三叉路
放課後の帰り道、住宅街の小さなT字路の真ん中で、彼女達は立ち止まっていた。
右には、縋る様な、脅えるような、そんな色の混じった真剣な表情でこちらを見る清水清羅。
左には、少し優しげな笑顔だが、俺の心の中まで見透かすような目をして、いつも通り力の抜けている夏樹。
T字路に差し掛かる停止線の前で、俺も立ち止まった。
「で、どうなの?」
夏樹が、責めるでもなく、促すように口を開く。
その言葉に、俺の心の中が波打つ。
だって考えてもみろ。クラス一の美女の告白。あの時点で答えはイエスと決まっていた。
で、告白を受けて、一日遊んで。結局その夜、告白の方法もあってか、関係性のすっきりしなさに頭を掻いた。
そこまで見透かされているように思えるこの夏樹の態度に、心がざわめかないわけが無い。
そんな風に思考をグルグルとめぐらせているうちに、少し時間が経ってしまったのかもしれない。
清水清羅の表情は、泣きそうなものに変わっていて。夏輝は少し困った顔で笑いながらため息を吐いた。
「……じゃ、行こっか」
俺が答えあぐねているのを見て、それだけ言うと、夏輝は俺の家のある左側へ歩いていく。
そして、清水清羅はその反対。右側へ駆け出した。
停止線の前にポツンと残る俺。
左右に設置されたカーブミラーには、二人の遠ざかる後姿。
……何やってんだ、俺。
少し情けなさに笑いながら、俺は停止線を踏みつけて駆け出した。