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彼女と僕  作者: ぷりてぃ
1章
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生きるの? 死ぬの?

春先のまだひんやりとした空気が、森の中を走ってさらに冷たくなり、俺の髪を揺らす。


目の前にいるのは、俺の喉下にナイフを突きつけた、あの女。


「もし、今日死んでも、後悔しない?」


そう問う彼女の目は、明らかにマジだ。


人気の無い雑木林の中にある、無人の神社。


叫んでも誰かに声が届くことはないだろう。


そう思っていると、彼女がスッと俺に近づいてくる。


――ヤバイ。


そう思って目をギュッと閉じた。


……が、数秒経っても、何も起こらない。


「この神社、知ってる?」


そんな俺の心境と裏腹に、俺の少し後ろ。賽銭箱の前に腰をかけて、彼女が言った。


少しホッとして、俺は頷いた。


ここは最近のお気に入りスポットでもあるからだ。


人が全く来ない上に、動物が寄り付くので、犬猫好きの俺としては、時間をつぶしたりするのに持って来いの場所だ。


ただ、他にここを知っている人がいるとは思っても見なかった。


「ここ、考え事をするのに、丁度いいんだ。誰も来ないから」


そう言いながら、大きく伸びをする。


「だから、薦田くんをここに連れてきたかったの」


パンパンとお尻についた砂を払いながら、彼女が立ち上がる。


「で、質問に戻ります」


言いながら、彼女は俺の目の前に来る。


「もし、今日死んでも、後悔しない?」


先程は怖いとも思えた問いかけだが、よく見ると、困ったような、助けを求めるような切実さが表情に表れている気がして、質問の真意が読めなくなっていた。


「……私は、後悔しないよ」


俺が答えあぐねているのを見て、彼女が言った。


「だって、ちゃんと薦田くんに気持ち、伝えられたから」


照れ隠しで笑う彼女は、不覚にもドキっとするほど綺麗で、何も言葉が口をついて出なかった。



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