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第九話 俺のスキルは・・・


 現在、俺たちは冒険者ギルドの応接室に座らされていた。

 ギルドの受付にさっさと報告して逃げようと思ったんだけど、やっぱり無理だった。

 早く終わるといいな~。


 そんなことを思っていると、一人のおっさんが入ってきた。

「あんた方がダンジョンを踏破したんだって?」

 ギルド長なんだから、もう少し丁寧な言葉使いが出来ないかな?

 まあ、冒険者上がりだろうし仕方ないか。

 それに、そこまで有能そうに見えないのは好印象だな。答えづらい質問をしてこなさそうだし。

 などと思いながら、入ってきたギルド長を観察した。


「そうです」


「それにしても、こんな短期間に二つのダンジョンが踏破されるとは……」

 あ、さっそくその話題に持って行こうとしているな。


「え? 二つのダンジョン? どういうことですか?」

 俺は、少しわざとらしく驚いてみた。


「あ、知らないのか。実は一昨日の夜、ここから少し離れたところにある霧のダンジョンが踏破されたんだ」


「え? 誰が踏破したんですか?」

 知らないだろうけど、わざと質問する。

 俺は知りませんというアピールだな。

 あ、でも逆に疑わしくなっちゃうかな?

 まあ、このおっさんならそこまで心配しなくても大丈夫だろう。


「それが、わかんないんだ。レオンス・ミュルディーンがやったんじゃないか、と言われていたんだが、その本人は別のダンジョンに挑戦していたからな」

 お、やっぱりすぐに疑いは晴らしてくれたみたいだ。


「はい。その日は、ちょうど十階のボスを倒した日ですからね」


「おい、どういうことだ? お前たち、二日で十階から三十階までクリアしちまったのか?」


「はい、そうですよ。最後の天使以外は強くありませんので、スムーズに進むことが出来ました」

 ここら辺は、嘘をついても調べればすぐにわかってしまうことだから正直に話しておく。


「そうか……流石、一度ダンジョンを踏破しているだけあるな。で、本当に霧のダンジョンには関わっていないんだよな?」


「無理ですよ。どうやって二つのダンジョンを同時に攻略するんですか?」

 普通なら無理だろ?


「まあ、そうだよな。はあ、早く見つかんねーかな。領主様に、早く誰が踏破したのかを報告しろと言われてるけど、どう考えてもすぐになんて無理だよな……」

 なるほどね。やっぱり、必死こいて犯人を捜すよな。

 まあ、頑張って俺以外の人を探してくれ。


「それじゃあ報告は済んだので、帰っても大丈夫ですか?」


「うん? ああ、大丈夫だ。ダンジョン攻略したことも俺が上に報告しておく」


「ありがとうございます」


「そういえば、レオンスはギルドに入っているんだよな?」


「はい、そうですけど?」


「ランクが上がるだろうから、後でギルドにもう一度来い」

 ああ、そういえばランクが上がるのか。

 ベルと一緒に上げていこうと考えていたから、少し残念だな。


「帝都のギルドでも構わないんですよね?」


「ああ、どこでも大丈夫だ」


「わかりました。それじゃあ」

 話が終わったので、俺は二人を連れて転移した。



 転移したのは、俺の部屋の前。

「よし、帰って来たぞ」


「お前、一昨日の夜……」


「おい! 誰が聞いているかわからないんだぞ」

 フランクが余計なことを言いそうになったから慌てて口を押さえた。


「ご、ごめん」


「その話はまた今度ね。とりあえず、今日は疲れてるだろうし解散にしよう」

 これから、俺の計画を二人に説明するほどの気力は俺には残っていないからごめん。


「ああ、わかったよ」


「わかりました。師匠、楽しかったです! また誘って下さい!」


「機会があったらね」

 とは言ったものの、次ダンジョンを踏破するとしたらいつだろう?



「ただいまー」


「お帰りなさいませ」


「お帰り。友達とのダンジョン攻略は楽しかった?」


「……え? なんでここにおじさんが?」

 ベルと一緒に出迎えてくるんだもん、びっくりして思わず二度見してしまったじゃないか!


