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第十八話 報告&お疲れ会

 

「この度、帝国の闇を暴き、その解決に力を尽くしてくれたことへの感謝として、褒美を与える。褒美は、レオンス・ミュルディーンに伯爵を叙爵し、騎士団保持の許可を出す」


「あ、ありがたく受け取らせて貰います」


 学校が始まるので、とりあえず帝都に帰ってきた俺は、到着早々城に呼び出され、訳がわからないまま褒美を渡されていた。

 たぶん、俺が断らないようにするための作戦だったのだろう……。

 まあ、いいんだけどさ……事前に説明くらいしてくれても良かったよね!

 そんなことを思いながら現在、皇帝の部屋に来ていた。


「これで、ようやくお前も上級貴族の仲間入りだな。十代で伯爵になった奴なんて初めてなんじゃないか?」

 皇帝はそんなことを言いながら、エリーゼさんに顔を向ける。


「ええ、間違いなく異例の成り上がりだと思います」


「だそうだ」


「悪運が強いだけですよ。行くところでトラブルに巻き込まれていても嬉しくありません」

 というか、もうこれ以上何もいらないんだよね!

 だから、このトラブル地獄から解放させて!


「確かにそうだな……今回は特に」


「そうですよ。僕の暗殺計画から始まり、この国の汚職が暴かれ、僕の領地の地下に全てが違法な闇市街が見つかり、とんでもなく強い魔族と戦う羽目になり、締めには魔界から召喚された大量の魔物に囲まれましたからね」


「凄いな……逆に、よく生きていられたな」


「本当ですよ。終盤なんて、もしかしたら本当に死んでいたと思います。運がいいのか悪いのかわかりませんよね」


「まあ、生きているんだから運はいいんじゃないか? そういえば、あれから魔族の少女はどうなったんだ?」


「大人しくしてますよ。シェリーに凄く懐いています。最近だと、よく二人で寝ていますね」

 今日も、俺たちが一旦帰ると言ったら本当に悲しそうにシェリーにギュッと抱きついていたな。

 まあ、エルシーさんもいるし大丈夫だと思う。

 俺たちも転移があるからすぐに帰れるしね。


「そうか。安全ならいい。ただし、これからもしっかりと警戒しておくんだぞ?」


「はい。わかっています」

 この前の発狂事件から、十分に警戒はしている。


「そうか。それじゃあ、レオ君がこの一、二ヶ月で何をしたのか教えて貰おうかな」


「わかりました。今回、僕は最悪に近いミュルディーン領の治安を改善することをいろいろと行いました。まず、憲兵の劣悪な職場環境の改善と大幅な人員増強を行いました。これは、文官のフレアさんに指摘されて行いました」


「お、さっそく派遣した文官が役に立ってくれたか」


「はい。凄い仕事が速くて助かっています」


「そうだろう。エリーゼが認めるほどだからな」


「はい。あの子の仕事の速さは、私といい勝負ですからね」

 へ~エリーゼさんがそこまで認める人なんだ。


「それは凄いな。まあ、役に立ってくれて良かった。それで、次に何をやったんだ?」


「大きな孤児院を造りました。これは、ミュルディーン領にはスラムがありまして、そこで生活している子供たちが悪いことをしなくても生活出来るようにするためですね。今は、皆元気に遊んだり、勉強や魔法の練習をしていますよ」


「おお、それは凄いな。魔法は誰が教えているんだ?」


「元違法奴隷だったエルフの方たちが教えています。僕もたまに教えたりしていますね。皆、どんどん魔法の使い方が上手くなっていますよ」

 昨日、最後に教えに行ったら皆しっかりと的に魔法を当てられていたからな。


「エルフに魔法を教わっているのか? それは、将来が楽しみだ。将来、レオ君の騎士団に加えるのか?」


「そんなつもりはありませんよ。皆、自由に生きてくれればいいと思っています」


「そうか。レオ君は本当に善人だな」


「そんなことないですよ。お金に余りがあり過ぎるから、やろうと思っただけですから」

 それに、スラムをどうにかしたいという自分の利益の為にやったものだからな。


「それでも、人を助けたことには変わりはないさ。それより、他にまだ何かやったんだろ?」


「他には……やったというより、やっていると言った方が正しいですね。ホラント商会と協力して地下市街の開発を進めています。これには、たくさんの人が必要になりますので、仕事が無い人を減らすことが狙いです。既に、魔法具工場の建設にたくさんの人が雇われて、スラムの人口がどんどん減っています」


「それは、良かった。順調じゃないか」


「そうだといいのですが……」

 どうせ、また何かトラブルが起こるよ。


「大丈夫だろう。これからも、更なる発展を期待しているぞ」


「はい。頑張ります」


「あ、そうだ。褒美の説明を忘れていたな」


「あ、そうですよ! 騎士団保持の許可ってなんですか?」

 騎士団を持っていいってことだろうけど、詳しいことはよくわかんないんだよね。


「そのまんまの意味だよ。騎士団を持てる貴族は、限られているんだよ。上級貴族の中で、皇帝に認められた家だけが持てるんだ。大体が、他国との国境付近の家だな」


「反乱を起こさせない為ですか?」


「そうだ。警備兵を雇うくらいなら許しているんだが、あからさまに戦争が出来そうな兵を雇うことは認めていないんだ」

 まあ、それは当然だよな。

 というか、今まで何も気にせずにゴーレム兵を造っていたけど、バレたらヤバかったんじゃないか?

