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黄金の天子 ~我が皇帝に捧ぐ七つの残光~  作者: イブスキー
第八章 流星
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第179話 栄華の残夢

 魔物貴族が誕生した日以来、ロズウェルにとってパッとしない日々が続いた。

 仕事もそれなりに熟していたし、宮殿のメイドたちにも注目されていたし、新しい仕立屋は腕が良いし、髪師を呼んだので前髪は思うとおりに整ったしで、悪いことは一切なかったが、それでも面白いとは思えなかった。


(なにかこう、心躍るようなことはないものか……)


 せめて皇帝と親しく会話できるようになれば少しは違うだろうに、想像以上に生真面目な方だと知るのに数日も必要なかった。しかも他の二人の監視付きである。一度副議長アルカレスの話題が出たが、あの男の実情をぶちまけるわけにもいかなかった。


 ギルド内部は今、陸軍派と貴族院派にはっきり分かれつつある。アルカレスは当然貴族院派で、陰で暗躍しているらしいバレクも同じ仲間だ。ロズウェルは家業が家業だけに陸軍派と思われているらしいが、実際には中立をなるべく保とうとしていた。


(そういえば、あの時言っていた綿花輸送が上手くいったせいで、バレクの奴、あれから何回も陸軍抜きの輸送をしてやがる。議長は放っておけと言っていたが、そろそろ痛い目に遭ってくれたら楽しいな)


 それを期待するにはククリの連中に暴れてもらうしかないが、あの休戦協定以来これといった事件もなく帝国内は静かなものだ。そのお陰で貴族たちは続々と自領地に帰ってしまい、一時期は二百人以上留まっていた帝都には、現在八十人弱ほどしかいないらしい。

 不思議なことにミューンビラー一派はまだここに留まっている。もしかしたらなにか企んでいるのだろうか。その勘ぐりが正しいかどうか貴族院情報書記官に何度か探りを入れてみたが、彼女は平然とした様子でなにも困った事はないと答えるのみだった。


(貴族連中はウザいから少なくても構わないけど。ああ、けど社交界の集いがないのは寂しいか。今帝都に必要なのは着飾った女性が集まるようなサロンだね)


 皇帝は仕事に対して生真面目なのは良いことだが、もう少し華やかさがあってもいいと思うロズウェルだった。




 そんなこんなでパッとしない日々が半月ほど過ぎた頃、ロズウェルはある人物に呼び出された。意外な相手ではない。むしろ近々接触してくるだろうと期待半分予感半分でいたので、遅いぐらいだ。

 場所はギルド本部の二階。そこはギルド執行部役員たちの執務室が並んでいる。最近ようやく全員の顔を覚えたロズウェルだが、さすがにだれがどの部屋かまでは覚えていない。しかたがなく廊下に待機する憲兵にその場所を教えてもらった。


「せめて名前のプレートでも貼ってくれよ」


 ブツブツ文句を言いつつ、階段を上がって右手四つ目の部屋へと歩んでいった。


 そもそも二百年以上続くギルドはつい最近までかなり腐敗した組織だった。幹部になるにはイワノフ一族のだれかから推薦状をもらわなければ絶対になれなかった。なのでイワノフ家は絶対の権力を持ち、ギルドを思うがままに操っていたと言っても過言ではない。そのイワノフ家が内部分裂を起こし、当時幹部だった者たちもあの戦いに巻き込まれて死亡したか、もしくはその後の裁判で追放処分もしくは財産没収の憂き目にあっていた。


 現在ギルドは人事部、流通部、製造部の三つの部門に分かれていた。

 人事部は憲兵、宮殿の従者、ギルド内の職員を主に管理し、流通部は輸送業と販売業を主として馬車屋や水売りもそれに含まれている。そして製造部は商人や職人を主に管理し、クライス家もこの管轄にあった。

 さらに、それぞれの部門は同じギルドでありながら資金は別となっていた。たとえば貴族が生産や採取した原材料を流通部が輸送代込みで買い取り、さらに製造部がそれを買って商人や職人に売り付ける。逆に商品などは製造部が買い、それを買い取った流通部が国内および他国へ売るというわけだ。

