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第二話 入団試験①

 

「師匠! 騎士団の話を詳しく教えて下さい!」

 授業が終わり、俺が帰りの準備をしているとヘルマンが大きな声を出して迫ってきた。


「あ、そういえば、まだ話していなかったな……」


「学校が始まったら教えてくれるって約束ですよね?」

 わかったから、そんな近づいてくるな。

 さて、どうしようか……あ、そうだ。


「今日、二人とも午後は暇?」


「ん? 俺もか? まあ、暇かな。もしかして、俺の部屋に来るのか?」


「僕はもちろん暇です!」

 よし、二人とも午後の予定は無いみたいだな。

 嫌そうに答えるフランクと、大喜びしているヘルマンを余所に俺は午後の予定を考える。


「それじゃあ、午後に俺の部屋に来てくれ。ヘルマンは、動きやすい格好と剣を持ってくること。フランクは……好きな格好でいいよ」


「お、おう……わかった。わかったんだが、何をするんだ?」


「何をするかはお楽しみということで」

 まあ、もしかしたらフランクは退屈かもしれないけどね。


「わかりました! 昼の間に剣をしっかりと磨いて、準備してから師匠の部屋に向かいます。ふふ、僕も遂に師匠の騎士に……」

 そう言うと、ヘルマンは嬉しそうに教室を出て行った。

 ん? 何か勘違いをしていないか?

 と思って、ヘルマンを呼び止めようと俺が廊下に出た時には、もうヘルマンの姿を確認することは出来なかった。

 仕方ない。まあ、大丈夫だろう。



 そして、午後になり……

 ヘルマンとフランクが約束した通り、俺の部屋を訪ねてきた。

「師匠! 来ましたよ!」


「おう。とりあえず入れ」

 そう言って、とりあえず俺は二人を部屋に入れた。


「「お邪魔しまーす」」


「そういえば、レオの部屋に入るのは初めてじゃないか?」


「はい。そうだと思います。いつも、フランクの部屋で勉強していましたから」

 言われてみれば、いつもフランクの部屋で遊んでいたな。

 最初がフランクの部屋だったから、それからフランクの部屋で集まるのが習慣になってしまったんだったな。


「まあ、今日も俺の部屋で何かするわけでもないんだけどね」


「ん? それじゃあ、どこに行くんだ?」


「俺の領地だよ。騎士団の説明をするなら、騎士団を見せながらの方がわかりやすいでしょ?」


「今から?」


「俺には転移があるから余裕で日帰りだよ」


「便利だな……」

 そういえば、フランクとヘルマンと転移をするのは初めてだな。

 最近、俺の周りの人は慣れてきたからこういう反応も新鮮に感じるな。


「というわけで、行きますか。ベル、行くよ!」


「はい! あ、皆さん、初めまして。レオ様の専属メイドをさせて貰っていますベルと申します」


「は、はじめまして……」


「初めまして。姫様とリーナに嫉妬されたりしてないか?」

 ベルに見惚れているヘルマンの隣で、ニヤリと笑ったフランクがベルに意地悪な質問をした。


「え?」


「まあまあ、それは解決したことだから」

 嫉妬されましたなんて、自分で言えるわけがないじゃんね?


