第185話 されど会議は 後編
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会議は膠着状態に陥った。要求する者たちと拒否をする者たちが、ただ主張を繰り返すばかり。どちらかが皇帝に決断を迫れば、もう一方がその邪魔をする。ユーリィ自身、はっきりとした答えが見つからず、彼らを黙らせることもできなかった。
(ヴォルフ、大丈夫かな?)
今すぐ行ってやりたかった。絶対になにかあったはずと感じるから。
しかし地位という鎖はあまりにも太くて、引きちぎることも敵わない。たぶんこうなってしまうことを恐れ、自分を拘束しようとしたヴォルフの気持ちがよく分かる。ここにいるのはこの程度の鎖すら断ち切れない弱者だと、彼はあの時から悟っていたのだ。それでも命を賭けて、守り戦おうと決めてくれた。あんな姿になってしまっても。
(ヴォルフ、ゴメン……)
謝りながら何度も北東の隅を眺めてしまう。彼なら必ずなんとかするはずだと無責任な信頼を握りしめて。
するとそんなユーリィを見とがめて、オーライン伯爵が声をかける。
「陛下、どうかなされましたか?」
探りを入れるような目付きにイラッとした。
たった一年半前に一緒に旅をしていた者とは思えない。母と結婚してからはますまず遠い存在となってしまったようだった。
「ブルー将軍が遅いと思っているだけだ」
「そうですか」
あっさりと話を終了され、さらにイラとした。
苛つくと言えばジョルバンニの態度も腹立たしい。他の連中はともかく、彼だけは皇帝がなにを気にしているか分かっている。それなのに、いつものごとく冷淡な目でユーリィをチラッと見ただけ。この場を収めようという意志すら感じられなかった。
話し合いは一向に進展しない。いや、これは話し合いなどと呼べる代物でもなかった。だれも歩み寄る姿勢を示さず、ただがなり立てる騒音の世界。
(僕はいったいなにを必死に守ろうとしているんだろう……)
こんな優しくない世界を?
自分のプライドを?
それはヴォルフを傷つけてまで守らなければならないもの?
考えれば考えるほどここにいる者たちのみならず、この世界がどうでも良い存在に思えてくる。どうしようもない虚しさが胸の中で膨らみ始めた。
けれど最後の希望としてブルーを待とうと決意して、肘をついた右手に顎を乗せる。そんな皇帝の態度に幾人かがなにかを言ったが、なにもかも面倒で返事はしなかった。口を開くのさえ億劫で、ユーリィは居並ぶ者たちを順番に睨んでいく。
その視線にあてられてエルナが不安そうに顔を背けたが、動じない者たちが二人いた。一人はあの異色眼で、もう一人はセグラス・ジョルバンニ。どちらも無表情にユーリィの視線を受け止めて、悪びれることなく見返してきた。
先ほどまで喧々囂々としていた室内は急に静まりかえる。よほど不機嫌な顔をして皆を睥睨していたんだろうと思うと少しだけ小気味が良かった。
(さんざんヴォルフには無表情だと言われたけど、機嫌が悪さは顔に出してたよね? だからあいつ、こっちが苛ついてる時は凄まじく下手だったし……)
他人に体を乗っ取られ、どうにも辛かったあの時も彼はちゃんと気づいた。ただし見て見ぬ振りをされていたが。あれは己の非を認めたくなかったためだった。
でもそのことを責める資格は自分にはないとユーリィは思った。
どうやったってジョルバンニを攻略できない自分の弱さを。
(またなにか企んでいるっぽいんだよな、あいつ……)
いっそ問い詰めようかと思ったが、どうせ正直に言わないだろうと早々に諦めた。
しばしの間、沈黙の均衡が保たれてた。けれど音はあちこちから聞こえてくる。たとえばアルカレス副議長が弄ぶ金のチェーンブレスの音とか、ディンケルが揺さぶっているせいで悲鳴のように鳴く椅子の軋みとか、バレクがテーブルを爪の先で叩く音とか、それ以外にも不満と不平を含んだ無機質な音は、絶え間なく聞こえてきた。
そんな中、木槌のような音が室内に響き渡った。ユーリィの正面、テーブルの反対側にある扉のノッカーが来訪者を告げたのだ。
やや間があって両開きの扉がゆっくりと内側へ折れてきた。開いた空間に立っているのは背の高い黒髪のエルフ。紫紺色の制服に身を包んだ彼は、真っ直ぐにユーリィを見つめる。その表情は一年前に恋人が死んだ恨みを抱えてやってきた元親友にそっくりだった。
やがて足音を忍ばせ近づいてきた黒いブーツは、何日も磨いていないようでかなり薄汚れていた。
