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第三話 久しぶりの素材集め①


「お願いします。どうか許可を!」

 現在、俺はベルに向かって土下座をしながら頼み込んでいた。

 ベルから許可を貰わないと絶対に行けない場所があってね……。


「ダメです! 何と言われようと絶対に許可は出しませんからね!」

 やっぱりそう簡単には許してくれないか。

 でも、俺も絶対に諦めないぞ。


「そこをなんとか! この通り、お願いします」

 俺は地面に頭を擦り付けながら頼み込んだ。

 何としても行きたいんだ!


「ダメと言ったらダメです! 成人するまでは魔の森には行かないって約束したじゃないですか」

 そう、俺は魔の森に行きたいんだ。

 行きたいんだけど、ベルと行かないって約束しちゃったから、それを破る許しを得ようとしているんだ。

 まあ、交渉は相当難航しているんだけど。


「そ、そうなんですが……えっと……素材の方が足りなくなっておりまして……特に、大きめの魔石が……」

 前に魔の森で集めた魔石は城壁を造るのに全部使ってしまったから、学校を造るのに必要な魔石が無いんだ。

 これから、まだまだ魔石が必要になっていくのに……このままだと良い物が造れないじゃないんだ!


「それはさっき聞きました。でも、ダメです!」

 く、くそ。どうすれば……。


「そ、そこをなんとかして貰えないでしょうか? これから、戦争で勝つには絶対に必要になるんです。ベルも、戦争で俺に死んで欲しくないでしょ?」

 そう、これは戦争の為の準備なんだ。

 決して、魔石が必要なのは趣味的に学校を魔改造したいとかではないんだからね?


「そ、それは……」

 お、ベルのさっきまでの絶対に許さないという猛烈な勢いが弱まったぞ!

 ここがチャンスだ。


「ね? だからいいでしょ? これも死なない為だから」

 俺は顔を上げ、ベルにたたみかけた。


「え、えっと……って! 危うく流されて仕舞うところでした」

 一瞬、許してくれそうになったが、ベルは慌てて首を横に振ってさっきまでの絶対許さないモードに戻ってしまった。

 はあ、どうしたら許して貰えるだろう?


「え~ダメなの?」


「ダメなものはダメです! 戦争で死なない為に、魔の森で死んでしまったら本末転倒じゃないですか!」

 くそ……正論過ぎて何も言い返せないぞ。

 考えるんだ。何でもいい、ベルが許してくれそうな案を。


「そ、それじゃあ……ベルも一緒に来るのはどう? ベルが危ないと判断したらすぐに帰るって約束するから!」

 咄嗟に思いついたにしては良かったんじゃないか?

 今のベルのレベルなら大丈夫……ではない気もするけど、そこは俺が一瞬で倒して安心させれば良いだけだしね。


「わ、私も!? 私なんかが魔の森に行っても大丈夫なんですか?」


「も、もちろん大丈夫だよ。逆に、ベルが危なくない範囲だったら行っても大丈夫でしょ?」

 言ってしまったから仕方ないけど、本当に大丈夫かな?

 まあ、ダメだったらすぐに転移で逃げればいいか。


「本当に安全なんですよね? 嘘ついていたら怒りますからね?」

 う、嘘ではないはず……いや、ちょっと危ないかもだけど……。


「だ、大丈夫だって。ね? だから、行こうよ。久しぶりにベルと二人だけで冒険したいな~」


「二人だけ……わかりました。それじゃあ、許可を出しましょう。ただし、私が危ないと判断したらすぐに帰るって約束は守って下さいよ?」

 ふふ、最後の甘えが効いたな。

 なんとか誤魔化せて良かった。


「もちろん! 明日が楽しみだな~」


「もう……。それじゃあ、明日の朝からですか?」

 うん、日帰りのつもりだからね。


「そうだね。明日の朝、起こしてくれる?」


「ふふふ♪ いいことを思いつきました。私、明日はレオ様を起こしません」

 な、何だと!?


「え、え~!?」


「寝坊してしまった場合は、明日の予定は無かったということで」

 く、くそ! そんな手があったのか!


「そんな~」

 もう、何年一人で起きられていないと思うんだ?

 一人で起きるなんて……。


「ふふ、これは、私との約束を破った罰です。本当は、成人までダメだったんですからこれくらいの嫌がらせをされて当然です」


「わ、わかったよ……」

 俺、明日起きられるか?

 無理な気がする。


 《次の日》

(起きてくださ~い。起きてくださ~い。起きて下さい。起きて! 起きろ!)


