第一話 半年の流れ
お久しぶりになってしまいまして申し訳ございませんm(_ _)m
九章スタートです
爆発事件から約半年、俺は十二歳になった。
まだ十二年しか生きていないわけだけど……日々とても濃い人生を過ごしているせいか、はたまた前世の記憶を持っているからか、十二年よりもっと長く生きているような気がする。
感覚的には、三十歳くらいにはなっていそうなんだけどね。
さて、俺が十二歳になった話は置いといて、この半年間での出来事を説明しよう。
この半年、俺は領地の防衛力を強めることに全力を注いだ。
戦争が起きることはほぼ確実だろうと考え、それに向けて急ぎつつも慎重に準備を始めた。
爆発で崩壊した学校は半年間休みであったが、まだまだ復旧の目処が立っておらず、当分は学校に行けそうにない。
まあ、その分俺は領地開発に集中出来るからいいんだけど。
フランクとかやることなくて暇だろうな~。
それと、防衛面での開発で忙しくなってしまった俺は、申し訳ないけど商業面の開発に関して全てエルシーとホラント商会に任せることにしてしまった。
だから、たまに報告は聞くようにはしているけど、俺は地下市街の開発に半年も関わっていない。
最近の報告だとようやく魔法具工場の建設が終わり、街灯の生産が始またことで、地下市街の建物建設がどんどん始まっているそうだ。
予定では早くて半年、遅くても一年で一般公開が出来てしまうらしい。
予定通り、いや予定よりも大幅に早い。これは、本当にエルシーのおかげだな。
あ、そういえば、エルシーに『さん』をつけるのと、敬語では話さないことになった。
自分だけ距離を感じるから、シェリーたちと同じように名前だけで呼んで欲しいとお願いされ、そうすることにした。
まあ、言われてみればそんな感じもするから、シェリーやベルと同じような言葉遣いでエルシーと話すようにした。
おっと、話が脱線してしまったな。
本題である俺がこの半年間に何をしていたかについてだが、騎士団の強化と街の防衛設備の強化をしていた。
騎士団強化とは、もちろん騎士団員を増やすことなのだが、これまで月一回の入団試験を六回行って、大体五十人くらい増えた。
あれ? 意気込みの割には少なくないか? と思うかもしれないが、こればかりは最初の入団試験同様、慎重に俺が選ぶしかなかった。
下手に焦って王国のスパイを仲間にしてしまったら、最悪だからな。
俺がこんなに警戒しているというのに、王国は未だにスパイを入団試験に送りこんで来るし、いつになっても入団試験に手を抜けない。
とは言っても、悪いことばかりではなかったよ。
厳しすぎる入団試験やベルノルトが団長になった噂を聞きつけて、世界的に有名な冒険者や剣士がこぞって挑戦してきてくれた。
ベルノルトほどとは言えないけど、強い人、強くなりそうな人が着々と増えている。
ちなみに、アルマは俺の想像を超えるスピードで成長してる。
入団試験の試験官をヘルマンと交代でやってもらっているんだけど、最近は一回も俺には順番が回って来ていない。
ベルノルトの的確な指導とヘルマンと競い合っていたおかげか、半年でSランクの冒険者と変わらない強さになってしまった。
無属性魔法をマスターしたことによって更なる速さを手に入れ、手数で圧倒する戦い方を伸ばすため、両手剣一本スタイルから片手剣二本スタイルに変えるなど、持ち前の向上心と天才的な運動神経を使ってどんどん強くなっている。
そういえば昨日、ヘルマンに勝って九勝八敗百二十八引き分けで、初めてアルマが勝ち越しに成功したとか言って嬉しそうにしていたな。逆に、ヘルマンはめっちゃ落ち込んでいたけど。
まあ、引き分けの数を見ればわかる通り、二人の強さは互角だ。
たぶん、明日にはヘルマンが勝って九勝九敗になることだろう。
それでも、ダンジョンで鍛えたヘルマンと互角なんだから、アルマの成長スピードには感服だな。
そんな感じでまだまだ騎士団として数は少ないが、なんとか少数精鋭と言えるくらいには大きくなってきたと思う。
これからも、団員の増強と強化を並行して行っていきたい。
そして、防衛設備だが、とにかく西側を重点的に頑張った。
