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第六話 子供たちとの交流

 孤児院が始まってから一週間が経った。

 あれから、ビルたち以外にもたくさんのスラム街にいる子供たちを少しずつ()()()説得していった。

 それと、豪華な孤児院が出来たことを聞きつけて、自らやって来る子供たちが何人もいた。

 そんなこんなで、七十人くらいの子供たちが現在、孤児院で暮らしている。


 そして今、俺たちは孤児院に来ていた。

 俺()()というのは、シェリー、リーナ、ベルがついて来たからなのだが……。


 孤児院に転移すると、アンヌさんと子供たちが庭に集まっていた。

「よお。お前たち、元気にしていたか?」


「あ、レオにい! 元気にしていたよ。後ろの人たちは誰?」

 あれから、仲良くなれたおかげで皆から、レオにいと呼ばれるようになった。

 本当、最初は警戒されて大変だったけどな。

 一週間毎日一緒に遊んで、なんとか仲良くなれた。


「もしかして、レオにいの彼女?」

 俺が皆と仲良くなれたことを喜んでいると、子供たちがシェリーたちを見ながらキャッキャやっていた。

 子供って、そういうの好きだよね。

 まあ、俺も子供だから兄さんたちに同じことをした覚えがあるけど。


「うん? まあ、そんな関係かな」

 婚約者だし、間違っていないだろ。


「うわ~。レオにい、こんなに美人な人、しかも三人も自分の女にしてるの? やるね~」

 おいおい、自分の女なんて汚い言葉使っちゃいけませんよ。

 まあ、いいか。


「ああ、羨ましいだろ?」

 ちょっと調子に乗ってふざけてみた。


 すると、ビルの妹であるキャシーが真顔で近づいてきた。

「キャシー、どうしたの?」


「レオにい、ちゃんと一人一人平等に愛してあげないと駄目だからね?」


「お、おう……」

 かわいいキャシーから想像も出来ないような重い言葉が飛んできて、俺は何も言い返せなかった。


「ねえねえ。どれが皇女様なの?」

 今度は、一人の男の子が俺に近づいてきて、耳元でそんなことをささやいた。


「ん? 皇女様なんて誰から聞いたんだ?」


「アンヌ先生から聞いたんだ。レオにい、偉い人なんでしょ?」

 ああ、アンヌさんか。

 アンヌさんは、子供たちに勉強や魔法を教えたりして、積極的に子供たちと関わっている。

 そのおかげもあって、子供たちはアンヌさんのことを凄く信用しているんだよね。


「そんなことないさ。お前たちと同じ人間だよ」


「そうなんだ。それで、お姫様はどれなの?」


「どれだと思う?」


「うん……一番右」

 一番右には、リーナがいた。

 うん、リーナの方が大人しそうだからそう見えるよね。


「惜しい。真ん中だ」


「そうなんだ……やっぱり、美人だね。将来、結婚するんでしょ?」


「う、うん、そうだね」

 まだ断言は出来ないけど、俺はそのつもりさ。


「それじゃあ、レオにいが皇帝になるの?」

 え? アンヌさんは、そこまで教えたの!?


