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第五話 世界の秘密①


「で、一体何を俺に話そうと思っているの?」

 未だ足腰が立たないベルを抱きかかえながら、魔王の向かい側の椅子に座った俺は、さっそく本題に入った。


「それについてだが……お前は、そこの……ベルに、お前が今まで誰にも明かしてこなかったことを知られる覚悟はあるか?」


「え? 明かしてこなかったこと……?」

 それって、俺が転生者だってことだよな?

 俺が今まで、誰にも話していない秘密はたぶんそれだけだ。

 どうして魔王がそれを知っているのかは置いといて、確かに……ベルに知られたら困る……か?

 そういえば、どうして俺は転生者だってことを隠していたんだっけ?

 随分前から隠してきたことだから理由は忘れてしまったな……。

 変な目で見られるのが嫌とかだったか?


「これから話すことって、ベルにも関係あるんだよね?」


「ああ、大いにあるな」


「そうか……」

 それじゃあ、覚悟を決めるか。

 別にベルのお父さんや故郷のことに比べたら、俺が転生者だってことはちっぽけなことだしな。


「うん、わかった。それじゃあ、ベルに教えるよ」


「そうか」


「じゃあ、話が先に進められるようベルに教えちゃうよ」


「ああ」


「で、ベル……」

 覚悟を決めた俺は、抱えているベルの向きを変え、俺と向き合う形にした。


「ちょ、ちょっと待ってください……そんな、レオ様の秘密を私だけが知るなんて出来ません!」

 俺が話そうとすると、さっきまで放心状態だったベルが急に慌てて俺の口を塞いだ。


「いいよ。ちゃんとシェリーたちにも言うつもりだし」

 ベルに話したからにはシェリーたちにも教えるさ。


「で、でも……」


「安心しろ。いつかはそのことを知ることになる」


「だってさ。てことで言っちゃうよ。実は俺、転生者……前世の記憶があるんだ」

 魔王の言葉を聞いて、俺はベルの反応を待たずに言ってしまった。

 ベルは、驚いている……わけでもなく、ポカーンとした顔をしていた。


「前世の記憶?」

 ああ、今の説明だけだと何を言っているのかわからないな。


「まあ、急に言われてもピンとこないよね? 簡単に言うと、俺はレオンスの記憶の他に、こことは全く違う世界で生きていた時の記憶を持っているんだ」


「え? つまり……どういうことですか?」

 うん……ここまで覚悟して言ったのに、そんな反応をされると微妙な気持ちになるな。


「えっと……つまり、俺は生まれた時からどこかの違う世界の人が持っていた記憶を持っているんだ」

 そう説明すると、ベルは段々と俺の秘密について理解できてきたみたいだが、まだ難しい顔をしてきた。


「そうですか……生まれた時からということは、レオ様はレオ様なんですよね?」

 答えにくい質問だな……この記憶が俺を動かしているのなら……レオンスという名前は単なる飾りなのかな?

いや、でもこうしてレオンスと生きているわけだし、俺がレオンスという自覚があるなら俺は俺だな。


「うん。俺はこの記憶を含めて俺だと思うよ」


「……わかりました。それなら、問題ありません」

 俺の悩んだ末に出した答えに満足したのか、俺に抱きかかえられているベルは、俺に向けて優しく笑ってくれた。


「え? もうちょっとないの? 俺、今まで成績が良かったり、金を荒稼ぎしたりしているのはこの記憶があるからなんだよ? ズルいと思わない?」

 第一、創造魔法がここまでチートな能力になったのも、その記憶があったからだよな……。俺、前世の記憶が無かったとしたらどんな人生を送っていたのかな?

 たぶん……普通の、いや創造魔法は使いこなせなかっただろうから、落ちこぼれのような扱いを受けていたんだろうな。


 でも、今の俺よりは平和な生活を送れていたよな?

