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第十一話 囚われた女性たちを助けます

 SIDE:リアーナ

 レオ君とお義兄(にい)さんを見送った後、私はすぐに動き始めました。


「それじゃあ、急いで助け出しますよ。まずは……あ、レオくんに牢屋を開けて貰うのを忘れていました」

 牢屋を開けようと思い、手をかけたところで重大なことに気がつきました。

 どうしましょう、今行ったばかりのレオくんを呼び戻すのも悪い気がしますし。


「それなら、私が切ってしまうわよ」

 私が悩んでいると、そんな声が聞こえ、カランカランと鉄格子の破片が落ちた音が地下室に響き渡りました。

 音がした方を見てみると、ユニスさんが刀を持っていました。


 あまりにも一瞬の出来事で、皆、ユニスさんを凝視してしまいました。

「え? 切るのはダメだった?」


「い、いえ。大丈夫だと思います。それじゃあ、ユニスさんは他の牢屋もお願いします。他の皆さんは、私が聖魔法で治療し終わった方から、助け出してあげてください」


「わ、わかったわ」

「わかりました」

「はい」


 皆に指示を出しつつ、牢屋に入ると獣人の私より少し年上くらいに見える女の子がいました。

 凄く不安そうな顔をして、プルプルと体を震わせていました。

「どこか痛いところはありますか?」

 私は、気持ちを落ち着かせる魔法をかけてあげながら女の子に質問しました。


「い、痛いところはないです」


「わかりました。一応ですが、全身に聖魔法をかけておきますね」

 そう言って全身に聖魔法をかけてあげると、少し体の震えが落ち着きました。


「す、少し、体が楽になった気がします」


「それは良かったです。シェリーとベル、毛布を持って来て」


「「は、はい」」


「まだ寒くないですか?」


「い、いえ、大丈夫です」

 二人が持って来た毛布を体に巻いてあげながら質問すると、獣人の女の子は毛布をしっかりと掴みながら答えてくれた。


「それは良かったです。ベル、上まで連れて行ってもらえますか?」


「は、はい」


「それと、ベルは上で運ばれてきた人のことを見守っている係です。食べることが出来そうな方には、レオくんが置いて行った食べ物を渡してあげてください」


「わ、わかりました」

 ベルは返事をして、女の子を抱き上げて部屋から出て行きました。


「それじゃあ、次の人に行きましょう」


 それから、十数人の方たちを治療しては運びを繰り返し、なんとか最後の方になりました。

 最後は、レオくんが最初に見つけたエルフの凄く美しい女性です。

「あなたで最後です。痛いところとかはありませんか?」


「大丈夫です。私は、ここに来たばかりで、まだ何もされていませんから」

 それは良かったです。でも、辛かったと思います。

 ゴッツが捕まった日から何も食事をしていなかったのですから。


「そうだったのですか……。それじゃあ一応、全身に聖魔法をかけさせてもらいますね」

 念の為に、他の子たちと同様に全身に魔法をかけてあげました。


「ありがとうございます。体が楽になりました。もう、歩けると思います」

 そうは言って立ち上がりましたが、フラフラしていてとても大丈夫そうにはとても見えません。


「あ、無理して立たないでください」

 私は慌てて支えに行きました。


「あ、すみません」


「謝らなくていいです。フレアさん、毛布を渡してあげてください」


「はい」


「それじゃあ、上に向かいます」

 フレアさんが持って来てくれた毛布をエルフの女性にかけてあげ、支えながら歩き始めました。


 そして、歩き始めると急に牢屋の中に人が現れました。

 だ、誰!?


