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閑話8 久しぶりの再会


 SIDE:シェリー

 レオの師匠を訪ねた日の夜

 レオは一人でエル姉さんのところに行ってしまった。

 もちろん、私もついて行きたかったのよ?

 で、でも、エル姉さんには色々と借りがあるから……そう、これで貸し借りゼロよ!


 それで、今はリーナとベルと一緒にモニター越しにレオたちの様子を見守っていた。

 べ、別に、あくまで見守っているのであって、別に変なことをしないか監視しようとか考えているわけじゃないからね!


 そんな言い訳を頭の中でしつつ、私は城に到着したレオの様子をうかがう。

 ちょうど、エル姉さんとルーがいるところに到着したみたいだ。

 あれ? ルーってあんなにエル姉さんにべったりだったかしら?

 私だけかと思ったけど違うのか……そういえば、私たちが帰ってからずっと二人だけで暮らしていたんだもんね。そりゃあ、懐くか。


「えっと……久しぶり!」

 レオは気まずい雰囲気を出しながら、ポリポリと頬を人差し指で掻いた。


 それに、すぐエル姉さんが口を開いた

「もう……久しぶりじゃ「レオ~!」ですよ。あ、ルー!」

 けど、ルーが先にレオに抱きついて邪魔されちゃった。


「うわ~ん。レオ、生きてて良かったよ~」

 ふ~ん。ルーって、レオに対してそこまでの気持ちがあったのね。

 泣くほど心配するなんて、意外。


「ル、ルー、心配させてごめんね。えっと……エルシーさんも来ますか?」

 レオはルーの様子に戸惑いつつも、ルーに先を越されてタイミングを失ったエル姉さんに向かって手を広げた。


「もう……たくさん文句を言いたいところですが、今はそうさせて貰います」


「ぐす、本当に、本当に、三日も起きてこないなんて、心配で心配で眠むれなかったんですからね? う、うう~」

 ルーと一緒に抱きついたエル姉さんは、レオにくっつきながら豪快に泣き始めた。

 やっぱり、気が強いエル姉さんでも泣くよね。

 私みたいに近くで見守っていられたわけじゃないし、相当不安だったはず。


「ご、ごめんなさい。後で何でも言うことを聞きますから許してください」

 エル姉さんにまで泣かれてしまったレオは動揺の余り、エル姉さんに一番言ってはいけない言葉を言ってしまった。

 何でも言うことを聞きますなんて、エル姉さんは本当に容赦ないお願いをするわよ……。

 ああ……レオ。何てことを言ってしまったの……。


「ぐす、今……何でもって言いましたね? わかりました。覚悟しておいてくださいよ?」

 やっぱり……。エル姉さん、絶対とんでもないお願いをするわ。

 ああ、エル姉さんを止めに行きたいよ。でも、この距離じゃあ無理だわ。


「は、はい。か、覚悟しておきます。とりあえず、気が済むまで泣いてください」

 エル姉さんの言葉に、レオは自分の言葉の重大さに気がついたみたいだけど、とりあえず今は二人を慰めることだけを考えることにしたみたい。

 はあ、もう遅いわ。こうなったら、なるべく私が羨ましく思わないお願いであることを願うしかないわね。

 まあ、そんな願いは通じないでしょうけど。


 それからだいたい五分が経ち、ようやく二人が泣き止んだ。

「ありがとうございました。もう、大丈夫です。それじゃあ、ご飯にしましょうか」


「そうだね。ほら、ルーもご飯だよ」


「イヤ! まだ離れたくない。レオが連れてって」

 エル姉さんが一旦離れ、それに合わせてレオが動こうとすると、ルーの口から意外な言葉が飛んできた。

 え? ルー、そんなことを言うようになっちゃったの!?

 しかも、あんな甘えた目……どこで覚えたのかしら?


「……わかったよ」

 まあ、ルーがここまで言うのはよっぽどのことだからね……今日くらいは許してあげるわ。



「ほら、座って」

 食事をする部屋に到着し、レオが隣の席にルーを座らせようとすると、ルーがもの凄い勢いで首を横に振った。


「イヤ! レオの膝の上がいい!」

 え? これ、本当にルーなの?

 なんか、本当に小さい子供を見ているみたいなんだけど?


