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閑話9 守られないお姫様に


 SIDE:シェリー


 私はいつも助けて貰う側。

 もう、何度次こそは守られるだけじゃないって誓ったことか……。


 初めてレオに守って貰ったのは、八歳の誕生日。

 たくさんの黒い集団がこっちに向かって来ていたあのシーンが、今もしっかりと頭の中に焼き付いているわ。

 でも、怖い思い出かと言われるとそうでもない。

 レオが格好良かった。という記憶として、私の頭ではあの時の景色が記録されている。

 たくさんの人たちに向かって剣を振るうレオの背中……本当に格好良かった。


 けど……そう思ったと同時に守られているだけの自分によく腹が立った。

 普通、物語に出て来るようなお姫様なら、勇者に守られているだけで満足するものなのかな?

 常に勇者が助けてくれるのを健気に待つだけの……

 無駄な抵抗を続けるよりも、そんなお姫様の方がいいのかな?


 だって、どんなに頑張って魔法の練習をしても、どんな時も私にはどうにも出来ないんだもん!

 誘拐された時だって、地下市街で魔物に囲まれた時、学校を爆発された時も結局私は守られちゃったじゃない!


 どんなに頑張っても、私は守られる側にしかなれないの?

 レオが私のために傷つくのを見ていないといけない運命なの?

 そんなの嫌! 嫌なの!


「……リー、シェリー!」


「う、うん……」


「何か悪い夢でも見たんですか? うなされていましたよ」


「……リーナ」

 夢か……。

 私のことを心配そうに見るリーナの顔と、右手に握られたルーの手の温もりに安心してしまった。


「どうしたんですか? 何かあったら相談に乗りますよ?」


「うんん。大丈夫」

 ずっと前からのことだから。

 それに、この悪夢は相談したところで変わらないからね。


「本当ですか? 辛そうでしたよ?」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ」


「そうですか……わかりました。それじゃあ、もう一眠りしましょうか」

 そう言って、リーナが右手で私の左手を優しく握ってくれた。


「うん。おやすみ」

 両手に温もりを感じながら、私はまた夢の世界に戻った。



 すっかり日も昇り、私たちはレオにダンジョン入り口まで送って貰っていた。

「それじゃあ、今日は夕方くらいに迎えに来れば良いんだね?」


「はい。よろしくお願いします。終わったら連絡しますので」


「わかった。連絡が来たらすぐに迎えに来るよ」


「お願い! それじゃあ、行ってくるね!」


「無理するなよ~」



 ダンジョンに入ると、すぐに私は指示を出した。

「それじゃあ、いつも通り行くわよ!」


「「「はい(はーい)」」」


 いつも通りとは、ベルとルーが前衛で私とリーナが後衛という編成。

 ルーが前衛なのは、破壊魔法にベルが巻き込まれないようにするため……ではなくて、ルーに破壊魔法を使うのを禁止しているから。

 レオは勘違いしているけど、最初の一回こそ頼ったけど私たちは別にルーの破壊魔法を頼りに迷宮を攻略しているわけじゃない。

 私たちは強くなるためにダンジョンに潜っているんだもん、そんな楽なことをするわけないじゃない!

 まあ、強くなった時に驚いて貰いたいから、本人には教えてあげないけど。


 そんな感じで、ルーにはナイフを持って戦って貰っているわ。

 最初は、ルーがナイフに慣れるのに一階層で様子を見る必要があるかな? とか思っていたんだけど……やっぱり奴隷になっても魔族、ナイフを持たせても強かったわ。

 種族の違いって私たちが思っていたよりも大きいみたい。

 戦闘種族ベルとルーが二人だけでどんどん魔物たちを斬り倒して行っちゃうから、後衛の仕事が少ないのよね。

 ルーに破壊魔法を使わせていたら、もっと暇だっただろうから良しとしているんだけど。


 大体、私は魔法攻撃と指示係、リーナは回復と地図を記録する係を担当していて、ベルは罠の警戒、ルーは魔物をとりあえず斬り倒す係。

 そんな役割分担でダンジョン攻略を進めているわ。



「それじゃあ、今日は最短ルートで三階までクリアして、四階層のボス部屋を見つけるわよ。リーナ、道案内よろしく!」


「はーい」


 まず、一階層のボス……大量のゴブリンは、私の魔法で即氷結してしまう。ここでベルたちの体力を消耗するわけにもいかないからね。凍ったゴブリンたちを放って私たちは次の二階に進む。


