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第十四話 ダメな父親


 俺が目を覚ましてから二日が経った。

 昨日は俺が目を覚ましたと聞いて、たくさんの人がお見舞いに来てくれた。

 別に、もう元気だから俺が皆のところに行っても良かったんだけど、シェリーとリーナ、ベルに全力で止められたから一日ベッドでゆっくりしていた。


 で、話を戻すと、昨日はたくさんの人が来たんだ。

 フランクやヘルマンはもちろんのこと。クラスの皆、イヴァン兄さんとユニスさん、おじさんが来てくれた。あとは、皇帝とクリフさんがわざわざ来てめっちゃ驚いた。

 シェリーとたくさんの貴族子女を守ってくれてありがとうと感謝をされた。

 もちろん「いえ、ほとんど守れませんでした」って言ったよ。

 でも、「いや、レオくんが壁を造っていなかったら、もっとたくさんの人が死んでいただろう……」と言われ、根拠までしっかりと言われてしまった。

 なんか、俺が壁になった側……俺の後ろ側にいた人は、誰一人として死んでなかったみたいなんだ。

 で、その理由は俺の着けていた指輪が即死を無効にしたから助かったんだと言われてしまった。


 あ、この説明をする前に、おじさんにされた説明をしないといけなかった。

 どうやら、犯人がわかったらしい。

 それで、教えて貰ったんだけどその犯人が凄く衝撃的だった。


 なんと、師匠の息子だったのだ。

 名前は、ゲルト・フェルマー。

 三十一歳で、おじさんと同い年。

 魔法学校にも通っていたみたいだけど、貴族学校には通っていなかったからおじさんは面識が無かったみたい。


 付加魔法を使う凄腕の魔法具職人らしいけど、気難しい人だった。

 金銭面を理由に学校と何度も揉めていたらしく、それを理由に学校を去年くらいに辞めた。

 それからは、フィリベール家の莫大な資産を使って研究を行い、普通では考えられない魔法具を次々に発明していたみたいだ。

 付加魔法というよくわからない魔法で、今回の爆弾に《即死》を付加したらしい。

 ここまでの話を魔法学校の人や生き残ったフィリベール家の人たちから聞き出せた。

 でも、肝心のゲルトの能力について詳しい情報は誰も知らなかったようだ。


 そこで、俺は一番詳しく知っているであろう師匠のところに行くことにした。

 シェリーとリーナとベルと一緒に。

 なんでも、心配だからしばらくは一緒にいたいらしい。

 まあ、いろいろと迷惑をかけたわけだし、断らないで一緒に行くことにした。



「師匠! 来たよ!」

 いつも通り店の中に転移して、師匠を呼ぶとすぐに返事が聞こえた。


「お! その声は、レオか! 聞いてくれ! もうすぐお前に頼まれた魔法具が……って、可愛い子たちを連れてきて、どうした? もしかして、噂の結婚相手を紹介しに来たか?」

 何も知らない師匠は、俺と一緒にいるシェリーたちを見て嬉しそうにしていた。

 はあ、これから師匠の息子さんのことを説明しないといけないと思うと、帰りたくなってくる……。

 でも、俺が説明しないとダメだよな。


「そうですよ。こっちがお姫様のシェリア。こっちが聖女様の孫のリアーナ。そして、俺のメイドのベル」


「「「はじめまして」」」


「お、おう……。はじめまして。ほ、本当にレオは貴族だったんだな……」

 どうやら、師匠はシェリーたちの格好や俺のいつもと違う服装を見て圧倒されてしまったみたいだ。


「まあね。それより、大事な話があるんだけど大丈夫ですか?」

 三人の紹介もそこそこに、俺は早く本題に移ることにした。

 嫌なことは、後回しにしていても仕方ないからね。


「おう。大丈夫だぞ。作業部屋しかないけど大丈夫か?」


「はい。大丈夫です」


「それで、大事な話ってなんだ? もしかして、結婚するとかか? 流石に、まだ早いんじゃないか?」

 ごめん、師匠。俺の硬い表情を見て、和まそうとしてくれるのはありがたいけど、今日はそんなことで笑える内容じゃないんだ。


「いや、違いますよ。この前、学校で爆発があったのは知っていますか?」


「ああ、そんな話をちょろっと聞いたな。でも最近、新作の研究に熱中していたから詳しいことまでは知らないぞ」

 だろうね。そうだと思ったよ。


「そうですか……。それじゃあ、端的に説明をします。この前、僕が通っていた学校に爆弾が仕掛けられ、爆発が起きました。それによって、たくさんの貴族の子供たちが亡くなりました」


