二章 四節
「滝沢さん!?こんちは。」
佐々木がけんたとかつきの前に姿を見せた。
「こんにちは。」
かつきは冷静に返事をする。
「佐々木、どこにいたんだよ?」
「テレビのコーナーです。久しぶりに中学の後輩に会ってて。」
「中学の後輩?」
けんたさんはそう言い、しばらく考えた。
「けんたさんに前話したじゃないですか。
鳴海ですよ。鳴海かずは。」
けんたとかつきは目を丸くした。そしてかつきは佐々木の方へ行き、にらみつけるようにこう聞いた。
「彼女になんて言った?」
「あいさつを交わしただけだよ。」
「彼女になんかしてみろ。俺が許さねーからな。」
「彼女にホの字なの?やめたほうがいいよ。けんたさんにも言われなかった?」
「言われた。でも過去がなんだよ?誰にだって過去はあるだろ?」
「俺、お前みたいな男大嫌いなんだ。
人の苦しみも知らないで平気できれいごとばかり言って。
お前もけんたさんも俺のこと嫌いだと思うけど、俺はお前のそういう所が本当に嫌いなんだ。
けんたさんは知らんけど、きっとみんなそう思っている。」
佐々木とかつきはしばらくにらみ合ったが、けんたがそれを遮るかのように
「佐々木、行くぞ。」
と言い、その場を去った。
かつきはふと携帯を開いた。メールが一件受信されていた。中身を見るとかずはからであった。
その文面を読み、かつきは急いで電気屋を出た。
一方、佐々木とけんたは2人で電気屋から出ようとしていた。
「佐々木。俺は広く浅く人づきあいをする方だ。
正直、この人好きとか嫌いとかまだ分らん。」
けんたはまっすぐ歩きながらそう言った。
「けんたさんは人がよすぎますよ。」
「俺と深く付き合わないから分らないだけさ。」
けんたは少しさびしそうに言った。
「はぁ~」
かつきは仕事場の食堂で大きなため息をはいた。
「どうしたのよ?」
「彼女にフラれたか?」
かつきと同期の2人、小林と中川がかつきに話を掛けた。その2人はかつきと合コンした仲でもあった。
「俺さ~大卒じゃないって話したら音信不通になったしね。」
「まじで。ドンマイ。まあ、俺なんてけんたさん家で披露した一発芸を見せてからシカトされてるしね。
だから連絡先もとってませーん!」
「あははっ笑える。」
2人はかつきの方へ目をむいたが、かつきは再び大きなため息をはいた。
「かつきはいいよな~。如月さんを使って彼女に会えてるんだから。」
「別にそんなんじゃ…」
「なんだよ?」
かつきは少し間をおいてからこう聞いた。
「…お前らさ、佐々木から聞いた?彼女の過去。」
「なんか、万引き・喫煙したって聞いた。」
「でも、そんなの俺だってしたことあるし!」
「それ以外!!」
かつきが強く聞いたので、2人は静かに
「あと、半殺ししたって…」
と言った。
「で?」
「それで仕事になったから聞けなかった。」
「そか」
すると中川がこう聞いた。
「えっ?それでため息ついたの?」
「違う!!
如月さんを迎えに来る時も前みたく、笑顔がなくなったし、なんも話さないまま会釈だけして帰るようになっ た。しかもメールも返してくれないし、電話も出ない。3週間も。」
「お前合コン以来2人でデートした?」
小林にそう聞かれ、したけど、と答えた。
「デートにちゃんとプランたてたか?」
「ただ食事したかったから。彼女、パスタが好きって言ってたからイタリアン料理に行った。」
「お前な~。合コンで女の言う好きな食べ物はだいたい嘘だから。」
「えっ?」
「そうだよ!とりあえずパスタなんて言った方がかわいさがあるだろ?」
「まじで?」
「合コンの場所でステーキ なんて言ってみろ?どう思う?」
「別に…」
「いや~俺は少しひくね。」
「なんでひくんだよ?」
「お前まじでホレてんな!彼女に」
かつきはテーブルにあごをついて彼女の笑顔を思い出した。
彼女のあのはずかしそうな笑顔がとてもかわいらしくて。
「じゃあさ!会いにいけばいいんだよ!」
小林がそう案を出した。
「そうだよ!!かつきっ!会いに行け!」
「彼女の住所知らないし。」
三人の間に沈黙が流れる。
「その音信不通になった女とまたメールすることないのかよ?」
「うっせーな!お前なんて相手にすらされてねーだろ!
あっ!じゃあ俺が直接彼女に聞いてやるよ!
今日も如月さん迎えにくるんだろ?」
「いや~かつきでも住所教えないんだ。無理だろ。」
「やっぱり?」
再び三人の間に沈黙が流れる。
「けんたさんに聞く?」
中川がそう言いだした。
「そうだ!けんたさんと安住さん、仲いいみたいだし、安住さん経由で聞けるよ!」
「行こう!」
かつきは2人に強引にけんたさんの所に連れて行かれた。
けんたは丁度食堂へ向かうところだった。
「けんたさ~ん」
と、中川の声で振り向くけんた。
そして三人の話を定食を食べながら聞いた。
「ばかかっ!お前ら男三人いてなんだその作戦は?
文殊の知恵どころか知恵にもなってねーよ!」
「じゃあ、けんたさんはどうしますか?」
「俺?俺だったら~。如月さん迎えに来るだろ?そこで腕をひいて仕事終わるまで待って、って言って
待たせて話し合う。」
「おお~」
「おおーじゃねえよ!だからお前ら女に相手にされねーんだよ!」
そうけんたに言われて下を向く小林と中川。
その時チャイムが鳴った。仕事再開する合図である。
「ほら、作業部は早く仕事しろ。」
そうけんたに言われ言うとおりにする三人。
まったく…と呟きながらも少し心配そうにかつきを見つめるけんたであった。
「こんにちは」
如月さんはいつもと変わらない笑顔でかつきの仕事場を見つめている。
彼女もこんな笑顔をまたしてくれたらなと思い、仕事に専念する。
「如月さ~ん。お時間ですよ~。」
いつもならかずはが来るはずなのに今日は違う少し年配の職員だった。
「あれっ?鳴海さんは?」
「あ~あ、鳴海さんね、今日ね妹が迷子になって大変なのよ~。
今さっき仕事抜け出して探してるみたいよ。外は明るいとはいえ心配よね~」
かつきは急いで仕事を終わらせ、かずはに電話した。しかしやはり電話は出ない。
かつきはかずはの妹のことなど何も知らないくせに、探そうと思い車をだした。
とりあえず●●駅へ行こうと思い、アクセルを踏み、●●駅へ走り出した。
●●駅へ到着し、あたりを見回した。すると、かずはらしい人が女誰かと手をつないで歩いていた。
かつきはかずはさんと叫び、走って近づいた。
かずはもかつきに気付きかつきの顔を見た。
ところがかつきは思わず立ち止った。
妹が迷子になって探し出すとなったら、普通妹は小さいと思っていたからだ。
ところが、かずはの妹はかずはの一つ下か同い年くらい。
とりあえずかつきはゆっくり歩いてかずはの方へ近づいた。