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第十三話 目が覚めて


 爆発する!

 そう思った瞬間、俺は反射的に何層もの壁を創造し、たぶん爆発を受けても死なないだろうと思った俺は、シェリーたちの前に出て肉壁になった。

 すると、同時に爆発が起こり吹き飛ばされた。


 それからの記憶は無い……。


「う、うう……。あれ? ここは?」

 目を覚ますと、見慣れた天井だった。

 いつも俺が寝ている寝室だ。

 あれ? 学校で爆発があったはずなんだけどな……。

 もしかして、夢落ち?

 そうか……確かに、あんなことが現実で起こるはずが無いか。


 そう思い、部屋を見渡すと……何故かシェリーとリーナがいた。

 あれ? これも夢か?

「「レオ(くん)?」」

 あ、夢じゃ無かったみたいだ。

 思いっきり、泣きながら二人に飛びつかれた俺は、そう実感した。

 たぶん、本当に爆発は起きたんだろうな。

 それで、おれは気を失ったんだろう。


「二人とも……無事だったんだね。怪我が無いみたいで良かった。俺、どのくらいの怪我だった?」


「大怪我ですよ! しかも、三日くらい目を覚まさなくて凄く心配したんですからね? 本当に心配したんですから……グス」

 俺が質問すると、リーナが真っ赤な目を見せながら教えてくれた。

 三日か……二人とも、ずっと泣いていたんだろうな……。


「そうなのか。心配させちゃってごめんね。それにしても、大怪我か……」

 俺の馬鹿げたステータスでも怪我をする爆弾なんて存在したんだな……。


「大怪我とかそういうレベルじゃないわ。死ぬ手前よ。再生のスキルが無かったら本当に危なかったわ。もう、無理しないでよ……」

 死ぬ手前か……。即死防止のアイテムが無かったら本当に死んでいただろうな。


「まさか、そんなに怪我するとは思っていなかったからね。まあ、よく考えたら爆弾の目の前にいて死なない方がおかしいよな」

 もしかすると、怪我とステータスは関係ないのかもしれないしね。

 そこら辺を考えなかったのはダメだったな。


「本当ですよ。どうしてそんな危ないことをしたのですか?」


 どうしてって……

「もちろん。シェリーとリーナを助ける為だよ」

 二人の為なら、死ぬとわかっていても同じことをしたさ。


「……そうでした。ごめんなさい」


「いいよ。無事だったんだから。そういえば、フランクとヘルマンは? あの二人も、爆弾に近かったからそこまでちゃんと壁を作れなかったんだよね」

 確か、二人は爆弾の方向から見てシェリーとリーナの後ろ側にいたんだよね。

 だから、シェリーとリーナが大丈夫なら大丈夫だと思うんだけど。


「大丈夫よ。二人とも無傷だったから心配ないわ」


「そうか。それは良かった……他の皆は?」

 確か、教室にいた人たちを守るために分厚い壁を造ったはずなんだけど。


「クラスの子たちは、レオくんのおかげで助かりました。ただ……」


「ただ?」

 何があったんだ?


「他のクラスの子たち、爆発に巻き込まれた隣や下の教室にいた人たちは……」

 他のクラスの人たちか……そこまでは考えられなかったな……。


「そうか……」

 巻き込んでしまって本当に申し訳ないな。


「それが、中には奇妙な死に方をしている人もいたそうなんです」

 奇妙な死に方?


「え? どういうこと?」


「足だけしか火傷を負っていなかった子が死んでしまったなど、死んでしまうほどの傷を負っていない子たちがたくさん死んでしまったんです」

 え? 足を怪我しただけで死んだ?


「え? どういうこと? 何が原因なの?」


「ダミアンさんは、呪いの類いだと思うって言っていたわ。でも、どんな呪いなのかは、もう爆弾は無いから調べることは出来ないって」

 呪いか……あり得るかも、俺やシェリー、リーナは状態異常にならないからな。

 呪いも無効化されたのかも。


「そうか……犯人はわかった?」


「はい。学校付近にいたフィリベール家の人間を捕まえて聞き出したところ、犯行を認めたみたいです。昨日には、フィリベール家の当主を捕まえることになって、屋敷に騎士たちを向かわせたらしいのですが……」


「どうしたの?」


「大爆発が起こったそうで、屋敷ごと無くなってしまったみたいなんです」

 証拠隠滅だな……。果たして、当主は生きているのか……。


「そうか……結局、誰が犯人だったのか、わからないままなんだね」

 フィリベール家が無能なのがわかった王国が爆発させたのかな?


