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第五話 ダンジョン準備

 四年生が始まり、数日が経った。

 遂に、明日から休みだという日の放課後、俺は学校が終わってすぐにフランクとヘルマンに話しかけた。

「よし。お前たち、約束通り帰ったら準備をしてからすぐに俺の部屋に集合な」


「はい、わかりました!」


「おい待て。準備と言われても俺、何も冒険に必要な道具を持っていないんだが?」


「あ、そうだった。それじゃあ、防具とかは俺が用意するからいいよ」

 そういえば、元々そういう約束だったね。

 出る前に装備を準備しないと。


「わかった。それじゃあ、着替えを済ませたらすぐに行く」


「僕もすぐに向かいます」


「うん、頼んだよ。じゃあ、また後で」


 そう言って俺たちは一旦別れ、すぐに俺の部屋に集合した。

「おい、来たぞ!」


「お邪魔しまーす」


「お、来た。それじゃあ、フランクの装備一式を造ってヘルマンの装備も造って改造したらさっそくダンジョンに向かうぞ」


「え? 僕の装備もやってくれるんですか?」

 俺の言葉が意外だったのか、ヘルマンが目を見開いて聞き返してきた。


「うん。そのままの装備だと流石に踏破するのは厳しいからね」

 だって、どう考えてもその防御力の欠片もない服と、魔物に攻撃したら逆に壊れてしまいそうな安い剣だと、流石に心配だからな。


「と、踏破? お前今、踏破って言ったか?」


「そうだけど?」

 あれ? 言ってなかったか?

 そういえば最近、学校で寝ていたから今日の本当の目的を伝え忘れていたかも。


「そうだけど? じゃねえよ! てか、休みの間にどうやって踏破するんだよ!」

 フランクはご立腹のようだ。

 まあ、フランクは遊び感覚で参加する予定だっただろうからね。


「それは心配しなくて大丈夫。それより、急いでいるからさっさと装備を造っちゃうよ。フランクとヘルマン、そこで気をつけ!」

 俺は、二人に有無を言わせずビシッと二人を指さして命令を下した。


「お、おう」

「はい!」

 二人は、反射的に言われたとおりに気をつけをしてくれた。


「まず、防具からだね。二人とも、タンク的な役割じゃないから、重くて硬い鎧は合わないよな……。あ、いいのがあった」

 そう言って俺が取り出したのは……この前の魔物大量発生事件の最後に出てきてルーに瞬殺された魔物の毛皮だ。

 普通に戦っていたらそうとう強い奴だったみたいだから、これなら期待できるはず。


「何かの毛皮か? レオのことだから普通の魔物の毛皮ではないんだよな?」


「まあね。名前は俺も知らないけど。もしかしたらドラゴンよりも強い魔物だったかも」


「そ、そんな魔物を一体どこで……?」


「さあ? それじゃあ、皮の鎧を造るか。そうだ、俺のもついでに造っておくか」

 俺、今まで防具はマントだけだったからね。

 これから造る鎧は絶対凄いことになるのは間違いないから、俺のも造ってしまおう。

 まあ、実はマントだけでもけっこう防御力が上がってるんだけどね。


 そんなことを思いつつ、俺は魔石を三つ取り出して創造魔法を使った。

 いつも通りに光り、形が変わっていき、黒々とした皮の鎧が三人に装備された。


「おお、かっこいいです! しかも、凄く軽いです! 孫の代まで大事に使わせて貰います!」

 いや、鎧は消耗品だから大事に扱われても困るんだけど。


「す、凄いな……」

 フランクは、自分の鎧をコンコンと叩きながら感触を確かめていた。


「ちょっと待ってて。今、出来た鎧について調べるから」

 さて、お楽しみの鑑定の時間だ。


<魔王の鎧>

 かつて、魔王だった魔物の毛皮を使って造られた鎧。

 耐久力が非常に優れていて、壊れたとしてもすぐに修繕される。

 魔法への耐性が凄く、魔法攻撃を十分の一にまで抑える。

 物理攻撃は、威力を五分の一にまで軽減

 装備者のステータスを全て1.5倍する

 創造者:レオンス・ミュルディーン


「はあ?」

 おっと、あまりの情報量に思わず声を出してしまった。

 なんだ、この異次元な鎧。

 今まで造ってきた魔法アイテムの中で一番の性能なんじゃないか?


