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第四話 久しぶりの素材集め②


「よし、着いた! さあ、今日はどんどん素材を集めるぞ」

 ベルの支度が終わり、俺たちは魔の森の入り口にやって来た。

 前ここに来た時は、もっと禍々しく感じたんだけどな……。


 やっぱり、ここ数年で俺も強くはなっているのかな?

 ここ最近は学校や領地経営が忙しくて、本気で戦う機会なんて無かったからな……勘が鈍ってないといいけど。


「あの……勝手に国の外に出ても大丈夫なのでしょうか……? 普通、検問所を通らないとダメじゃないですか?」


「検問所? あ、そういえばそうだね。まあ、日帰りだから大丈夫じゃない? それに……母さんにはバレたくないし」

 たぶん……というか絶対、ちゃんとした所から魔の森には入らないといけないんだろうけど……そんなことしたら、母さんに連絡が行ってしまう。


「やっぱり……隠すつもりなんですね?」

 そりゃ~ね。母さんの長時間説教はもう懲り懲りだから、絶対にバレたくないね。


「よ~し、とりあえず半日で魔王がいるところまで行くぞ」


「誤魔化しましたね……って、魔王? どういうことですか?」


「あ、そういえば……えっと、大丈夫。優しい魔王だから」

 魔王が生きていることって広めたら不味いかな?

 なんか、ひっそりと暮らしているし、誰にも邪魔されず余生を過ごしたいって感じたから。

 下手にあの人を怒らせたら大惨事になりそうだし、人には言わない方がいいと思うんだ。


「優しい魔王ってどういうことですか!?」


「心配ないって。ほら、行くよ。ちゃんとついて来てね!」


「あ、誤魔化さないで下さい!」

 ベルの訴えを聞き流しつつ、俺はベルの手を引いて森の中に入っていった。

 手を繋いでいるのは、すぐ転移で逃げられるように。

 まあ、大丈夫だとは思うけど、ベルとの約束だからね。


 そんなことを思っていると、早速ブラックオーガの群れが俺たちを取り囲んだ。

「おお、ブラックオーガだ。久しぶりだな」

 初めて来た時もこいつらに囲まれたっけ。

 あの頃の俺は苦戦してたよな~うん、懐かしい。


「レ、レオ様。なんか、もの凄く強い気がするのですが……本当に大丈夫なんですか?」

 俺の手をぎゅうっと強く握りながら、ベルは俺に心配そうな顔を向けてきた。

 ベルからしたら、ブラックオーガとはレベルが四倍くらいの差があるからな……怖くて当然だろう。


「心配ないって。ほら、これくらい瞬殺だから」

 とりあえずベルを安心させるため、雷魔法を創造してブラックオーガたちを瞬殺した。


「ほ、本当だ。でも……想像していたよりも凶暴な魔物でした。やっぱり、危なくないですか?」


「大丈夫だよ。一歩も動かずに倒せたんだよ?」


「うんん……」

 俺が安全アピールをしても、ベルはなかなか頷いてはくれなかった。



 《六時間後》

「よし、これで当分は魔石不足に悩まされることは無いな」

 そんなことを言いながら、俺はバッグに入った魔石と貴重な素材たちを見て自然と笑顔になってしまった。

 全速力で森の中を走り回った甲斐があったな。


「もう……レオ様、速すぎですよ。レオ様に渡されたこの箒がなかったら早々に置いてかれていました」

 俺が半日の成果に満足していると、上から文句の声が聞こえてきた。


「だから箒を用意したじゃないか。乗ってて楽しかったでしょ?」

 ベルは、俺がドラゴンを探すのに使った空飛ぶ魔法の箒に乗っていた。

 ベルと歩いていたら効率が悪いと思っていた俺は、安全だと言うことを理解して貰えたら、この箒に乗ってついて来て貰うという作戦を昨日のうちに考えていたんだ。

 操作が結構難しいんだけど流石ベル、早々に乗りこなして俺のスピードについて来てくれた。


「そうですけど……」


「なら、良いじゃないか。ほら、魔王のところに行くよ」

 せっかくここまで来たんだから、挨拶くらいはしておかないとね。

 どうせ、もう俺がそっちに向かっていることには気がついて待っていてくれてるだろうし。

 そんなことを思いつつ、俺は魔王がいる開けた場所に出た。


「こ、ここに……その魔王というのは、本当にいるんですか?」

 箒から降りたベルは、一軒の家から体を隠すように俺の背中にくっついた。

 まあ、そんなに怖がっちゃうのもわかるよ。ベルからしたら、恐怖の象徴みたいな人だからね。


「うん。いるよ。あ、でも、最後に会ったのは四年前だから、いるかどうかはわからないけどね」

 ドラゴンの討伐で来た以来だからな……もしかしたら、ここに飽きて引っ越してしまったかも?