「お久しぶりです、皇帝陛下」
慇懃に、そして笑顔もなく、ブルーは腹に腕を当てて腰を折った。
初めて出会った瞬間から笑顔だった彼に、こんな表情をさせているのだと思うと、ユーリィは胸に痛みを禁じ得ない。
それでも真顔で頷くしかないのだ。自分も彼も、この立場を選んでしまったのだから。
「長老にお聞きになりましたか?」
「ずいぶん無茶な要求を用意してきたな」
「あなた方が信用に足りると我々が信じる為の対価です」
「信用を失わせるようなことをした覚えはない」
「そうでしょうか?」
するとブルーは、体ごとテーブルに集う者たちへ向き直り、声を高めてこんなことを言い始めた。
「不思議なことに、イワノフ公然り、アーリング将軍然り、ミューンビラー侯爵然り、皇帝陛下が不要と思われた人物が次々と消えていかれた。これは果たして皇帝のご意思なのか、それとも偶然なのか? あの事件により罪のない我々の仲間も一人、生死の境を彷徨うことになった。皇帝陛下はなんの関与もなされていないとおっしゃったが、我々が調べたところ、皇帝陛下の側近として使えていた男が犯人だという証言がいくつかあった。さらにその犯人らしき男も姿を消している。このことを皆さんはどうお考えになられますでしょうか?」
返事はなかったが、困惑、悲哀といった表情が半数の者たちの顔に浮かんでいる。特にエルナは、何度か口を開きかけては閉ざすを繰り返していた。ミューンビラー失脚騒動の渦中にいたのだからなにか感づいているのだろう。
「それどろこか自分は、皆さんが次に消えていく者になるかもしれないとご心配なられないのが不思議ですよ」
その言葉が放たれたと同時に、先ほどの両開きではなく右手にある小さな扉が静かに開かれた。入ってきたのは七人の若いメイドたち。水が入ったグラスを三つほど乗ったトレイをそれぞれ持ち、中に入るとメイドらしく順々に腰を落として挨拶をしてから壁際へ一列に並んだ。その最後にコレットが入ってきて、一同に告げる。
「お水をお持ちいたしました」
ずいぶん唐突で微妙なタイミングではあるが、剣呑な気配を払拭するのに若い娘たちは効果があるようだ。そのせいか咎める者もなく、皆メイドから渡されたグラスを口に付けていた。
コレットはというとまずユーリィの傍で深々と挨拶をすると、他とは違う手の込んだ装飾があるグラスをテーブルに置いた。それからジョルバンニに近づいて、まだトレイに残っていたグラスを置く。その際、眼鏡男になにやら耳打ちをした姿をユーリィは見逃さなかった。
(やっぱりなにかあったかな……?)
ユーリィの緊張が一気に高った。ヴォルフなら大丈夫だという確信も、もはや風前の灯火だ。だから無意識になにもない左手の隅に視線を据える。
刹那、そばにいたブルーの冷たい声が聞こえてきた。
「やはり今回はククリですか?」
驚いて傍にいる男を見上げれば、彼もまた同じ方向を眺めている。
「どういう意味?」
「わずかながら、さっきこの方角に異界のひずみを感じましたから。でも今は収まっている。この方向といえばサロイド塔、そして異界と言えば――」
言いかけたブルーの言葉を遮ったのは、意味深なジョルバンニの咳払いだ。相変わらず冷たい表情で、ギルド議長はユーリィとブルーを眺め、それから室内にいる全員を見渡した。
「その件に関して今し方報告がありました。いずれ知られてしまうでしょうから、この場で伝えてもよろしいですね、皇帝陛下?」
「いいよ」
「サロイド塔に収監しているククリ六七人全員が死亡したとのこと。なおその直前にグラハンス獣爵がお入りになっていますが、因果関係は不明です」
ジョルバンニが言い終わるや否や、室内は騒然とした気配に包まれた。
「ククリの捕虜は邪魔だとおっしゃっていましたからね、陛下は」
「なにが言いたい?」
「自分がなにを言いたいか、この場にいる全員は分かっておいででしょう」
確かに分かっているだろう。それぞれ顔を見合わせて互いの反応を確かめたのち、今度は皇帝へと視線を向けている。先ほどまでとは違う、明らかな疑いをはらんだ瞳がほぼすべてであった。
だが内心の緊張と動揺を隠し、ユーリィは顎を手のひらに乗せたままブルーを睨め上げつつ、目の端にいる眼鏡男に問いかけた。
「獣爵はどうしたか知っているか、ジョルバンニ?」
「獣爵は先ほど塔からお出になったようです」
「そう……」
ヴォルフは無事だった!