「どうした? そんなに凄い鎧だったのか?」


「凄いとかそういうレベルじゃない……。もう、最強の防具と言って間違いないレベル」

 これより凄い物って、絶対にダメージを貰わないくらいしかないよね。


「最強? どういうことなんだ?」


「実は……」

 それから、俺は鑑定結果を二人に教えてあげた。


「はあ? そんな鎧、俺たちが貰っていいのか?」


「僕なんかがこんな物を……」


「別にいいよ……これから二人にかける迷惑を考えたら、こんなこと大したことないさ」

 おっと、ボソボソっとだけど思わず本音を言ってしまった。


「お、おい……今、聞き捨てならないことをポロッと言いやがったな」

 どうやら、フランクには聞こえてしまったのか、フランクはすぐに問い詰めて来ようとした。

 いけない、これはすぐに話題を変えないと!


「まあまあ、細かいことは気にしないでって。それより、二人の武器もどうにかしないとね」


「武器も!?」

「また僕のもですか!?」


「そうそう。防御が硬くても、攻撃力がないと先に進めないからね」

 とにかく、今回は効率重視で行くからね。


「まず、フランクの杖からいくか。どうしようかな~。神魔の杖だとシェリーが怒りそうだし。そうだな……長さがあるロッドにするか。材料は……あ、これとこれだな」

 神魔の杖は、シェリーに誕生日プレゼントであげた物だからね。

 あれは、特別な物ってことにしておかないと。


「これは、ミスリルだな……。これは……何だ?」

 フランクは、俺が取り出した紫色の石を両手で持ち上げながら、首を傾げていた。

 まあ、見たこと無いだろうよ。

 なんせ、魔界にしかない物なんだからね。


「ベヒモスの魔拡石だよ」


「魔拡石? なんだそれは?」


「ベヒモスが魔法を撃つ時に使う器官で、ここに魔力を通すことによって普通の魔法よりも威力を大きく出来るんだ。どうして大きくなるのかとかは、魔物の専門家では無いので知りません」

 アンナの情報によると、魔界の魔物のほとんどは魔法を攻撃の主体としていて、大体がこの魔拡石を持っているみたいだ。


「ベヒモス? そんな魔物どこで倒したんだ?」


「さあ? そんなことより創造だ。それ!」

 その説明をするのは時間がかかって非常に面倒だから、聞き流してさっさとフランクの杖を造った。

 そして、出来た物は……


<増魔の杖>

 その名の通り、魔を増やす杖

 持ち主の魔力が十倍になる

 魔法の威力と効力を十倍にする

 魔法の範囲を十倍にする


「おお! かっこいいじゃないか」

 俺から1メートルくらいあり、先に丸くなった紫色の魔拡石がついた杖を受け取って、フランクは珍しくはしゃいでいた。

 喜んで貰えて何よりだ。


「そうだね。能力も問題無い」

 能力的には色々と十倍になるし、神魔の杖と変わらないかな。

 まあ、威力一点だけを見ると、神魔の杖には敵わないけど。

 それより、次!


「次は、ヘルマンの剣だな。うん……ヘルマン、その剣は大事?」

 ヘルマンが使っている奴を改造するか、新しく造るか……。

 能力的なことを考えると、新しく造った方がいいんだろうけど……きっと、剣に思い出があるよな。


「いえ、そうでも無いです! ずっと使っているので愛着はありますが、これは練習用ですから。一人前になったら実戦用のいいやつを買ってやると父さんに言われています」

 え? そうだったの?

 なら、早く言ってくれよな。

 いつも、剣を大事そうに扱っているからよっぽど大事な物なのかと思ったよ。


「そうなの? それじゃあ、ヘルマンは十分一人前だと思うから新しく実戦用の剣を造るよ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


「よし。それじゃあ、剣に良さそうな素材を探すか」

 何にしよう、剣に使えそうな硬い物は……ミスリル、ドラゴンの爪、キメラの牙、名前が無い魔物の爪くらいかな。

 うん……どれしよう?


