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第十二話 闇市街に潜入します①

 ゴッツから情報を聞き出した俺は、とりあえず自分の部屋に戻って来た。

「ただいまー」


「お疲れ様です」


「あ、リーナ。リーナもお疲れ。今日は、本当に助かったよ」

 部屋に戻ると、シェリーの他にリーナとベルも戻って来ていた。

 二人とも風呂上がりのようで、濡れた髪をタオルで拭いていた。


「いえいえ。たいしたことないですよ」


「そんなことないって、本当にありがとう」

 リーナが助けてくれなかったら、絶対にこんなスムーズに終わらなかったからね。


「いえ、レオくんの役に立てて嬉しいです」


「ベルもありがとう」

 ベルもリーナと一緒に頑張ってくれていたからね。


「いえ、私はリーナさんの手伝いをしていただけなので」


「それでも、ありがとう」

 そう言って、ベルの頭を撫でてあげた。

 ベルは、嬉しそうに身を寄せて来た。


「あ、ズルい!」


「はいはい。シェリーもありがとう」

 怒ったシェリーが私も撫でて欲しいと言いたげに近づいて来たので、シェリーの頭も撫でてあげた。


「へへへ」

 頭を撫でられたシェリーは嬉しそうな声を出していた。

 そんなシェリーから少し目を離して、リーナの方を見ると……羨ましそうな眼をしながら、自分も行こうか悩んでいた。


「リーナもおいで」


「は、はい」

 俺が呼ぶと少し照れながらリーナも嬉しそうに駆け寄ってきた。



「それで、ゴッツから何か聞き出せたの?」

 しばらく俺が三人の頭を撫でていると、シェリーが俺にくっつきながら聞いてきた。


「ああ、どこで彼女たちを手に入れたのか、聞き出せたよ」


「私も少しだけですが、彼女たちから教えてもらえました」

 え? もうそんなことを話して貰えたの?

 皆、リーナのことは信用しているんだろうな。


「どんなことを言っていたのか、教えてくれる?」


「はい。彼女たちは、故郷から飛び出して人の国に向かう途中で、盗賊などに捕まってしまい、奴隷にされてしまったそうです。そして、この街の地下に連れて行かれて、それからは地上に出ていないそうです」


「なるほどね……。やっぱり、ゴッツが言っていたことは本当なんだな」

 それにしても、故郷を飛び出して来たところを狙うとは、随分と悪質なことをするな。


「ゴッツはなんて言っていたの?」


「この街の地下に闇市街と言われている場所があって、そこなら世界中で販売が禁止されている物が手に入るんだって」


「そんな場所があるのね。流石、世界の中心と言われるミュルディーン領ね」

 良くも悪くも世界の中心なんだろうな。


「まあ、見つけたからには、どうにかして潰さないといけないんだけど……」


「それは大変そうですね」

 そう、めっちゃ大変そうなんだよね……。


「本当に大変だよ。ということで、これから下見に行ってくるよ」


「え? 一人で? 流石にレオでも危険じゃない? 何があるのかわからないんだよ?」

 そうなんだけど……誰かを連れて行くわけにもいかないじゃん?


「まあ、心配ないよ。俺にはこれがあるからね」

 そう言って、今俺が身につけているマントを三人に見せた。


「レオくんがいつも本気の時に身につけているマントですか?」


「そう。これ、実は透明になることができるんだ。ちょっと見ててね」

 そう言って、俺は透明マント+を使って透明になった。


「え? 消えた?」

 シェリーはそう言って、キョロキョロと辺りを見渡した。


「レオ様の匂いも消えました」

 クンクンと匂いを嗅ぎながら、ベルも驚いていた。

 そう言えばこのマント、透明になれるだけじゃなくて匂いとかも消せるんだった。

 これをじいちゃんに貰っておいて良かった~。


「凄いですね。全く気配がしません」


「凄いでしょ?」


「「「きゃあ!」」」

 後ろからまとめて抱きしめてあげると、三人は驚いて大きな悲鳴をあげた。

 ちょっと、驚かせすぎたかな?


「ということで、これから闇市街に潜入してくる」


「絶対に無理はしないでくださいね?」

 リーナが俺の目を見て念を押してきた。


「わかってるよ。今日は見るだけ、何もしないよ」

 だから、心配しなくても大丈夫だよ。


「じゃあ、私たちはまたモニターで様子を見ているわ」

 まあ、俺のことを心配しながら待たせるよりはいいか。


「うん、わかった。それじゃあ行ってくるよ。あ、一応エレナは持って行った方が良さそうだな」

 流石に、今回はちゃんとした武器を持っていた方が良さそうだよな。

 そんなことを思いながら、久しぶりにエレナをリュックから取り出した。


(久しぶりね。レオ)

 久しぶりに会ったエレナは、随分と魔剣らしい禍々しさを増してしまったようだ。


(ひ、久しぶり、エレナ)


(随分と私のことをほっといてくれたわね)

 だ、だって、今まで使ってあげられる機会が全くなかったんだもん。


(ごめんって。たぶん、もうすぐ思い存分使ってあげられる時が来るから許してください)


(もうすぐ? それじゃあ、今日は何?)


