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第八話 三人で踏破


「おい、起きろ!」


「うんん……」

 フランク? どうしてフランクの声が聞こえるんだ?

 まあ、いいか。


「二度寝するな! お前が七時起きって言ったんだろ!」

 俺がもう一度布団を被って寝ようとすると、今度は声と共に足が飛んできた。


「起きろ! 起きろ!」

 フランクはガシガシと足で手荒く俺の目を覚まさせようとしてきた。


「わかった! 起きるから! 蹴るなって!」

 流石に耐えられなくなった俺は、慌てて布団から顔を出した。


「よし、まったく……ヘルマンを見習え」


「ヘルマンがどうしたの?」


「もう起きて、一人で朝から体を鍛えていたぞ」


「流石だな」

 本当、ストイックな奴だ。

 俺には無理だな。


「で、昨日は何をして来たんだ?」


「昨日? 俺、何かしてたっけ? ああ、思い出した」

 昨日、ダンジョンを踏破して来て、そのまま寝ちゃったんだったな。


「で、何をしてたんだよ」


「大したことはしてないさ。うん、そう、寝る前の軽い運動だよ」

 嘘は言ってないよ。あれは、軽い運動だ。


「寝る前に運動ってなんだよそれ、もったいぶらずに教えてくれよ」


「まあ、明日にはわかるさ」


「なんだそれ」


「よし、今日も頑張るぞ!」

 ようやく目が覚めたから、起き上がってリビングの部屋に向かった。


「あ、師匠! おはようございます!」

 寝室を出ると、ヘルマンが汗を流しながら筋トレをしていた。

 本当、朝から元気だな。


「おはよう! 朝飯にするぞ」


「は~い」


 鞄に入っていたパンを食べながら、今日の作戦会議を始めた。

「それじゃあ、今日一日かけて二十五階を目指すぞ。昼までに、二十階行ければいいかな」


「了解」


「わかりました。ちなみに、今日はどんな相手が出て来るんですか?」

 ヘルマン、そんなワクワクした顔で見ないでくれ……。


「今日は、コボルドが出て来るぞ。で、ボスはジャイアントコボルドだ。二十一階以降は、オークだって」


「弱いんですよね……?」


「うん。今日も期待しない方がいいよ」


「そうですか……わかりました」


「まあ、そんな落ち込むなよ。昨日のゴブリンよりは強いから」


「そうですよね。わかりました。今日も頑張ります!」

 言えない。この期待に満ちた目を見られたら、ヘルマンからしたらゴブリンとそこまで変わらないなんて言えないよ……。

 てか、昨日散々言ったのにな。ラスボス以外期待するなって。

 まあ、いいか。


「ということで、今日も頑張っていくぞ!」



 それからそれぞれ支度を終え、攻略がスタートした。

「それじゃあ、先に進むぞ」

 ボス部屋を後にして、十一階への階段を上った。


「あ、さっそく魔物が出てきましたよ。やっぱり、弱いですね」

 階段を上ると、さっそくコボルドが一体待ち構えていた。

 が、出てきた瞬間にヘルマンに斬られ、すぐに消えてしまった。

 ヘルマン、昨日だけで随分と強くなったな。

 今なら、素の状態でアルマといい勝負が出来るんじゃないか?


「まあ、仕方ないって。もう、諦めてラスボスにたどり着けることが出来るように頑張ろうよ」


「そうですね。歯応えのある戦いは最後のお楽しみということで、今は効率よく進むことだけを考えておきます」

 コボルドの弱さを見て、ヘルマンもようやく諦めたみたいだ。

 てか、ヘルマンが強くなり過ぎただけだからな。


「うん、よろしい」



 《八時間後》


 途中で休憩を入れたりしたが、俺たちは約8時間をかけて二十五階にまで来ることが出来た。

「ふう、今日はこの辺にしておくか」


「わかりました」


「予定通り二十五階に来ることが出来たんだからいいと思うぞ」


「そうだね。よし、明日に備えて寝るぞ!」

 明日はいよいよボス戦だ!