「いえ、これを見てください」

 そう言って、リーナが俺の鞄から何かを取り出した。


「あ、ネズミモニター」


「はい。これに、証拠映像が残っています」

 そう言って、リーナがネズミモニターを起動した。


 《三日前》


「よし、大事な物は全部持ったな?」


「ああ。お前に言われた物は持ったよ」

 モニターに映っていたのは、どこかで見たことがあるような顔の男と、首輪を着けた元魔法教師のヘロンダスの二人だった。

 どうやら、逃げ出したあいつはフィリベール家の奴隷をやっているようだ。

 それにしてももう一人の男、誰かに似ているな……。


「よし、それじゃあ。ここから脱出するぞ! ここにはもうすぐ帝国の騎士が来てしまうんだからな」


「俺たち、逃げられるのか? それなら、あの馬鹿当主に命令されて仕方なくやっていましたと言って、許して貰う方がまだ可能性があると思うぞ」


「確かにそうだな……。いや、ダメだ。大学の研究室に行ったら俺が合意してフィリベール家に入ったことがバレる。そうだな……逃げる時間稼ぎをしないと」

 ふうん、大学の研究者か何かかな?

 後で、調べてみないと。


「あ、いいことを思いついた。この屋敷全体に《消滅》と《爆発》を付加するぞ。それで、《起爆》を付加したスイッチをメイドに渡しておこう。もし、帝国の騎士がここに来たら押すようにと言ってな」

 付加? なんだそれ。スキルか?

 名前的に、物に何かしらの効果を付加させる能力なんだろうな……。

 で、フィリベール家が俺でも殺せるような特殊な爆弾を作らせたんだろう。


「つまり、騎士を殺すのと同時に、お前がここにいた証拠を消すんだな?」

 え? てことは、当主は屋敷と共に消滅しちまったのか?


