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23、TSSに帰還

 二人は【コバンザメ】のコックピットに座り、惑星シビタスの周回軌道を飛んでいた。

<たぶん、来るだろうな……>

 グレッグは独り言を呟いた。

<何が? ……あ、ファントムのこと?>

 ヨニが、それに応えるように呟いた。

<あぁ、そうだ>

 カルバートはメディカルカプセルに入っていたが、依然瀕死の状態には変わりなかった。

<SRIを操ったファントムだ。TSSも操られている可能性がある。どうしたものかな>

 グレッグは考えあぐねていたが、ヨニの応えは明快だった。

<行くしかないでしょ、TSSに。違う?>

 そう言われたグレッグは、ヨニの方を見て微笑んだ。

<そうだな。それしかないよな>

<行きましょう、TSSへ>

 ヨニはコックピットの窓を指差した。

<【コバンザメ】に命令、TSSへの帰還軌道を計算、直ちに帰還シーケンスに移れ>

『了解。…TSSの高度一万キロメートルまでの最適航路を策定中。策定完了。三分後からグラビティエンジンの出力を十八パーセント上昇させます。およそ五時間後にTSSとランデブーします』

<了解。頼むぞ【コバンザメ】>

『了解しました、CDF』

 グレッグはコックピットの後方をみた。そこには、カルバートを収納したメディカルカプセルが置かれていた。その様子を見て、ヨニが口を開いた。

<あたしは、キャプテンのそばについているわね。どうやら脳の一部を損傷しているみたいなの。幸い、身体には影響がなさそうなんだけど、ここではとにかく無理だわ。TSSのメディカルマシンでないと。手当ては無理よ>

<カルバートは、俺の旧友なんだ。何とか助けたい。よろしく頼む>

 心配そうな顔のグレッグに、ヨニはピースサインを出した。


 三人を乗せた【コバンザメ】は順調に高度を上げて、TSSが周回している高度一万キロメートルに達した。

『まもなくTSSとランデブーします。TSSの速度を計測中。速度を合わせます』

<よし、TSSと交信を開始する。TSS、こちら【コバンザメ】だ。GSF秘密コード"CDF"を受理せよ>

 一瞬の沈黙の後、TSSのクリスが応答した。

『ウェークアップ完了。音声認識:グレッグ。CDF権限:承認。パスフレーズをどうぞ』

 グレッグは沈黙した。

『パスをクリアしました。全機能正常。復帰します』

<よぉし。外部侵入が無いか、もう一度チェックをしろ>

『TSS、了解。……、検索中……検索終了。一部に侵入が見られましたが、排除および削除しました』

<TSSはファントムに汚染されていないようだな。念のために外部侵入ブロックを掛けるんだ>

『TSS、了解。若干の攻撃が散見されます。しかし、今のところは完全にブロックしています』

 グレッグは少々不安だったが、先に進めるしかなかった。

<それでは、TSSと【コバンザメ】に命令、TSSは【コバンザメ】を収容せよ>

『【コバンザメ】了解。ドッキングシーケンスを開始します』

『TSS了解。収容シーケンスを開始します』

 TSSの格納庫の扉が開き、誘導ビームが照射された。【コバンザメ】は誘導ビームを検知しながらTSSへと近づいた。

『【コバンザメ】シンクロ開始。制御をTSSに移します』

『TSSシンクロ開始。【コバンザメ】の制御を開始します』

<ここまで来れば問題はない。あとは妨害さえ入らなければ……>

 グレッグは祈るような気持ちでいっぱいだった。そうそう何回も次元断層の技を使える訳でもなく、そしてそれは所詮、短時間の効果しかないからだ。

<奥の手がない訳ではないが、それは最後に取っておくべきだな>

『【コバンザメ】、格納庫に進入中。異常なし』

『固定フックを展開。ギアダウン』

『固定位置まで十メートル。……アポジモータ三秒噴射。停止を確認』

『フックを固定。着艦しました。収納シーケンス終了』

 ボーディングブリッジが【コバンザメ】のエアロックに伸びてきて固定された。

<さぁ、カルバートをメディカルセンターへ>

<わかったわ>

 グレッグとヨニは、軽々とメディカルカプセルをラウンジの一部にあるメディカルセンターに運び入れて、所定の装置に取り付けた。

 操作しているヨニは浮かない顔をした。

<やっぱり、危険な状態ね。それに、この頭部の損傷は致命的かもしれない。もってあと数日ってところかも>

<そうか……>

 グレッグは振り返って、メディカルセンターを出て行こうとしていた。

<どこへ行くの?>

 グレッグは、問い掛けたヨニの方をチラッと見た。

<俺は、一旦自室に戻ってバックパックを持って、それからフライトデッキに向かう>

<なぜ、バックパックを?>

<あれにはいろいろと仕掛けがあるのさ>

<ふ~ん>

<最後の仕上げをするよ、あのファントムの>

 グレッグはニヤッと笑って駆け出していった。

<いってらっしゃい。気をつけてね>

 遠のくグレッグの後姿に、ヨニは思いっきり大声でそう叫んだ。

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