(今日はもしもの時の為)

 もしかすると、隠れているのがバレてしまう可能性があるからね。


(それは残念ね。私としては、もしものことがあるといいんだけど)

 うん、そうならないように頑張ろう……。


「久しぶりの魔剣ですね。聖剣はいいのですか?」

 俺がエレナと念話をしていると、リーナが寄って来た。


「うん? ああ、セレナは遠くからでも召喚できるからね」


「あ、そうでしたね。ここ最近、使っているところを見ていなかったので忘れていました」


「ご、ごめんなさい……」

 エレナから何か念が送られて来た気がしたから、とりあえず謝っといた。


「え? どうして謝るのですか?」


「いや、ちょっとね……。それじゃあ、行ってくるよ」


「絶対に無傷で帰って来るのよ!」


「はい。傷一つ負わないで帰って来ます。じゃあ」

 俺は三人にそう言ってから、ゴッツの地下室に転移した。



「ここに隠し扉があるらしいんだよね……アンナ、わかる?」

 ゴッツの地下牢の奥を探りながら、アンナに聞いた。


(はい。目の前の壁を触って貰えますか?)


「うん。触ったよ」

 言われた通りに目の前の壁に触った。


(もう少し右、ちょっと上、あ、行き過ぎです。はい、そこです。そこを強く押してください)


「押すの? わかった」

 アンナに言われた通りに手を動かしたところで強く押すと……壁が動き出し、扉が出て来た。


「お、開いた。あいつ、余計なことに金をかけ過ぎだろ」

 扉を開けながら、ゴッツにもう何度目かになる文句を言った。


「それじゃあ、潜入を開始しますか」

 マントを使って透明になりながら、扉の向こうに進んだ。


 扉の向こう側は、長い通路になっていた。

 そして、通路の先から、何やら男の声が聞こえた。


「おい。聞いたか? 会長が捕まったみたいだぞ!」

 音を立てないように通路を進むと、声がはっきりと聞こえてきた。

 どうやら、通路の先は部屋になっているようだ。


 部屋の中を覗くと、偉そうな人が使う机と椅子が一つずつあり、その前で二人の男が話し込んでいた。

「ああ、知っている。新しい領主に横領がバレてしまったそうだ」


「会長が捕まったら、ここが帝国側にバレてしまうんじゃないか?」

 会長? ああ、ゴッツのことか。この二人は幹部かな?


「いや、流石にそれはないだろう。会長が捕まったのは別件だからな。ここの存在が知られるには、もっと時間がかかるさ。ただ、その前に会長は死刑か奴隷にでもされてしまうんじゃないか?」

 普通はそうだね。俺じゃなかったら、ゴッツの地下室を見つけることは出来なかっただろうから、ゴッツは闇市街について聞かれる前に死んでいたと思うよ。


「確かにそうだが。もし、会長が話してしまったら……」

 残念、もう話してしまったんだな~。


「それじゃあ、もしもが起こらないように、後で闇市街にいる殺し屋に会長を殺すように頼んでおくよ」

 それは困るな。帰ったら城の警備を強化しておかないと。


「それなら安心だな。で、次期会長はどうするんだ?」


「どうするか……。ここの掟だと幹部同士の争いを避けるために、ここの領地を支配する奴が闇市街の会長をやる決まりなんだけどな。今回の領主はまだ子供なんだろ?」

 そんな掟があるの? 争いを避けるという点では、合理的だな。

 ただ、俺は会長になるつもりはないぞ?


「ああ、子供だ。逆にいいんじゃないか? 確か、女好きって噂だし、ゴッツみたいに普通じゃあ手に入らないような女奴隷を渡して遊ばせておけば、今まで通り俺たちが闇市街の運営ができるんじゃないか?」

 はあ? 俺って、女好きで有名なの?

 この前、城のメイドにも言われていたし……。


「ああ、言われてみればそうだな。明日でも、招待状を出しておく。今、俺の店にとんでもなく珍しい女がいるから、それを安く売れば上手くいくだろ」

 とんでもなく珍しい女? 何それ、怖いな。


「あ、あの女を売るのか!?」

 もう一人の男が、凄い驚きながら聞き返した。


 え? そんな反応をされるような奴隷を俺に売るつもりなの?

 俺、一応子供だからね?


「ああ、別にいいだろ?」


「いいけど……あれを地上に出すのは……」

 こわ! 地上に出すのがヤバそうなものは、地下に置いといてもヤバいと思うんだけど!


「大丈夫だろ。そろそろ、俺にも手に負えなくなってきたからな。金持ちの家に渡した方がいいだろう?」

 いや、その道のプロが手に負えなくなってきたものを、俺がどうにか出来るはずがないじゃん!


「そ、そうか……。怖がられたりしないように気をつけておけよ?」

 いや、既に怖がっているから!


「大丈夫。見せる時は、薬で寝かせておく。寝ている状態なら可愛らしい子供だから、大丈夫だろ?」

 見た目は可愛らしいのか……知らないで売られていたら、もしかすると騙されていたかも……。


「ま、まあ……」

 嫌だな……。でも、そんな危険な奴隷を放置したまま、ここを潰すわけにもいかないし……。


「そういうことだ。じゃあ、お前は幹部たちにこのことを伝えろ。皆、会長が捕まって不安になっているだろうからな」


「ああ、わかった」

 二人はそう言って、部屋から出て行ってしまった。


 仕方ない、奴隷のことはその時に考えよう。

 今はそれよりも、下見を優先しないと。


(アンナ、この部屋から闇市街に出るまでの道案内をよろしく)


(わかりました)

 アンナの案内と共に俺は部屋を出た。


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