「そうだよ。せっかくこれまでコツコツと貯めてきた魔石を全部使ってしまうが、逃げるためだから仕方ない」

 映像は、ここで終わった。


 うん、間違い無くこの男が爆弾を作ったんだろう。

 ヘロンダスがどうしてここにいるのかはよくわからないけど。

 それにしても、酷い奴だな。

 人を殺すことに何も思っていない。それに、簡単に人を裏切る。

 この短い映像を見ただけで、この二人のクズさが十分伝わってきた。


「なるほど……で、この人が誰なのかはわかったの?」


「まだよ。今、ダミアンさんが魔法学校に部下を調べに行かせているわ」

 それじゃあ、誰なのかはもうすぐわかるな。

 それにしてもあの顔、誰かの面影があったんだよな……。


「そうなんだ。でも、わかった頃には逃げられているだろうね」


「うん、ダミアンさんも同じことを言っていたわ。他の映像でも王国に逃げるって言っていたんだけど、国外に出られたら流石に探せないって言っていたわ」

 だよね。いつか、王国には痛い目に遭って貰わないといけないな。

 今は、そんな力は無いから出来ないけど。


「そうか……。よいしょ」


「あ、まだ起き上がらない方がいいですよ」

「そうよ。まだ寝てなさい」

 俺が上体を起こすと、二人が慌てて止めてきた。

 よっぽど、二人をこんなに心配させるくらいの怪我をしてしまったんだろうな……。

 死ぬ手前って言っていたから、俺が想像も出来ないくらい大怪我だったんだろうな。

 再生が無かったらと思うと、本当に怖いな。


「大丈夫。もう、寝過ぎたくらい寝たからね。それより、ベルは?」


「今は寝ているわ。交代で、レオのことを看病していたのよ」


「そうなんだ。なんか、ごめんね」

 ベルにも後で感謝を伝えないといけないな。


「気にしないでください。命を守って貰ったことに比べたら大したことじゃないですよ」


「そうよ」


「わかったよ……。うん、しっかりと治ってるね」

 俺は傷が一つも無い自分の体を見て、一安心をした。


 あ、でも、なんか手に違和感が……

「あ、指輪が全部無くなってる」

 手を見ると、指輪が全部無くなっていた。

 そうか、爆発で壊れてしまったんだな……。


「あ、それならさっき、ヘルマンが届けてくれたわよ。確か、ここにおいておいたわ。ほら」


「本当だ。良かった……」

 ダンジョンで手に入れた二つは最悪無くなっても仕方ないで済んだけど、このリーナとシェリーとお揃いの指輪が無くなっていたら相当なショックだったろうな。


「ふふ、私たちが着けてあげますね」


「あ、うん。ありがとう」


「そういえばこの指輪、ダンジョンで手に入れたんでしょ?」

 俺の指に嵌めている途中、シェリーが山のダンジョンで手に入れた天使の指輪について聞いてきた。


「そうだよ。即死を無効化する能力があるんだ」


「聞いたわ。たぶん、これのおかげでレオは助かったのよね」


「そうだね。普通なら、爆発にあんな間近で巻き込まれたら即死だろうからな。ちょうどいいタイミングでこの指輪を手に入れられて良かったよ」

 運がいいのか悪いのかわからないよな。


「本当よ。それより、どうして死にそうになったのにそんな明るい調子でいられるのよ」


「うん……どうしてだろう? 死にそうになった実感が無いからかな? ふう。よいしょ。おっとっと」

 爆発が起こった後の記憶は無いからね、と思いつつ立ち上がると……久しぶりに足を動かしたからか、思い通りに動かせずに転びそうになってしまった。


「ちょっと! いきなり何をしているのよ! ほら、まだベッドで寝てなさい」

 俺がよろけたのを見て、シェリーが慌てて俺をベッドに座らせた。


「ちょっとよろけただけだから大丈夫だよ。ほら」

 そう言いながら今度はピシッと立ち上がれたのだが、シェリーとリーナの本気で心配した顔を見て、すぐベッドに戻った。


「もう……心配だからやめてよ」


「ごめん。今日は大人しくしておくよ」


「はい。そうしてください」


「わかったよ。ふう、なんかお腹空いてきた。何か食べたいけど、まだご飯の時間じゃないし……。そうだ、鞄に入っているのを食べるか。ねえ、鞄を取ってくれる?」

 一息ついたら、めっちゃ腹が減ってきた。

 そりゃあ、二、三日何も食べていなかったら腹も減るよな。


「はい。これですね?」


「そう、ありがとう。何を食べようかな~。リーナたちも何か食べる?」


「私たちは大丈夫です。それより、食べるなら消化に良い物を食べてくださいね?」


「消化に良い物? そんなのあったかな~。パンって消化にいいと思う?」

 うん……今度、病人向けの食べ物を入れておかないといけないな。


「ダメだと思いますよ。けど、お腹が空きましたよね……」


「あ、いいことを思いついた! レオ、パンを貸して」


「え? あ、うん」

 シェリーに言われて、冗談で出したつもりのパンをシェリーに渡した。

 パンをどうするんだ?

 と思っていると、シェリーがパンをちぎって口に入れた。

 そして、もぐもぐと咀嚼を始めた……と思ったら俺にキスをしてきた。


「ん!?」

 俺が驚いていると、シェリーの口から何かが入ってきた。

 なんか甘い……あ、パンか。

 俺はシェリーの意図を理解して、口に入ってきた物をそのまま飲み込んだ。


「どう? これなら、柔らかいから大丈夫でしょ?」


「そ、そうだけど……これなら、俺がよく噛んで食べても変わらない気が……」

 それに、なんか恥ずかしいんだけど……。


「いいのよ。さっきまで寝ていてどうせよく噛めないでしょ?」


「そ、そうなのかな……?」

 もう。よくわからないや。


「シェリー、今度は私の番です」


「はい。じゃあ、半分にして交代で口移しね」

 リーナに言われて、シェリーがパンを半分にして渡した。

 リーナもやるの?


「わかりました。それじゃあレオくん、行きますよ」

 パンを受け取ったリーナは、嬉しそうにパンを口に含むと咀嚼を始めた。

 そして、俺にキスをしてドロドロになったパンを俺の口に押し込んできた。

 うん、いつもより美味しいかも……。


「ゴク……ありがとう」

 けど、やっぱり恥ずかしいな……。


「それじゃあ、今度は私の番!」

 それから、長い時間をかけて一つのパンを二人に食べさせて貰ったのであった……。



次で八章は終わりです

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