 バッグの中にいる奴と合わせたら、普通に戦争が出来そうだよな……。


「な、なるほど。それで、今回はどうして僕に許可を出したのですか?」


「それは、フィリベール家への牽制と本当に反乱を起こした時に必ずレオ君の領地が通り道になるからだ。何も準備していないのに、攻められるのは嫌だろ?」

 うわ~。また、トラブルに巻き込まれそうだ。

 というか、確実に戦争に巻き込まれるな、うん。


「準備していても攻められるのは嫌ですけど……わかりました。騎士団を造ってみます」

 死にたくないし、全力で騎士団を育成しないといけないな。

 はあ、次から次へと。


「おう。頑張ってくれ。というより、レオ君に頑張って貰わないと本当に困る」


「ん? そんなにですか? フィリベール家って今、凄く疲弊しているんじゃないんですか?」

 いつか、戦争が起きそうなのはわかったけど、どうしてそこまで焦っているんだ?


「それが……どうも、王国と手を組んでいるみたいなんだ」


「王国ですか……。王国は、本気で戦争をするつもりなんですか? たぶんですけど、王国が帝国に戦争を仕掛けても勝てませんよね?」

 王国って、王族が私利私欲に突っ走っているから、国力が落ちているって聞いたんだけど?


「そうだな。だが、それはフィリベール家がこっち側だった時の話だ。普段なら、フィリベール家が国境付近で王国を食い止めている間に他の家から増援を頼むのだが、次はそれが出来ないだろう。砦で戦うこともせず、他の家からの増援が間に合う前に帝都に向かって来るだろう」


「なるほど……。確かに、それは大変ですね。わかりました。いろいろと考えておきます」

 うわ~。戦争に巻き込まれるどころか、戦争の中心地に引きずり込まれた。

 これは、早急に対応しなければだな。


「ああ、頼んだ」


「それじゃあ、僕はこの辺で失礼させて貰います。家で、友達が待っていますので」


「ああ、シェリーに聞いたぞ。試験のお疲れ会らしいな」


「はい。一年間、頑張って勉強しましたから」


「そうだろうな。私の耳に、レオ君たちの点数が既に届いているのだが、楽しみにしておいていいと思うぞ」

 お、それは嬉しいニュースだ。


「本当ですか? ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」


「ああ、またな」

 皇帝にお辞儀をしてから、俺は家に転移した。


「ただいまー」


「お帰り!」


「お帰りなさい。遂に伯爵までになりましたね。おめでとうございます」

 家に帰ると、シェリーとリーナが出迎えてくれた。


「ありがとう。皆は、もう来ているの?」


「うん。席に座ってあなたを待っているわよ」


「了解。あいつらと会うのも久しぶりだな」

 約二ヶ月ぶりだ。


「よお。元気にしていたか?」


「お、レオ。久しぶり」


「師匠! 元気にしてました!」

 フランク、ヘルマン共に、二ヶ月前と変わっていないようで良かった。


「うん、二人とも元気そうで何よりだ。それじゃあ、お疲れ会を楽しむか」

 それから俺たちも席に着き、料理が運ばれ始めた。


 まず出てきたのは、いきなりドラゴン料理だった。

 なんでも、舌が何の味にも影響されていない最初に食べて欲しいとのこと。

「うわ~。匂いからして、絶対美味しいだろ。レオ、これが手紙で言っていた新作のドラゴン料理か?」

 今回のドラゴン料理は、ステーキみたいだ。

 焼き時間と肉に合うタレを二ヶ月間研究し続けたそうだ。


「俺も初めて見たんだけど本当に美味しそうだ。それじゃあ、いただきます」


『・・・』

 皆、一口食べると、それからは無言で食べ続けた。

 そして、あっという間にドラゴンのステーキは無くなってしまった。


「うん、凄く美味しかった。後で、サムさんにお礼の言葉を言わないとだな」


「流石、元フォースター家の副料理長ね」


「前回のドラゴン料理よりも美味しくなってますよね」


「流石、師匠の料理人ですね!」

 皆、ドラゴン料理に大絶賛だった。

 喜んで貰えて嬉しいね。


「ありがとう。そういえば、フランクとヘルマンは休みの間、何をしていたの? 実家に帰ったの?」


「いや、実家に帰っていたら移動だけで休みが潰れてしまうから、帝都の家で魔法の練習をしていたよ」


「僕も、帝都の家で兄さん相手に剣術の練習をしていました」

 確かに、俺みたいに転移が無いと移動に時間がかかるもんな。

 それじゃあ、帰らないか。


「二人とも真面目だな。どれくらい強くなったのか楽しみだ」


「楽しみにしていて下さい! 僕、この前初めて憧れだった兄さんに勝てたんです」

 ヘルマンの兄さんって、帝国の騎士団に入った人だっけ?

 ヘルマン以外で、兄弟の中で唯一無属性魔法が使えるとか。


「お、それは凄いじゃないか。剣術の授業が待ち遠しいな」


「はい!」


「本当、あなたたちは仲がいいわよね。そういえば、ヘルマンはレオの騎士団に入るの?」


「え? 騎士団ってなんですか!?」

 シェリーの言葉に、ヘルマンが凄い勢いで食いついてきた。


「えっと……その話は長くなりそうだから後でな。学校が始まってから、フランクの部屋でゆっくりと説明してあげるから」

 今は、楽しもうよ。戦争の話とかすると、ご飯も美味しくないし。


「わ、わかりました……」


「おい! どうして俺の部屋なんだよ!」


「まあ、いいじゃないか。それより、俺の領地での話を聞きたくないか?」


「ま、まあ……」


「聞きたいです!」


「よし。それじゃあ、説明するよ……」

 それから、デザートを食べながら、俺の領地改革の話で盛り上がった。

 うん、気軽に話せる学校の友達というのもいいものだな。


これで、七章が終わりです。

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