「あ、リーナ、こっちは終わったけど、何か手伝えることはある?」

 私たちがビクッと身構えると、レオくんの優しい声が聞こえてきました。

 なんだ……レオくんですか……。


「レオくん……びっくりしました。いえ、こちらも終わりましたので大丈夫です」


「ごめん。もう終わったの? 凄いな。リーナたちに助けて貰って正解だったな」


「お褒めの言葉は後でたっぷりとお願いします。今は、この方を上にお連れすることの方が大事です」

 今は、こちらの女性を運び出すのが優先です。


「あ、ごめん。って、歩いちゃっても大丈夫なの?」

 レオくんも気になったのか、私の肩につかまりながら歩いている女性のことを心配していました。


「は、はい。大丈夫です」


「そうは言ってもダメだよ。俺が運んであげる」

 レオくんはそう言うと、女性を抱き上げてしまいました。


「あ……」

 女性は思わず驚きの声を出していましたが、そこまで嫌がって様子はありませんでした。

 少し羨ましいと思ってしまいましたが、今はそんなことを考えてはダメです。


「それじゃあ、行こうか」


 SIDE:レオンス

「これで、全員?」

 エルフの女性を運び出し、地上に出ると、毛布を巻かれた女性たちで部屋がいっぱいになっていた。


「はい」


「そうか。それじゃあ一旦城に連れて行って、皆が落ち着いてから情報収集はするか」

 今は、元気になって貰う事が一番重要だからね。


「はい。それがいいと思います」


「じゃあ、城に移動するか」

 それから城に転移し、ゴッツに捕まっていた女性たちをリーナとメイド達に任せた。


 そして、俺は一人でゴッツの屋敷に戻り、地下室の扉を閉じてゴーレム達の所に向かった。

 ゴーレム達は仕事が終わって、庭で俺が戻ってくるのを待機していた。


 庭に並べられているお宝たちがさっきよりも増えた気がするな……。

「お疲れ様。今日はありがとう。また、何かあった時はよろしく」

 そう言って、俺はリュックの中にゴーレム達を戻していった。


「ふう、このお宝たちも一旦は俺のリュックの中で保管して後で売りに行くか」

 お宝たちもリュックにしまった。


「あ、あの……。状況を説明して貰っても?」

 お宝もリュックに入れ終わり、城に戻ろうとした時、後ろから女性の声がした。

 振り返ると、ここで働いているメイドさんたちがいた。


 そういえば、何も言ってなかったな。

 このまま帰ったら、急に家を荒らして帰って行った集団になってしまう。


「あ、ごめん……」

 それから、俺はこれまでの流れを説明した。


「そうでしたか……それで、私たちはこれからどうすればいいのでしょうか?」

 確かに、どうしよう……。メイドさんたちも急に解雇されてしまったら困るだろうし……。


「どうしようかな……少し考えさせて、当分はこの屋敷の管理をお願いするよ。給料もちゃんと出すから安心して」


「ありがとうございます。わかりました」

 不安な顔をしていたメイド達は、俺の言葉を聞いて安心した顔をした。


「それじゃあ、また来るからその時はよろしく」


「はい。よろしくお願いします」

 メイドさんたちに挨拶してから、俺は城に転移した。


「ただいまー」


「おかえり」

 俺の部屋に転移すると、シェリーしかいなかった。


「あれ? ベルとリーナは?」


「お風呂よ」


「お風呂? 何をしているんだ?」


「ゴッツに捕まっていた人たちを洗ってあげているのよ」

 ああ、そういうことか。


「そうなのか。それじゃあ、そっちが終るまで俺はゴッツの所に行ってくるよ」

 聞き出さないといけない情報があるからね。


「わかったわ。私はここにいた方がいいわよね」


「うん。もしかすると、怖がらせてしまうかもしれないからね」

 今日は、あいつに容赦するつもりはないから……それをシェリーに見られるのはちょっと嫌だな。


「それは大丈夫だと思うけど、大人しくここで待っているわ」


「ありがとう。それじゃあ、行ってくるよ」

 シェリーにハグをしてから、俺はゴッツがいる牢屋に転移した。


「くそ……。俺は偉いんだぞ。こんなところで一生を終わらせるような人間じゃないんだ」

 牢屋に転移すると、ゴッツが前回と同様に気持ち悪いことを言っていた。


「こんな場所で人生を終わらせる人間じゃないのは同意だね」


「ん? お、お前は!」


「ただ、こんな楽な死に方はさせないってことだけど」

 お前にこれからどんな罰を与えるのか、考えておかないと。


「そ、それだけは……」

 ゴッツは俺の言葉を聞いて、さっきまでの元気は無くなってしまった。


 そんなことは気にせず、俺は話を続けることにした。

「今、君の家を調べて来たんだけど……」


「は、はい」


「随分と贅沢していたんだね」


「は、はい……」


「それにしても、あの金貨の数は凄かったな……」


「き、金貨!?」

 ゴッツは、金貨という単語に驚いた顔をした。