 《次の日》

「ほら、起きろ!」


「うんん……あと少しだけ……」

 あと五分だけ寝かせてくれ……


「いい加減にしろ! てか、昨日あれだけ早く寝たのにまだ眠いのかよ!」

 確か、九時くらいに寝たんだっけ?


「朝は弱いんだよ……」


「はあ、いつも起こして貰ってるのか?」


「そうだよ。いつも、ベルに起こして貰ってる。たまに、一緒に二度寝しちゃうこともあるけど……」


「一緒に二度寝ってどういうことだよ!」


「それは……前日一緒に徹夜して……」


「おい、話しながら寝るな! せめて、話し終わってからにしろ! てか、寝るな!」

 仕方ない、起きるか。


「わかったよ……フランクは朝から元気だね」

 どうして朝からそんなに声が出るんだ?


「そうか? それにしても、レオがこんなに朝が弱いのは意外だったな」


「昔からダメなんだよね。特に、ベルが起こしてくれるようになってからは自分で起きたことが無いな」


「随分とメイドに甘やかされているんだな」

 はい。甘々です。


「まあね。フランクは違うの? フランクのメイドさんって、世話焼きなイメージなんだけど?」


「世話焼きと言ったら、世話焼きかな……。でも、何かと厳しかったりするぞ」

 そういえば、口うるさいって前に言っていたっけな。


「そうなんだ~。よいしょ」


「やっと起きた。ほら、朝ご飯にするぞ」


「了解」


 それから、昨日と同じようにパンを取り出して朝食会議を始めた。

「今日は、昼までに三十階。そんで、昼飯を食ったらラスボスに挑むぞ」


「遂にですね!」

 今日のヘルマンは、いつもに増して上機嫌だ。

 何でも、楽しみすぎていつも五時に起きるところを三時に起きてトレーニングをしていたそうだ。

 早すぎてもはや夜中じゃん……。


「そうだね。今日は思う存分暴れてくれ」

 きっと、ラスボスはヘルマンの期待に応えてくれるよ。


「わかりました! ふふん♪ 楽しみだな~」


「油断はするなよ? ボスはベルノルトよりも強いんだから」

 S級のパーティーがクリアできないのを忘れてないだろうな?


