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第七話 世界の秘密③


「そこで、神の間で決められたルールの一つに、使者が寿命を迎えて死んだ場合は次の転生者を用意していいというルールがあるんだ。これのせいで、俺たちの戦いは泥沼みたいな戦いになってしまった」

 寿命を迎えた場合か……だとすると、殺せばその能力は次に継承されないってわけだな。

 でも、やっぱり泥沼化したんだね……。


 それにしても、神の間で決められたルールか。

 もしかたら、これは神の代理戦争ってことなのかな? それとも、神の間での人を使った遊び?

 まあ、どっちにしても神がめちゃくちゃなのはわかった。


「寿命の短く、子供が多い人族……これが非常に厄介なんだ。勇者以外は、転生者が死ぬとそれから五年から十年の間に歴代の子孫の子供から選ばれるということになっている」


「歴代……」

 千年も続く中で歴代って……今、転生者になれる可能性がある人は一体どんだけいるんだ?


「そうだ。特殊属性の魔法は元々、転生者だけが使える物だった。それが、千年も転生者の血が広がっていけば……今は少し珍しいくらいになってしまっただろ?」


「確かに……」

 へ~特殊属性って転生者がルーツだったんだな。

そう考えると、特殊属性を持った人は全員転生者の可能性があったってことになるのか。

 やっぱり、見当もつかない人数になりそうだな。


「そのせいで、あまり目立ちたくない性格の奴が転生してしまうと、俺たち古株たちは見つけることが出来ないんだ」


「……え? てことは俺、めっちゃ危なかったんじゃないの?」

 俺、今までとんでもなく目立ってたよね? たぶん、世界的に。

 あ、だから付与士であるゲルトに狙われたのか。


「まあ、普通ならもう死んでいただろうな。お前は創造士に守られているから助かっているんだ」

 ん? 創造士?


「創造士に守られていたってどういうこと? 俺も創造士だよ?」

 さっき、寿命死ぬと能力が継承されるって言っていたよね?


「あ、もしかして、死んでも自分の継承者が死なないように何かしてくれているとか?」

 創造魔法で造られた魔法アイテムなら、そういうこと出来そうだもんね。

 そうなると、俺も次の代の為に出来ることを考えておかないといけないな。


「いや、生きているぞ。創造士は今も試練のダンジョンの最下層で世界を見守っている。神のルール……さっきの話との矛盾について、色々と言いたいだろうがちゃんと順番に説明するから待ってくれ」


「うん、わかった」

 次の質問を封じられたから、とりあえず俺は黙ることにした。

 これ以上は話が進まないからね。


「創造士、あいつがいる限り、帝国の中に古株の転生者たちは入ることは出来ない」


「何か仕掛けがあるの?」

 魔法アイテムとかで、入ってきたら何かが起きるような罠が仕掛けられているとか?


「そうだ。人間界に宣戦布告した俺みたいになる。創造魔法で弱体化してから、人が絶対に来ないような場所に隔離される」

 ああ、人間界への宣戦布告って創造士に対してだったのか。

 昔からの謎の一つがまた解消された。

 前からおかしいとは思っていたんだよ? こんな強い魔王が、わざわざ人間界に戦いを挑む必要なんて無いからね。

 その気になれば、一日もしないで人は滅ぼされてしまう気がするもん。


「それにしても、殺すわけではないんだね。あ、死なないのか」

 なるほど。そう考えると、この創造士がやった隔離する方法は死ねない魔王にとって、一番の嫌がらせだな。

 俺なら、こんな場所に一人だけで暮らすなんて寂しくて一週間も耐えられないもんな。


「いや、あいつは俺を殺せるぞ。俺を殺せるのは、創造士と付与士が作った武器を持った勇者だけだな」


「聖剣には歴代最高の技術を持った付与士に『魔王特攻』が付与されているんだよ。魔王の蘇生能力を無効化することが出来る」

 聖剣にはそんな力があったのか……。鑑定で見た時にはそんな能力書かれていなかったはずなんだけどな? もしかして、付与された能力は鑑定で見ることが出来ないってこと?

