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第九話 少年リーダー③

 

 ここで生活を始めて、もう一週間も経ってしまった。

 孤児院の生活にもだいぶ慣れてきた。

 たぶん、俺たちはもう元のスラムでの生活に戻ることは出来ないだろう。

 そんなことを考えながら、アンヌさんの授業を聞いていた。


「今日は、この国の身分について教えるわ」

 今日は、社会の勉強のようだ。

 この前は、種族についての授業だった。

 アンヌさんは、エルフという種族で人よりも魔力が多いことが特徴らしい。

 あと、人よりも少し寿命が長いとか。

 それと、俺たちに剣術や体術を教えてくれるラナさんは、獣人という種族みたい。

 人にはない動物みたいな尻尾や耳があることと、人よりも運動神経がいいことが特徴らしい。


「まず、この世界にある身分三つを言える人~?」

 ちなみに、アンヌさんが何歳かは教えてくれなかった。

 見た目は、十代後半~二十歳くらいなんだけどな……。


『は~い』


「それじゃあ、キャシーちゃん」


「平民と貴族と奴隷です」

 アンヌさん、何歳なんだろうな……。

 俺たちが大人になってもあのままなのかな?


「正解。それじゃあ、それぞれの特徴を教えて貰おうかな……。ビルくん」


「は、はい。え、えっと……確か、平民が俺たちみたいな一般人のことで、貴族は金持ち? 奴隷は……親とかに売られた人のこと?」

 全く授業を聞いてなかった俺は、慌てて思いつく限りのことを答えてみた。


「うん……平民はそうよ。私やビルくんみたいな一般市民のことね。ただ、貴族と奴隷の説明は違うわ。まず、奴隷についてね」

 ほとんど外れだったみたいだ。

 というか、平民の説明は簡単だから全部間違いみたいなもんだな。

 真面目に授業を聞かないと。


「奴隷というのはね。三つの種類があるの。さっき言っていたみたいに、借金の形に売られてしまう借金奴隷。大罪を犯した人がなる犯罪奴隷。あとは……誘拐みたいな違法行為で奴隷にさせられてしまった違法奴隷ね」


「そうなんだ……。カミラさんとかは、何奴隷なの? 借金奴隷?」

 俺と同い年のジンが、きわどい質問をアンヌさんにした。

 その質問、大丈夫なのか?


 と、思ったら簡単に答えてくれた。

「そうよ。カミラさんたちは借金奴隷ね。ちなみに、私はこの前まで違法奴隷だったわ」


「え? アンヌさんが奴隷!?」

 驚きの事実に、思わず大きな声を出してしまった。


「元よ。盗賊に捕まっちゃってね。悪い人の奴隷になっちゃったんだ」

 盗賊に捕まった? 悪い人の奴隷?


「え、え? 大丈夫だったの?」


「まあね。真っ暗な部屋に閉じ込められていたところを、レオ様に助けて貰ったのよ」


「そうだったんだ……」

 なるほどね。だから、レオにいの前だと急に大人しくなっちゃうんだ。

 たぶんだけどアンヌさん、レオにいのこと好きなんだろうな……。

 そんな絶望的な状況から助けて貰えたら、誰でも好きになっちゃうもんね。


「レオにい、かっこいい!」


「あの人は、一体何者なんだ……?」


「レオ様は、この街の領主様よ。所謂、貴族様ね」


「あの人が貴族……」

 貴族ってあんなに強いのか?

 俺のイメージだと、もっと太ってて偉そうにしているイメージなんだけど。


「いつもここに来る時の格好は、冒険者の格好だから想像できないだろうけど。普段は、あのお城でこの街の為に働いているのよ」

 え? あの城って、レオにいの家だったの?

 俺たちの想像をはるかに越える金持ちだった。


「え? レオにいって、偉い人だったの?」


「そうよ。凄く偉い人よ。そうね……それじゃあ、貴族の説明を交えながら教えてあげるわ」


「貴族には、階級があるのは知っている?」


「知らな~い」


「そう。それじゃあ、教えてあげるね。下から準男爵、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵の順番に、偉いのよ」

 貴族の中にもそんなに分かれているのか……。

 もう、公爵とか雲の上の存在だな。


「へえ~。レオにいは?」


「子爵よ」


「下から三番目だ!」

 あの人で下の方なのか。

 やっぱり、公爵とかは化け物なんだろうな。


「そうね。でも、レオ様の実家は一番上の公爵よ」


「え? レオにい、一番上なの?」

 あ、やっぱり、あの人より上は少ないらしい。


「そうよ。それに、レオ様はこの国のお姫様との結婚も決まっているわ」

 お姫様? あの人、そんな凄い人と結婚するの?


「え? レオにい、もう結婚相手がいるの?」


「そうよ。お二人ね。あともう一人は、この前の物語に出てきた聖女様のお孫さんよ」


「え!? あの物語に出てくる人って本当にいるの?」

 キャシー同様、俺も驚いてしまった。

 まさか、あれが本当にあった話だったとは……。


「ええ、そうよ。あ、そういえばこの前、言い忘れてしまったわね。レオ様のお爺さまが勇者様で、お婆さまが魔導師様よ」


「レオにいが勇者の孫……。ということはレオにい、強いの?」

 あ、キャシーは知らないのか。あの人の異常な強さを。

 でも、あの勇者の孫ならレオにいの強さも納得だな。


「強いわよ。一人でドラゴンを倒してしまうくらいにはね」


「え? ドラゴン? レオにい、ドラゴンと闘ったことがあるの?」


「そうみたいよ。なんでも、家を改造する素材が欲しくて世界で一番危険な魔の森に行ってしまったんですって」

 凄いけど、そんな簡単な理由で殺されたドラゴンも哀れだな……。


「魔の森? あの、勇者が魔王を倒した」


「そうよ。あそこ、凄く危険なのよ。凄く強い冒険者でも入ったら帰って来られないと言われるくらいにね。なのに、子供であそこに入って平気で帰ってこられる強さって本当、凄すぎるわよね」