 ちなみにそれぞれの取引にはギルドへの上納金及び国税も含まれているので、原材料も商品も売った値段より高くなっている。しかし以前はイワノフ家に入っていた上乗せなので、帝国になる前に比べて値段が違うというわけではない。要するに私服を肥やしていた金が、国家財産になったというだけである。


 この体制になってからまだ半年も経っていない。すべてギルド議長であるジョルバンニが取りまとめ、皇帝と協議をして今に至った。

 そういう意味で、ジョルバンニは尊敬に値する人物だとロズウェルも認めるところである。もちろん自分も同じことを出来るという自信はあるが、彼のように強引に早急に実行できるかどうかは微妙なところだ。


(あの男のようにボクは冷酷じゃないからね)


 目的の扉の前に立ってギルドの現状に思いを馳せたのは、中で待ち受けているだろう人物を焦らしたかった為。焦れて墓穴を掘ってくれたらそれに越したことはない。


(さぁて、どんな愉快な話題を持ち出してくることやら)


 フフンと鼻で笑ってから、右手中指で理想的なノック音を三回ほど響かせた。

 待つまでもなく扉はすぐに開かれる。顔を出したのは、呼び出した張本人だったのはロズウェルには意外であった。

 しかし室内を眺め、その奥に座っている人物に気づいて納得をする。


(あっ、なるほど、犬の習性か)


 そう思ってつい薄ら笑いを浮かべてしまったロズウェルを、相手は鋭く睨みつけた。


「クライス君、遅かったじゃないか」

「道が混んでまして。今日は祭りかなにかありました、バレクさん?」

「月に一度、夜の市が立つ日なのを忘れたか?」

「そうでした。怪しげな闇市ですよね」

「別に怪しくはない。すべて正規のルートで輸入して販売している物だ」

「あっ、そうですね」


 入れと目で促され、ロズウェルはゆったりとした動作で中へ入った。

 バレクの執務室は壁もカーテンも調度品も、白を基調にして明るい色で揃えている。普段はジョルバンニに雰囲気も口調も似せて、従兄弟であることをアピールしているくせに、こんな場所ではまったく正反対だと主張する、なんとも嫌らしい性格だとロズウェルは思った。

 それはともかく、奥のソファに座っている人物には挨拶をする必要があるだろう。

 入ってきた歩調のままその人物に近づくと、無難な挨拶で敬意を払った。


「君とは一度じっくり話したいと思っていたのだよ、ハッハッハッ」


 なんで笑う!?

 という心のツッコミは微塵も見せずに「光栄です」と返事をした。


「まあ掛けたまえ」

「では失礼します、アルカレス副議長」


 赤茶の髪と同じ色の大きな髭を蓄えた、少々甲高い声をした人物の斜向かいに腰を下ろす。恰幅が良いその男は金糸をたっぷりあしらった黒のスーツを着て、さらに金糸で織られたスカーフを流行に乗って細長くして首に巻いている。しかしロズウェルにはロープを巻き付けているようで、見ているだけでイラッとした。太い五指は三つの金の指輪で飾られている。金縁の片眼鏡が金の鎖に繋がれて、上着の襟から垂れていた。

 要するにどこもかしこも金ピカ。靴ですらバックルは全て金だった。


(金色の気色悪い化け物みたいだな……)