 また、憂鬱になりそうなことを知ってしまったな……。


「はあ……」


「うん? 溜息なんてついてどうした?」


「うんん、別に。それより、魔王は本当にじいちゃんに負けたの? そんなに凄い聖剣があったとしても、勝てる気がしないんだけど?」


「勇者の隠しスキルだよ。俺たちは勇者補正と呼んでいるが」


「勇者補正?」

 なんだ、その主人公補正みたいな能力は?

 隠しスキルとか、絶対凄いじゃん。


「ああ、一生の間に一回だけ勇者だけが使えるスキルだ。勇者は転生じゃ無くて転移だからな。その分のハンデみたいなものだ。能力は限界突破の超上位互換で、ステータス差が十倍以上ある相手に負けそうになった時、その戦いが終わるまで相手と互角になることが出来る」


「互角なんだ……でも、互角程度なら」

 技術面で長く生きている魔王の方が圧倒的なんだし、負けることはないでしょ?


「いや、それがそうでもないんだ。勇者は大概仲間を連れている。前回なら聖女と魔導師だな。これが意外に面倒でな。勇者が同格の強さになると、魔導師の攻撃で視線を遮られたり、聖女の聖魔法で勇者が回復したりと……一気に形成が逆転するんだ」


「なるほど……それなら勝てるかも」

 仲間か。何とも、勇者らしい勝ち方だな。


「まあ、あの時魔力があれば空間魔法を使ってどうにか出来たんだけどな。創造士による弱体化が効いたな」

 ああ、創造士の弱体化もあったから勝てたのか。

 それなら納得出来るな。


「でも、死ななかったんだね」

 もう、さっきから説明に矛盾だらけでわけがわからないよな?

 どうして、蘇生を無効化する剣で倒されたのに生きているんだよ。


「そうだな。聖剣の付与が外れていた」


「え? 外れてた? 誰が外したの?」


「たぶん、創造士があらかじめ外しておいたんだろう。俺に死なれたら困るからな」

 また創造士か……死なれたら困るね……。


「ねえ、どうしてそんな強い創造士に戦いを挑むようなことをしたの?」

 魔王の言葉からして、元から創造士の力を知っていて挑んだような気がするんだけど?

 魔王の性格からして、負けるとわかっていてそんな無駄なことをするか?


「ああ、次はその話だな。この世界には、俺と同等かそれ以上に強い奴が俺の他に二人いる」

 二人か……創造士の他にもう一人。多いのか少ないのか……。

 いや、人類を簡単に滅ぼせる力がある人が三人もいると考えると多いな。


「一人は、さっき言った創造士だ。もう一人は破壊士だ」


「破壊士? ルーと同じ能力の転生者がいるの? あ、俺も創造士だな」

 ルーも、俺と同じようなパターンなのか?


「新魔王もいるぞ。これは、俺たち三人で均衡状態になってしまったのを解決するために作った新ルールだな」

 新ルール?


「まだお前の祖父がこの世界に転移される前の話だ。もう何百年も干渉してこなかった神から『これから五十年以内に、この戦いを終わらせろ。さもないと、新たにルールが加わる』という言葉が何の前触れも無く突然届いたんだ」

 じいちゃんが転移される前だから……もう、五十年は経っているよね?

 そうか、だから新ルールなのか。

 それにしても、神は意地悪だな……。


「この言葉を聞いて、わざわざ宣言してくるほどのルールなのだから、相当面倒なことをさせられるのだろうと思った俺は、そうなるよりはマシだと思って動き始めることにした」


「それで、創造士に挑んだの?」

 俺がそう聞くと、魔王は首を横に振った。


「いいや、俺が挑んだのは破壊士の方だ。俺たち三人は相性が丁度良くバランスが取れていてな。創造士は魔王に強く、破壊士は創造士に強い、俺は破壊士に強いって感じだな」

 誰かが有利な相手を殺すと、自分の天敵が楽になってしまう。確かに、これは戦いづらいな。


「破壊士は俺のことをどんなに破壊したとしても、俺を殺すことは出来ない。一方、俺は空間魔法を使って自由に攻撃が出来る。俺は破壊士には簡単に勝つつもりだった。ただ……俺は負けた」

 え? マジ!? 有利だったんだよね?