「え、え?」

 強く抱きつかれてしまったレオは、戸惑いながら助けを求めるようにエル姉さんの方に顔を向けた。


「えっと……レオくんが倒れたのがよっぽどショックだったのかここ最近、ルーの心がどんどん幼児化していってしまいまして……四歳、五歳くらいの小さな子供にまで精神が幼くなってしまったんです」

 え~。あ、でも、私もレオが倒れたのを知って、六日間も会えなかったらおかしくなってかも……。

 逆に、気を確かに保てているエル姉さんは凄いのかも。


「そ、そんなことが……。やっぱり、ルーは前に大切な人を無くしたトラウマみたいなものがあるのかな? 前に発狂した時も寂しさに反応してからでしたよね?」

 ああ、魔族の寿命が長くて私たちの方が早く死んでしまうって話をした時ね。

 あの時のルーも異常だったわ。


「はい。何か、トラウマがあるのかもしれませんね。もしかすると、記憶喪失と何か関わりがあるのかも……」


「よっぽどショックなことが起こって、自分で記憶を消しちゃったとか?」

 あー破壊魔法を使ってか……。


「ありえますね」

 ありえるのかな? 確か、破壊魔法って目に見える物しか消せないんだよね?


「うんん……発狂していた時にお姉ちゃんって叫んでいたからな……。もしかすると、完全には消すことは出来なかったのかもしれませんね」

 ああ、失敗したけど一応簡単には思い出せない程度に消せちゃったとか?

 それなら、ありえるのか……。


「そうですね。記憶を戻してあげるべきなのか、戻してあげないべきなのか……」


「それは、わかりませんね。自然に任せるしかありません。どっちにしろ、記憶を戻す方法は今のところ無いんですから」

 まあ、レオの創造魔法でなら戻すことも出来そうだけど、本人が嫌がっている記憶をそこまでして取り戻すのも違う気がするからね……。


「そうですね」


「それじゃあ、ご飯を食べましょう。えっと……仕方ない、今日は特別だからな?」


「えっへ、ありがとう」


「お行儀悪いから本当はダメなんだからな?」

 本当よ! 今日だけだからね!


「わかった! ねえ、レオ、あーんして」

 あーん!?


「え? あ、うん。まあ、そうなるのか……」


 口を開けて待っているルーを見たレオは、もう何も言わずルーの口に料理を運んだ。

「ほら、あーん」


「あーん」


「うん、美味しい!」

 レオにあーんをして貰ったルーは、美味しそうにもぐもぐと食べ、レオにニカッと笑った。

 本当、別人を見ているみたいね。いつもならバクバク食べてるのに……あの調子で食べててお腹いっぱいになるのかしら?


「それは、良かった」


「ああ、もう我慢できません! 私もあーんしてください!」

 ルーがあーんをして貰っているのを見ていて羨ましくなってしまったのか、エル姉さんが立ち上がった。

 まあ、気持ちはわかるわ。


「え?」


「ああ、もう。もっと違うことに使おうと思ったのに……。先ほど、言いましたよね? 何でも言うこと聞くって?」

 我慢できなくなったって、そういうことね。

 エル姉さん真面目だな~。これくらいなら、お願いを使わなくてもやってくれるのに。


「あ、ああ……そうだね……。でも、二人に俺が食べさせていたら時間がかかりそうなんだけど?」


「心配ありません。その代わり、私もレオくんにあーんをしますから。それに、シェリーさんやリーナさんに口移しでご飯を食べさせて貰っているのに比べたら、そこまで時間はかからないんじゃないですよね?」

 え?


「な、なんで知っているの!?」

 そ、そうよ! 何で知っているのよ! と思ったけど、そういえば、エル姉さんとレオの寝室を観察する魔法アイテムを造ったんだっけ。

 すっかり忘れてたわ。


「さあ? どうしてでしょう?」

 エル姉さん、わざとらしいよ。

 流石に、レオでもバレちゃうって。


「わかりました……。それじゃあ、順番ですよ?」


「はい。それじゃあ、今度は私の番ですね? あーん」

 諦めたレオの顔を見て、エル姉さんは嬉しそうに口を開けた。

 それを見て、レオがルーの時と同じように口に料理を運んだ。


「美味しいですか?」


「はい。いつもの十倍美味しいです」

 ああ、あの笑顔、凶器だわ……。


「それじゃあ、今度は私がレオくんに食べさせてあげる番ですね。あーん」


「あ、あーん」


 プチン


 私はもう耐えられず、モニターの電源を消しちゃった。

 モニターを壊さなかっただけでも、褒めて欲しいわ。


「あーもう! あのラブラブ家族みたいなシチュエーションはなんなの! 見てられないわ!」

 エル姉さんがお願いがあの程度で済ませてくれたのは良かったと思ったけど、それを見るとなると話が変わってくるわ!


「まあまあ、落ち着いてください。これくらい我慢しましょうよ。たぶん、昨日まで逆の立場だったんですから」

 あ……言われてみれば。


「そ、そうね……。確かに、不安な状況でこれを見せられたらルーもおかしくなるわ」

 もしかすると、これは私たちに対するエル姉さんとルーの仕返し?

 さ、流石にそんなことしないわよね?


 それから、心の中でヒイヒイ言いながら三人の甘々な食事を見るのであった。

 これを三日も見ていたエル姉さんとルーには本当尊敬するわ。



これから更新頻度が下がっちゃいますm(_ _)m

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