 心で毒づき、顔は神妙さを崩さず、ロズウェルは黙って相手が話し始めるのを待った。

 少し遅れてバレクが副議長の隣に座る。それによりこれから自分の尋問が始まるのだと感じ取った。


「クライス君はこのところ忙しそうだな?」

「新たな役職をいただきましたので、多少は忙しくなりましたね」

「皇帝陛下の側近に取り立てられたというのに多少とは、随分頼もしい」

「他所とは違ってギルドはなんの問題も抱えてないので楽な方ですよ」

「君の言う通りだ、ハッハッハッ」


 アルカレスの乾いた笑いに鼻白みつつ、ロズウェルも軽く微笑んだ。


「しかし倉庫番まで兼任しているのはいかがなものか」

「ああ、あれは適任者が見つかるまでの期間ですよ」

「適任者は幾らでもいると思うが」

「ロウソク用の倉庫を毎日点検するだけの仕事ですからね、適任者が簡単に見つかるかどうか。ただしロウソクは貴重な我が国の資産なので、滅多な者に任せられないとも議長は仰っていました。つまり僕のようにそれなりに仕事があり、尚且つ信用が置けるものは見つからないのでしょう。皆さん、なかなかお忙しいですから」


 実際、ロズウェル自身もなぜジョルバンニがその仕事を自分に任せたのか、はっきりとは分からなかった。ただロウソク倉庫の隣には、バレクが管理する倉庫群があることがなにか関係しているとは思っていた。


「君はもともと流通部に配属されたのだったかな?」

「いいえ。なぜです?」

「倉庫番は流通部の管轄なのでね」

「ああ、なるほど。いえ、ボクは情報書記官に任命していただく前は、ギルドに所属している一商人に過ぎませんでしたから。クライス家がギルドとのかかわりを避けていたのは、ご存じありませんでしたか?」

「そういえばそうであったな。だが何ゆえに?」

「以前の体制に馴染めなかったのでしょう」


 以前はイワノフ家とギルドとの癒着が酷かった。なにしろイワノフへの上納金な額が、より多くの取引を成立させていたのだ。クライスはもともと鍛冶屋から始まった家である為、原料の質を落してイワノフに媚び、欠けた剣を作るような真似を良しとしなかった。


「まあ、分からんでもないが。我がアルカレス家も、ベネーレク伯爵家に媚びていたカズバルトには、何度も煮え湯を飲まされれていたからな。あの男が伯爵とともに死んだと聞いた時は、溜飲が下がったものよ」


 アルカレス家も潰れたカズバルト家も馬車屋である。馬車屋は、辻馬車や荷馬車のみならず、ソフィニアに出入りする貴族たちの馬車馬なども預かり世話をする家業だ。

 ソフィニアは人口のわりに狭い上に、四分の一を宮殿が占めているので貴族屋敷であっても馬車を置いておく土地があまりない。そこで昔から馬車屋が重宝され、街外れまたは壁の外側で馬車馬などの世話を行う。

 さらに輸送なども従事していて、貴族領地から農作物等を、ソフィニアからは日用品や武具などを運んでいた。


「我が家のことはさておき、君のことだ、クライス君。今までギルド執行部とは関わりを持たなかったクライス家が、なぜ急に皇帝陛下の側近となったのかが我々としても不思議でね」

「情報書記官の職に就けたのは偶然ですよ、副議長。ボクはただジョルバンニ議長に頼みに行っただけです、新しい体制になったギルドの末席に加えて頂けないかと。ご存知かと思いますが、クライス家とジョルバンニ家は親族で――」

「遠い関係ですけども」


 口を挟んだのはバレクである。確かに母親同士が姉妹の彼にとっては、曾祖母が議長の祖父と兄妹という関係は遠いだろう。だが親族には間違いないとロズウェルは無視をした。


「子供の頃に二度ほどお会いしたこともありますし、議長もボクの噂ぐらい耳になされているだろうと思ったのですよ。そうしたらきっと登用していただけるだろうと」

「ずいぶん自分に自信があるようだな、クライス君。とはいえ、その容姿ではしかたがあるまいな。君の噂はあちこちで私も耳にはしているぞ。クライス家の嫡男は、いずれソフィニア中の女を食い尽くすだろうとな、ハッハッハッ」