「そ、そうでした。気を引き締めて挑みます」


「よろしい。それじゃあ、支度を済ませたら出発だ」



 《五時間後》


「やっと来ましたね。これが、ラスボスに続く階段ですか」


「そうだね。普通なら扉なんだけど、このダンジョンは最上階が山の頂上になっているからな」

 だから、このダンジョンは実質三十一階あるんだよな。


「なるほど。それで、どんな敵なんですか?」


「天使だって。空からの光魔法に気をつけろ」

 これまで、挑戦したほとんどの冒険者たちが空高くから飛んでくる光魔法になすすべなくやられたそうだ。


「わかりました! 楽しみだな~」


「何度も言うけど、油断するなよ?」


「はい!」

 まあ、何かあったら俺が助ければいいから大丈夫か。


「それじゃあ、行くぞ」

 最後の確認が終わり、俺たちは階段を上っていく。



「うお~! 見晴らしいいな!」

 階段を上りきると、山の頂上からの絶景を見渡すことが出来た。


「あ、師匠、いましたよ! 攻撃していいですか?」

 俺が景色を眺めていると、さっそく敵を見つけたヘルマンが中央にいる天使を指さしながら聞いてきた。


「いいけど、斬撃を飛ばす程度にしておけ、近づいたら避ける間もなく光魔法で蜂の巣にされてしまうぞ」


「わ、わかりました。じゃあ、斬撃だけ。セイ!」

 俺の指示通りヘルマンが斬撃を飛ばしたが、天使は空高く舞い上がって簡単に避けてしまった。


「うん、やっぱりすぐには無理だね。二人とも頑張って戦ってみな」


「レオは戦わないのか?」


「うん。だって、俺が戦ったらすぐに終わっちゃうんだもん。それだと、ヘルマンに悪いじゃん?」

 俺には転移があるから、一瞬で背後に回って首をはねることが簡単にできちゃうんだよね。


「俺的には、安全に終わった方がいいんだけどな」


「まあ、頑張れって。危なかったら手を貸してやるからさ」


「危なくならないことを祈るよ。それじゃあ、俺も攻撃を始めるか」

 そう言って、斬撃を飛ばし続けるヘルマンと一緒にフランクも魔法を使っての攻撃を始めた。


 しかし……

「くそ! 全然当たらないじゃないか!」

 天使は、空を自由に舞いながら簡単に二人の攻撃を避け、光魔法での反撃を繰り返していた。

 一方ヘルマンたちは、天使からの攻撃をギリギリで避け、何とか反撃しているという状態だった。

 仕方ない。少しアドバイスしてやるか。


「もっと魔力操作を使って魔力の配分を変えるんだ。石の大きさを小さくして、スピードを上げろ」


「了解!」


「ヘルマンは、ただ斬撃を飛ばすんじゃなくて、相手の逃げ道を無くすように飛ばせ!」


「わかりました!」

 俺が二人にアドバイスを出すと、二人の攻撃は掠る程度の攻撃がほとんどだが、徐々に当たるようになってきた。

 逆に、天使の方は避ける方に集中し始め、なかなか反撃が出来なくなってきていた。


「よしよし、いいぞ。無理に仕留めようとするな。地道に削っていくイメージだ」

 この調子なら、いつかはこっちが勝つからね。


「はい!」


「了解! って、うお!」

 このままではヤバいと感じたのか天使が戦い方を変え、高いところから光魔法を撃つ戦法から低空飛行で相手の近くから光魔法を当てに行く戦法になった。

 これなら、相手からの遠距離攻撃は当たりづらくなり、自分は好きに攻撃することが出来る。


「でも、それは悪手だぞ」


「せいや!」

 天使が地面に近づいてきたところを狙って、ヘルマンが天使の片翼を切り落としてしまった。


「ナイス!」


「あ、美味しいところを持って行きやがった」

 俺は、翼が無くなって地面に落ちた瞬間の真上に転移して、そのまま頭に剣を突き刺した。


「今、危なかったからね」

 たぶん、天使が死を覚悟して自爆したかもしれないじゃん?


「どこがだよ……。まあ、いいや。それにしても、今までの魔物と比べものにならないくらいの強さだったな」


「だから言っただろ?」


「はい。十分、歯応えがありました。最後に羽を斬った時は、忘れられないくらいの快感でした」

 ヘルマンが血がついた剣を見てニヤニヤ笑ってるよ。怖いな~。

 その快楽にハマって人斬りになるとかやめてくれよな?


「お、ドロップした」

 天使が消えた後に残ったのは、白い指輪だった。


「なんだ? 指輪か?」


「みたいだね。なんの指輪だろ?」


<天使の指輪>

 神の使いに特攻

 即死回避


「ヤバ。この指輪、凄いぞ」


「どんな能力なんだ?」


「即死回避だって」

 不意打ちを食らっても死なないなんて凄いぞ!