「いや、いるぞ」

 あ、やっぱり来た。


「きゃあ~~!!」

 魔王による背後からの登場に、俺は予想していたから何とも思わなかったが、ベルは腰を抜かすほど驚いていた。

 震えるベルを抱きかかえながら振り返ると、魔王は申し訳なさそうに立っていた。


「ビックリさせてしまったな……元気にしてたか?」


「うん。あなたも……変わらず、元気そうだね」

 まあ、魔族だから四年程度では大して変わらないよね。


「まあ、俺は変わることが出来ないからな。それに比べてお前は変わったな。あ、別に悪い意味では無いぞ。しっかりと成長している」


「そりゃあね。人は四年もあれば背も伸びるし、成長するさ」


「ああ、人というモノは、本当に短い時間を生きている。ただ、その分とても濃い人生を過ごすことが出来る。実に羨ましいな」


「羨ましい?」

 それだけの力を持っていて、人の何倍もの間生きることが出来る魔王が羨ましいだと?

 まあ、そんなことは本気で寂しそうな目をしている魔王には言えないけど。


「ああ、俺はもう千年近く生きた。生きたが、その千年のほとんどは何もせず……暇をもてあましているだけだ」


「せ、千年? そんなに生きているの?」

 魔族ってそんなに生きられるの? 力のある魔族だから? それとも、魔王だからか?


「ん? 前にも話さなかったか? 確か、お前にドラゴンがいる場所を教えた時だ」


「そんなこと言っていたっけ? うん……ドラゴンの印象が強くて覚えてないや」


「そうか。忘れているなら、また説明するからいいさ。どうせ、あの時のお前に詳しいことは教えられなかったしな」


「ふ~ん。つまり、今なら教えてくれるってこと?」

 あの時から、四年しか経ってないよ?

 まあ、人の子供にとっての四年は非常に大きいけどさ。


「簡単に言うとそうだな。あとは、今がその時だから教えられる」


「その時?」

 魔王について知るのに、丁度良い時期なんてあるのか?


「詳しいことは家の中で教える。ついて来い。ああ、そっちの獣王の娘も連れて来ていいぞ」

 俺が、ベルに聞かせても大丈夫? と言いたげな目を向けると、魔王がOKを出してくれた。

 まだ立つことも出来なそうなベルをここに置いていくなんて出来なかったから良かったよ……って、今とんでもないことを言わなかった?


「じゅ、獣王!?」

 今、獣王の娘って言ったよな?


「何? 気がついていなかったのか? 獣魔法を使えるのは獣人の王族だけだぞ? ああ、そういえば知らないのも当然だな。獣王の娘……」


「ベルだよ」

 ベルに目を向けて、何と呼べばいいか悩んでいるように見えたから、名前を教えてあげた。


「そうか。ベル、お前は獣人族王家の最後の生き残りだ」


「え? どういうこと?」

 獣人の王族がどうして孤児院に? しかも、最後の生き残りってどういうこと?


「簡単だ。そこのベルは、獣人族最後の王が何とか生かした一人娘なんだよ。獣王は、死ぬ前に古くからの友に自分の子供を託し、強敵から国を守る為に戦い、死んでいった」

 古くからの友って……ベルが育った孤児院のおばあさんのことか?

 すげえな。あのおばあさん、獣王の友とか何者? マジで、今度時間を作って会いに行かないといけない気がしてきた。


 てか、それより

「その強敵って……?」

 獣王を誰が殺したんだ?


「それは、俺がこれからお前に話そうとしていたことと被るから、家に入ってから話す」

 そう言って、魔王は自分の家に入っていってしまった。


「俺、今日は素材を集める為に来たんだけどな……」

 まさかこんなことになるとは、と思いつつ俺は仕方なく魔王の後を追って家の中に入った。


次回は、この物語の核心に触れていきます。

それと今週、漫画版が久しぶりに更新されましたので是非確認してみてください!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三章八話で魔王が千年生きてること教えられてる上に俺に勝ったら俺の千年間について教えるって言われてるんですけど…
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