「いいや。彼女のお兄さんが皇帝だよ」


「そうなんだ。それにしても、皆美人だよね」


「まあな。それで、今は何をしていたんだ?」


「アンヌ先生に魔法を教わっていたんだ」

 なるほどね。それなら、シェリーとリーナも手伝える。

 二人とも、子供たちと仲良くなりたいって言っていたし、ちょうどいいな。


「そうだったのか。アンヌさん、何か手伝うことはない?」


「いえ、特には……。あ、属性を鑑定できる魔法具が欲しいです」


「属性を鑑定? それなら俺が……いや、何でもない」

 俺が鑑定すると言いかけて、俺は慌てて口を押さえた。

 危ない。鑑定が使えることは誰にも話していなかったんだっけ。

 まあ、鑑定が無くても魔法アイテムを造ればいいだけだからな。


「えっと……材料を持ってくるから待ってて。そうだ。シェリー、俺が戻って来るまで、子供たちに魔法を見せてあげててよ」

 すぐ戻ってくるけど、そっちの方が子供たちも退屈しないからね。

 魔法にもっと興味を持って貰えるし。


「わかったわ。任せなさい」

 そう言って、シェリーが自分の周りにたくさんの魔法を出した。

 ああ、どうやらいつものあれをやるみたいだ。


「よし、それじゃあすぐ戻ってくるよ」

 俺はシェリーが魔法を動かし始めたのを確認して、城に向けて転移した。



 それから、すぐにリュックを持って戻って来た。

「戻って来たよ! あれ?」

 戻って来ると、全員が俺に背中を向けていた。

 皆の視線の先を見ると、シェリーが立っていた。


「お姉ちゃん! さっきのもっと見せて!」

「もう一回見たい!」

「もう一回!」

「お願い!」

 どうやら、シェリーの魔法が気に入ってもらえたようだ。


「しょうがないわね。あと一回しかやらないから、よく見ておくのよ」

 シェリーは子供たちに褒められ、嬉しそうに子供たちのお願いを聞いていた。


 シェリーはいつものようにたくさんの魔法を自分の周りに作り出し、不規則に動かし始めた。

 皆の間を通ったり、空高く飛んでみたりと、その動きは凄く綺麗だった。

 そして、最後は空に向けて魔法が打ち上げられて終わった。


『うわ~』

 子供たちは、シェリーの魔法を見て、歓声を上げっぱなしだった。


 そして、終わってから一人の少女がシェリーに質問をした。

「お姉ちゃん凄いね! 僕たちも頑張れば、お姉ちゃんたちみたいになれる?」


「なれるわ。その代わり、たくさん練習しないといけないわ。私も、皆が想像できないくらいには努力をしたんだから」

 だろうね。少なくとも、俺より魔力操作のレベルが高いんだから。


「そうだよね……わかった。僕、頑張ってお姉ちゃんみたいになる!」

 シェリーに質問した少女は、何か考えるそぶりをした後、ニッコリと笑ってそう言った。


「私も!」

「僕も!」

「俺も!」

 他の子供たちも、少女に続くように名乗り上げた!


