリーは部屋に戻っていてください!」

 私がドアを開けると、隣のドアからリーナさんの声が聞こえてきました。珍しく、少し声を荒げています。

 隣ってことは……シェリーさんと何か喧嘩でも?

 珍しいですね。あの二人はいつも仲が良いのに。


「わかったわよ……。終わったら、早く私の部屋に来なさいよ? 寂しいんだから」


「わかりました。終わったらそのままシェリーの部屋に向かいます。だから、部屋で待っていてください!」

 うん……喧嘩ではなさそうですね。どちらかというと、じゃれ合っているように見えます。

 やっぱり、あの二人は仲良しですね。


「あ、ごめんなさい!」

 シェリーさんを部屋に押し込み、私に気がついたリーナさんが慌てて私のところまでやって来た。


「大丈夫です。リーナさんたちは今日寮に到着したんですか?」


「はい。レオくんの転移があったので、ギリギリまでミュルディーン領にいました」

 そういえばそうでしたね。レオさん、転移のスキルを持っていました。

 それと、シェリーさんとリーナさんは休みの間中、レオさんの領地にいたんですもんね。


「羨ましいです。私なんて、領地から馬車で一週間以上かかりますよ」

 海が綺麗なあの景色が恋しくなるのですが、移動時間が長いせいでなかなか帰れないんです。


「それは大変ですね。やっぱり私は、もっとレオくんに感謝しないといけませんね」


「そうですよ。あ、ここで話していても悪いので、中でお茶でもしながら話しません?」

 もう少しリーナさんと話したかった私は、ドアを開けて部屋の中に誘った。

 シェリーさんに早く戻るって言っていたし、断られちゃうかな?


「えっと……そうですね。お言葉に甘えさせてもらいます。私、どうしてもジョゼさんにお聞きしたいことがあったので」


「私に? ……わかりました。どうぞ」

 何だろう? 私、何か聞かれるようなことがあったかな?


「お邪魔します」



「それで、私に何を聞くつもりだったんですか?」

 私の部屋に入り、リーナさんと向かい合って座った私は、何を聞かれるのかモヤモヤするのが嫌だったからさっそく本題に入った。


「フランクさんとジョゼさんについてですよ。また、明日から文通を再開するんですか?」


「え? あ、はい……そのつもりです」

 予想していなかった質問に、私は返答に時間がかかってしまった。

 まさか、リーナさんからそのことを聞かれるとは思いませんでした。

 私から相談することはあっても、リーナさんから状況を聞かれることは一度も無かったから驚いちゃった。


「そうですか。ジョゼさん的には、この現状をどう思っているんですか?」

 うう……今日のリーナさん、答えづらい質問ばかりしてくる。


「わかっていますよ。このままだと、私はフランクさんと結婚出来ないことは……。わかっているんです」


「焦りはあると……。それじゃあ、これだけ聞かせてください。ちゃんと心の底からフランクさんのことが好きで、どうしても……何があっても結婚したいんですか?」


「……」

 冗談や興味本位……ではないみたい。

 リーナさんの目が真剣そのものだもの。

 これは私、試されているの?


「嘘や誤魔化すことはなしです」

 正直に話さないと許さないからな! って、リーナさんの目力が更に強くなった。

 うう……これは拒否できませんね。


「前にリーナさんに説明した通り……始めは、お父様の命令でした。

 私は、家の為にフランクさんと結婚しないといけない……と。

 それで、どうにか仲良くなろうと考えたのですが……当時はクラスが違いましたし、わざわざ会いに行く勇気がありませんでした。

 そんな中、私が思いついたのが手紙です。

 最初は顔を合わせずに、フランクさんに私のことを知って貰えたら……と思って送りました。

 返事なんて望んでいませんでした。

 それなのに私が手紙を送った次の日、手紙が私に届いたのです。

 綺麗な字で書かれたフランクさんの字を見た時は、どれほど喜んだことか……。

 ただ、肝心の内容は、謝罪の言葉ばかりでとても喜べなかったんですけどね。

 フランクさんは家の事情を丁寧に説明しながら、本当に申し訳なさそうに謝っていました。

 それを見て、私は凄く胸が締め付けられました。

 親に命令されて、軽い気持ちで手紙を送っただけなのに……フランクさんは私を傷つけると思って本気で謝っていたのが、本当に申し訳なくて……。

 私は、急いで謝罪の手紙を書きました。親に命令されていることも全て書いた上で、騙すようなことをしてしまって申し訳ございませんした。と謝りました。

 そしたら、すぐにフランクさんからお返事が返ってきました。

 書き出しは……お互い家の事情があるんだから、謝り合うのは終わりにしない? でした。

 それから手紙の最後は……これからも手紙のやり取りを続けない? でした。

 フランクさんは私の為に、自分が怒られるかもしれないのに手紙のやり取りを続けようと提案してくれたのです。

 私はフランクさんのあの優しいところが大好きです。

 私は、あの時から親とか関係無く心の底からフランクさんに惚れてしまいました。

 惚れて貰うはずだったのですがね……返り討ちにあってしまいました」


「ふふ。そこまで思いがあるなら安心しました。私たちもジョゼさんとフランクさんの仲を応援していますよ」


「私たち?」


「答え合わせはまた今度です。手紙は、また明日の朝?」


「はい。誰もいない時間に」

 それより、答え合わせって何?

 あー気になっちゃうじゃない。


「そうですか……わかりました。伝えておきます」


「え?」

 伝えるって誰に?


「あ、気にしないでください。ただの言い間違いです」


「そうですか……」

 うう……リーナさんが隠し事をしています。

 これは、気になって今日の夜は寝られそうにありません。

 明日、早起きしないといけないのに……。


「それじゃあ、私はシェリーを待たせているのでこの辺で失礼させて貰います。また今度、ゆっくりお話しましょう? あ、私は今凄く幸せですよ。これだけ、忘れないで貰えるとありがたいです」


「え? は、はい……わかりました」

 確かに……リーナさんは幸せそうですけど……今言う必要ある?

 案の定、その日の夜はリーナさんの言葉の真意が気になりすぎてなかなか寝付けなかった。



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