零章~不運のはじまり~
「うっ動くな手を上げろ」
そういいながら黒の目出し帽をかぶった男に拳銃を突き付けられ怯える中年の女性と数人の銀行職員とこの物語の主人公である酒井健がいた。
「何でこうなったんだ?」
とこんな時だと言うのに、いやこんな人生で数回あるかないかの経験をしているからこそなのかも知れないが、健は朝起きてから今までの経緯を思い返していた。
健は何の夢もないフリーターで今年23歳になるその日暮らしの男である。
バイトが夕方5時からということもあり、昼の1時に目覚めた。
「何か腹減ったな」
と一人しかいない1Kの部屋で独り言を呟き寝癖でボサボサの頭をかきながら冷蔵庫を開け何か食べ物がないか確認した。
「ありゃこれだけか(汗)」
冷蔵庫の中にはこんにゃくと青ネギがあるだけで他には何もない。
「しょうがない何か買いに行くか」
バイトまでこんにゃくと青ネギだけではもたないと思い渋々着替えて家の近くにあるコンビニまで出かけることにした。
コンビニについてふと財布にいくら入ってるのかと思い確認すると
残金52円
「あれっやばいこんな金欠だったか(汗)でもコンビニにはこんな時の味方ATMがあるのだよフフフッ」とにやける健
「ママあのお兄ちゃん何か怖いよ」
「見ちゃいけません」
こんなやり取りがあってもおかしくない位の言動と顔になりつつATMにむかうと張り紙がはっており、
ATM故障の為本日ご利用できません
「何だ....と最悪じゃねーか。でもせっかく外にでたし。少し遠いけど銀行行くか」
と何も考えずバス停へ、
「あっバス代ない。お金卸さなきゃってそのために銀行に行くんだった」
そう健は頭が少し残念なのだった。
銀行までは徒歩30分程なので歩いて行けない距離でもないので、歩いて銀行に向かうことにした。
そしてようやく銀行についたと思った矢先、現在にいたるのである。
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「きっ聞こえなかったか!動くな手を上げろと言ってるだろうが!」
目出し帽をかぶった男は叫んでいた。
はっと健が前を見ると銀行員全員手を上げていた。
てかこういう時の研修やら実習をしたりそういうマニュアルもあるだろうに、いざこういった下手したら死ぬかもとなった際にはそういったことが出来るのは本当に一握りの人だけなのだと思い知らされた。
(動くな手を上げろか。ん矛盾してないか。撃たれないためには手をあげないといけない。でも手をあげるためには少なからず動かないといけない。どうしたものか)
と健はテンパっていた。
「おっおいバカにしてんのか!手を上げろって言ってんのがわっ分からないのか!」
銃をむけられ素直に手をあげた。
「よっよーしじゃじゃあこのカバンに金を詰められるだけ入れろ。」
とカバンを銀行員の女性に渡した。
「はいかしこまりました。」
泣きそうになってる銀行員の女性
とそわそわしている目出し帽の男、これを見て健はこの犯人はこのような犯罪をするのがはじめてではないかとかんじた。
「ねぇ少し聞いてもいいかな」
「なっなんだ。」
「なんでそんなにお金が欲しいんだ。しかもそんな大金」
「うっうるせぇお前には関係ないことだろ!」
「まぁ少し気になったものだから別に言いたくなければ言わなくてもい....」
「おっ俺は小さな鉄工所をやっててな」
(あっ理由話してくれるんだ。やっぱりこの人ええ人なんじゃ?)
健はそう感じた。)
「経営が難しくてな、従業員達に三ヶ月も給料をまともに払えてなくてなこのままだと鉄工所も潰れてしまう。それは構わないけど最後に従業員達に退職金位払ってやりてーんだよ。そのまぁなんだ兄ちゃん、巻き込んで悪かったな」
(やっぱり悪い人では無いんやな。)
「大変だったんですね。でもこんな汚い金貰っても喜べるのかな従業員達は、」
「そっそれは」
たじろぐ目出し帽の男
よしこれは何とかなるかそう思った矢先
一人の銀行員が隙を見て背後から目出し帽の男に飛びかかる。
その時銃が暴発
俺はその流れ弾にて死んだ。
(嘘だろ聞いてないよーー)
次から本番異世界編スタートです。
おまけ
ちなみに銀行のカードの預金残額が給料日前で70円しか入ってなかったのはまた別のお話
健「まじかー不運だーーー!」