「解決したこと? だとすると、やっぱり何かあったのか。おいおい、隣の部屋であの二人と修羅場になるとか身の危険を感じるからやめてくれよ?」


「大丈夫だって。もう随分と前のことだから」

 寮生活が始まってすぐのことだったな。


「は? てことは、知らない間に俺の身が危ない状況になっていたのか?」


「え、えっと……そ、そんなことは無かったよな?」


「え、ええ……」

 少し怯えながら俺がベルに質問すると、ベルは少し躊躇しながら頷いてくれた。


「おい! ここで一体何があったんだよ!」


「まあまあ、そんなことはいいじゃないですか。それより、早く師匠の領地に行きません?」

 不安になって叫ぶフランクの肩をポンポンと叩き落ち着かせながら、ヘルマンが俺に向かって転移を催促してきた。


「おお、そうだな。よし、全員俺に触れ!」

 ナイスヘルマン! もう、あの時のことはあまり思い出したくないんだよ。

 あ、でも、リーナにキスされそうになったのはいい思い出だよな。


「おい、急にニヤニヤしてどうした?」


「ニ、ニヤニヤなんてしてないぞ! それじゃあお前たち、行くぞ」

 俺は誤魔化しながら全員が俺に触ったことを確認して、城に向かって転移した。



「転移って、本当に一瞬なんですね。ここが、師匠の領地ですか? わ~賑やかな街ですね」

 俺の部屋の窓から見える領地を眺めながら、ヘルマンが感嘆の声を漏らした。


「そうだよ。ここが、世界の中心と言われているミュルディーン領だ」


「ここから見える眺めが凄い高く感じるんだが? この家、随分と大きいだろ?」


「あ、気がついた? この家、城なんだ」


「やっぱりか。ミュルディーンと言えば、この城が有名だもんな。そこに住めるなんて、やっぱりレオは凄いな」

 お、流石フランク、ちゃんと知っているんだね。


「ありがとう。これにはわけが「師匠! それで、騎士団はどこなんですか?」」

 もう、今日のヘルマンは落ち着きがないな。

 仕方ない。騎士団の説明を先にしてやるか。


「まあ、待てって。それと、正確には騎士団候補だ」


「え? どういうことですか?」


「今日は、騎士団の入団試験なんだよ。午前中は、基礎学力の試験と面接を行って貰って、午後から実技試験をやるんだ」


「なるほど。それで、僕もその実技試験に参加すればいいんですか?」

 やっぱり、お前も騎士団に入ろうとしていたのか……。


「いいや。お前は、試験官だ。入団希望者の相手をしてくれ」

 騎士団に入るのは構わないけど、今日は試験官(こっち)側の数が少ないから手伝ってくれ。


「え? 僕が試験官? 僕でいいんですか?」


「ああ、ただし誰にも負けるなよ?」

 負けて舐めた態度を取られるのが一番面倒だからな。


「はい! 任せて下さい! 必ず、全勝してみせます」


「おう、頼んだぞ」



「あ、フレアさん。午前の結果はどうだった?」

 試験会場に到着し、会場の隅の方で書類に目を通していたフレアさんに話しかけた。


「はい。特に問題なく終わりました。面接で問題がありそうだった人物は、この場で不採用にしておきますか?」

 ああ、例の人たちか……。


「うん……やらなくて大丈夫かな。誰が怪しいのかわかっているなら、後で不合格にすればいいし」

 まあ、これからやる試験方法なら、そんなのもあまり関係ないけどね。


「わかりました」


「じゃあ、試験を始めるか」

 そう言って、俺はヘルマンと共に入団希望者たちの前に出て行った。


「どうも皆さん。レオンス・ミュルディーンです。今回は、こんなにもたくさんの方に入団を希望して貰い、大変嬉しく思います。とまあ、面倒な前置きはこの辺にして……腕に自信がある者、手を挙げろ!」