それだけでいい。それ以外のことは考えたくもない。
顎を乗せていた右手を、前に置かれたグラスへと伸ばす。ひんやりとした感触は熱くなりそうな気持ちを冷やすのにちょうど良かった。
グラスの水を一気に飲み干してから、一同を睨み付ける。ここにいる下らない者たちは、喉を潤す水よりも無価値なのだ。
本当にそう思えたなら―――。
「サロイド塔の調査はしたいものがすればいい。ディンケル、ジョルバンニ、アルカレス、お前たちに任せる。ラシアールの要求については聞くだけは聞いた。どういう待遇を用意するか、もしくはしないかは追って沙汰を出す」
一度言葉を切り、冷たい視線を一同に浴びせたのちユーリィはふたたび口を開いた。
「解散だ!」
意義など言わせるつもりは一切ない。
今はただ、ヴォルフに会いたいという気持ちだけを抱えた卑劣な者に成り下がっている。それで満足だった。
最初にそそくさと出ていったのは、ジョルバンニ率いるギルドの面々。続いて貴族院の者たちが席を立つ。エルナとオーライン伯爵が放つ物憂いな瞳を、ユーリィは景色としてただ眺めていた。
さらに軍部が出ていこうとしたが、途中でディンケルだけが引き返してきて、普段通りの慇懃な態度でユーリィに話しかけた。
「陛下、自分は陛下に不信を抱くようなことはありません」
「わざわざそれを言いに来るとはご苦労なことですね」
戯けるような口調でブルーが揶揄したが、ディンケルは相手にはせずに黙って立ち去っていく。しかし握られた両拳が、彼の本心を露わにしていた。
そういう小さな事も今のユーリィには、馬鹿げた茶番にしか感じなくなってきた。
(いよいよ、僕もおしまいってことかな?)
最後に残ったラシアールたちは、ブルーがまだなにか言うと思っていたのかその場で待機していた。しかし魔軍の将軍はもうなにも言うつもりはなかったらしい。挨拶すらせずに歩き出したエルフの背中に、ユーリィは問いかけずにはいられなかった。
「ブルー、あのさ……」
以前のように「なんですか、侯爵」と笑顔で振り返る姿など期待はしていない。
むしろ無視してくれたなら、胸にある虚無感が強くなってくれるだろう。
今は自虐すら忘れるなにかが欲しかった。
けれど期待を裏切り、ブルーは立ち止まってしまった。
だからその背中に問いかける。
「お前は僕になにを望んでいる?」
「俺はただ真実を知りたいだけです」
「僕はなにも言わないし言うこともないよ。それが不満なんだろ? ならお前の望みは僕が死ぬこと? それともこの世界を壊す化け物になった僕を倒すこと?」
振り返ったブルーの瞳は驚きに満ちていたから、ユーリィは視線を反らして立ち上がる。そんな表情を見たかったわけではなかった。
望んでいたのは、もうこんな世界などどうでもいいと思える材料だけだ。
「返事はいらない」
それだけ言うと、ユーリィはマントを翻し、黙ってブルーの横を通り過ぎた。
その日の午後、ユーリィはずっと寝室に引き籠もっていた。
色々やることがあったような気がしたが、どうでもいいという気持ちに支配されて考えることすら止めてしまった。
今はヴォルフが戻ってくるのを待つだけでいい。
心は芯から疲れ切って、冷え切って、どうしたら以前の気力を取り戻せるのかも分からない。そればかりか、取り戻す必要があるのかという疑問もある。
過去に何度もこんな寂寥とした思いになったことはあったけれど、今回が一番酷いような気がした。
自分を責める気力にも、腹を立てる気力も全く起こらない。
だれが死のうと生きようと、本当にどうでもいいような出来事だと思えてしまうから、ましてや帝国設立など本当につまらない話だと感じるだけだ。
(だれもそんなことは望んでないのさ。僕だけが空回りして、みっともなく踊らされて、それを得意げになっていたんだ。まるでこの世界の救世主にでもなったような気分で、プライドだの運命だの宿命だの寝言を言い続けて。本当に馬鹿みたいだ)
そう思えば気が楽になる。
タナトスとジョルバンニの企みに嵌まり、そのタナトスもフォーエンベルガーに押しつけられて、自分はすべての事件に関与していたわけではなく、などとグダグダ言い訳をして回ることに比べれば潔さすらあった。
自分の無能ぶりを自覚してしまえるほどは、たぶん大人ではないから。
日が暮れ始めて、暗い雲が立ちこめてたソフィニアはいよいよ雨が降り出す気配があった。ベッドに腰を下ろして、ユーリィは漠然と窓外を眺め続けた。室内はもう真っ暗だがランプを灯す気力もない。ヴォルフを探しに行こうと思うのに、なんだか全身に力が入らなかった。
(このまま体が闇に溶けていったらいいのになぁ……)
死ぬのではなく消滅が自分には似合っている最期ではないか。