 そりゃあそうだろう、地上にあった金庫には白金貨しかなかったんだから。


「そう、大きな金庫いっぱいに詰まっていたよ。まさか地下に隠しているとはね……」


「……」

 ゴッツは顔面蒼白になり、黙り込んでしまった。


「それで、何か話すことは?」


「い、いえ……」


「そうか。それじゃあ、話を続けようか。地下室の右側には金庫があったんだけど。左側には、何があったと思う?」


「さ、さあ……」

 ゴッツは、汗をダラダラと流しながら必死に知らないふりをした。


「まだ話す気にはならない? 正直に話した方がいいと思うけどな……」


「ほ、本当に何のことかわかりません」

 そう言うゴッツの声は震えていた。


「そうか。それじゃあ、何か思い出したことがあったらすぐに言って」


「……」


「左側の部屋に行ったら、牢屋があったんだ。本当に不思議だよね。どうして、牢屋をわざわざ隠したんだろう? そんなことを思いながら牢屋の中を覗いたら、エルフの女性がいたんだ……」


「……」


「その女性は奴隷の首輪が着けられていて、裸だった。可哀そうなことに、身を震わせていて、凄く怖がっているんだ。で、調べてみると、違法奴隷なのがわかって……現在、牢屋にいた全ての奴隷を城で保護しているところなんだけど、何か言うことはない?」


「……」

 ゴッツは下を向いて黙ったままだった。


「彼女たちをどこでどうやって手に入れたの?」

 俺は、牢屋の鍵を開けて中に入った。


「それとも、どこかから誘拐したの?」


「……」

 ゴッツは、黙秘で通すことを決めたようだ。


「このまま何もしゃべらないつもり? それなら、俺にも考えがあるけど……」

 俺はナイフを創造して、ゴッツの目の前に持って来た。


「どうする? 話してくれないと、痛い思いをして貰わないといけないんだけど?」


「……」

 ナイフを見せて脅しても話すつもりにはならないようだ。


「仕方ない……」

 俺は、首にナイフを当てた。そして、少しずつ力を強めた。


 これには、流石に焦ったのかゴッツが顔を急いで上げた。

「ま、待ってください! いきなり首は違うと思います!」


「違ってないよ。君に生きていてもらう必要はなくなった。何でも話してくれるなら、生かしておいてもいいと思っていたけど、それを放棄するならね……」

 殺しても構わないだろ?


「わ、わかりました。全て話します。話しますから! 殺すのだけは!」

 ゴッツは必死に喚いていた。


「それじゃあ、さっさと話してよ。ほら」

 そう言って、俺は首からナイフをどかした。

 首は、少し切れてしまっていたようで、ナイフには少し血がついていた。

 それを見たゴッツは余計に怖がり、急いで話し始めた。


「わ、わかりました。彼女たちを買った場所は、この街にある闇市街と言われている場所です」

 闇市街? そんな物騒な場所がこの街にはあるの?


「そんな場所があるの?」


「はい。世界中で禁止されている物がそこに行けば手に入ると言われています」

 そんな危ない場所が俺の領地にあるの? 恐ろしいな……。


「なるほど……そこに行くしかないのか。闇市街についてもっと詳しく教えて」

 闇市街なんて、すぐに潰すに限るね。


「えっと……。闇市街は、この街の地下にあります。地下の入り口は、闇市街を統治する幹部たちが経営する店にあります。その店で会員証を見せれば、入り口に案内して貰えます」

 忍び込むには面倒なシステムだな……。


「会員証は、どうやったら手に入るの?」


「幹部に会って、大金を払えばなることができます」

 それをやったら、俺も共犯になるよな?


「それは面倒だな。ちなみに、お前の会員証は? 確か、こっちにお前の持ち物が置かれていたよな」

 そんなことを言いながら、俺はゴッツの持ち物からそれらしき物を取り出した。

 そこにはゴッツの名前と、肩書に会長と書かれていた。


「ここに黒幕がいたよ……」

 こんな簡単にトップを捕まえることが出来るとは……。


「で? この会員証はどんな仕組みがあるの?」


「持ち主の血を垂らすと、会員証を渡した人の名前が浮き上がるようになっています」

 なるほど、それで本人確認と偽装を見抜くのか。


 俺は試しに、ナイフについた血を会員証につけてみた。

 すると……カードにゴッツという文字が浮き上がってきた。


「まあ、会長だから、自分のカードは自分で発行できるよな。それで、お前が持っている入り口はどこなの?」


「地下牢の奥です。隠し扉になっておりますので、わかりづらいと思いますが」

 そうなの? ちゃんと確認しておけば良かったな。


「了解。それじゃあ、闇市街をどうにかし終わったらここに戻って来るよ」

 そう言って、ゴッツの返事も聞かずに俺は自分の部屋に転移した。


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