「人気者だな」


「あ、レオ」


「レオにいだ! その鞄を取りに帰ったの?」


「そうだよ。これは、魔法の鞄でね。こんな風に、いろいろな物がたくさん入っているんだよ」

 そんなことを言って、鞄の中からぬいぐるみを出して、近くにいた少女に渡した。

 まあ、本当は出したんじゃなくてその場で創造しただけなんだけどね。


「うわ~。凄い! レオにいの魔法?」

 違うと言いたいんだけど、ぬいぐるみを造ったのは魔法なんだよな……。


「え、えっと……俺の魔法は、今から見せてあげる」

 夢を壊さないよう、なんとか誤魔化しておいた。


「レオにいの魔法って凄そう!」


「まあ、よく見ておけって」

 そんなことを言いながら、俺は地面に手をついた。

 そして、広い庭の使っていない場所に、創造魔法で大きな建物を建てた。


 それを見た子供たちは、数秒だけ何が起きたのかわからなくて固まっていた。

「……え? これがレオにいの魔法?」


「そうだよ。それじゃあ、中に入るか」

 そんなことをいいながら、俺は建物のドアを開けた。


「ひろ~い!」

 中に入ると、学校の訓練所みたいな空間が広がっていた。

 俺は、壁に的を造っていく。


「ここは、魔法の練習場だ。しっかりと魔力の制御が出来ないのに、魔法を外で使うと危ないからね」

 家を壊したり、外に飛んでいって通行人に当たったら危ないからな。


「そうなの? でも、魔法でこの家が壊れないの?」


「心配ないよ。今から、その対策をしていくから」

 そう言って、じゃらじゃらと魔石をリュックから出した。


「うわ~。凄くきれ~い!」


「これは魔石だよ。お前たちもそのうち練習で使うさ。ねえ、アンヌさん?」

 今は、魔力操作の練習をしているから、あと少しだな。


「そ、そんな高濃度な魔力が入った魔石、見たことがありません……」

 アンヌさんは、魔石の魔力に驚いていて、俺の声が聞こえないようだ。

 エルフなら、これくらい作れそうだけどな。


 そんなことを思いながら、俺は壁や天井、床を改造していった。


「よし、これでこの建物の中で魔法を使っても大丈夫だよ。シェリー、全力の魔法で試してみて」

 改造が終わり、俺は的を指さしながらシェリーに試し撃ちを頼んだ。

 シェリーの魔法に耐えることが出来たら問題無いだろう。


「全力? わ、わかったわ……」

 シェリーはそう言うとポケットから杖を取り出し、的に向けた。

 そして、俺が想像していたよりもとんでもなく大きな雷の塊を作り出した。


「あ、それはちょっと不味いかも……」

 あまりの大きさに、壁が壊れないか不安になってきた。

 壁が突き抜けて孤児院まで壊れるんじゃないか?


 そして、俺が不安になる中、魔法は的に向けて飛ばされた。

「せい!」


 ドオオン!


 魔法は、凄い音と光を発しながら的というか壁に当たった。

 そして……あまりの光につぶってしまった目をゆっくり開けていくと、壁が無事であることが確認できた。


「良かった……壊れるかと思った」

 傷一つ無い壁を見て、俺はほっとした。


「凄いわね。どんな改造をしたの?」

 えっと……


<吸魔の壁>

 魔法が当たっても、一瞬で魔力を吸収する仕組みになっている

 吸収した魔力は、壊れた部分の修復に充てる

 創造者:レオンス・ミュルディーン


 なるほどね。

 壊れても、直るのか。

 シェリーのあんなに大きな魔法の魔力なら、この建物を一瞬で直せそうだもんな。

「当たった瞬間に魔力を吸収するようにしたんだよ」


「学校にある訓練所の壁と同じやつね」


「まあ、性能は全く違うんだけど」

 あれは、限界以上の魔力が当たると壊れちゃうからね。


「よし、後はアンヌさんに言われていた鑑定が出来る魔法アイテムだね。素材は安定のこれだな」

 そう言って、俺はリュックから大きなミスリルを取り出した。

 そして、すぐに創造魔法を使った。


「お、出来た」


<鑑定の台座>

 台座に触った人の鑑定結果が台座に映し出される。

 鑑定結果は、自分の物しかわかりません

 創造者:レオンス・ミュルディーン


「よし、出来た。ビル、これに触ってみろ」

 出来た物を鑑定して、近くにいたビルで試して見ることにした。


「え? う、うん」

 急に指名されたビルが戸惑いながら台座を触ると、台座が光り始めた。


「うわ! なんか出てきた!」


「え? 何も見えないよ」

 ビルが驚くように見る視線の先には何も無く、他の子たちが不思議そうにしていた。


「他の人からは見えないんだよ。それでビル、属性は何だったんだ?」


「俺、字が読めない……」

 そういえば、そうだった。

 これ、失敗じゃない? 後で、改良しておくか。


「あ、そうだったな……。仕方ない、俺に見せてみろ」

 と、言いながら、俺はビルに鑑定を使った。


 ビル Lv.1


 年齢:7

 種族:人族

 職業:リーダー


 体力:5/5

 魔力:10/10


 力:6

 速さ:7

 運:10

 属性:無、火


 スキル

 なし


 称号

 なし


 お、ちゃんと属性がある。

「無と火だな。頑張れば、手から火を出せるぞ」

 そう言いながら、俺は手に火を造った。


「俺の手から火が……」

 俺の手を見ながら、ビルがそうつぶやいた。


「レオにい! 私のも!」

「僕のも!」

 そんなビルを見ながら、他の子たちが俺に集って来た。


「わかったから。待てって!」

 それから俺は全員を並ばせて、順番に鑑定をしてあげた。

 で、毎回俺が鑑定をしていたら意味が無いなと思い、俺かアンヌさんが許可した人なら鑑定結果が読めるようにしておいた。

 うん、これで問題解決だな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  そう言いながら、俺は手に火を造った。 「俺の手から火が……」  俺の手を見ながら、ビルがそうつぶやいた。 ーーーーーーーーーーーー 「レオの手から火が」が正しい
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