そんなことを考えていると、ようやく愛しき者が戻ってきた。
室内に入るなり彼はその暗さに驚いて、なにも言わずにサイドテーブルにあるランプに火を灯す。
ぼんやりと明かりは、まだ残っている未来のようだ。
「どうした……?」
目の前に立ち、改めて驚きの言葉を発した男に、ユーリィは少し伸ばした。
「僕は、もう死んでもいいと思う?」
「なっ!?」
「冗談だって、そんなに驚くな。それよりサロイド塔でなにがあった?」
全く興味が持てないことだけれど、疲れた表情を見せる男にそんな態度を示すことなどできるはずもなく。
しかしヴォルフは言いたくないとはっきり表情に出して、視線を反らせたまま押し黙っていた。
「お前、ホント分かりやすいな」
ふふふと鼻で笑ってから、右手を掴んで彼を促した。
「なにを聞いても驚かないから大丈夫だよ。どっちかって言えば、少しぐらい驚くことを言ってくれた方がこの脱力感から抜け出せるかもしれない」
「君の方こそ、なにかあったんじゃないのか?」
「なーんにも。なにもかも今まで通り、大勢がひたすら文句を言うだけの一日さ」
「疲れているのなら、明日の朝でも……」
「いいから言えって」
真顔になってそう言うと、ヴォルフは深いため息を一つ吐き出して、それから本当に辛そうな表情でボソボソと語り出した。
クライス、マイベール、レブ、そしてアロンソ。
聞いたことがある名前をヴォルフは何度も口にした。
特にアロンソの話は、何度もユーリィの顔色を窺うようにして言葉を切る。そのたびに促さなければならなくて、わりと面倒だった。
一通りの話を聞き終わって最大の驚きは、なにも感じない自分の心だ。どうやら心が脱力感に支配されているらしい。
力の入らない己の手のひらを眺めつつ、ユーリィはぽつりと呟いた。
「アロンソは凄いな」
「なにが?」
「あいつと僕とでは覇者になりたいという執念が違いすぎる。命を落としても、時間を駆け抜けても、魔物に乗っ取られても、ずっと執着し続けていられるなんて」
「見方を変えればそういるかもしれないが……しかし……」
「それにしたって遅かったね。時空の狭間? 異界の狭間? どっちだか知らないけど、そこから出られたのは昼前だったんだろ?」
「この場は退散した方がいいとか丸め込まれて、強引にクライスに拉致された。君はまだ会議中だったこともある。それからクライスとマイベールが過去のことを聞きたがった。俺が魔物になった理由や、アロンソのことや色々。適当に誤魔化すつもりが根掘り葉掘り聞かれて……君にどう報告すべきか少し迷っていたから……」
ヴォルフがどこまで話したのかは気になるところではある。クライスから報告を受けたジョルバンニがどんな行動に出るのだろう。その前に、未だあの男がなにを望んでいるのか、ユーリィには理解できないでいた。
「魔物の姿で戻るのはマズいと思って歩いて帰ってきた。クライスが余計なことを言ったもんだから、君がまた苦しい立場になったんじゃないかって……」
「馬鹿だな、ヴォルフは。僕に気を遣いすぎだよ」
半日以上も自分のために思い悩んでいたんだと思うと、ユーリィは愛しくて堪らなかった。もしこの世界に確かなものがあるのなら、もし自分が執着するなにかがあるとすれば、世界でもなく国家でもなくただ一人。
「賭けをしようか、ヴォルフ?」
「賭け?」
「アロンソに立ち向かう意味があるのか、生きている価値があるのか、下らない存在じゃないのか確かめたくなった。本当はさっきまでどうでもいいって思っていたけど、少しだけ気力が戻ったよ。だから賭けをしたい」
言っている意味が分からず眉をひそめた男に、ユーリィは命令をした。
「抱けよ、ヴォルフ、今すぐに」
「なにを急に……」
「お前の愛で死なずにいられたら、這いずってでも生きていく」
そう言って両手を差し伸ばす。
最初は戸惑っていた男が迷いながらも身を屈めると、その首に両手を絡ませてブルーグレイの髪を指でまさぐった。
熱い口づけはいつもよりも激しく、体の芯までしびれていく。
ベッドに押し倒されたのちは、すべてを委ねて深い海へと。
攻め立てるヴォルフの愛は、熱く、激しく、そして苦しくて。
感じているのが快楽なのか苦痛なのかすら分からなくなっていった。息ができないほどの苦しさと、震えが止まらなくなるほどの寒さと、破裂するのではないかと思うほどの心臓の激痛は、死へと誘う道標のようだ。
それなのに絶え間なく打ち寄せる快楽の波に、無意識の喘ぎを漏らしていた。
「あ……ん……やっ……」
「大丈夫か、ユーリィ?」
「僕が……死んだら……この宮殿ごと……燃やして……」
もしこのまま死ぬのなら、なんて幸せな結末だろう。
それが消えていく意識の中で、ユーリィが最期に考えたことだった。