 見渡してみて、どう見てもほとんどの奴が冒険者崩れなのがわかったので、丁寧な言葉遣いを止め、荒っぽい言葉で問いかけてみた。


 すると、すぐに全員が高々と手を挙げた。

「そうかそうか。それじゃあ、一番前にいるお前、前に出て来い」

 俺は何も考えず、最前列にいた筋肉がモリモリの男を選んだ。


「ヘルマン、出番だ」


「はい!」

 大きな返事と共に、ヘルマンも前に出た。

 うん、あの顔は今すぐに戦いたくて仕方ない時の顔だな。

 あれなら、負けることはないだろう……。


「そこにいるヘルマンに勝てたら騎士団長にでもしてやる」


「ちょっと待って下さい! 子供が相手ですか?」


「そうだけど何か問題か? やらないなら、次の人に順番を譲ってくれ」

 予想通りの言葉が飛んできたので、予定通りの言葉を返しておいた。


「い、いや……やります!」

 男は振り返り、早く譲れと言わんばかりのたくさんの目に抗議するのを諦め、戦うことを承諾した。


「そうか。それじゃあ、構えろ。よーい、始め!」


「グハ!」

 始めの合図と共に、男は目に見えない攻撃によって吹き飛ばされ、後方にいた同じ入団希望者たちにぶつかりながら倒れ込んだ。

 俺にはヘルマンが腹に攻撃したのがわかったが、この中にそれをわかった奴は何人いるのかな?


 そんなことを思いながら、俺はまた説明を再開した。

「はい。一人脱落。次に挑戦したい奴はいるか?」

 俺が質問をすると、今度は誰も手を挙げようとしなかった。

 皆、ヘルマンには勝てないと思ったのだろう。


「はい!」

 俺が入団希望者たちにがっかりしていると、少し列の後方から元気な声と少し低く挙がった手を見つけた。


「お、それじゃあ、前に出て来い」

 なんだ。今日はこれで終わりと思ってしまったじゃないか。

 勇気がある奴がいて良かったよ。

 さて、どんな奴が挑戦してくるのかな……?


「おい。女がなんでこんな所にいる?」

「女が勝てるわけがないだろ?」

「こんな奴が騎士なんて……」

 手を挙げた挑戦者が前に来るにつれて、入団希望者がざわつき始めた。

 そして、前に出てきた時、その理由がわかった。


 なんと、挑戦者は女性だった。

 しかも、見た目が幼いことから俺やヘルマンとそこまで歳が変わらない少女のようだ。


「おい。今、女がどうのこうの言った奴、次そんなことを言ったら全員不合格だからな! 俺は、偏見とか差別が嫌いなんだよ」

 自分がその女の子よりも意気地なしなのを棚に上げるんじゃねえよな?


「よし、それじゃあ、好きなタイミングで始めてくれ」

 と言いつつ、俺はすぐにヘルマンに向かって念話を送った。


(ヘルマン、今度は相手の力量をしっかり見たいから、さっきみたいに瞬殺しないでくれ)


(はい!)


「それじゃあ、行かせて貰います!」


「おお、速い!」

 俺は少女の予想以上のスピードに、思わず声を上げてしまった。


「ふん!」

 しかし、ヘルマンは余裕でその攻撃を受け止め、少女を弾き飛ばした。

 うわ~容赦ないな。

 まあ、すぐに終わらせなかっただけいいか。

 そう思ったのだが……少女は剣を地面に突き立て、立ち上がってしまった。


「凄い根性だな」

 これは、磨けば凄い強くなりそうだ。


「まだまだ~!!」

 少女は、そう言ってまたヘルマンに攻撃を仕掛けた。

 どうやら、もの凄い手数で攻撃し、ヘルマンに反撃の余地を与えない作戦らしい。

 見た感じ、その作戦は功を奏してヘルマンは防戦一方になっていた。


「スピードは、素のヘルマンよりも速いか」

 まあ、流石に無属性魔法を使うヘルマンには勝てないけどな。


「セイ!」


「ウグ……」

 少女は、ヘルマンにボディーブローを貰って倒れ込んだ。


「お前、名前はなんて言うんだ?」

 俺はすぐに駆け寄り、聖魔法で痛みを和らげてあげながら名前を聞いた。


「アルマです」


「アルマか。どこで剣を教わったんだ?」


「孤児院で教わりました」

 孤児院で教わった? 剣術を教えてくれるような孤児院なんて、一つしか知らないぞ?


「もしかして、帝都にある小さな孤児院のことか?」


「え? あ、はい。そうです」

 やっぱりな。あそこの孤児院は優秀な人材を育てるプロなのか?