「誤算だったんだよ。あいつは加齢で衰えていく魔力を、人を殺すことで補っていたんだ。まさか、全盛期と変わらない魔力を持っているとは思わなかった」

 ああ。ルーも持っている殺した人から魔力を奪う能力か。確かに、あれがあると永久に魔力は減らないな。


「俺は、簡単に殺された。そして蘇生している間に、あいつの手下だった先代の影使いに寄生され、操り人形になってしまった。操られた俺は、どうすることも出来ず創造士に対して宣戦布告を行っていた」

 影使い……また、新しい転生者が出てきた。名前と説明的に、影を使って操る力なのかな?

 魔王を操れるとか、恐ろしすぎるだろ。


「もちろん、俺が操られていることなど創造士にはバレバレだ。破壊士もそれはわかっていて、創造士にちょっかいを出しつつ、勇者が召喚されればいいと思っていたんだろうな。まあ案の定、創造士は一歩も動かずに俺をこの森にあるダンジョンに閉じ込めたんだが」

 勇者が召喚されるのが目的?

 ああ、勇者も殺さないといけないからか。


「ダンジョンというのは、俺たちが転生する前から世界に存在するダンジョンと、俺の空間魔法、または創造士による創造魔法によって新しく造られた物がある」

 へえ、空間魔法でもダンジョンを造れるのか。


「まあ、ダンジョンが造れると言っても、俺は魔物を育てるのは苦手だからダンジョン経営は早々に諦めたんだけどな。世界中にダンジョンを広げ、魔物はほったらかしにしてダンジョンは移動手段にしてしまった」

 マジかよ……それじゃあ、ダンジョンの外にいる魔物たちの原因は魔王ってことなの?

 何してんだよ! ってめっちゃくちゃ言いたかったけど、よく考えたらこの人魔王だったわ。


「そんな世界を自分の物としたダンジョンは、創造士によってリセットされ、こんなに小さくなってしまった」


「こんなにって……もしかして、この家だけ?」

この家には地下も二階も無いし、こんな小さな家がダンジョンと呼べるのか?


「そうだ。勇者が俺に挑んできた時は時間があって暇だったから、多少ちゃんとしたダンジョンにしていたんだけどな。それも勇者に壊されて、俺はもうダンジョンを大きくすることは諦めた」


「そうなんだ……どうせ暇なんだからまた頑張ればいいのに」

 知能のある魔物でも育てれば、話し相手にもなるんだし。

 寂しくないのかな?


「いや、いいんだ。それよりも、これを使って世界を覗いていた方が楽しいからな」


「ああ、そういえばそんな暇つぶし方法があったね」

 ダンジョンコアを見せながらニヤリと笑った魔王に、俺も思わず笑ってしまった。

 魔王の趣味が覗き見とは……気が合うな。


「そうだな。破壊士に負け、創造士に負け、勇者に負けて、何もすることが無くなった俺は、家の中で世界を眺めていた。そんな中、破壊士はそこそこ長く生きている中堅あたりの転生者たちと、その一族を片っ端から殺し始めた」

 一族ごとか……確かに継承されてしまったことを考えれば効率的だろうけどな……。

 うん、破壊士には人の心があることに期待するのはやめておいた方がいいね。

 とりあえず、会ったら交渉とか考えずすぐに逃げることだけを意識しておこう。


「あれに耐えることが出来たのは、強力な結界で守られたエルフ族だけだな。ああ、それとドワーフ族は滅ぼされたが、付与士もちょうど世代交代の時期で助かったな。そんな程度で、獣王みたいな名が知れた転生者はほとんどがその時に殺されてしまった」

 ここで獣王が出て来るのか。そうか……破壊士に殺されたと……。


「その……獣王、私のお父さん……の最後はどうだったんですか?」

 ずっと黙って聞いていたベルが久しぶりに魔王に質問をした。

 まあ、ベルはこの話を聞くためにここにいたわけだしな。


「獣王の最後? そうだな……頑張ったと思うぞ。俺よりも善戦していた。腕を噛み千切ることは出来た。ただ、やはり守りながらの戦いでは獣王が不利だったな」

 スゲー。魔王と同じ強さで、人を躊躇無く殺せる人と戦って腕を噛み千切ったとか、凄すぎるだろ。

 もしかしたら、ベルにも可能性があったりするのか?