「う、うわあ!」

 とんでもなく大きな叫び声で飛び起きると、周りには誰もいなかった。

 ただ、枕の近くに昔ダンジョンで造った時計が置いてあったのが目についた。


「な、なんだ、目覚ましか……。やっぱりこの目覚まし、使うの嫌だな……」

 なんか、直接頭にガンガンと響いて、普通の目覚ましの五倍くらい嫌悪感があるんだよな。


「まあ、予定通りに起きることが出来たからいいか。それじゃあ、準備をするぞ。あ、そういえば、ベルは起きてるのかな? いつもなら、起きてない時間だからな……」

 よく考えたら、起きる時間を伝えるのを忘れてたな。

 自分が起きることで頭の中がいっぱいになっていたから、つい忘れてしまった。


 俺はどうしようか悩みながら、とりあえず着替えて部屋から出てみた。

「う~ん。やっぱり誰も起きてないみたいだな。仕方ない。ベルの部屋に向かってみるか……」

 誰も起きている気配もなく、警備のゴーレムがうろちょろしているだけの廊下を歩き、ベルの部屋に向かった。


「そういえば、ベルの部屋に入るのは寮の部屋、帝都の屋敷を含めて初めてだな」

 そんなことを言いながら俺はノックをしてみた。


 コンコン

「ベル~。起きてる?」

 ドアの前でベルを呼んでみるが、全く反応が無い。

 うん、これは寝ているな……。


「仕方ないな~。お邪魔しま~す」

 勝手に入るのは後で怒られちゃうかもしれないけど、せっかく朝早く起きられたんだからベルが起きるまで待っているなんて時間がもったいない!

 ということで怒られることを覚悟して中に入ると、部屋の隅にあるベッドからスヤスヤと寝息が聞こえてきた。


「お、やっぱり寝てるね。可愛い寝顔をしているな~」

 ベッドの脇まで進んで、寝息の主を確認するとちゃんと可愛らしいベルだった。


「よし、起こすか。それにしても、ベルの部屋は整理整頓されて……ん?」

 真面目な性格通り、ベルの部屋は余計な物は置かないで整理整頓されているんだろうな~って言おうとしたら、壁に貼られた写真や棚に置かれた物を見てしまった。

 これ、絶対俺が見たらいけなかった奴だよな。


「俺の……フィギュアだよな? それに、これは俺の写真。これ、いつの間に撮ったんだ?」

 棚にいくつも俺のフィギュアが置かれているのは流石に怖いな。

 たぶん、エルシーが創造魔法の練習で造った物を貰ったんだろうけど、これは怖いぞ。

 あと、額縁にまで入れて飾られている写真……これ、寮生活が始まったばかりの頃、ベルが泣いちゃって、俺が慰めているところだ。

 これも、エルシーが犯人だろうけど……あの人、いつから師匠にカメラを依頼していたんだ?

 エルシーと会えなくなって、まだそこまで経ってなかったよね?


「なんか、怖いぐらい俺関連の物が置いてあるな」

 他にも、棚や机の上には俺が着なくなった服……いや、俺は何も見てない。


「うん、何も見なかったことにしてベルを起こすか」

 俺は棚や机から目を逸らしながら、ベッドの傍に戻った。


「ベル起きて」


「うんん……レオ様? ふふふ。レオ様の匂いがする~」

 俺が名前を呼びながら体を揺すると、起きたのか起きていないのかわからない声を出しながら、ベルが俺にしがみついてきた。


「お、おい! 待つんだ! 噛んでる! 俺を噛んでるから!」

 これ、絶対寝ぼけてるだろ! てか、めっちゃ犬歯が刺さって痛いんだけど!

 たまに一緒に寝るけど、こんな寝癖悪くなかったよね!?


 《数分後》

「うう、やっと解放された……」

 ベルの部屋の前で、俺はさっきまで歯が刺さっていた肩を聖魔法で治しながらベルが着替え終わるのを待っていた。

 いや……なかなかベルが起きてくれなくて大変だった。

 で、起きたと思ったら焦ったベルに凄い勢いで外に出されてしまった。


「よし、治った。まさか、こんな目に……」

 魔の森に行く前に怪我をするとは。


「自業自得です。寝ている女の子の部屋に忍び込むなんて何を考えているんですか!?」

 傷が無くなった肩を確認していると、不機嫌そうなベルが部屋から出てきた。

 やっぱり、勝手に部屋に入るのは不味かったみたいだな。


「だ、だって……」

 うん、何も言い訳が思いつかん。


「だっても、こうもありません! それより……部屋の中を見たりしましたか?」

 うん、これ、見たって言ったらダメな奴だ。

 ベルさん、目がめちゃくちゃ怖いです。


「部屋の中? 何かあったの? 暗くて何も見えなかったよ」

 これ、俺史上最高の演技が出来た気がするぞ。


「い、いえ。見てないなら大丈夫です。本当に見てないんですよね?」


「う、うん」

 べ、ベルさん、顔が近いです。


「特に、ベッドの下」


「べ、ベッドの下?」

 ベッドの下にも何かあったの!? てか、棚とか机よりもベッドの下の方がヤバいモノが隠されてたの!?


「顔に、ベッドの下にも何かあったのか? と書いてありますね……。やっぱり、他は見てしまったんですか?」

 あ! 衝撃的過ぎて顔に出ちまった!

 ……うん、これは開き直ろう。


「いえ、僕は何も見ていませんし、何も覚えておりません」

 そう、俺の記憶にはベルの寝顔しか無いんだ。


「うん……わかりました。今回はそういうことで許しましょう」

 どうやら、『見なかった』ということで手を打ってくれるようだ。

 まあ、ベル的にもあれを見られるのは恥ずかしいだろうからな……。

 おっと、俺は何も見ていないんだった。


 それと、ボソッと聞こえた「良かった。見られてなくて。もし、ベッドの下を覗かれていたら私、レオ様をどこかに監禁してしまうところだったわ」という言葉も、記憶から消しておこう。



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