「人目を避けて生きていくのは難しいですが、なるべく女性たちを傷つけないように努力はしていますよ、副議長」


 だから自分の責任ではないと言いたいところをグッと我慢して、ロズウェルは少し乱れた前髪を指先で整えた。


「先ほど申していた偶然というのは、その容姿が関係していることではないのかな?」


 そう言われて、前髪を数本摘まんだままアルカレスの顔を凝視する。相手がなにを言おうとしているのか予想がつかず、ロズウェルには珍しく少々呆けたような表情になってしまっていた。


「ええと、なんのことでしょう?」

「あくまでも噂だが――」


 今の今まで声高らかに笑っていた男は突如身を屈め、ロズウェルも同じ格好をしろという合図のつもりか、立てた人差し指を自分の方へ動かした。

 金色の化け物に己の麗容な顔を近づけるのはかなりの抵抗があったが、必死で心を殺してロズウェルはその指示に従った。


「皇帝陛下はあの魔物貴族とご関係があるらしい」

「ご関係?」

「つまり交接をするような……」

「ああ、そういうことですか」


 自分に対する獣人の態度を鑑みればさもあらんと納得したので、ロズウェルは驚きもせずそう答えた。

 すると、アルカレスはロズウェルがなにかを知っているかと思ったらしく、興味津々な表情でさらに顔を近づけてきた。


「まさか噂は本当のことであったのか!?」

「さあ、存じません」

「しかし君は少しも驚かなかったではないか」

「皇帝陛下はとてもお美しく、ともすれば少女のようにも見えるお方ですので、あの獣人が懸想を抱いても不思議ではないと思っただけですよ。しかし本当にそのようなご関係があるかは存じ上げません。それにボクは、皇帝陛下のお相手は獣人ではないと思っているので」

「アレではないと? ではだれだと思っているのだ?」

「もちろんリマンスキー子爵令嬢です。あのお二人は旧知の仲のようですし、皇帝陛下も彼女にはとても気をお遣いになっておられるようですね」

「ああ、あの娘か……」


 苦虫を噛みつぶしたような表情で、アルカレスは黙り込んでしまった。


(まさか皇帝陛下に男色嗜好があるのを確かめるために、ボクを呼び出したのか?)


 だとすれば、マヌハンヌス教徒としてあるまじき嗜好だと、皇帝を糾弾するつもりだったのかもしれない。ならばリマンスキー令嬢の名を出すことによって、図らずも自分は皇帝を守ったことになると、ロズウェルは独り悦に入っていた。


「そうか……リマンスキー令嬢か……」

「なにか問題でも?」

「いや、別に問題はない。しかしあの娘はなかなか強かであるからな……」

「まさか皇帝が男色家の方が良かったとお考えなのですか!?」

「いやいや、そうではなく。むろんマヌハンヌス教の禁忌を侵しているとなれば、それを良しとしない方々もおられる。しかしあの娘となると……ふむ……」


 はっきりしないアルカレスの態度に業を煮やし、ロズウェルはあえてソワソワと身動ぎをして、帰りたいという素振りをした。


「あ、待て待て。クライス君。今日ここに君を呼んだのは、少々頼まれてもらいたいことがあったからなんだよ」

「ボクにですか?」

「実はある人物から、皇帝陛下との仲を取り持って欲しいと頼まれているのだ。ある誤解を受けて謹慎処分になってしまった方だと言えば分かるかな?」

「ああ……」


 名前を出すまでもなく、ミューンビラーの名前がロズウェルの頭に浮かんだ。


「そこで皇帝陛下になんとかそのお時間がいただけないか、君から上手い具合に言ってもらえないかと思っているのだ」

「ボクがですか!? それはどうでしょうね。そもそもギルドと貴族院は直接的な関わりを持ってはならないという取り決めがありますし、頼むならそれこそリマンスキー令嬢ではないでしょうか?」

