三章 一節
「あれっ!?いつかの三崎ちゃんじゃ~ん」
為永と三崎が買い物をしている時、小林と中川に偶然会った。
いつかの合コンしたメンバーでもある。
「お久しぶり。」
「元気にしてたかー?」
中川にそう言われうんざりする三崎。
「あのさ、鳴海ちゃんとかつきも付き合ったんだから俺らも付き合おっか?」
「これからその鳴海ちゃんと遊ぶの!
邪魔しないで!」
三崎がバッグを振りまわしたが、ひょいっと中川が避ける。
しかしそのバッグが見ためが悪そうな人に当たってしまった。
「おい、痛ーぞ。」
そう言われ、逃げようとする三崎と為永であったが、すでに3人組の男たちに囲まれてしまった。
「こっち来いよ!」
男の一人が三崎の髪の毛を引っ張った。
「ちょっ、それはやりすぎかと…。」
中川が笑ってごまかすようにそう言った。
「うっせーんだよ!」
「おい、お前こっち持て。」
男たちは2人がかりで中川を殴った。
「おい、やめろよ!」
小林も加わったが歯が立たず。
その間三崎と為永は警察を呼ぼうとしたが、もう一人の男にバレてしまい、殴られた。
「彼女に手ぇだすな!ぶっ殺すぞ!!」
中川は殴られながらもそう叫んだ。三崎はそんな中川を心配そうに見つめた。
「うるせーんだよ!」
男はそこらへんに落ちていた木材の瓦礫を拾うと、そう言いながら中川をその木材で殴ろうとしたが、後ろからとび蹴りされた。
「なかなか来ないと思いきや、こんなことになっていたなんて。」
かずはが現れた。
「んだテメー!!」
「剣道2段。それでもやるなら相手になろう。」
かずはもそこらへんに落ちていた木材を拾いそう言った。
しかし男たちはひるまない。当たり前である。相手は女だからである。
男は3人がかりでかずはを黙らせようとしたが、かずははいとも簡単に3人をボコボコにした。
そして男たちは 覚えてろと言いながら去って行った。
「「なっ…鳴海~」」
為永と三崎は泣きながらかずはの所にすがりついた。
「もう大丈夫よ。中川さんと小林さんも大丈夫ですか?」
中川と小林は罰悪そうに ああと言った。
「中川…。」
「ごめん、俺が話しかけたからだよな。」
三崎はバッグからハンカチを出して中川の口にあてた。
「あの2人は治療しなくていいよね。」
為永はそうぼやいた。
かずはの家で治療するかと案を出したが、小林が
「ここからだとかつきの家が一番近い。」
と言ったので、みんなでかつきの家に行った。
「で、俺ん家に来たのか。」
かつきはドアを開けてそう言った。いかにも今起きたようなかっこうで、寝ぐせがひどかった。
「ごめんね~お邪魔…します…汚い。」
小林がそう言った。ゴミが散らかっているし、ドアの前にネギが置いてあった。
「かつきさんの部屋、こんなに汚かったっけ?」
「あの時はかずはさんが寝ている間に片付けた。」
みんなに なんだよーとひやかされたかつきであったが、救急箱を出してくれた。
「いてっ。」
中川がそう言ったが、我慢しろと三崎に言われ我慢していた。
「中川さんが一番やられてたから。」
「かずはは?大丈夫?」
かずはとかつきの会話を遮るかのように小林が言った。
「鳴海ちゃん、すごかったよ!男はバタッバタッて倒していくんだのも。」
「っていうか、剣道2段持ってたの?」
為永にそう言われかずはが恥ずかしそうに答える。
「実は嘘。持っているのは空手2段。」
「…嘘ではないんじゃないのかな。」
小林が思わずつっこむ。
「いや~鳴海ちゃん、学生時代ヤンチャしていたとは聞いていたけどすごかったな~」
その言葉にかつきと中川が口パクで小林に バカ と言ったが、かずはは淡々と答えた。
「そうだね~。高校の時は喧嘩ばかりしていて退部させらそうになったもん。」
「そうだったの?」
「うん、あの時は人を殴るってこんなに楽しいんだって思っていたな。」
かずはが少し笑いながら言ったが、みんな若干ひいていた。
「じゃあ、授業中鳴海ちゃんのクラスは大変だったろうね。」
「そんなことないし。英語と古文の授業は聞いてました~。」
「そのほかは?」
「覚えてない。」
「はぁ~?」
かつきは黙ってかずはと小林の会話を聞いていた。
小林となら楽しそうに過去を話すんだと思い、嫉妬に似た感情がかつきの頭の中をよぎる。
「小林はかつきさんと同い年?」
「おっ、もう呼び捨て!?そうだよ~。大卒じゃないけどね。」
小林はそう言うと為永の顔を見た。為永は目線を反らすように窓を見た。
「へぇ~ひとつ上には見えないや。」
「それはどういう意味かな?」
「俺、大卒だよ。」
と、中川が言った。しかし小林に
「お前は 短大卒だろ。」
と突っ込まれる。そこで、みんなの笑い声が聞こえる。
俺トイレと、かつきはそう言ってトイレに行った。
「なあ、エロ本探す?」
小林がみんなにそう案をだした。ばかじゃないの と言いながらみんな探していたが見つからなかった。
「あいつ、どこに隠してんだ?」
「ネットじゃないの?」
そう中川に指摘され、かつきのスマートフォンを勝手に開いた。
すると受信メールが開かれていた。送信者はみんなの見たことのない男の名前であった。
‘今年もなつみに会いに来るだろ?’という文面だった。
なつみって誰?
みんなそう思っていたが、かずはが一番疑問に思ったに違いない。
ジャーというトイレの水が流れる音がしたので、あわててスマートフォンをしまった。
「ん?どうした?」
かつきがそう聞くと、小林は適当に相槌を打ったが、かずはの頭にはあのメールの文面でいっぱいであった。