元々商業の街ということで、人を集めることしか考えられていなかったミュルディーン領は、周りに強い魔物などいないし、戦争に巻き込まれることも無かったことから、本当に外部からの守りが薄い。
城壁なんて飾り。ゴブリンを街に入れない為だけに作られているから、低くて薄いんだ。
とても、あのままで戦争なんて乗り切れるはずはなかっただろう。
ということで、俺はとりあえず西側の城壁の改造を始めた。
人の手でやろうかな……とか考えたけど、どう考えても人の手だと戦争が始まるまでに完成するなんて無理だから、俺が半年間くらい試行錯誤して創造魔法だけで城壁を造った。
凄くこだわって造ったから、城壁は満足できる出来となった。
色々と仕掛けを考えたし、二十四時間休憩なしに見張ってくれるゴーレムも設置したから結構自信があるよ。
この前の爆発事件で痛い目にあってから、出し惜しみはしないことにしたからね。
こんな感じで、ミュルディーン領はこの半年で良い感じに変わってきている。
しかしその一方、同じ半年間で帝国は悪い方向に向かってしまっていた。
原因は、もちろんフィリベール家だ。
今は亡きフィリベール家の当主は、帝国にとって非常に厄介なモノをたくさん残していった。
荒れた領地に、搾取され過ぎて餓死寸前の領民、防衛出来るような機能がほとんど残っていない王国との国境。
もう、これを元の状態に戻すとなると、一体どれだけの金と時間が必要になるのか……。
もちろん、ダンジョンを潰して貧困を更に悪化させてしまった俺に、自分の領地が忙しいからって知らんぷりをしようなどといった考えは浮かぶはずも無く、しっかりと支援をさせて貰った。
まあ、と言っても自分の領地だけでも人手が足りなかったから、お金と食料、魔法具のような救援物資を送っただけになってしまったんだけど。
これから自分の領地に余裕が出来たら、しっかりと人材を派遣して支援をしないといけないな。
そんなわけで、帝国は元フィリベール領をなんとか復興しようと頑張っているが、なかなか進んでいない。
その理由は、領地の復興よりも王国との国境付近の防衛拠点の修復・強化が優先されたからだ。
これにも、ちゃんとした理由があって……壊された防衛拠点をそのままにして、先に領地を復興するとどうなると思う?
ちゃんと考えればわかると思うが、どう考えても喜んで王国が復興の終わった領地を取りに来るだろう……。
そうなることがわかっていたから、皇帝は国民からの反感を買いながらも先に防衛に力を入れることを決めたのだ。
本当、政治って大変だよな。
と言っても、人ごとじゃないんだけど……。
たぶん、今後元フィリベール家とその配下が支配していた広大な西側の領地は俺が管理することになりそうなんだよね。
この前、俺は皇帝に頭を下げてお願いをされてしまった。
『これまで帝国にたくさん貢献してきたレオ君に押しつけるようになってしまって本当に申し訳ない。だが、君にしか頼める人がどうか……どうか、成人してからでいい。将来、西側の管理をして貰いたい』
どうやら、皇帝陛下というか、帝国としての考えは、俺を成人と同時にシェリーと結婚させ、これまでの功績をたくさん並べて公爵にし、皇族として貴族には任すことが出来ないほぼ国と言っても過言でもないような広大な、元フィリベール家とその傘下の領地があった西側の土地を管理して貰おうという考えらしい。
ということで、俺は公爵になることが決まってしまった。
まあ、仕方ないと思っているよ。シェリーと結婚すると決めたからには、帝国の為に働かないといけなくなることは覚悟していたからね。
ただ、ここまで働かないといけなくなるとは……。
ということで、成人まで……今は十二だから十六歳までの四年間。とんでもなく広大な土地を管理するのにたくさんの優秀な人材、資金を集め、復興の計画をこの短い期間で練らないといけなくなった。
四年間か……どう考えても圧倒的に時間が足りない……。
まあ、出来る限りのことはやらないといけないな。
とりあえず、今ある領地が完璧に開発し終わってから、そっちの準備は始めるか。
よし、今後の方針は決まった。後は、必死に働くだけだ!