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20、ファントム出現

 第一次探査隊であるFRのクルー六名と、第二次救援兼探査隊であるSRIのクルー六名を発見した。

 しかし、彼らはもう恐らくは死んでいるであろう"ゾンビ"のような姿で、大昔の地球に存在していた奴隷のように、建造物を作らされていることにヨニは驚愕した。

 更に我々の第三次補給支援隊であるTSSのクルー四名も同様の姿になっていたことに、ヨニは狂いそうなほど泣きじゃくり、それを抱き締めることでしか慰められなかったグレッグがそこにいた。そのためにしばらくその場で動けないでいたのだった。

 その時だった。

 一陣の砂嵐が吹き抜けて、砂塵の一塊が空中で漂い、砂の塊がやがて集合し、空間にヒトの顔のような造形を醸し出した。砂塵の顔は恐ろしい形相で、グレッグとヨニを睨みつけていた。

≪お前達も、ここで仕事をしろ≫

 泣きじゃくっていたヨニは、その様子と声に驚いて叫び声を上げた。

<キャー! 何なのぉー! 誰なのぉー!>

 グレッグはとっさに、ヨニをかばいつつ身構えた。

<誰だ、お前は?>

≪私の意志に沿うのだ。そして再興するのだ≫

 直接意識に働きかけてくる声だった。グレッグにとっては懐かしい"話し方"だったが、ヨニにとっては苦痛以外の何者でもなく、特に生身の脳髄を持つ者には耐えられないはずだった。

<ヨニ、妨害防止装置をリミッター限界までレベルをアップしろ!>

 ヨニは泣きじゃくりながらもグレッグに従った。

<妨害、リミット、アップ>

<どうだ? 楽になっただろ?>

 グレッグにそう言われて、ヨニはグレッグの顔を見た。

<えぇ、少し楽になったわ>

 グレッグは、ヨニの顔を見てニヤリとした。

<そうだ、ヨニ。いい子ちゃんだ>

 ヨニはニッコリと微笑んだ。

≪お前達はなぜ従わない? お前達は誰なんだ?≫

 自分の言葉がグレッグとヨニに通じていない様子に、砂塵の顔はますます険しい顔になった。

<攻撃は思念波だけのようだな。もっとも、そいつが一番性質が悪いのだが>

 グレッグは、高次元生命体としての触覚を最大限に発揮して、砂塵の顔の本性を見極めようとしていた。しかし、そんなことには構わず、砂塵の顔はグレッグとヨニに思念波をぶつけた。

≪お前達は何者なのだ? なぜ私に逆らうのだ?≫

 グレッグは鼻で笑ってやった。

<お前よりも、俺の方が高次だからな>

 砂塵の顔は、グレッグの言葉の意味には全く反応しなかった。

≪私の思いは崇高だ。私に逆らえないはず≫

 砂塵の顔は、今までになかった生物の反応に戸惑いを見せていた。

<どうやら、生命形態を組織している訳ではないようだな。それにアルゴリズムが単純で、繰り返しのパターンばっかりだ>

 グレッグの分析に、ヨニは反応した。

<形は無いが、何かを利用してその存在を見せ付け、そして場所に依存して、出現するパターンや行動が同じって訳ね>

<そんなところだ>

 グレッグは相槌を打ったが、ヨニはじっと考え込んでいた。

<どうしたんだ、ヨニ。急に黙って?>

 グレッグの問い掛けに、ヨニはおずおずと答えた。

<それって『幽霊』なんじゃないの? 地縛霊みたいな?>

 グレッグは眉毛をハの字にした。

<もう少し科学的な結論を言えないのかい、ヨニさん。SFじゃなくてホラーになっちゃうぜ>

 グレッグの評価に、ヨニの返事の声は甲高くなっていた。

<だって、仕方がないじゃない!>

 ヨニはちょっと膨れたが、グレッグも相槌を打った。

<確かに、そう言う他に方法が無いかもしれない。一種の『ファントム』だな>

≪お前達はいったい何者なのだ! 私の話を無視するとは信じられない!≫

 砂塵の顔はとことん激しい形相になっていた。

<奴さん、どうやら無視されたのがお気に召さないらしい>

<あらあら。短気なのね、この幽霊さんは>

 グレッグは軽口だったが、ヨニはそれに輪を掛けていた。

≪許さん! お前達は許さない!≫

 砂嵐がますますひどくなってきたように思えた。

≪私に従え、そして私の理想を貫徹しろ≫

 ファントムのやり方を見抜いたグレッグは戦術を変えた。そして、ヨニに合図を送った。

<俺に任せてくれ>

 ヨニがコクリとうなづいたのを確認した後、ゆっくりと喋り始めた。

<ところで、ファントム。お前は誰なのだ? お前の名前は何と言うのだ? もっとお前の話を聞かせろ>

 砂塵の顔が一瞬和らいだ。

≪私の話を聞いてくれるのか?≫

 グレッグの口元がニヤリとした。

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