四章 一節
「智<とも>、お前は俺の跡を継いでくれるのか?」
「ああ、だから●●自動車会社に入社するよ。おじいちゃんの跡は弟に任せるよ。」
最近、中川と三崎の2人はよく出かけるようになった。
2人は付き合っているのかな?
あたしは仕事中何度も三崎の顔を見た。携帯を見ては微笑んでいる様子でした。
「鳴海。三崎、絶対彼氏できたよな?」
為永にそう聞かれ、うなずくかずは。
そして三崎は事務処理を終え、バッグを持って帰宅しようとした時、妙な視線を感じふと横を見た。
そこにはかずはと為永が少しニヤけた顔で見ていた。
「なに?」
「彼氏できたろ?」
そう為永に言われ、 まだ彼氏じゃないし と機嫌悪くなる三崎。
「まだ?」
「智、まだ告ってくれないし。」
「てか、智って誰?」
「ええ~中川よ!!」
「ええ~」
「中川って智っていうの?」
「知らなかったの?」
「「うん」」
どうやら、三崎と中川はあの時以来、何度か一緒にご飯を食べているとか。
「三崎から告白すればいいじゃん。」
かずははそう言ったが 断固嫌だ と三崎が言い張る。
「じゃあ、いってきま~す。」
三崎は機嫌よさそうにそう言ってデートへ向かった。
かずはは、第2、4週目の土曜日はかつきのアパートに泊まっている。
今日もかつきのアパートでテレビを見ていた。
「ただいま。」
かつきの声に反応して飛びつくかずは。
そしてかずはの料理を2人で食べながら、かずはが話しだした。
「中川さんって弟いる?」
「分らないけど、なんで?」
「いや、なんか見たことがある顔なんだよね。」
「へぇ、本人に聞けばいいじゃん。」
「いつ会えるかわからないもん。」
「三崎ちゃんとデキてるんじゃないの?」
「そのうち付き合うことになりそうだよね。」
「ああ。」
「中川さん、恋愛に積極的な方?」
「ん~でも、俺こう聞いたことがある。合コンで女の言う好きな食べ物は嘘だって。」
そう聞いた瞬間、かずはは思わずむせた。
「かずはさ、本当はパスタ好きじゃないんだろ?」
かつきにそう言われ、ドキッとするかずは。
しかし、かずははあることに気付く。
「あれ、いつのまにか呼び捨て?」
「いいじゃねえかよ。かずは。」
「ばあかっ!」
かつきは食器を片づけると、米がないことに気付いた。
「あれ?米もうない?」
「あっ、買うの忘れてた。」
するとかつきはかずはの意地悪そうな顔で
「じゃあ、買いに行きましょう。忘れん坊のかずは。」
と言ったので思わずあたしは なんだと~と言った。
「怒るなよ。今日の飯、おいしかったよ。」
かつきがいきなりそんなことを言うので思わずうれしくなる。
そして2人で一緒に米を買いに出かけた。
2人で夜出かけるのは久しぶりなので、帰りにゲームセンターに寄った。
すると
「やだ~鳴海~?」
と、三崎の声が聞こえた。そこには三崎と中川の姿があった。
「あら~三崎じゃん!あっ、中川さんお久しぶりです。」
「どうも、鳴海ちゃん、かつき!」
あたしたちはいつの間にか4人でアイスホッケーをして楽しんでいた。
以外に中川がうまくてみんな驚いていた。
中川は イエーイ と言いながら右手でガッツポーズしていた。
あたしはその姿を見て思い出した。
中学の同級生、そしてよく一緒に悪さをしていた男、中川春を。
「兄キ。」
どこかで聞いたことがある男の声がした。
そこには、今思い出した中学生の同級生、中川春がいた。