「選ぶのも面倒だし、全部使っちゃうか。大きさと重さとかは今ヘルマンが使っているやつと同じにするよ」

 俺の創造魔法はイメージしたらその通りに出来るから、重さや大きさの調節は凄く楽なんだよね。


「ありがとうございます!」


「ということで、えい!」

 かけ声と共に俺は素材たちを剣にしてやった。

 うん、なかなかかっこいい剣が出来た。

 見た目や大きさはヘルマンの剣と同じだが、光沢感が全く違う。

 見たら誰でも「あ、これは凄い剣だ」ってわかるくらいピカピカの剣になった。


「試しに振ってみ……ダメ! 試し振り禁止!」

 剣をヘルマンに渡しつつ、鑑定を使った俺は慌てて試しぶりをしようとしていたヘルマンを止めた。


「え? あ、はい」


「使い方はダンジョンで説明するから、室内で使うのは禁止ね」

 そう言いながら、俺は鞘を造って渡してやった。


「そ、そんなに凄い物を造って貰えるなんて……本当にありがとうございます。我が家の家宝にさせて貰います。そして、一生僕はレオ様の下で働きます」

 鞘に収めた剣をマジマジと眺めてから、ヘルマンは涙を流しながら頭を下げてきた。


「そこまでしなくても……」


「いや、実際。レオが造るアイテムって、貴族の家宝レベルの物ばかりだよな。この鎧は、国宝級だけど」

 そ、そうかな?

 言われてみれば、確かに俺が造る魔法アイテムはありえない能力ばかり持っているよな。


「まあ、そこまで苦労して造ってないから気にしなくていいよ。それより、早くダンジョンに行くよ! 学校が始まるまでには踏破しないといけないんだから」

 あと、二日と数時間くらいしか無いんだから急がないと。


「だから、これからなんて無理だろ。こんな短期間でダンジョンを攻略する奴なんてどこにいるんだよ」


「大丈夫。これから行くダンジョンは、三十階までしかないから。それに、全ての階層の地図がもう出来ているから、ぱっぱと進むことが出来る」

 そう言って、二人にダンジョンの地図が描かれた紙の束を見せてやる。


「え? そこまでされていて、どうして踏破されていないんだ?」


「それは、最後の階にいるボスが異常に強いからなんだ。と言っても、俺たちなら簡単に倒せる魔物だけどね」

 普通の冒険者なら倒せないレベルでも、この三人なら余裕だよな。


「そうなのか。じゃあ、大丈夫なんだな?」


「うん。ということで、俺に掴まって」


「転移で行けるのか?」


「そうだよ。実はここのところ、夜の間に走ってダンジョン行ってきたんだ」

 毎日、学校が終わってからすぐに走り始めて、今日の日までに二つのダンジョンまで転移出来るようにしておいたんだ。


「ああ、だから最近授業中寝てたのか」


「師匠、珍しく先生に怒られていましたもんね」

 ああ、リーズ先生に呼び出されて怒られたやつか。

 放課後に1時間は怒られていたからな……。

 早くダンジョンに向かいたかった俺にとって、あれは一番の罰だったな。


「大義の為には多少の犠牲は必要なのよ」


「ダンジョンを踏破することのどこが大義なんだよ。元々、遊び半分とか言ってなかったか?」


「そんなことない。これは戦争だ」

 戦争はもう始まっているのだ。


「何との戦争だよ……」


「そのうちわかるさ。まあ……二人のことは巻き込んじゃうけどその装備一式で許して」


「おい! 今、良からぬ言葉が聞こえたぞ」

 マジか、今度こそ小さな声で言ったつもりだったんだけどな。


「き、気のせいだよ。ほら、二人とも捕まって」

 俺は慌てて二人に掴ませてから、ダンジョンに向けて転移を使った。


次から久しぶりのダンジョン。

二巻の番外編でも書いたのですが、ダンジョンの話は書いていて楽しいです。

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