「さて、何でだと思う? 想像つかない?」


「え、えっと……山のダンジョンを攻略してきたこと?」


「違う違う。一昨日に攻略された霧のダンジョンについて聞きたくてね」


「霧のダンジョン? 知らないな……というか俺、一昨日は山のダンジョンで十階のボスと戦っていたんだよ?」

 おじさんにこの答えは厳しいかな……と思いつつ、ギルド長の時と同じ言い訳をしてみた。


「でも、レオくんなら出来るんじゃない?」


「またまた~。俺のことを買いかぶりすぎだよ!」


「まあ、レオくんが隠しておきたいならいいさ。レオくんの目的もなんとなく理解しているし。今回のことは、ダンジョンが自然崩壊したんじゃないか? ということにしておいてあげるよ。たぶん、この噂が一週間もすれば帝国中に広がって、レオくんに注目はそこまで行かないさ」

 まあ、やっぱり誤魔化すのは無理があるよな。

 それより、おじさんの提案はありがたいな。

 今回、俺が踏破したのを隠したいのは、あいつらに意味の無い犯人捜しをして貰って時間を稼ぐことと、目立ちすぎて一般人に戦争のことを悟られないことだから、その対応はありがたい。


「噂じゃなくて本当にそうなんじゃない? と、言いたところだけど、素直にありがとうと言っておくよ」


「どういたしまして。それと、皇帝陛下から伝言。一人で背負い込むなよ? これは、お前だけの戦争では無いんだから。手を貸して欲しかったらすぐに頼ってこい。だって」

 俺だけの戦争じゃない、か……。

 でも、俺は死にたくないし、死なせたくない人がいるから絶対に手は抜かないよ。


「了解しました、と伝えといて」


「わかった。それにしても、またレオくんが褒美を貰うのか~。遂に、侯爵だね。勇者みたいに一代で公爵にまで成り上がるのも夢じゃないね」

 侯爵か……公爵の次だからもう上から二番目まで来てしまったか。

 なんか申し訳ないから、これから褒美はなしにして貰えないかな?


「好き勝手に生きてたらいつの間にかそうなっていただけなんだけどね……」

 というか、トラブルに巻き込まれ過ぎなんだよ。

 俺、運はステータスだけを見たらめっちゃいいんだよ?

 あれか、もしかして悪運か? きっとそうなんだろう。

 俺は平和に暮らしたいんだよな……。

 あ、でも、平和だったらこんなに楽しい生活は出来なかったのかな?

 貴族と言っても末っ子なんだし、普通ならシェリーともリーナとも結婚するなんて無理だったろうからね。

 そう考えると、運は良いのか。


「いいじゃないか。それが人の為になっているんだから」


「そうかな……」

 人の為にね……。


「今回のダンジョンが無くなってしまった街が心配?」


「まあね。ただでさえ悪政に苦しめられているのに、俺のせいで更に辛い思いをさせてしまうと思うと、申し訳なくなるよ」

 いくら人よりも自分の為、と割り切ったとしてもなんだか罪悪感が今回の計画で残ってしまった。


「仕方ないさ。それなら、そんな人たちが逃げられる場所をレオくんが造ったら?」


「そうだね。そう考えるしかないよな……。うん、頑張るよ」

 これから、もっと領地の開発を頑張っていこうじゃないか。


「うん、頑張りな。それと、今日はとりあえず疲れているんだから休みなよ」


「うん、わかった」


「ベルちゃん。レオくんが今日は無理しないように見張りを頼んだよ」


「はい、お任せ下さい」


「それじゃあ、またね」

 おじさんは手を振ってから、窓に手をかけると隠密を使って消えてしまった。

 どうせ、また屋根の上を渡って帰って行くんだろう。


「相変わらずだな……」


「レオ様、改めてお帰りなさいませ。計画が成功したみたいで良かったです。お疲れ様でした」

 俺がおじさんを苦笑いを浮かべながら見送っていると、ベルがそんなことを言いながらお辞儀をしてきた。


「ありがとう。ベルも一人にしてしまってごめんね」

 寂しかったでしょ?


「いえ、二日くらい寂しくありません」


「そう?」


「はい。それより、ダンジョンでのお話を聞かせて下さい」


「うん、いいよ。と、言いたいところだけどそんなにないよ?」

 三日で終わってしまうくらいのダンジョンだったからね。


「それでも、どんな魔物がいたのかだけでも構いませんので、教えて下さい」


「わかったよ。山のダンジョンは、事前情報通りだったよ。問題のラスボスの天使は、ちょっとヘルマンたちが手こずったけど、誰も怪我無く倒せたよ。問題の霧のダンジョンの方は、ヒュドラと呼ばれる毒を吐く魔物だったよ」


「え? 毒を吐くって、大丈夫だったんですか?」


「うん。俺にはこれがあるからね」

 そう言いながら、俺は悪魔の指輪をベルに見せてあげた。


「指輪ですか?」


「そう。これは、状態異常を無効化する能力があるんだ。だから、意外と苦労しないで倒せたよ」


「それは、良かったです。それで、スキルの方はどんな物を貰ったんですか?」

 やっぱり、スキルが気になるよね。


「再生と魔眼だよ。再生は、言葉通り怪我をしたら再生する能力だよ。ほら」

 そう言いながら俺はナイフを創造して、手に突き刺してみた。

 うお! 思っていた以上に痛い!