「おお、暗殺の心配が無くなるな。着けておけよ」


「え? 俺が着けていいのか? 今回は、二人が倒したんだぞ?」

 俺は、最後に美味しいところを持って行っただけだし。


「剣を握るのに邪魔だから僕はいいです」


「俺もいいかな。俺よりもレオの方がこれから命を狙われることが増えるわけだし」

 二人とも……


「ありがとう。これは借りにしておくよ」


「気にするなって」


「そうですよ。あ、でも、また戦いに連れて来て貰えるとありがたいです!」

 それくらい構わないさ。また、三人でダンジョンに潜るか。


「わかったよ。それじゃあ、奥の部屋に行くぞ。さて、何が出るかな?」

 便利なスキルでありますように。


「そういえば、俺たちスキル持ちになるのか」


「やりましたね。また強くなれると思うと凄く嬉しいです」

 そんなことを言いながら、俺たちは奥の部屋に進んだ。


『警告! このダンジョンはクリアされました。これより、ダンジョンは崩壊しますので直ちに脱出してください』

 中に入ると、二日前も聞いた声が響き渡った。


「おい、大丈夫なのか?」


「心配するなって、あの魔石に触れば自動で安全な場所に転移されるようになっているんだよ」

 それに、ここは山の頂上なんだから崩壊しても平気だろ。


「なるほど。それじゃあ、早く触らないと」


「それじゃあ、せーので触るぞ?」


「「「せーの」」」


『おめでとうございます! あなたは入門ダンジョン初の踏破者です。あなたにスキル魔眼を授けます』

 俺たちが魔石を触ったと同時に、またアナウンスが響いた。


「魔眼? なんだそれ?」


「わかんない。それより、これからたぶん冒険者に囲まれるから覚悟して」

 スキルは、後で調べれば何とかなる。

 それよりも、今はこれからの騒ぎに備えないと。


「え? 嘘だろ? 大丈夫なのか?」


「心配するなって。それと一昨日の夜、俺はダンジョンの中でフランクとヘルマンと一緒に休んでいて、どこにも行っていないということにしておいてくれ」


「どういう……」

 俺の言葉にフランクが問いただそうとした瞬間、転移が始まってしまった。


「あ、来たぞ! おい、お前たちが踏破したのか?」

 転移されるなり、やはり冒険者たちがたくさん待機していた。

 まあ、これは予定通りだな。


「そうです。先ほど、最上階にいる天使をやっつけて来ました」


「ふ~ん。見た感じ、貴族の子供だな?」

 代表して、俺に話しかけている男は、俺たちをジロジロ眺めながらニヤリと笑った。

 何か、悪巧みでも思いついたんだろうな……はあ、面倒だ。

 見るからにチンピラだし、冒険者のランクも低いんだろうな……。


「そうですけど、何か?」


「いや、世間知らずの坊ちゃんたちが大変なことをしてくれたな~と思っただけだよ」

 貴族相手にそんなことを言えるお前の方が世間知らずだろ。


「そうですか。それじゃあ、ギルドに報告したいのでどいて貰えますか?」

 こういうのは無視が一番。


「おいおい、待てよ」

 俺たちが立ち去ろうとすると、男が俺の肩を掴んで止めてきた。


「はあ、何ですか?」


「俺たちの仕事を奪っておいて、それは無いんじゃないか?」


「だから、どうしろと?」

 どうせ、大した仕事はしてないだろ?


「慰謝料を払え! そうだな……金貨百枚で許してやる。貴族なら簡単だろ?」

 はあ? 何言っているんだこいつ?


「そんな義務は俺たちには無いですよ。それじゃあ」

 相手するのが馬鹿らしい。

 俺は肩を掴んでいる手を振り払って、また歩き出した。


「おい、待てよ」

 まあ、そう簡単には行かせてくれないよな。

 きっと、周りも自分の仲間だからと思って強きなんだろう。

 たく、少し喝を入れるか。


 俺は、また肩を掴まれた手を強めに握り、男を睨んでやった。

「いい加減にしろよ? 仕事が無くなったなんてことはないだろ? お前たち、冒険者なら他のダンジョンにまで冒険すればいいじゃないか。人に施しを貰おうとする前に働け」


「お、おう……」

 男は、先ほどまでの自身満々な態度が嘘みたいにビビりながら俺から後ずさった。

 これから、もっと面倒なのと戦わないといけないというのに、こんなところで時間を潰してられるかよ。


「それじゃあ、二人とも行こうか」


「お、おう」

「はい!」


漫画の売れ行きが好調らしく、重版するみたいです!

購入して下さった方、本当にありがとうございますm(_ _)m

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