 今度、どんな教育方法なのか、見学しに行かないといけないな。


「そうか。ベルのことは知っているか?」


「はい。私と同じ孤児院で一つ上の女の子です」

 ベルの一つ下か。とすると、俺の一つ上だな。


「そうか。お前、どうして魔法を使わなかったんだ?」


「どうしてって……私、適正魔法が無属性以外ないんです」

 いや、鑑定で無属性魔法だけなのは知っているんだけど。


「いや、無属性魔法は使えないのか?」


「え? あ、はい」

 そういえば、ベルも無属性魔法は使えなかったな。


「そうか……。これは強くなりそうだ。ヘルマン、いいライバルが出来たな」


「いえ、今のままでは僕がすぐに負けてしまいます。無属性魔法を使わないと勝てませんでしたから」


「だってさ。それじゃあ褒美として、これを渡しておくよ」

 俺はそう言って、用意しておいた忠誠の腕輪を渡した。


「こ、これは……」


「俺が認めた配下の証みたいな物さ。その勇気と、素質に期待して渡しておくよ」


「あ、ありがとうございます……」

 アルマは、土下座してしまいそうな勢いで頭を下げながら、俺から腕輪を受け取った。

 その後ろで、ヘルマンが何か深刻な顔をして考え込んでいた。

 もしかすると、今の戦いがショックだったのかもな。

 後で、どうして素の状態で負けそうになったのか教えてやるか。


「それじゃあ、他に誰か挑戦したい奴はいないか?」


「私が行かせて貰おう!」

 俺が聞いて、少し間を開けてからすぐに野太い声が響いた。

 そして、奥からとにかく凄い雰囲気のある奴が出てきた。


「おい、あいつ……」

「間違いねえ。Sランクのベルノルトだ」

「そんな奴までここに来ているのか?」

 へえ。Sランクの冒険者か。うん、確かに強い。

 鑑定を使って前に出てきた男を確認し、心の中でこいつはヘルマンより強いなと言ってしまった。


「なるほどね……。ヘルマン、今回は俺が戦う」


「え? そ、そんな……」


「勘違いしなくていい。この人は、それぐらい強いのさ。今回は、見て学べ」


「わ、わかりました……。師匠の戦い、一秒たりとも見逃しません」

 少し悔しいのか、悲しいのかわかりづらい顔をしながらヘルマンは下がった。


「ほう。フォースター家の神童と戦わせて貰えるとは、嬉しい限りですな」


「こちらこそ、S級の冒険者と戦えるなんて光栄だよ」

 いつか、俺もなりたいと思っていたしね。

 そう思いつつ、俺はセレナを召喚した。


「それは……聖剣ですな」


「そうだよ。見たことがあるの?」


「はい。昔、勇者様に挑んだ時に」

 お前、何歳だよ! と言いたくなるが、鑑定で年齢は知っているので、そこまで不思議には思わなかった。

 たぶん、十代の頃に挑んだんだろう。


「へえ~そんなことがあったんだ」


「若気の至りですね。その経験もあって、ここまで強くなれたのですが」


「それは良かった。よし、それじゃあ勝負を始めるか。好きにかかってこい」


「ほう。あくまで私が挑戦者ですか。わかりました。行かせて貰います」


 ガキン!


「流石Sランク、攻撃が重い」

 俺は、ベルノルトの普通の人なら認識することも出来なかったであろう初撃を受け止めながら、そう感想を漏らした。


「その割には、簡単に受け止めますね」


「まあ、神童とか言われるくらいには強いからね」

 そう言いつつ、今度は俺が軽く攻撃に転じた。


「っく。ここまで勝てないと思ったのは、勇者の時以来だ」

 ベルノルトはそんなことを言いつつも、体は必死に防御しながら後退していた。


「それは、嬉しい言葉だね。セイ!」

 俺は防御をすり抜けて、ベルノルトの首に剣を当てた。


もうすぐ書籍の発売日です。

本屋に立ち寄った際には、是非探してみて下さいm(_ _)m

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