「そこまで大きな爆発だったのか。 誰が犯人かはわかったのか?」


「はい。犯人はフィリベール家の人たちでした」


「フィリベール家って、公爵家じゃねえか。フェルマー商会の元後ろ盾だぞ。そんな家が、どうしてそんなことを?」

 師匠はフィリベール家の名前を聞いて、驚いた顔をした。

 まあ、一般人はあそこの酷さを知らないからな……。


「王国に帝国を売る為ですよ。あそこは経営が悪化していて、金が必要だったから国を売ったんですよ」


「なるほど……。それで、どうして俺のところに来たんだ?」

 さて、本題だ……。

 俺は覚悟を決め、説明を始めた。


「実はですね……。師匠の息子、ゲルト・フェルマーが爆弾を作った犯人だったんですよ」


「は? ゲルトが爆弾を作った? それじゃあ、うちの息子が大量殺人に加担したというのか?」

 師匠は信じられないという顔をして、俺に聞き返した。

 まあ、自分の息子が犯罪者なんて信じたくないよな。


「はい。間違いありません」


 俺の答えに、師匠は三十秒ほど考え込んでからまた口を開いた。

「それで、ゲルトは捕まったのか?」


「いえ、証拠隠滅の為に更にフィリベール家の当主を殺してから王国に逃走しました」


「そうか……。あいつは、とんでもない罪を犯してしまったんだな」

 師匠は状況を受け止め、低く呟くような声でそう言った。


「……」

 悲しんでいる師匠に、どう質問を切り出せばいいか……。

 そう思った俺は、なかなか師匠に質問を始めることが出来なかった。


「それで、俺は何を話せばいい? 話せることなら、何でも話す」

 俺がしばらく黙っていると、心の整理がついたのか師匠からそんな言葉が来た。

 俺が来た意味を理解してくれたようだ。


「それじゃあ……まず、ゲルトさんがどんな人なのかを」


「ゲルトがどんな人か……。すまんな。詳しく語れない」


「え? どういうことですか?」

 どういうこと? 今さっき、話せることなら何でも話すって言ったよね?


「いや、隠そうとしているわけじゃないんだ。本当に恥ずかしいことなんだが、俺は魔法具に夢中で子供の頃のあいつに父親らしいことを何も出来なかったんだ」

 ああ、そういうことか……。

 なんか想像出来るな……今でさえ、帝都にいたら嫌でも耳に入ってくるような学校の大爆発を知らなかったんだから、当時はもっと周りに興味が無かったんだろうな……。


「本当、ダメな親だったさ……。出来たとしたら、魔法具を教えてやったことと、魔法学校に行かせてやったことぐらいだな。ほとんど口も聞かなかった。俺が作業部屋に籠もっていたからな」

 親子でのコミュニケーション不足か。

 なんか、師匠にも問題がある気がしてきたぞ。


「そういえば、一度だけ本気で喧嘩をしたことがあったな。そう、嫁が死んじまった時だ。あの時、母親が死んだ知らせを聞いて急いで帰ってきたゲルトが、嫁の死んだのを確認してから俺のことを殴ったんだ。そして、母さんが死んだのはお前のせいだ! と、俺に向かって言い放ったんだ。お前が魔法具を作ることだけしかやってこなかったから、その分母さんが無理をして早く死んじまったんだと言われた」

 なるほど……。ゲルトさんは、お母さんとは仲が良かったんだな。

 まあ、師匠が前に言っていた奥さんの話を思い出しても、優しそうな人だもんな。


「当時、馬鹿だった俺はそれにキレて殴り返した。あの時、俺は嫁の偉大さを理解してなかったのさ。それから、自分で全てをやるようになってから初めて気がついた。本当、遅すぎるよな……」

 うわ……。そりゃあ、息子に嫌われるだろ。


「なるほど。師匠が殴った後、ゲルトさんはどうしたんですか?」


「何も言わずに出て行ってしまったよ。本当、ゲルトには何度謝っても謝り切れない」

 うん、それに早く気がついて欲しかったよな。

 もしかしたら、ゲルトさんは間違った道に進まなくて済んだのかもしれないのに……。


「そうですか……。それじゃあ、次の質問。ゲルトさんの付加魔法について教えて貰えませんか?」


「付加魔法? ああ、確か……たくさんの魔力を使って物に何か能力を加える力だぞ。と言っても、石を光らせるとか、それくらいしか出来なかったみたいだけどな。俺が知っているのはこれくらいだな」

 ああ、本当にダメな親だな。

 師匠じゃなかったら、罵倒していたかも。

 もっと、子供に興味を持って欲しかったな。


「うん……わかりました。質問は以上です」


「何も知らなくてすまんな。ダメな師匠で悪かったな」


「いえ、僕はこれからも師匠のことは尊敬していきますよ。ただ……これから少しの間くらいはこれまでの人生を振り返った方がいいと思います」

 本当はもっと言ってやりたいけど、師匠もわかっているからこれだけに留めておく。


「ああ、そうだな……そうする。それと、償うことは出来ないが、それでもできる限りの償う方法も考える」


「わかりました。僕も一緒に償います」

 俺も、今回の事件で守れなかった人の為にも絶対にゲルトを捕まえる。


「いや、それはいい。お前は被害者なわけだから」


「いえ、僕は大して被害は受けてないですよ。ほら、無傷ですし」

 そう言いながら、すぐに失敗したと思った。

 これじゃあ、誤魔化しているのがバレバレじゃないか。


「ああ、なんとなくわかった。お前、ゲルトの爆弾で大怪我をしたんだな?」

 やっぱり、そうなっちゃうよな。


「それは……」

 どうしよう。言うか?