 でも、ここで痛そうな顔をしたらベルに心配されてしまうからダメだ。


「きゃあ! 血が出てますよ!」


「し、心配ないって。ほら、見てみな」

 ベルが悲鳴をあげてしまったのを見て、俺は慌てて血を拭き取って手に傷が無くなっているのを見せてあげた。

 すると、ベルは俺の手を両手で掴んで、俺がナイフを刺したところを凝視し始めた。


「本当だ……。傷が無くなってる……」

 どうやら、大丈夫だったみたいだ。

 痛みの方もすぐに収まった。うん、今度からはわざと手にナイフを刺すとかやめておこう。


「これが再生の力だ。まあ、どこまでの傷を治すことが出来るのかはわからないけど、調べたいとは思わないよね。腕とか切ったら痛そうだし」

 ナイフを突き刺しただけでこの痛みなのに、腕が無くなったらと思うと怖くて出来ないよね。


 そんなことを思っていると、ベルが思いっきり腕を抱きしめてきた。

「調べないでください! もし、腕を切り落として生えてこなかったらどうするんですか!?」

 ベルは俺の腕を抱きしめながら、頬を膨らませた。

 なんだこれ、めっちゃ可愛いんだけど。


「そうだな……そのときはベルに俺の腕の代わりをして貰おうかな」


「え? じゃなくて、冗談はよして下さいよ。レオ様が怪我しているところなんて見たくありません!」

 可愛かったからついからかうと、ベルは一瞬照れてからハッとなって怒り始めた。


「ごめんって」

 やっぱり可愛いな。


「もう……。それで、もう一つの魔眼の方はどんな能力なんですか?」


「わかんない。今、アンナに聞いてみる」


(アンナ、魔眼ってどんな能力?)


(魔眼とは、目に魔力を集中させると特別な力が使えることです。どんなことが出来るのかは、使ってみないとわかりません)

 へ~。魔眼の中でも種類があるのか。


「了解」


「どんな能力だったんですか?」


「目に魔力を込めると、何かが出来るらしい」


「では、さっそくやってみたらどうですか?」


「そうだね。とりあえず、どんな能力かわからないから少しずつ魔力を込めてみるよ」

 そう言いながら、少しずつ目に魔力を集中させていく……

 すると、俺の視界にとある変化が起き始めた。

 あれ? ベルの服が段々と透けて……


「レオ様、何か変化がありましたか?」


「え? あ、うん。ちょっと待ってね」

 いかんいかん。これはいかん。

 でも、ちょっとだけ……


「なんだか、レオ様の目つきがいやらしくなった気がします」

 ベルが嫌そうな顔をしながら、胸を腕で隠した。

 もしかしてバレた?


「そ、そうかな?」

 俺は慌ててベルから視線を外した。

 うお、壁が透けてる。あ、フランクが見える。

 メイドさんと楽しそうに話しているな。きっと、ダンジョンでの思い出話でもしているのだろう。


「それで、どんな能力だったんですか? なんか、だいたい想像出来てしまうんですが、一応聞いておきます」

 そうです。たぶんそれです。

 でも、自分の口から言うのは罪を認めたことになってしまうぞ……。


「え、えっと……魔力を込めれば込めるほど遠くを見ることが出来る能力みたいだよ。壁の向こうも見えるし、今そこそこ魔力を込めてみたんだけど、ここから城まで見えるよ」

 俺は苦し紛れに、今わかったことを言ってみた。

 この魔眼、凄いよ。魔力を込めれば込めるほど遠くを見ることが出来るんだ。

 今だって、おじさんと皇帝が難しい顔をしながら会話しているのが簡単に見えちゃうんだから。


「つまり、どういう能力ですか?」

 くそ……上手く濁せたと思ったのに。

 見逃してくれないか。


「え、えっと……つまり……遠隔透視かな」


「はい。やっぱり透視だと思いました」


「だから、遠隔透視だって」


「でも、服の中を覗くことも出来るんですよね?」

 そ、それを言われてしまうと……


「は、はい……」

 認めるしかないよな。


「普段は使っちゃダメですからね!」


「わ、わかりました」


「もし使ったのが発覚した時は、シェリーさんやリーナさんに言いつけますから」


「どうか、それだけは勘弁を!」

 俺は反射的に土下座をした。

 あのネズミモニターでお風呂を覗いたことがバレた時のことを思い出したら、体が勝手に動いてしまった。


「それと、いつも思うのですが、見るなら堂々と見てください」


「え? それって……」

 俺が顔を上げると、ベルはぷいっと俺に背中を向けた。


「さあ、私は夕飯の準備をしますので、レオ様はそれまでゆっくりとくつろいでいてください」


「まさか……冗談だよな?」

 それからしばらく、俺は正座のままベルの背中を眺め、言葉の意味を考えるのであった。



もしかしたら、明日は投稿出来ないかもしれませんm(_ _)m

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