「そうですか……ありがとうございます。話を遮ってしまってすみません」

 そう言って、俺の膝の上に座っていたベルは表情を変えず、ぺこりとお辞儀をした。

 俺は何も言わず、頭を撫でてあげた。


「いや、いい。ベルにとっては重要なことだからな。それじゃあ、話を戻すぞ……破壊士が殺して回ってはみたが、結局俺たちは神から課せられた五十年の期限を守れなかった。そして、追加ルールが発動した」

 そこからの追加ルールか。

 一体、どんなルールなんだ?


「『千年間怠けていた三人にペナルティーを与える。これから、新たに創造士、破壊士、魔王を追加で転生させる。お前たち三人は、自分と同職の新たな転生者が死んだ瞬間、お前たちの負けとする。また、新たな転生者たちは寿命で死んだとしても継承されることは無いから注意するように。最後に、三人の寿命は一律最大百年ということだけ伝えておく。つまり、あと百年以内で終わらせろ。以上』これをお前が産まれた日、俺たち三人に伝えられた」

 だとすると、俺が死んだ場合、創造士が負けになるわけか。

 それにしても、一律寿命は百年か……。

 まあ、最大だからそこまで生きられる保証は無いけど、ルーが一人で寂しく生きる必要が無いのは良かったのかな?


「なるほどね……。俺が死んだら創造士も死ぬ。だから、俺は守って貰えるわけだ。ん? 待てよ。てことは、ルーが創造士に殺される可能性があるってことじゃ?」

 創造士からしたら、育ち切っていないルーを殺せば、楽に破壊士と戦わずして勝てるってことだよね?


「いいや。創造士はもう勝ち負けなんて気にしていないし、転生者を殺すことはやめている。それに、弱い新人転生者を影ながら助けてやっているな」

 あれ? 創造士は案外いい人なのか?


 それとも……

「争いに疲れたとか?」


「まあ、それもあるだろうが、前世にいた頃から優しい奴だったぞ」

 あ、やっぱり優しい人だったのか。それは守って貰っている立場としては非常にありがたいな。


「あとは、神に対しての反抗だろうな。本来なら、創造士が動けばこの戦いはすぐに終わるだろう。ただ、あいつは、どうせ死ぬのなら神に最大限の嫌がらせをしてから死のうと考えていてな。人族でありながら千年も生き、誰も殺さずに戦いを長引かせている」


「なんか格好いいな」

 千年もその心を維持できるとか凄すぎるだろ。

 マジ尊敬するわ。


「見た目もイケメンだぞ。少し女誑しなところもあるが、面白い奴だ。なんなら、今度ダンジョンに潜って会いに行ってみろよ。あそこには魔族が入ることは出来ないようになっているから俺は会えないが、お前なら会えると思うぞ」


「そうなの? それじゃあ、守って貰ったお礼も兼ねて今度行ってみるよ」

 ダンジョン攻略はレベル上げにもなるしね。

 暇な時にでも挑んでみるか。


「ああ、そうしてみろ。あいつもずっと人と話せていないだろうから喜ぶと思うぞ」


「うん、わかった」


「よし、これで伝えたいことは伝えたはずだ。これを活かして、次の戦争は生き抜け。相手は付与士と勇者だが、お前なら大丈夫だろう」


「え? 勇者も?」

付与士だけじゃないの?


「ああ。つい最近、王国で召喚されたぞ。出来ることなら、勇者は仲間にすることをお勧めするが……いざ戦うことになったら勇者補正だけは気をつけろよ?」


「うん……わかったよ」

 魔王すら倒せる可能性がある勇者、そんなのも敵にいるのか……。

 俺、当分不安によるストレスで寝られないな。



これで、一、二章あたりの疑問を解消することは出来たかな? と思います。

この流れを考えるのに、最近思うように話を進められなかったのですが、ようやく書けましたのでこれからは更新頻度が上がっていくはずです。

それと、来月は四巻の発売日です。

情報が公開され次第、随時宣伝していきます!

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