 無駄に強すぎず、じいちゃんにダンジョンに連れて行かれるなんてことも無かっただろうから、まだじいちゃんは生きていただろうな……。


 あ、けどそんなこともないな。

 シェリーの誕生パーティーの襲撃事件は、俺の記憶関係なしに忍び屋が襲っていただろうから……たぶん、そこで死んでいたな。

 と、考えると、記憶はあって良かったな。


「……別に、それもレオ様の一部なんですから……ズルいとは思いません。違う世界の記憶? を持っていようと、持っていまいと私はレオ様に対しての気持ちは変わりませんよ。レオ様がどんなに強大な力を持っていても、エッチなこと以外間違ったことには使わず、人の為に頑張れる優しい人だってことはわかっていますから」

 俺の考え事が一段落したところを見計らって、ベルがバーっと自分の気持ちを伝えてきてくれた。

 人の為ね……まあ、好きでやっていることが結果的に人の為になっているだけだから、優しい人ってことはないけど……まあ、お礼は言っておくか。


「あ、ありがとう……」


「ククク。エッチなこと以外か」


「そ、それは……」

 それに関しては、身に覚えがいくつかあったから聞き逃そうとしていたんだけどな~。

 思わず、やめてくれよという目を魔王に向けてしまった。


「いいじゃないか。性欲旺盛なのは人族の特権だぞ?」


「そうなの?」

 まあ、寿命が長い魔族に比べたら子孫を残すことは重要だし、そうなのかな?


「あ、いや、獣人族には劣るが……」

 魔王は、真面目に聞き返されると思っていなかったのか、すぐに訂正を入れた。

 獣人族には劣るか……確かに、イメージ的には獣人族は本能的な感じがするな。


「そうなんだ~」


「なんですか? 私がレオ様よりもエッチだって言いたいのですか?」

 俺がニヤニヤしながらベルに顔を向けると、ベルはムッとしてしまった。


「別に~」

 だって、エッチじゃない人は自分の部屋に俺の服……いや、これは俺の思い違いだ。

 朝、俺はベルの部屋で何も見てないんだ。

 俺が朝のことを思い出そうとした瞬間、ベルのムッとした目が睨みに変わったから慌てて俺は思考を停止した。

 うん、これ以上はベルを怒らせたらダメだ。


「本当、お前らアツアツだな。主人とメイドの関係とは思えないぞ。いや、これは人族特有の禁断の恋に燃えているのか。魔族の俺にはわからんな」


「えっと……いろいろと言いたいことがあるけど、どうしてベルがメイドだって知っているの?」

 禁断の恋ってなんだよ……いや、言われてみれば婚約者のいる貴族の当主とメイドが恋仲になるのは禁断の恋だな。

 まあ、俺はそんなこと気にしないからいいけど。いや、気にした方がいいのか?


 イヤイヤ。そんなことより、どうしてベルがメイドだってことを魔王がわかったかだ。

 今、ベルは冒険者の格好をしていて、全くメイドには見えないはずなんだけどな?


「ん? ああ、ここ何年か、暇な時はこれでお前のことを観察していたからな」

 そう言って、魔王はどこからかバスケットボールくらいの大きさがある透明な球体を取り出した。


「これって……ダンジョンのコア?」


「おお、よくわかったな。あ、そういえばお前も失敗作だが、ダンジョンを造っていたな」

 よく知っているな。やっぱり、俺のこと観察していたんだな。


「うん、そうだけど……ダンジョンのコアって普通そのダンジョンの中だけしか見ることが出来ないんじゃないの?」


「ああ、普通はそうだな。これは俺の空間魔法と組み合わせているからだ」


「空間魔法と組み合わせると、好きな場所を覗き見することが出来るってこと?」


「そういうことだ。世界中で俺が訪れた場所なら見ることが出来る。まあ、俺は女風呂を覗いたりはしないけどな」


「そ、その話はもうやめようか」

 なぜ、さっきからそっちの話に持って行こうとするんだ?


「レオ様、何度怒られても覗きやめられませんからね……」

 あ~聞こえない~~!!


「まあ、冗談は置いといて、俺は世界中で行ったことがない場所がないから、実質世界中の好きな場所をこのコアから眺めることが出来る」


「この世界中が俺のダンジョンって感じだな」

 まさに世界最強の魔族、魔王だな。


「百年と少し前まではそうだったぞ?」


「「え?」」

 流石に、世界中が魔王のダンジョンだって言ったのは冗談だったんだけど?


「よし、ベルの緊張もほぐれたことだ。本題に入るか」


「う、うん」


「まず何から話すか……俺も転生者だって話からでいいか?」


「「え? 転生者!?」」

 初っ端からとんでもないことを言われて、俺とベルは声をそろえて驚いてしまった。


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