「親しいご友人が一度頼んだことがあったらしいが、今はその時ではないと断られたらしい。だがもしあの娘が皇后の地位を狙っているのなら、なかなか手強い相手だ」


 確かにあの娘は一筋縄では行かなそうだと、ロズウェルも心の中で同意した。陛下のご寵愛を受けているせいか、最近は貴族院でも強気な姿勢を崩さないらしい。


「ならオーライン伯爵はどうでしょう? 仮とは言え貴族院議長ですし、なにより奥方が皇帝の御母堂様ですし」

「伯爵は、今の自分は仮の身分と地位だから余計なことに首を突っ込みたくないと答え、のらりくらり躱すんだそうだ。陛下の戴冠式後は、伯爵家はフィリップ様がお継ぎになることが決まっているからな」

「はあ、そうですか」


 貴族院は大変な状況になっていることを改めて知った。だがそれほど関心がないので、ロズウェルにとってどうでもいい話だ。政権争いや権力闘争など関わりたくはないから、俯瞰的立場で眺めるぐらいが丁度いい。人生は楽しく気楽にというのが、ロズウェルのモットーだった。


「他にどなたか他にいらっしゃっらないんですか?」

「いないから困っているのだよ。多くの貴族の方々は、あの悲劇で領地を平定するので手一杯。魔物どもに全てをめちゃくちゃにされて、半年やそこらでもとの通りにはなるはずもあるまい? そんな中で領地のことよりも帝国の未来に尽力なされようとしていたのがあの方だ。そこを皇帝陛下にも分かっていただきたいものよ」

「いずれにせよボクは議長直属の者ですから、この話を議長にお伝えしますよ」


 いい加減この話を切り上げたくてジョルバンニの名前を出すと、アルカレスの隣にいる男の目が光った。


(まるで暗がりにいるネズミだね)


 見た目も雰囲気もまさにそんな感じだ。

 犬だったりネズミだったり忙しいことだと眺めれば、その相手はネズミのような切歯を二本ちらりと見せて薄ら笑いを浮かべた。


「どうやらクライス君は議長のご体調について知らないらしい」

「体調? ああ、何度か具合が悪くてお休みなっていましたね。でもそのあとお目にかかりましたが、別段調子が悪そうな感じではありませんでしたが」

「セグラス・ジョルバンニ氏は生まれつき両目に問題を抱えており、成人する頃には失明すると医者から言われていたのだよ。その医者の見立ては正しくはなかったが、間違ってもいなかった」

「と言うと?」

「彼は失明しかかっていると、私は考えている」


 そう言われて思い出すのは、議長の執務室がやけに薄暗いことだ。もしも光が彼の弱った目になにか悪い影響を与えるのだとすれば納得がいく。そしてバレクの言うとおり、深刻な状態にあるからとしか思えなかった。


「セグラス・ジョルバンニ氏が数ヶ月後にはギルド議長の席には座っていないだろう」

「つまり……」

「つまり数ヶ月後、議長の椅子に座っているのだれなのか。考えるまでもないないな?  ならばどちらを向くのが賢いかという答えも自ずと出てくるはずだ」


 ヤレヤレとロズウェルは心の中で肩をすくめていた。

 金色の化け物の後ろには、痩せこけたネズミが潜んでいて、しかもそのネズミ駆除を失明間際の男から依頼されている。パッとしない日々かと思っていたら、存外に危険な場所を歩んでいた。


 とにかく今は早くこの場から立ち去った方が無難だろう。


「考えてみます」


 そう真顔で答えてから立ち上がる。

 ただし言うべきことは言っておかなければならないと、化け物とネズミに穏やかな微笑みを浮かべて、


「誰も彼もロズウェル・クライスの才気を必要としているのですね。困ったことです。問題はボクが一人しかいないってことでしょうか?」


 その後、彼らの間でどのような話がなされたのか、さすがのロズウェルも知るよしもない。知ったところであまり面白くもなさそうなので知りたくもなかった。


(さて、次はジョルバンニ議長か。ホントに人気者は辛い)


 ロズウェルがギルド本部から宮殿へ戻った頃には、すでに夜の帳が降り始めていた。



☆ ★ ☆


挿絵(By みてみん)


皇帝守護獣爵 ヴォルフェルト・レザーク・グラハンス


作画:つばめじろ様

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