プロローグ
『あなたに特別な能力と限定的な前世の記憶を授けましょう。これからどう生きるかは……あなたの自由です。あなたがどのような人生を送るのか楽しみです……』
え? 特別な能力? 記憶? これからの人生?
何を言っているんだ!
大声を出そうとしたら、目が覚めた。
なんだ。夢か……。
しかし、目を開けるとたくさんの違和感があった。
まず、俺は知らない人達に囲まれていた。
20代後半と思われるイケメンな男。
同じく20歳前後に見える女性(めちゃくちゃ美人)。
その隣には、そんな2人の子供と思われる4か5歳の赤毛の女の子がいた。
「######」
「●●●●●●●●●●●●●●●●」
「■■■■■■■■■■■■」
「##############」
えっ!? なんだ? 日本語じゃない?!
こっちに向かって手を振っているから……俺が話しかけられているのはわかる。
ただ、まったく言葉を理解することができない。
少なくとも日本語や英語ではなかった。
俺は……どんな異国の地に来てしまったんだ?
そんな俺の戸惑いなど知らない男は、俺のことを軽々と持ち上げた。
そう、持ち上げてしまったのだ。
おいおい……どうなっているんだ? そんな、巨人の国に迷い込んでしまったのか?
混乱しながら自分の体を見渡すと……明らかに手足が短く、とても小さな手と足。
これは……とても大人の体ではないだろう。
つまり俺は……赤ん坊になってしまったということだろう。
いや、いやいや……赤ん坊? 俺が赤ん坊?
まあ、待て。自分の体のことは一旦置いておこう。
まだまだ意味がわからない点は多い。
まず、部屋だ。
電化製品、プラスチック製品がこの部屋には見当たらない。
ろうそくで明かりを取っている家、生まれて初めて見た……。
そして、俺を囲んでいる3人の服装。
どう考えても俺の知っている服ではない。
よく中世を舞台にした映画に出てくる貴族が着ていそうな服だ。
もしかして……これが異世界転生ってやつか?
いや、転生と決めつけるのは良くない。
なぜなら、いつ、どう、死んだのか記憶が一切ないからだ。
思い出そうとすると……あれ? 今度は、自分がどんな人であったかさえわからなくなったぞ。
自分の名前、友人や家族など……大切な記憶がまったくない。
これは、本当にやばいのではないか?
こ、こういうときこそ落ち着くべきだ。
思い出せないことを考えても仕方ない。まずは、思い出せることから考えよう。
思い出せる範囲で一番古い記憶は……夢だな。
そう。すごく曖昧な……女性(?)が俺に話しかけていたんだ。
『あなたに特別な能力と限定的な前世の記憶を授けましょう』
確か、こんなことを言っていた気がする。
うん……。俺の夢でこんな難しい言葉が出てくるかな?
もしかしたら、神様が残した俺に対するメッセージだったりして。
ふふふ……まさかな。
いや、そもそもこんな信じられない状況にいるんだ。
神様に話しかけられたいたとしても、あり得ないことではないだろ。
よし。それじゃあ、あの言葉が神様だったとして過程しよう。
限定的な記憶。これは、もしかすると前世での記憶で自分が誰だったのかが含まれてないのかもしれないな。
漫画やテレビ、映画の中で思いつくタイトルは数えられないくらいたくさんある。
それなのに、自分に関する情報はまったく思い出せない。
ということは、そこが限定された記憶なんだろう。
そして、特別な能力。
これは……今考えても無駄だろう。
赤ん坊だと思われるこの体でできることは限られている。当てずっぽうに試すこともできない。
などと考えていると、男が俺の顔に顔を近づけてきた。
はあ……。もし、転生したとしたらこの男は父親ということなのか。
まあ、イケメンだから損ではないか。
目線を男の隣に向ける。
母娘がニコニコと笑い合っていた。
この二人は、たぶん母親と姉ってところだろう。
二人も美人だ。これは……俺の見た目も?
そんな期待に胸を膨らませ、それを確認するように自分の体を見た。
俺の体は、やはり小さく輪郭も丸い。
うん。これは本当に転生したのかもしれないな。
これから人生という長い時間が始まるのか……。
ここからどうなるのか、すべて俺次第だ。
これから頑張れば、俺は大富豪になれるかもしれないし、誰もが羨む家庭を築けるかもしれない。
ああ……もう、俺の人生は夢が溢れているな。
なんて期待していて、もしかしたらこれも盛大な夢かもしれないんだけどな。
どうか……これは夢でありませんように。
そして、もし夢じゃなかったら……俺には想像も出来ないくらい面白くて幸せな人生でありますように。
そう願いながら、だんだんと俺の意識は薄れていった……。
これからよろしくお願いします!
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(2022/02/03 22:12 修正)