「レオにい、凄い……」


「というわけで、あなたたちはそんな凄い人に助けて貰えたんだから、精一杯生きなさいよ?」


『は~い』

 アンヌさんの問いかけに、皆で返事をする。

 もう、俺を含めてレオにいのことを疑っている奴などいなかった。


「それじゃあ、今日の授業はこの辺ね。午後は何をしたい?」


「また、魔法を教えて! 早く、魔法を使えるようになりたい!」

 ここ最近、俺たちは午後の自由時間は魔法の練習をしている。

 早く、魔法を使えるようになりたいからね。


「ふふ、いいわよ。それじゃあ、食堂に向かいましょうか」


「やった~」



 そして、お昼ご飯を食べてから広い庭に出てきた。

「それじゃあ、魔法の練習を始めるわよ。まずは、この前教えた魔力操作の練習よ。これが使えない人が使う魔法なんて魔法と呼べないから、魔法を使いたいって人は絶対に習得すること!」


『は~い』


「よお。お前たち、元気にしていたか?」

 元気よく返事して、練習を始めようとしたところに、後ろからレオにいの声が聞こえてきた。

 振り向くと、レオにいと……知らない女性が三人いた。


「あ、レオにい! 元気にしていたよ。後ろの人たちは誰?」


「もしかして、レオにいの彼女?」

 キャシーたちがそんな質問をしながら、嬉しそうに騒いでいた。


「うん? まあ、そんな関係だ」


 どうやら、今日は自分の婚約者も連れて来たみたいだ。

 噂のお姫様と聖女の孫、獣人族のメイドさん、三人とも凄く美人だった。


 それと、お姫様の魔法が凄かった。

 語彙力が無くて説明できないけど、とにかく凄かった。


 頑張れば、俺たちにも出来るって言われたのもあって、皆魔法の練習を頑張ろうと心に誓っていた。


 あとは……やっぱりレオにいは凄かった。

 あの人の魔法、反則だろ……。


 いきなり建物を造ったり、よくわからない道具を造ったり、とにかく凄かった。

 最初に、その怪しげな道具の実験台にされたのは怖かったけどね。

 でも、魔法が使えるようになったのは嬉しかったな。

 俺の手から火が出たんだ。


 そして現在、キャシーたちがお姫様たちと魔法の練習をしているなか、レオにいと二人きりで話をしていた。

「で、一週間経ってどう?」


「この生活に慣れた」


「それは良かった。何か、気になったこととかない?」


「えっと……どうして俺たちにここまでしてくれるんだ?」

 他に聞きたいことも思い浮かばなかったから、ずっと気になっていたことを本人に聞いてみた。


「ここまでとは? 魔法の練習のために建物を建てたことか?」


「それもだけど……。どうして、ここまでいい生活をさせてくれるんだ? レオにいが俺たちを孤児院に入れた理由は、領主だってことを聞いて納得した。でも、ここまで豪華な生活を与える必要も無かっただろ?」


「まあ、そうだね。うん……それに関しては特に理由はないかな」


「え?」

 理由がない? どういうこと?


「俺、こう見えて世界で有数の金持ちなんだよね。だから、金なんて一生使い切れないくらい余っているんだ。だから、別に金を使うことに惜しむ必要が無い」


「レオにいが金持ちね……。流石、勇者の孫だな」

 まあ、あんな城に住んでいるわけだし……。

 恵まれた環境に生まれた人は、羨ましいな。


「おっと、何か勘違いしているみたいだけど。全て、俺が稼いだ金だ。じいちゃんや父さんからは、小さい頃に貰った小遣い以外貰っていないからな?」


「そうなの? だって、レオにいってまだ十一歳だったよね? どうやって、稼いでいるの?」

 意味がわからない。俺とそこまで歳が変わらないレオにいが、どうしてそこまで金を稼げるんだ?


「そうだな……。説明するのも難しいし、今度見せてあげるよ。ということで、話を戻そうか。俺がここまでする理由だけど……ビルって何か将来の夢とかない?」


「将来の夢? うん……食べ物に困らない生活がしたい、とかかな?」

 今まで、目の前のことに集中しすぎて、何も考えてなかったんだよな……。


「まあ、今はそんなもんだろうな。でも、あと数年したら、お前たちはここから旅立つ時が来る。その時は、嫌でも自分の道を決めないといけないな。冒険者になるもいい。騎士を目指して騎士学校に行くのもいい。魔法の勉強をするために魔法学校にいくのもいい。皆がやりたいことをやって欲しい」


「わ、わかった」

 その話は、この前も言っていたな。

 学費まで出してくれるなんて、本当に凄いよな……。


「で、大人になってから、気が向いた時にでも俺の助けをしてくれたら嬉しいな、というのがお前たちに良くする理由だな」


「なるほどね……。自分のやりたいことをやって欲しい、か」


「そうだ。ビルは何がやりたい? 魔法、剣術、勉強、何がやりたい?」


「わからない。でも、いろいろとやってみたい。それに、強くなりたい。一人でも生きていけるくらいに」

 で、余裕が出来たら、レオにいを助けてもいいかな。


「そうか。それじゃあ、頑張るしかないな。明日から、少しの間だけ来られなくなっちゃうけど、そっちが片付いたらまた遊びに来るよ」


「うん、わかった」


「よし。それじゃあ、皆のところに戻るぞ」

 それから、レオにいに魔法を教わっていたらその日の自由時間は終わっていた。



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