 二階層のボスは、家と並べても大差ないくらい巨大なオークが二体。

 一回でも、オークの攻撃が当たってしまえば一溜まりもない。

 そんな相手を私が魔法で一体、ベルとルーで一体ずつ攻撃させずにすぐ倒してしまう。


 そして、三階層のボスはとても動きの速いコボルド。

 これには私の魔法は当たられないから、ベルとルーに任せてしまう。


 本当あの二人……特にベルの動きは異常だわ。

 いつも大人しくしているのに、戦闘中に笑顔になっているのはちょっと怖いのよね。

 たぶん、本人は気がついていないんだろうな……。


 そして、問題の四階層。

 四階層は、物理攻撃が効かないスライムがウヨウヨしている。

 だから、いつもみたいにベルとルー頼みの攻略は出来ないのよね……。

 魔法を使えば簡単に倒せるけど攻撃魔法を使えるのは私だけ、ルーの破壊魔法は使わないままで進みたい。


 というわけで昨日は攻略を早めに諦め、家に帰ってエル姉さんを交えつつ五人で一晩攻略方法を皆で考えていた。

 そして思いついたのが、魔銃と魔剣を使ってスライムたちを倒していく方法。


 リーナとベルが魔銃を、ルーがナイフ型の魔剣を使って進むことにした。

「それじゃあ、まずはスライムに魔銃が効くかを調べないとね。リーナ、あのスライムに撃ってみてくれる?」


「はい。あ、効きましたね」

 リーナが撃つと、スライムに魔法が貫通した。

 そして、スライムは光になって消えてしまった。

 うん。予想通りね。


「良かった。それじゃあ、次はルーが倒してみて」


「わかった! えい!」

 私が頼むと、ルーがシュッと素早く炎を纏ったナイフでスライムを真っ二つにした。

 良かった。魔法を使っていれば、物理攻撃も効果があるみたい。


「良かった……これで、攻略が進められそうね」

 まだまだ四階層なんだから、なるべく効率よく進まないといけないんだから。


「でも、次のボスはシェリーさん頼りになってしまう気がしますね」

 私がほっとしていると、ベルがスライムに魔銃を撃ちながらそんなことをポロッと呟いた。

 確かに、今まで通りなら強いボスだから……そういうのもあり得るのかな……?


「そうならないと良いんだけど……」



 《数日後》

 などと言っていたら、本当にそうなってしまった。

「やっぱり、こんなに大きくなってしまうと銃は効きませんね」

 四階層のボスであるとんでもなく大きなスライム、それに向けてベルが魔銃を撃っても傷一つつけられていなかった。


「ナイフも効かな~い」

 ルーも炎を纏ったナイフを突き刺しながらお手上げのポーズをしていた。


 そして、

「私の魔法も威力が足りないわね」

 私以外で唯一攻撃魔法が使えるお義姉さんの水魔法でも、そこまで巨大スライムには効いていなかった。


 あ、そういえばここ最近、お義姉さんも一緒にダンジョンの攻略をするようになったんだ。

 魔法を使っても良し、剣を持っても良し、レオやダミアンさんの戦い方とそっくりで、改めてフォースター家の凄さを感じさせられちゃったわ。

 普段から、冒険者のようなことはしていたらしくて、経験豊富でここ数日お義姉さんがいてくれて本当に助かっちゃった。


「うん……これは、高火力な魔法で一気に核にまで穴を開けるに限るわね。てことでシェリーちゃん! やっておしまい!」


「はい!」

 私はとりあえず、得意の雷魔法を最大火力でスライムに向けて放った。


「うん……あと一回ってところね……。シェリーちゃん、あと一回撃て……あ、スライムが動き始めた! 皆、構えて」

 私の攻撃で体積が約半分になってしまったスライムが怒ったように形を変え、全身からトゲが突き出した。


「何か……嫌な予感がする」

 お義姉さんがそう言うと、スライムのトゲが全方位に向かって放たれた。


 トゲ一つ一つが人一人分の大きさ、刺さったら即死……

「危ない!」

 そう叫んだ私は、無意識に全員のことを凍り魔法で包んでいた。

 そして、氷魔法はしっかりとトゲから皆を守ってくれた。


 ふう、何とか誰も死なずに助かったわね……。

 死んでも大丈夫と言われても、一度たりとも目の前でリーナたちが死ぬところを見たくないわ。

 そんなことを思いながら、私は氷を溶かした。


「シェリーちゃんありがとう! 流石ね!」


「い、いえ……」


「シェリー守ってくれてありがとうございます」


「き、気にしなくていいわ」


「よ~し。次から盾役は私が引き受けるわ! シェリーちゃん、時間がかかっても良いからでっかい魔法をあのスライムに当ててぶっ放して差し上げなさい!」


「はい!」


「ベルちゃん、ルーちゃん、私たちでスライムの注意を引くわよ!」


「はい(は~い)!」

 それから、皆がスライムの注意を引いて貰っている間に、私はもう一度魔法を展開した。

 今度こそ決める。そんな気持ちで、私はさっきよりも強力な魔法をスライムにお見舞いするために、時間を長めにかけて頭上に大きな雷の塊を作った。


「皆避けて!!」

 そう叫び、皆が避けたのを確認してから、私は巨大スライムに向けて特大魔法を放った。


「ふう、何とか倒せたわね。流石シェリーちゃん」


「やっぱりシェリーの魔法凄いね! ドカン! てダンジョンの壁が凹んだんだから!」


「あ、ありがとう……」

 ふう、少しは守られているだけのお姫様から成長出来たかな……?

 皆に褒められながら、私はそんなことを思った。


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