勝利の女神は嘲笑する <Nike Only Laugh>
白く濁った空を見上げ、水滴を顔に受けながら考える。
光のように輝き雪のように透き通る、美しい青白い肌。
黒く艶やかな髪は露出された腰にまで伸ばされている。
彼女の微笑みが、見える。
神の加護という名の過保護は彼女を孤独にした。
贈り物は彼女に近づいた者を情けも容赦もなく。
ただただ機械的に燃やし灰にし土に還し続けた。
彼女が近づくだけで、火炎に身を飲み込まれる。
彼女は世の全てに疎まれ拒絶され、追放された。
彼女の微笑みが、泣いているように見える。
彼女の加護が顕現したのは8歳の時だと聞く。
彼女はそれからずっと一人で生きてきたのだ。
彼女の瞳は生気を失い彼女の口は歪に曲がる。
そんな彼女は近づく僕を、怯えるように見る。
「来ないで」
|少女<<おんな>>のものには聞こえない嗄れた低い声が乾いた空気を揺らす。
「お願い、来ないで」
僕は聞こえない、という風に首を振りながらも歩み続ける。
「来ないで、来ないでよ!そこから一歩も此方へ来ないで!じゃないとまた私は、」
「行くよ、僕は行こう。此処から何歩だって進んでやるさ。じゃないとまた僕は、」
「君を救えない」
彼女の顔は疑問を皺として浮かべる。
とっくに焼失の範囲内に入っているはずだ。なのに、何故。
目の前の謎の男が、私を救う、救える?何を根拠に、何故。