「はい。しました。あと少しで死ぬくらいの大怪我です。両腕が無くなり、全身が傷と火傷だらけの状態でした」

 俺が悩んでいると、隣で座っていたリーナが代わりに答えてしまった。

 って、両腕が無くなったなんて聞いてないんだけど!?

 俺、もしかしたら腕が無くなっていたのか……。

 再生様々だな。


「そ、そこまでの大怪我だったのか……」


「ちなみに、レオくんが大事な説明を抜かしていたので代わりに言わせて貰いますが、今回の爆弾を使った本当の目的は、レオくんを殺すためだったんです。ゲルトさんはそれを理解して、付加魔法を使ってレオくんを殺すことが出来るようなとても強力な爆弾を作ったんです」

 待って! そこまで言うの!?


「そ、そうだったのか……本当にすまなかった。許してくれとは口が裂けても言えない。許さなくていいから何でもさせてくれ」

 リーナの話を聞いて、師匠は驚きの表情をしてすぐに真剣な顔をして謝罪してきた。


「いや、いいですよ。いや、うん……今日はこの辺で帰らせて貰います。また、ゆっくりと話しましょう」

 ちょっと、今話すのは辛いな。

 お互い、少し気持ちが落ち着いてから話し合おう。


「ああ、わかった。本当にすまなかった」


「いいですよ。それでは、また」



「はあ……」

 部屋に転移してきた俺は、思わず大きなため息をついた。

 予想以上に、疲れた。


「どうして、本当のことを言わなかったんですか?」

 俺が『どうして師匠に俺が標的だったことを言ったんだ?』とリーナに言おうとしたら、リーナの方が早く質問してきた。


「それは……」

 どうして言わなかったんだろう?

 言いづらかったから?


「師匠さんを尊敬しているなら、嘘をつくべきでは無いと思います。あの嘘は優しさにはなりません。どうせ、すぐにバレてしまう嘘なんですから」

 言われてみればそうだよな。コルトさんなら俺が大怪我をしたことをすぐに知るだろし、師匠の耳に入るのも時間の問題だったな。

 はあ、やっぱり俺が言うべきだったな。


「そうだよな……。代わりに言ってくれてありがとう」


「いえ、レオくんが直接伝えるのは辛いだろうと思ったので、代わりに言わせて貰いました」


「ああ、本当に助かったよ」

 俺が言うべきだったんだろうけど、本当に言いづらかった。

 だから、正直リーナには助けられた。


「でも結局、ゲルトの能力の詳しいことはわからなかったわよね」


「まあ、仕方ないよ。でも、聞いた感じ、俺の魔法に似ていた気がするよ。たくさんの魔力を使う代わりに、特殊なことが出来る魔法……創造魔法や破壊魔法と似た魔法だから、きっと凄い能力なのは間違い無いと思うよ」

 師匠の言っていた『たくさんの魔力を使う』が重要なキーワードになると思うんだよね。


「そうね……。今度から、レオやルーと同じくらいの能力を持った人と戦わないといけないのか……」

 確かに言われてみると、怖いな。


「そうだね。これから、もっと強くなっていかないと。まずは、領地の力をつけないとだな」

 大切なものをこれからも守るためには力をどんどんつけていかないと。

 これからは今回みたいな甘さは捨てて、使える力は全て使っていくぞ。

 常に全力だ。そうしないと本当に死んでしまうし、大事なものを守れない。


「そうね。私も頑張ってもっと魔法を上手く使えるようになるわ」

「私も、どんな怪我でも治せるように頑張ります」

「私は……もっと有能なメイドを目指します」


「別に、三人は傍にいてくれるだけで十分だけどね。いや、皆で目標に向かって頑張ろうか」

 いつもなら『傍にいてくれるだけで十分だよ』と言ってしまうが、今回は皆で頑張ることにした。

 なぜなら、もう俺だけの力では勝てない人がいることに気がついたからだ。

 たぶん、これからも増えていく。そんな時に、絶対に周りに頼らないといけない時が来る。

 そんな時に、少しでも皆の力があった方がいいからね。


「「「はい(うん)」」」

 三人の力強い返事を聞いて、俺も頑張るぞ! という気持ちになった。

 大切なものを必ず守るために……。


これで、八章は終わりです。

ぼちぼち七、八章の修正を行いつつ、人物紹介と閑話を書きたいと思います。

閑話が終わったら、原稿作業の為にしばらく更新が出来なくなるかもしれませんm(_ _)m

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